さほど目立った原作との変更点はないのですが、ないと締まらないので。
【Saturday,August 13 2095
Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】
結局、あの後は特に問題が発生することなく、九校戦は終わった。
なんやかんやで"彼"のおかげで妨害の一部に関しては阻止することができ、一高に重度の怪我などを負う選手がいなかっただけでも幸いと取るべきか。
"無頭龍"に関しても精霊魔法の使い手、日本支部のメンバーなどを直接潰し、本部などに関しては人任せになったものの満足行く結果になった。
今は後夜祭の後半、ダンスは既に始まり、中ごろにまで来ている。
試合も終了した後ということで、他校同士であっても柔らかい雰囲気で接することもできる。
しかし、結局壁際で休むことになった。
理由は至極単純、ダンスに疲れたのだ。
ほのかから始まり、雫、英美、真由美と連続して一緒に踊ることになり、さして練習したわけでもない事も重なりもはや精根尽き果てたといっても過言ではなかった。
そろそろ部屋に戻って休んだ方がいいだろう。
まさにそう考えた所を見計らったかのように、目の前にグラスが差し出された。
「あ・・・ありがとうございます」
グラスを差し出してきた相手は、克人だった。
「疲れているようだな」
「・・・はあ」
「試合のようなわけには行かんか」
「それはまあ・・・仰るとおりです。僭越ながら、会長はどちらも苦になさらないように見受けられますが」
「慣れているからな」
お互いにグラスを煽った後、克人が本題を切り出した。
「司波、少し付き合え」
大会開幕直前の夜に武装した侵入者を捕らえた庭も、今となってみれば静まり返っていた。
「よろしいのですか?そろそろ祝賀会が始まる頃だと思いますが」
「心配するな。そう時間が掛かるわけでもない」
克人がそう言うと共に振り返って、"最初"の話題を話した。
「司波、お前は河原借哉と親しかったな?」
「まぁ、そこそこには」
「"奴"は、何者だ?」
その言葉に、真夏だと言うのに空気が凍りついた感触を覚えた。
「何故だかは知らん。しかし、"河原借哉"は記者としてホテルに急に宿泊し、そして恐らくは国防軍と思われる勢力に追われながら富士演習場を後にした。しかし、俺には奴が一体何をしたのかも分からん。もし、河原借哉が"ネズミ"だとしたら、第一高校の部活連会頭として、そして十師族の一員として、見過ごすことは出来ん」
そう言う克人に対して、一時、迷った。
"彼"のことを、洗いざらい話してもいいものか。
確かに、話した場合は力を借りることが出来るだろう。
しかし、それをやると"彼"はどう出る?制裁は、まず間違いない。
結局、一部のみを、話すことにした。
「自分にも分かりません。しかし、あいつは一般人ではないでしょう。何故だかは知りませんが、場慣れしています」
「ふむ・・・。とりあえずは分かった。何か分かったら改めて教えてくれ」
克人の言葉に、とりあえずは頷いておく。
「用件は、それだけですか?」
「いや、どちらかと言うとこれからが本題だ」
「司波、お前は十師族の一員だな?」
唐突に"ある意味では真実"であることを言われ、身構える。
現状、"四葉"の一員であることを知られるのはタブーだった。
「いいえ。俺は十師族ではありません」
克人の断定に対して、はっきりと否定する。
これが出来たのは、"ある意味では事実"だからだ。
十師族の血を引いてこそいる。しかし、一員としては認められていない。
「・・・そうか」
しばらく、達也をじっと見据えた後、克人は無表情に頷いた。
「ならば、師族会議において、十文字家代表補佐を勤める魔法師として助言する。司波、お前は十師族になるべきだ」
「・・・」
「お前は、"無名"のままでは魔法師社会に与える影響が大きすぎる。魔法師社会の秩序を守ると言う意味でな」
「自分に、何処かしらの十師族の家に婿に入れと?」
「有り体に言えば、そうなる」
確かにこれは、人前で出来る話ではない。人前でなければ言いと言う話でもない気はするが。
「・・・自分は会頭や会長とは違って一回の高校生です。そのような話はまだ、早いかと」
「そういうものか?・・・だが、あまりのんびり構えてはいられないぞ。十師族の次期当主に正面からの一対一で勝利すると言うことの意味は、お前が考えているよりずっと重い」
この言葉に対しては克人から言われたいことではなかった。
元々、将輝と対戦する羽目になったのは克人に強制されたことだ。
「・・・そろそろ戻るか。司波、余り遅くなるなよ」
そう言って戻っていく克人に対して、ため息しか出なかった。
ということでこれをもって九校戦が終わりました。
ここからまた大騒動が起こりますね。楽しみです。
次回、番外編。そして、本番の始まり。