らしくない気もするけど・・・。
で、今回は長め。
【Saturday,October 15 2095
Person:operator4 】
結局そのまま特に進展はなく、週末まで迎えた。
何時もなら資料の整理などを行っていたのだが、今日は何の気まぐれか休日でもあるのに態々第一高校前の商店街にまで来ていた。
・・・といっても、"小道具"の材料を漁りに来たのだが。
「しかしまぁ、たかが一つの高校ごときがここまで需要を生み出すかねぇ」
態々駅まで作り、品物も近場で全て揃えられるように整備する。恐らくは国の手が入っているのだろうが、ここまで優遇すると逆に人が腐りそうな気がしてきた。
しかし、そうやって物色しているうちに"見知った顔"を見つけたのは幸か不幸かは分からない。
路地裏に、一人の男が入っていくのが見えたのだ。
美男子、と言ってもいいだろう。
アジア系の顔立ちにしては、妙に肌が白いと思えるような。
「あいつは・・・」
その姿を見ても、何時もなら見間違いと思っていただろう。
しかし、"他の誰も彼に気づいていなかった"となると、思い当たる人物である確立は高い。
そう思って、その男が入っていった路地裏へ同じく入ることにした。
「お待たせしました、千秋さん」
「あっ、周さん。いえ、全然待ってなんかいません」
後をつけて見てみると、見えたのは先ほどの男と、恐らくは第一高校の女子生徒だった。
この男が動く時は大抵碌な事がない。そして、"今回の工作"に関しても彼がかかわって以上、やはりというか内容はただ一つだった。
「これがパスワードブレイカーです。使用には十分注意してくださいね」
「ありがとうございます。・・・でも、やっぱりいいんでしょうか。
「邪魔をするわけではありませんよ。ただ、貴方も僅かにでも力になりたいと思っているなら、ソフトをこっそり覗き見て間違いがないかチェックすることもできるでしょう?」
「ですけど・・・」
「大丈夫。何もなかったらそれでいいんです。彼だっていきなりの仕事ですからミスぐらいはするかもしれません。それを影から見守っても何も悪いことではありません」
その様に丸め込んではいるが、内容は"術式のデータを盗んで中身を見てみよう"などというありえない代物だ。ましてやそれが"手助け"になるあたり、上手く思考誘導されているとしか思えない。
段々見ていてもどかしくなって、結局止めることにした。
「おい、うちの生徒にいらんこと吹き込むのはやめろ」
そう声を掛けると、二人ともまるで声が掛かることを予想していなかったように驚いた。
しかし、構ってる余裕はない。用があるのは、"男"の方のみだ。
「さっきの話を聞くに・・・千秋さん、だっけか?んなもんやっても"彼"の迷惑になるだけだからさっさとそれは捨てなさい。あいつはあの程度の仕事でミスしたりはしないよ」
「え、えっと・・・」
「ほら、早く行きな。今ならまだ何もしないままで済む」
「は、はい!」
そう促すと、言ったとおりに
「さて・・・・余計な子猫はきちんと逃げてくれたな。全く、"お前"も相変わらず阿漕なことをしているな」
「いえいえ、これでも必要なことでしたよ。邪魔が入りましたがね」
「しかし、"霊亀"が介入してくるとは珍しいですね」
「お前もな、"物の怪"」
彼・・・周公瑾の存在は、No3を通してある程度は聞いていた。
中華アングラ系組織で暗躍する、厄介な魔法師の一人。しかも、何が驚きかというと"およそ百年前からは確実に彼の痕跡"が見つかることだ。
その不気味さから、No3がつけた二つ名は"物の怪"。
態々自分で見張るか、それとも"調整者"に見張らせない限りどこにいるかさえ後手にしか知ることは出来ないのだ。ある意味"我々"にとっては日常的な意味で最も厄介な魔法師だろう。
しかし、こうやって話したことはNo3でさえない。そう言う意味では始めての接触と言えるだろう。
