魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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書いているのは九校戦なのに、頭の中にしょっちゅう浮かんでくるアイデアはなぜか横浜事変のネタのみ。
これ、九校戦終わる前までに忘れたりしなければいいんだけど・・・。


第三十一話~進展~

【Thursday,July 14 2095

  Person:operator4 】

 

 

 

 

 

『第二次調査報告

 

 

 名前:司波達也

 

 出生に関する調査の結果、本来の生みの親は"司波深夜"とされる人物の可能性が大。なお、"司波深夜"に関するパーソナルデータは一部を除きほぼ完全に閲覧不可能な模様。データの"バックアップ"から捜索したとしても更に数ヶ月は掛かる模様。

 

 FLTに関しても、単なるモニターという身分では無い可能性が浮上。FLT内の研究所に出社する回数がモニターだけを勤めるものではないほど多い為、エンジニア関連の職についている可能性も否定できない。

 

 また、それとは別に国防軍が彼との何かしらの関係を持っている可能性が大。詳細は添付した『国防軍高次通信記録:関東』を参照          』

 

 

「・・・濃い。漁れば漁るほど隠された痕跡が見つかるってのがまた怖いな」

 

 

 まさか立て続けに連絡が来るとは流石に思ってはいなかったが、むしろ"彼"に関することであれば一日でも早く情報を得られた方が良い。確かにそうは思っていた。

 

 しかし、この内容は濃すぎる。

 日本国内の魔法産業関連での大手企業の機密に近い扱いを受け、尚且つ国防軍との関係を持ち、更にはパーソナルデータを出自の時点から弄繰り回している。

 まだこれだけなら珍しい話だがない訳ではない。問題は"我々の情報網を使ってやっとここまでしか情報を得られていない"ということだ。まず間違いなく民間はおろか日本政府そのものが本腰を上げて調査したとしても分かるまい。

 単純に"我々"がある程度の情報を得られたのは"2050年からの日本国内でのほぼ全ての情報のバックアップを取っていたから"に過ぎない。それを以ってしてもここまでしか得られないのだから本当に恐怖しか感じない。

 

 なお、バックアップを取ったデータバンクはもちろん家の中にあるのではない。"我々の持つ私有地の一つである山の中に作った巨大な地下シェルターの内部"で保管している。

 

 

「まったくどーしたもんかね・・・。単純に消すだけではきついかも知れんなぁ」

 

 

 見ただけでも限りなく深い根があるのは確か。まさかここまで自らの制御下から外れているとは思わなかった為、尚更もうほぼ取り返しの付かないところに行っている気がしてならない。

 

 尤も、"彼"を消す目処さえ付いていないというのに消した後の心配などしても無意味なのだが。今は、できることをするしかない。

 とりあえずは、先の一億ドル規模の"何か"に対する調査。監視こそつけたものの、世の中にはなんでも"始まったときには既に終わっている"と言う事態があったりする。

 わざわざデータバンクを弄らずとも、小規模な活動でも何かしらの異変がないか、調べた方が良いだろう。

 

 

 そう思った矢先、新たに連絡が入るのは恐らく幸運なのだろう。

 パスをつないだ先は、"彼"について調べていた調整者No10だった。

 

〔moderator10:失礼します。"彼"について新たな情報が入ったので、連絡をしようと思いまして〕

〔operator4:いや、構わんさ。何かしらの進展があったならむしろ早めに報告すべきだとは思っている〕

〔moderator10:そう言っていただけると有難いです。それで、今夜"彼"の家に対して軍部の"ある旅団"から通信が行われました〕

〔operator4:仕事が早いな。軍部の影が見え隠れしてると分かった時点で監視の対象を"彼"そのものから"彼の周り"に変えたか〕

〔moderator10:話が早くて助かります。それで、その旅団が少々特殊でして〕

〔operator4:今更何が来ても驚かんさ。謎の塊みたいな男に新たな秘密が一つ追加されるぐらいなんてことはない〕

 

 しかし、結局次のセリフには少なからず驚くことになった。

 

〔moderator10:国防陸軍一〇一旅団の中の一大隊からの通信でした。これだけでも、重要性が理解できたかと〕

〔operator4:おいおい、よりにも寄ってあそこの旅団か。この上なく厄介だな・・・〕

 

 国防陸軍第一〇一旅団。佐伯少将と風間少佐による『十師族に影響されない魔法師部隊』をコンセプトとした、魔法兵装を前提とした戦闘を主軸にする実験的な性質を持つ旅団。しかしその実態としてみれば限りなく遊撃隊のそれに近く、有事の際に命令が下ればありとあらゆる戦場に向かえるだけの戦力と錬度を持つ。

 だが、別にそこに問題があるわけではない。彼の戦闘スキルではむしろそれくらいの規模の部隊に所属してても驚けないのだ。

 では、何が問題なのか。

 答えは簡潔。一〇一旅団に属する、独立魔装大隊のある人員が、まさに"彼"と似た高度な情報隠蔽が行われているからだ。

 名前は、"大黒竜也"。日本が密かに所持する、非公式戦略魔法師。

 本当の意味での、日本の切り札。

 

 彼の持つ"魔法"から考えても、ある一つの可能性が限りなく"大黒竜也"と"司波達也"を同一視させてしまう。もし"彼"の存在を知らなかった場合、まずありえないことと笑い飛ばしそうなほどには突拍子もない推測なのだが、"彼"ならそれを可能にする。

 

 

 質量を、アインシュタインの公式に従いエネルギーに分解できると、したら。

 

 

 とにかく、本当に同一人物なのかを調べる必要がある。もし同一人物だった場合、不用意に消してしまえば日本周辺のパワーバランスが今以上のハリボテになりかねない。

 

〔operator4:余計消しづらくなったな。とりあえず方針としては"彼"の調査は一〇一を中心として行え。もし"大黒竜也"と一致している場合、消すとしても"代わりの存在"を用意する必要がある〕

〔moderator10:分かりました。それではそのように行動します。進展があり次第、またこちらから〕

〔operator4:頼む〕

 

 その言葉を最後に、パスが切れる。

 本当に、ため息しか出ない。しかし、速やかに済むように何かしらの行動はしなくてはならない。

 ただでさえアングラのことで仕事があるのに、更に"彼"に対する用意まで増えてしまった。

 

 

 

 恐らく今夜は、寝れそうには無い。

 

 




オリ主勢力の強さが、今ここに?!

基本的にまぁ彼らは何でもほぼ過剰な管理体制を起きますからね。流石に非合理的なことはしませんが、ある程度の危険を潰す為ならまさしくなんでもやるのが"管理者"率いる"調整者"達なのです。
なお、なぜ2050年から今までなのかって言うと、さほど2050年より前に何か重要なことが起こったわけではないっていう。いや、むしろ起こりまくってたんだけどその時には既にこの管理体制は確立してたんです。
では、何故か。単純です。50年単位でバックアップを取って、それを過ぎたデータは破棄してるんです。もちろん多少の混乱は会ったので今の情報の在庫は通常より減ってるんですがね。
・・・え?何があったのかって?日本だってあの時戦時下だったのよ。それで察して。


次回、発足式。飛行魔法はパス。だって変わらないんだもの。

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