魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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表現力のつたなさに全俺が泣いた。

原作では名前つきかつ数ページしか出番がなかった彼の登場です。


第五十三話~二流~

【Wednesday,October 19 2095

  Person:operator4   】

 

 

 

 

〔operator4:今日にNSAの使いがやってくるってことでいいんだよな?〕

〔moderator9:はい。"アメリカ側"(管理者No.1)からはそのように伝えられてます〕

 

 家を出る前に確認しているが、やはり間違いはない。

 

 今日にNSAからの使いが日本に到着し、こちらと接触する手はずになっている。NSAが言うことには「こちらから見つける」そうだが、一体どれほどの時間が掛かるか見物である。

 

〔operator4:名前は"ジロー・マーシャル"であってたか?〕

〔moderator9:正確にはコードネームといった方が良いのかもしれませんがね〕

〔operator4:態々本名まで調べだすつもりはない。なんて呼べばいいかだけ知れればいいさ〕

 

 それを最後に、コマンドが切れた。

 

 

 

 

 しかし、結局午後にもなってそれらしき影さえ見ることが出来なかったのには落胆するしかなかった。

 確かに、今日到着して直ぐに見つけることの困難さは分かる。しかし、自分で見つけられるといった以上目星くらいはつけていて然るべきだ。東京にも空港ぐらいはある。てっきり午前中に接触できると思っていたため妙に気疲れした気がした。

 

「はぁ・・・。結局口だけか・・・」

 

「何の話だ?」

 

「何でもない。こっちの問題だ」

 

 まさか"彼"に待ち人のことを話しても仕方ない。再度ため息を吐きながら、久しぶりに全員揃って校門を出た。

 

「達也さん、論文コンペの準備はもう終わったんですか?」

 

「一段落、っていうところかな。リハーサルとか発表用に使う模型作りとかデモ用の術式の調整とか細々としたところは残ってるけど」

 

「一応はお前のメインの仕事は終わったって所か」

 

「大変そうねぇ・・・そういえば美月のところで模型作りを手伝ってるんだっけ」

 

「うん、二年の先輩が。私は何もしてないけど・・・」

 

 その様に益体のない会話を続けていると、その内こちら側を監視する目が有ることに気づいた。

 

 決して、敵対的ではない。ということは、恐らくは誰なのかは一発で分かる。

 

(やっと来たか・・・。しかし、タイミングが悪い。空気くらいは読めないものか・・・)

 

 しかも、腕としては二流だ。何せ"彼"だけならともかく、レオ達にまで存在を把握されている。

 

「これは外れかな」

 

「何がだ?」

 

「こっちの話だ。それより、ちょっとどこか寄り道していかんか?」

 

 そう提案するが、本来の意味はもちろん"ちょっと監視してるやつを撒こう"だ。

 

「奇遇だな。俺もそれを言おうと思ってた」

 

「賛成!」

 

「達也は明日からまた忙しくなりそうだしな」

 

「そうだね、少しお茶でも飲んでいこうか」

 

 しかしこれらの反応を見るに、どうも"撒く"ではなく"仕留める"になりそうな気がしてならなかった。

 

 

 

 結局、予想は当たった。

 

「血気盛んで良いことだな俺の周りは・・・」

 

「お前も人のことは言えないと思うが?」

 

「うるせ。気にしてんだから」

 

 既にレオとエリカは幹比古が張った結界の中で今だばれてないと思ってる二流工作員と"お話"しているところだろう。

 

「で、幹比古。レオ達の様子はよさげか?」

 

 そうは聞くが、既に"眼"で確認している。この問いかけは、ただのきっかけ作りだ。

 

「うん。一応は問題なく終わりそうだよ」

 

「そうか。ならちょっと様子だけ直に見させてもらうわ」

 

 そう言って手を振り、喫茶店から出た。

 

 

 少し離れたところで、まだレオ達はNSAの工作員と話をしていた。

 しかし、先ほどよりは体勢は悪化している。彼が銃をエリカに向けているのだ。とはいっても、恐らく撃つ気はないだろうが。

 

 彼が逃げるのを待つか、それとも割り込もうか迷ったが、結局待つことにした。

 

「-ではこれにて失礼。ああそうだ、最後に一つ。身の回りに気をつけるよう、"お仲間"に伝えて置いてくれ給え。学校の中だからと言って、安心はしないように、と」

 

 そう言って、彼は白リン手榴弾を転がし、そのまま逃げていった。

 

「だぁっ?!逃げられちまったか・・・」

 

「あーもう!油断した!」

 

 そう悔しがってる二人の下へ、笑いながら話しかけた。

 

「あと少しだったな。まぁ、知りたいことは聞けたんだし良いんじゃないのか?」

 

 そう言って慰めを掛ける。

 といっても、当人達にとっては慰めにもならないだろうが。

 

「しかしなぁ・・・・。どうも出し抜かれたようにしか思えねぇぜ」

 

「まったくね・・・。はぁ、出来ることならあいつの身柄を押さえたかった」

 

「欲を言うもんじゃないさ。とりあえずはさっさと戻るとしよう」

 

 そう促して、元来た道を戻る。

 既に彼の"顔"は把握している。今日の夜にでも接触すればいいだろう。

 

 

「まぁ、何事もゆっく、り・・・」

 

 

 していけばいいさ、と最後まで言い切ることが出来なかったのは何の皮肉だろうか。

 "眼"は、ある意味最悪とも言っていい状況を写していた。

 

「・・・"人食い虎"?」

 

「え?何?」

 

「借哉、どうしたよ」

 

 いきなり様子が変わったのを見て、二人が訝しんだ目を向けてくる。

 しかし、構っている余裕など、こちらにはなかった。

 

「すまん!ちょっと拙いことになってるかもしれん。絶対に追って来るなよ!」

 

 そう言って、制止する声を余所に"痕跡"を辿りながら追いかけていった。

 

 

 

 




ってことでマーシャルさんをNSAの工作員設定にしています。ここら辺は赤旗計画での話の中に元々組み込んでました。
だって大亜連合の上陸作戦前に行動してて、かつアメリカが態々グアムにまで日本海軍を引っ張って言ってるって考えると内輪もめしてそうだなぁって思うじゃないですか。
そんな感じです。

なお借哉くんは魔法ではマーシャルさんを追いかけません。レオ達の視界から切れた場所で適当に車両をかっぱらうつもりです。

次回、人食い虎登場。戦うかどうかは未定。

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