あと思いっきりみえみえの伏線オンパレードな気もしますが悪しからず。
【Sunday,April 3 2095
Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】
(さて・・・俺はこれからどうすればいいんだろ?)
総代である深雪の付き添いが終わり、二時間の暇が出来てしまった達也は早速手持ち無沙汰になっていた。
何せ自分自身が"二科生"の"新入生"。余り歩き回っても余りいいようには取られないだろう。
結局は、それなりに人通りの少なそうな中庭のベンチに腰掛け、端末を開いた。
別に二時間を待つことは問題ではない。ただ、"嫌味"を聞くのが余り好きではないだけだ。
この国立魔法大学付属第一高校には二科生制度というものがある。そして自分自身に魔法師としての才能がない達也は、その二科生に分類される。
元々"普通の魔法師としては"優れていないことは自覚しているが故に、余計なお世話だと言いたくなる。
言ったところで問題が増えるだけだから言いはしないのだが。
書籍を見ながら、考えるのは"四葉"からの伝言。
《"二科生レベルの魔法師"に注意しろ》
今でもそんなことを伝えた理由が理解できない。
現状深雪にとって危険といえるのは三年の十文字克人や、少々甘めに見積もっても生徒会長である七草真由美ぐらいしかいない。
ましてや二科生レベルの魔法師に深雪は遅れを取らない。
それは"四葉"も知っているはず。ではなぜわざわざこのような伝言を伝えたのか。
考えられる可能性は二つ。
一つ目は、魔法科高校への偽装を行って潜入したものがいること。
ある意味これが一番可能性が高いだろう。達也による護衛を突破し、深雪に危害を加えられる人物がいて、なおかつそれを目的にする可能性がある場合は逆にこの程度が限界といえる。
"二科生"という時点で能力が劣っているということの証明になる。だが、もし一科生レベルの才能をごまかし、わざと二科生として入学した場合は、この"二科生"と言うレッテルそれそのものがダミーになり得る。
並みのガードマンだったら引っかかりそうだが、そこは伊達に幼少の頃から訓練を積んではいない。気を張れば問題はないだろう。
もう一つの可能性は、"自分と同じ類の魔法師がいる"こと。
強力な魔法を常駐している代わりに、他の魔法がほぼ使えない。
このような類の魔法師を見たことは今までさほどないが、もし"同レベルの同類"であった場合はある意味一番の脅威と言える。
仮に"自分自身"を仮想敵とした場合、恐怖しか覚えない。
なぜなら先手必勝以外に勝ち目がないように見えるからだ。
一撃必中必殺の攻撃と、それこそ"一瞬で"生命を消し飛ばし得るだけの火力でもないかぎり24時間の間永遠と再生し続ける能力の持ち手。
何時も自分がその立場であるから深く考えたことはないが、もし相手にそのような輩がいるとなると恐怖しか覚えない。
といっても、有り得る話ではないような気がするが。
とにかく"四葉"からわざわざ言われた事。注意しておくことに越したことはない。
気持ちを切り替え、次の書籍を呼び出す。
開館まで後40分。随分長く考えたものだと思いながら、
ある存在に気が付いた。
恐らくは持参したのであろう、缶コーヒーを飲みながら歩いてくる"二科生"。
別に目立った特徴があるとも見えず、また彼自身が何かするわけでもないはず。
(なのに、なぜか"見られている"気がする・・・?)
"二科生レベルの魔法師に気をつけろ"
その言葉が妙に引っかかる。
まさか彼がそれではないだろうか?しかし、どうみても一般的な高校生のソレにしか見えない。
どうやら缶コーヒーを飲み終えた彼は、ゴミ箱が見つからなかったようで、ある場所を探しに行くようだ。
(あるとしてもここからは少々遠いとは思うが・・・)
そう思いながら、念のために"眼"を使い彼を見る。
視界からは消えたところで、彼がおもむろに手を顔の前に上げ、横に滑らせた。
その瞬間、"何か"が起こった。
"眼"を持ってしても何が起こったのかは完全には理解できなかった。
イデアそのものに対する干渉?しかもソレから間髪いれずに彼が持っていたはずの"缶コーヒーが忽然と消えた"?しかも"いかなる残滓も、缶コーヒーを構成していたありとあらゆる分子のかけらさえも残さず"?
