魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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繋ぎ回ですなこれは。
九校戦への導入前ぐらいな感じ、かな?

オリ主は基本的に仕事は押し付けられるスタイル。


第二十七話~六月~

【Friday,June 10 2095

  Person:operator4  】

 

 

 

 

 結局、あの騒ぎの後第一高校は一時の平和を取り戻した、ようだ。

 ようだ、というのは実際に四月のブランシュ襲撃の時にはその場に居合わせていなかったからでしかない。居合わせていた人たちよりは鉄火場にいたつもりではあるが。

 

 結局ブランシュ日本支部を壊滅させた後、達也から呼び出されいろいろ聞かれはしたがほとんどは結局答えなかった。"彼"自身を目立たせない為にも派手に動くなと言ったのに動きそうだったから潰したなど、口が裂けても言えはしない。

 結局は何故俺が動いたのかは有耶無耶の内に終わり、またブランシュ日本支部を壊滅させたのが誰かという事に関しても有耶無耶になっている。"彼"とその妹さんがエリカ達に伝えなかったのは単純にこちらへの配慮と言ってもいいのかも知れない。尤も証拠など何一つないのだが、目を付けられると困る。素直にありがたい限りだ。

 

 

 で、果たして自分の身の回りは全てが思い通りのように行く訳でもなく。

 

「と言うことだから、借哉。試験が終わってからで構わないから、次期委員長の引継ぎ用の資料を作れ」

 

「えーっと、拒否権はないのですか?」

 

「ない。一番忙しい時期に"家業"とかいう理由で休んだ罪は重い」

 

「実際は?」

 

「自分では作れないし、達也くんは十分に働いたから頼みづらいからな」

 

「正直でいいことですね全く・・・」

 

 ブランシュを潰しに行く為に取った休みのツケを、払うことが確定してしまった。

 

 確かに、ほぼきな臭くなっているタイミングで風紀委員が休みますなどと言おうものなら職務放棄と看做されかねない。いや、ある意味事実で、裏の事情から見れば事実ではないのだが、最低でも委員長から見たらまず確実に職務怠慢の極みとしか言えないだろう。

 

「せめて試験終わったらゆっくりしたいんですけど・・・」

 

「そう思うんだったらせめて職務を忠実に果たすんだな。まぁ、果たしてもらうとこちらが困ってしまうのだが」

 

「事務処理を気軽に押し付けられる相手がいなくなるからですね分かります」

 

 駄々をいくら捏ねても、もはやこれは決定事項らしく、ため息を吐きながら心の準備を済ませることしかできなかった。

 

「仕方ないですね・・・分かりましたやりますよ。ただし、四月の件はそれでイーブンですからね」

 

「もちろんだ。終わったらまたしばらくはサボれるだろう?」

 

「形だけでも巡回しておこうかな全く・・・」

 

「まぁ、この事務処理さえ終わったら後は次の風紀委員の仕事だ。これが最後だと思って頑張ってくれ」

 

 そう言って笑う委員長に対しては呆れ顔しかでない。

 まず、委員長自身が事務処理ができないという委員会はここぐらいなものなのではないだろうか。そう、現実逃避をせざるをえない。

 しかし、"わざわざ七月になってから"始めると言うのは非効率にも程がある。

 

「じゃあとりあえず今から始めておきます。必要な書類はどれです?」

 

「おいおい、まだ試験が先にあるんだぞ?風紀委員の仕事のせいで点数が悪かったなんて洒落にもならないぞ」

 

 そう言って止める委員長に対して否定の意味で首を振る。

 

「平均点ぐらい別に勉強せずとも取りますよ。魔法関連の教科はそれなりにテスト勉強くらいしますが、どうせ学校で資料作ってから家に帰ったとしても四時間はあるんです。飯と風呂だって時間さえかけなければ一時間で済む事ですし、個人的に詰め込む次期に全て詰め込んで早めに休みたいんです」

 

「実は仕事があるうちは君は仕事中毒者(ワーカホリック)なんじゃないかと思えてきたよ」

 

「むしろ欲しいのは仕事ではなく休暇です。休暇の為には労力を惜しまないと言うだけですよ」

 

「その努力の方向性を少しでも別のところに向けてくれればどれだけ助かることか・・・」

 

 そういって嘆く委員長から渡されたノルマは一ヶ月掛けたら恐らく終わるだろうと言う規模だった。並みの人間なら確かに後回しにした方がいいかもしれない。

 尤も、これは風紀委員を始めてやる人が対象だからここまでやるのであって、もしそうでなかったら二週間も掛からずに終わるだろうが。

 

 

「さて、本来ならまだ風紀委員の職務が残っている所だが、私もバトルボードの練習がある。資料を今日から作るつもりなら、鍵はきちんとしておいてくれ」

 

「九校戦本戦のメンバーは大変ですね。試験の他にもやることがあって」

 

 九校戦とかいう魔法科高校同士の対抗試合に向けて、主要メンバーは六月の段階から練習が始まっている。案外一科生の連中も苦労してはいるのだろう。

 少しだけだが同情の意味もこめた言葉を掛けると、委員長はため息をついた。

 

「一番の問題は私達選手の練習よりも私達が使うCADを調整してくれるエンジニアがいないことなんだがな・・・」

 

「足りてないんですか?」

 

 ある意味意外だ。第一高校は今までほとんど連勝していると聞いたからこそ隅々まで高水準で仕上がっている物とばかり思っていたのだが、まさか今まで選手の能力によるごり押しだけでここまで来たのだろうか?

 そう考えると、実戦向けと言われる第三高校よりも武闘派なのかもしれない。

 

「まぁ、探してみればいいじゃないですか。案外近いところにいるかもしれませんよ」

 

「そうホイホイと見つかるなら苦労はしないよ・・・。さて、そろそろ行くかな。頑張ってくれ給えよ」

 

「言われなくても・・・」

 

 そのやり取りを最後に委員長が退室する。

 しかし、CADエンジニアか。確か、達也が風紀委員会本部に眠っていたCADの調整をしていたはずだが・・・おそらく委員長は忘れているのか。

 打診しておいたほうがいいのだろうか。その方が仕事が幾ばくか免除されて楽になるだろうか。

 

 

 そうは考えたが、結局は四月の借りの清算にこそならないが気持ちだけでもという意味で、自分の胸の中にしまっておく事にした。

 

 来月まで、しばらくは喜ぶべき平穏と忌むべき仕事が続いていくだろう。

 

 

 とりあえずは、目の前の資料を終わらすことから始めよう。その方が、後々楽になるだろうから。




ってことで次回から恐らく本格的に九校戦へと移れるかな?って感じにまとまった・・・はず。
オリ主自身は恐らく直接九校戦には関わらないと思います。だって実際彼何もやることないじゃないすか。モノリス・コードでさえ劣化版の達也ぐらいになれれば上出来という状況下でねぇ・・・。やっぱり暗躍させるか。

次回、月が跨ぐ、はず。余り保障はできない。

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