しかも、彼は"我々"のことを知っていた。といっても、この"物の怪"が知っていても何も驚きはないのだが。
「ふむ、"物の怪"ですか。あなた方に言われるのには中々皮肉が利いていますね」
「お前こそな。人間にしては長生きなお前に"霊亀"などと。そもそもお前が人間かさえわからんものだが」
「お互い様、と言う訳ですか」
「そうだな、そう言う事にしておこう」
お互い若い姿とはいえ、人間の感覚で言えばどっちも結構な年をした老人だ。長話が過ぎてしまうのはある意味必然か。
自分でも呆れながら、本題に入るとした。
「お前、最近の大亜連合の工作にも関わっているようだな」
「えぇ。貴方に隠しても無駄でしょうからね」
「大亜連合の強硬派が妙な動きをしている。お前の入れ知恵か?」
「いきなり失礼ですね。貴方達に察知できないというのは極めて偶然に過ぎません」
「嘘を言ってるようではなくて安心したよ。で、お前は何か知っているか?」
「いえいえ。私は今回はただの手足に過ぎません。任務を行う部隊を任務を行う場所に運ぶ。それが私の今回の役割です」
「つまり中身に何があっても知らんし、干渉はしないということだな?」
「えぇ。あなた方の邪魔をするような命知らずなことはしませんよ」
そう彼が笑って返す。
しかし、得るものはあった。要するにはそれ専門の特殊工作隊が上陸作戦と同時にやってくるということだ。恐らくは運ぶ場所は京都だろう。
とりあえず、得られる情報は得られた為、釘を刺しておくことにした。
「ならいいが、余り調子には乗るなよ。お前の目的は分かってるが、バランスを崩す事は我々の好みではない。もし、お前がそれの加担をするようだったら遠慮なく消すからな」
「てっきり今すぐにでも殺される物かと思っていましたが」
「No3から抹消に協力しろとは言われてないんでな。今はまだ"保留"だ」
「優しいですね。とても"霊亀"とは思えない。周りの影響ですかね?」
その言葉に、しばし固まる。
そして、自分の内面を見詰めながら、答えた。
「・・・そうかもな。最近、どうも流されがちだ。そうで有るべきではないのは分かってるはずなんだがな」
「しかし?」
まるで物珍しいものを聞いてみたいとも言いたげな様子で聞く彼に対して、少々笑いながら答えた。
「面白いんだよ。あいつ等を見てると。一体何処まで上れるのか。つい見てみたくなっちまう。あの手合いは久しぶりでな。あそこまで真っ直ぐな奴らを、どうして見守りたくなるのを責められる?」
「さぁ・・・。しかし、中々甘いですね。いずれその甘さが、貴方に不利益を与えますよ?」
「いいんだよ。それでも。俺は気まぐれでいい。仕事を優先はするさ。しかし、偶には娯楽があった方がこの長い人生ではいい」
「だから、俺は"烏"って呼ばれるんだ」
っていうことで始めてオリ主が生きた感情を見せました。
飯を邪魔され切れた時のような"習慣から来た感情"や、何時もの時や仕事の時に出てくる"仮初の感情"とは違う、オリ主の本心です。
敵だとは分かっているし、割り切っている。しかし欲を言うならば、お兄様たちが何処まで上り詰められるのか見守りたい。そういう気持ちを確かに抱いています。
しかし、お兄様とオリ主は決して交じり合いません。最後まで本当の意味で味方にはなりません。ソレが宿命です。悲しい物ですね。
そして、平川千秋は達也信仰と言うべき物を今作では持っています。理由としては小早川氏のリタイアがなく、"みんなの為に電子金蚕の工作を阻止した"と思い込んでるからです。九校戦の出来事も傍から見ればさすおにですしね。
で、なぜ平川小春が論文コンペを離脱したか。答えは簡単。「自分で見抜けなかった電子金蚕を見抜いた司波君の方が適している」ということで辞退&推薦したのです。それ以外は差して変わらないので描写していませんがね。
次回、未定。また1週間ぐらい舞台の時間を飛ばすかもしれない。