魔法というには余りにも強力で、規格外な代物を"眼"が捉えてしまった。
柄にもなく唖然としているところに、先ほどの彼が戻ってきた。
顔には何の変化もない。しかしそれにしては"先ほどより見られている感覚が強すぎる"。
彼にとってはばれる事もなく、何気ない感じで使用したのであろう。もしそれがばれてると知られれば、先ほどの"何か"は自分に向けられるだろう。
耐えられるのか?あの攻撃に、自らが持つ"再成"は。
身構えようとする前に、自らのエイドスが"見られた"事を認識した。
いや、"見られた"というよりは、"スキャン"された?
ほんの僅かな時間でそれは終わったが、何を意味するかは分かりきっていた。
見ていたことはバレていた。そうでなければ今の行為は説明が付かない。
何事もないように彼は立ち去っていく。
一体どうするべきか?脅威度は確実に今までの敵をも上回る。野放しにはできない。しかし、もし薮蛇になろうものならそれに対抗するだけの力がない。
迷っているうちに、"眼"は彼がまた同じ動作をしたのを捉えた。
一足、遅かった。
悩みすぎて逆に何も出来なかった自らを、今までにないくらい呪った。
せめて、深雪だけでも無事であってくれ。
そう、覚悟を決めた。
しかし、"何も起きなかった"。
先ほどと同じように、達也のエイドスに何かを仕掛けようとしたはずなのに。
気になり自分自身をチェックしてみても、特に何も変わったところはない。
"彼"にとっても予想外だったのか、しばし固まった後は直ぐにその場を離れていった。
助かったのか?何故?一体何が彼の"力"の邪魔をしたのか?
戸惑っているうちに声が掛けられた。
「新入生ですね?開場の時間ですよ?」
思わず身構えながら振り向くと、そこには"一科生"の制服を着て、CADをつけている人がいた。
「どうかしましたか?」
「いえ、何も・・・」
恐らくは無関係であろう相手に余計な行動をしてしまった自分を再度呪いながら、否定を返す。
「教えてくださってありがとうございます。すぐに行きます」
半ば見ていなかった端末を閉じて、礼を言う。
「感心ですね、スクリーン型ですか」
「仮想型は読書に不向きですので」
ちょっとした雑談でしかなく、本来は避けているものだったが今だけは気持ちを落ち着かせるのにはありがたかった。
「あっ、申し送れました。私は第一高校の生徒会長を務めています、七草真由美です。よろしくね」
「俺、いえ、自分は、司波達也です」
「司波達也くん・・・そう、あなたが、あの司波くんね・・・」
どうやら生徒会長である七草真由美は自分のことを知っていたらしく、試験の話に入っていく。
その間、考えていることはやはり先ほどのこと。
今のところは全てのことを理解できなくても問題はないのだ。むしろ確実な脅威が存在することを確認できただけ良しとするべき。あとは対処法が見つかるまで深雪に危害が加わらないように手を回すか、もしくは回してもらうかが最善だろう。
話がちょうどいい区切れを迎えたところで、あることを思いつき、訊ねてみた。
「ところで、先ほど何か魔法のようなものが発動したような感覚を覚えたのですが・・・」
「そうなの?そのようなことは私にはないし、報告も受けてないのだけれど・・・」
もしや彼女なら何かしら感じてはいるかと思ったが、返事はやはり期待できるものではなかった。
「そうですか。どうやら勘違いのようです。変なことをお聞きして申し訳ありません」
「いえ、いいのよ。私でも少し調べてみるわ」
「それでは、そろそろ時間ですので、失礼します」
「えぇ、また機会があれば」
そういって別れた後、達也は講堂へと向かう。
真由美は調べてくれるとは言ったものの、彼はほぼ誰にも見えない場所で行っただけに得られるものはないだろう。
だが、もし何かしらの伝手を得ることができれば、いざという時に対応がしやすくなる。
面倒なことだが、積極的に関わっていくしかない。
そう思い、再び足を進めた。
はい、達也回でした。
はさんだ方が面白いだろうと思ったときはオリ主のほかにもいろんなキャラの視点から書いていったりします。とはいっても実は書き出すまで結構文章に悩んだんですけどね。
結構いろいろと伏線を張りましたが、回収は結構先になること間違いなし。
だってその方が面白いかとおもって・・・。
次回はオリ主視点です。それしかないけど。