魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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結構悩んだ末、達也回に。
これは入れた方がよかろうなと思って入れました。随分悩みましたが。
短めです。


第五十七話~尋問~

【Tuesday,October 25 2095

  Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】

 

 

 

 

「ではこれで全ての手続きは終了です。午後一時までには本施設を退出するようにお願いいたします」

 

 一定の手続きを終えた後、案内の人物からその台詞を聞かされた時には、何か違和感を覚えた。

 

 二十三日の関本勲による盗難未遂の後、彼から情報を得るために摩利、真由美と共に八王子特殊鑑別所へ向かった。これその物に問題はない。面会する為の条件が二人との同行であった以上、今更不平を言うつもりは無い。

 

 しかし、問題は八王子特殊鑑別所という警備の厳重な場所ということを加味したとしても以上に手続きが多い上、更には具体的な時刻まで提示してくるほどだ。

 

 今現在の時刻は十一時を少々過ぎている。確かに一、二時間も居座るつもりは無かったものの、妙におかしい。

 

「何かそちら側にも予定があるのですか?」

 

 それは二人も同じ事を思っていたらしく、真由美から案内役の人物に質問が飛ぶ。

 

「はい。午後一時を持って関本勲さんは別の場所に移送されることになっています」

 

「それは、どちらに?」

 

 関本の移送などと言う事は当事者である俺や、また七草の子女である真由美でさえ知らされていない。

 しかし、案内役からの答えは"分からない"という意図のものだった。

 

「申し訳ありません。恐らくは機密となっておりまして、所定の権限を持つ人物でない限りは知ることも伺うこともできません」

 

「・・・そうですか。分かりました」

 

 そう返事を返し、目的の場所へと向かう。

 

「・・・妙だな。一昨日の出来事でしかないのに、いきなりの移送計画か。どうも何か裏があるような気がする」

 

「そうね。私の方にさえ移送の事は知らされてなかったし。ここまで急な事となると、どこかの干渉があったと見るべきじゃないかしら」

 

 先ほどの事を訝しむ二人を余所に、思考をめぐらす。

 まず、今回のことに関与しそうな勢力はいくつかある。

 まず最初に、大亜連合。移送計画をでっち上げ、鑑別所から関本を出したところで仕留めるという作戦も考えつく以上、利益面では一番可能性が高い。

 次に、元々聖遺物を扱っていた国防軍の一部門。こちらは現在の所持者が襲われた以上可能性としてはありえなくはない。早めにお膝元に置き情報を手に入れるという利益面がある。

 また、そうでない場合は十師族の可能性も出てくる。状況的には、四葉。つまり"身内"がちょっかいを出してきていることにはなる。が、これに関しては四葉側にあまりに利益がなさすぎるため、除外すべきだろう。

 

 最後に、"彼"の勢力。九校戦の際に垣間見ただけではあるが、武力、および政府に対する干渉力は侮れない。というより、総理大臣を顎で使えるあたりはまず容易に計画のねじ込みはできそうな力を持っている。

 これに関して言えば利益面でいえば未知数だ。何せ"彼ら"自身の目的でさえ何なのかはいまいちはっきりしていない。

 

 

 もしくは、"彼ら"だけが知っている情報があるということもあり得る。

 "彼"の口ぶりからして、今回もどちらかというと敵にはならないはずである。それでもこちらを妨害するような行動を取るとしたら、それが必要になったということだ。

 

 

 これだから、第三勢力というのは厄介だ。そう思いながら歩いていくと、目的の場所へとたどり着いた。

 

 

 

 関本に対する摩利の尋問手段は、およそ善良な市民が行うものとは言えなかった。

 

「匂いを使った意識操作ですか」

 

「達也くん、見るのは初めて?」

 

「初めてです。大っぴらに使われてもこちらが困ってしまいますが」

 

「それもそうね」

 

 やり口としてはまだ優しいものだが、それでも人道的かどうかと聞かれたら何とも言えない。元々尋問それそのものが人道的とは言えないのだが、早い話が薬物を使ったものと同じだ。こんなものを常日頃から見せられていたら"仲間意識"と"良心"の板挟みで悩むことになるだろう。

 

 

 そんな中、関本の口から出てきたセリフは、あまり好ましいものとも言えなかった。

 

『デモ機のデータを吸い上げた後、司波の私物を調べる予定だった』

 

『それは一体何の目的でだ?』

 

『宝玉の聖遺物だ』

 

「・・・達也くん、そんなの持ってたの?」

 

「いえ、持っていません」

 

 そう否定を返しながら、やはり、と思った。

 恐らくこちらが聖遺物を所持していることは既に知れているのだろう。そうでない場合、まず私物を"調べる"とはならない。洗脳を掛けていることを加味しても、目につく限りで私物とみれば全て回収させてしまい、持ってきた後で調べた方が早い。

 

 もしくは、洗脳ではそこまでは出来なかったのか。

 

 

 真由美からの疑いの目を何とか誤魔化しながらそう結論付けたのと、非常警報が鳴り響いたのは同時だった。

 

 




今日中に投稿するとか言ってこの時間帯だとほぼ変わんないなぁ・・・とか思いつつ、久しぶりの達也回。
残念ながら横浜編でお兄様は完全にメインストーリーではないです。それは本家のほうで、どうぞ。

次回、オリ主勢in八王子特殊鑑別所。なお手下も一応は引き連れる。ただし国防軍ではなく、収容する施設に属する人員だけど。

【追記】後書きでミスを発見した為修正。重要性はないけど・・・。

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