魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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式典とかやってる時、用事で席外した後目立たないように戻る人とかっているじゃないですか。

あれ、発足式でもできたらいいなーって思いつつ書いたっていう


第三十二話~推測~

【Monday,July 18 2095

  Person:operator4    】

 

 

 

 

 

「達也、技術スタッフに選ばれたんだってな?ご苦労さん」

 

「もう何回目になるんだろうな・・・」

 

「みんな、情報が早えなぁ」

 

 本来は今日の午後の発足式がメンバーの発表になるはずなのだが、前日の段階で既に誰が決まっているのかと言うことは分かりきっていることだろう。

 尤も、情報の入手ルートはそれぞれ違ったりするが。クラブの先輩だったり、友達からだったり、また、俺のように"仕事の都合で手に入ったり"。

 

 とはいえ、選ばれた肝心の"彼"はあまり乗り気でもないように見え、美月からの発足式に出るのかという質問に対する返事はあまり歯切れが良いとはいえなかった。

 

「一年生じゃ達也だけなんだろ?」

 

「一科の連中、か~な~り、口惜しがってるみたいよ」

 

「むしろそれが達也にとっては鬱陶しいんだろうよ。嫉妬ってのはうざいからねぇ」

 

「全くだ。選手の方は一科生だけなんだがな・・・」

 

 実際代表選手の中で二科生は一人もいない。それで割り切ってくれれば"彼"も気が楽なのだろうが、残念ながらそれは選ばれた側の理屈であり、工学系希望の一科生にとっては慰めにもならない。

 

「仕方ないですよね。嫉妬は理屈じゃありませんから」

 

「大丈夫よ。今度は石も魔法も飛んでこないから」

 

 そう言われて苦笑する達也の顔は、中々見ていて面白い物だった。

 

 

 

 

 四時限目が終了した後、本来一般生徒は講堂の席へ移動することになる。

 特にE組では"彼"の応援のために前列に一塊で座ろうという方針さえ決まっていた。

 

 

 だが、生憎とこちらに余裕を持って講堂に行って待つほど時間は無かった。

 

 

〔moderator8:前回の件で進展がありました。確かに"横浜"には動きはありました〕

〔operator4:となるとやはり外国の工作か?〕

 

 一億ドル規模の"何か"。それに対しての進展があったのだ。監視の目に引っかかった場所を聞き、一番に外国の工作を考える。

 "赤旗計画"に直接は関係ないだろうと推測されたが、"赤旗計画"を知った他国からの干渉の可能性、もしくは無関係でも何かしらの工作が行われる可能性は高いと見ていた。

 しかし、想定した物とは結果は違っていた。

 

〔moderator8:いえ、国際犯罪シンジケートの活動の一つでした。香港系の"無頭龍"が行動を起こしています〕

〔operator4:国際犯罪シンジケート?となると単純な利益絡みか。・・・ということは横浜は"メイン"というよりは"黒幕のいる場所"で合ってるな?〕

〔moderator8:そうです。目標はやはりというかなんというか、静岡でした〕

〔operator4:九校戦狙いか・・・。まさかとは思うがトトカルチョか?魔法師とはいえ高校生同士の馴れ合いにそこまでの額がつくか〕

〔moderator8:しかし時期的には一致しています。可能性としては今のところ一番高いかと〕

 

 報告を聞いて、思案する。

 九校戦狙いで一億ドルの金が動く。単純な利益狙いでそこまでの金が動くとも思えない。確かに今回の九校戦は選手の充実さから第一高校の優勝が間違いないと言われている。掛けて勝てることが確定しているような物なら、確かにそこまでの価値はあるのだろう。

 しかし、そうなるとむしろ胴元である"無頭龍"そのものがリスクを背負いすぎている。ソレを度外視するだけの"何か"が余計必要だ。

 

 

 恐らくは、はまれば大儲け。そうでなくてもある程度の目標は達成できるもの。

 出てきた結論は、当初の推測と似通ったものでしかなかった。

 

〔operator4:そうか、相手の目的は"トトカルチョ"じゃない。もしそうであったとしても恐らくは副次的な可能性が高い〕

〔moderator8:と、いうと?〕

〔operator4:"イカサマ"だよ。一高の選手は今回は優秀だ。それらを"潰す"ことがメインの目的だよ〕

〔moderator8:それでトトカルチョの賭け金を全て回収する意図ですか〕

 

 そう聞いてきたNo8に対して条件付の否定を返す。

 

〔operator4:もちろん、それもあるだろう。しかし、よく考えてみろ。日本は魔法師育成が最も充実していて、かつ今回の第一高校の選手は層が揃っている。それらを潰せた場合、日本に対する魔術師供給はどうなる?〕

〔moderator8:なるほど、質が下がってしまい日本にとってはダメージになり得る、と〕

〔operator4:そうだ。恐らくはこれは何処かしらの組織がバックに潜んでいるな。政府に動きが無い場合、"無頭龍"より規模の大きい組織、もしくは個人だ。日本がダメージを負って得をするもの、もしくは日本に恨みのあるものを徹底的に調べ上げろ。こちらも後で"他の奴ら"にも要請する〕

〔moderator8:分かりました。工作に対して何かしらの行動は起こしますか?〕

 

 この質問に対する答えを思案する。

 規模は大きいとはいえないかも知れないが根は深い。そう見えるだけの裏が今回のことで推測できてしまった。何かしら、行動した方がよいのだろうか。

 しかし、これ自体はパワーバランスを崩すほどのものではない。となると、今回は"情報屋"の立ち回りをした方がいいだろう。

 

〔operator4:直接は何もしなくてもいい。この工作に対して妨害をしたいと思われる"魔法師サイドの組織"を洗い出せ。そこに対して情報を売りつつ"魔法師社会"に根を張らせていく。後の仕事の為だ。本気で頼む〕

〔moderator8:了解しました。直ぐに取り掛かります〕

 

 

 それを最後に、パスが切れる。

 ふと、講堂からマイクから出た音声が聞こえてきた。

 発足式が始まったのだろう。

 

「"彼ら"はどう切り抜ける?今回も一筋縄ではいかないようだが」

 

 恐らくは、結局"彼"が蹴散らしてしまう可能性が高い。だが、それが彼に味方するにしても敵になるにしても、そこに便乗することで確実にこちらに利益が出てくる。

 "静かな仕事"は"彼"が絡んできてからは始めてか。しかし、それこそが"我々"の本領。

 

 

「さて・・・エリカ達が文句を言わなければいいが」

 

 そうぼやきつつ、席をとってくれているであろうエリカ達の下へ目立たないように向かった。

 

 




ってことで早速オリ主が正解に近づきつつある。確定ではないけどここまでできれば対したもんだと思うんです自分は。何せオリ主たちにとっては門外漢ですからね魔法師組織のソレに対しては。

で、多分情報の提供先は絞られてきます。どちらにしようか今でも悩んでる。

次回、未定。綱渡りみたいな書き方してるから・・・。仕方ない。

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