今週末は時間あくから夜更かしとかも余裕だね。いつものことだけど。
【Wednesday,August 10 2095
Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】
『逃げられたのですか?』
『ええ。まさか"彼"が内通者の買収の為にあそこまでやるなんてね・・・』
藤林から"内通者の脱走の顛末"を聞き、試合後の体に余計な倦怠感を覚えさせる羽目になった。
精霊魔法をCADに仕込めるタイミングを作れるとしたら、大会委員に内通者がいる可能性が高いとして密かに監視を依頼したのだ。
結果は、内通者の特定に関しては何とかなった。取引の現場も確認し、あとは内通者を確保、尋問し、知ってる情報を吐かせればわざわざ小野遥・・・公安に依頼するまでもなく得られるものは得られる、とは思っていた。
問題は、"彼"が内通者に対して接触を仕掛けたことだ。
カメラの映像および音声から、どうも"彼"の目的は"無頭龍"が使用していた精霊魔法の術式を入手することだったらしく、無頭龍に直接接触するよりは内通者を裏切らせたほうがいいと判断したらしい。
内通者は"彼"に逃走先などの用意を条件にその術式を提供した。
そして、確保しようとしたところで肝心の内通者が"彼"を頼り、"彼"は律儀に約束を守る羽目になったということだ。
もちろんお互いカーチェイスまがいのことになるとは予想もしていなかった為、こちら側は"彼"と内通者を逃がす羽目になったし、"彼"も相当手を焼いていたようだ。
まさかヘリまで呼び出し、搭載されていたミニガンで車両を穴だらけにまでするとは思わなかったが。死傷者がいないのが不思議なほどだ。
では、情報の獲得には失敗したのか。また、"彼"は今回の件でも敵だったのか。
答えは、否。
彼としてもほぼ不可抗力で敵対したというだけで、今のところ正面から矛を交えるつもりはないらしい。
では、なぜわかるのか。
単純だ。"情報が送られてきたから"だ。
藤林から話を聞く前に、携帯端末から連絡が入っていたのだ。
"彼"からの軽い謝罪と理由、そして"こちらが求めていた情報"をすべて渡してきた。
無頭龍の日本支部の場所のみならず、本部や関連施設の場所。また無頭龍の構成員リストを"ボス"まで込みで送り付けられてきたのだ。
『まぁ結局欲しいものは得られたと考えた方がよいのでしょうが・・・』
『なんだか複雑な気分なのは仕方ないわね。いつか主導権を握れればいいのだけれど・・・』
お互い素直に喜ぶことはできない。
できないが、確かに欲しいものが手に入ったのは事実。
そして"必要なものが手に入った"以上"、"無頭龍"を見逃すつもりもない。
内通者は今回の過程で脱出している。逆に言えば、もう精霊魔法を仕掛ける人物がいないのだ。
その点では、確かにもう脅威は去ったと考えた方がよいのかもしれない。
しかし、彼が送ってきたメッセージの中には気になる一文があった。
"ジェネレーター"。"無頭龍"がそれを動かす用意をしているとのことだった。
感情の持たぬ魔法師をどのように使うのか。想像はそう難しくはない。
『では、今日の内に行動に移った方がよいかと思うのですが』
『出来ればそうしたいのだけど、"戦闘後"の後始末でどうしても一日かかると思うわ。"ジェネレーター"に関しては柳さん達が何とかしてくれるから大丈夫よ。達也君も疲れてるでしょう?とりあえず今日はゆっくりしても大丈夫よ』
『分かりました。ではお言葉に甘えさせていただきます』
その言葉を最後に、通信が切れる。
「まったく・・・常々振り回されてばかりいるな。あいつも今回の行動はおそらくは気まぐれに近いのだろうが・・・」
しかし実際に迷惑をこうむるのはこちら側だから困るのだ。今回は彼も配慮が必要と考えたからこそ情報を送ってきたのだろうが、それでもどうしても気疲れしてしまう。
しかし、早いうちに物事を終了させることができ、深雪の応援に専念することができると考えると、特段悪い話でもないのかもしれない。
そう思い込むことにして、ひとまずは休むことにした。
ってことで本当に長く苦しい(ネタ不足との)戦いが終わりそうです。
この後は番外編1→四十五話(達也回)→番外編2(ここから横浜編開始)という予定です。
自分が本当にやりたかったネタは今、ここから始まります。誇張抜きで。
まぁ、七巻のところがやりたいことのメインの一角なんですけどね。前にも言ったとは思う気がしなくもありませんが。
ですが、九校戦始まりから今までの流れよりはまともな物が作れると思います。ぜひ、お楽しみくださいませ。
次回、言った通り番外編になります。風間氏と九島氏のお茶会の場面です。