ちょーっとシリアスに行きたいな。
でもって時系列はほぼ同じなんだけど、完全に一致はしないから話数は被りません。
【Saturday,April 23 2095
Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】
ブランシュ日本支部の拠点に着いた時、内部は"銃声で溢れかえっていた"。
「司波、これはどういうことだ?」
克人が聞いてくるが、こちらもこうなっているとは思っていなかった。
「わかりません。ですが、予想外の事態が想定されます。慎重にいきましょう」
そう答え、しばし思案する。
まず、警察が既にここに介入しているというわけではなさそうだ。事実警察車両の類が一つも見当たらない。
軍の方で動いていることも聞いていないため、除外していい。となると、ブランシュと同じ非合法組織あたりとの戦闘か。
となると、どちら側の人員にせよ確実にどちらかは逃げ出してくるだろう。
「会頭は桐原先輩と左手を迂回して裏口へ回ってください。俺と深雪は、このまま踏み込みます」
「分かった」
「まあいいさ。逃げ出すネズミは残らず切り捨ててやるぜ」
「エリカとレオは、ここで退路を確保してくれ。絶対に誰かしらがこっちに来るはずだ」
「了解。達也、気をつけてな」
「深雪、無茶しちゃ駄目よ」
指示を伝えた後、入り口へ足を向ける。
その直後、強烈な爆発音と今まで以上の銃声が聞こえた。
「急ぎましょう。この調子だとすぐ終わってしまうかもしれません」
そういって、深雪と入り口へ急いだ。
入り口と呼べるところに、既にドアはなかった。
その先を進んでいくと、数多くの弾痕と空薬莢、そしてちらほらと死体が見える。
銃声は、入ってから一分も経たずに消えてしまった。
「お兄様、これは一体・・・」
「かなり派手に戦ったようだな。奥を"視て"みる」
そう伝え、"眼"を使って様子を探る。
ホール状の部屋に、何があったのかを示す物があった。
死体の山と、反対側にいる"黒スーツ"の男。
今までの出来事の中で、"黒スーツ"を着る輩は一人しか思いつかない。
「・・・この惨劇を作ったのは借哉か。妙に重武装してる」
「"彼"が?一体なぜ・・・」
「分からないが、出来るだけ何かしら聞き出しておきたい。急ぐぞ」
そう深雪に行って、先ほど"眼"で確認した部屋へと急ぐ。
しかし、その部屋の前にあったのは"瓦礫の山"だった。
「恐らく先ほどの爆発音はこれだろうな。瓦礫で足止めをしようとしたのか、それとも潰そうとしたのか・・・」
「しかし、それでも"彼"は死ななかったのですよね?」
「そうなるな。しかし、ここまで攻撃を受けて"傷一つ付かない"というのは不自然だ。さっき"視た"時には彼に外傷は"何一つなかった"」
「となると、"彼"はやはりお兄様と同じく・・・」
「恐らくだが、"再成"を使えるだろう。まさか俺以外にいるとは思わなかったが・・・」
しかし、厄介なのには変わりがない。
できれば"彼"からいろいろと情報を聞き出したかったのだが、残念ながら"彼"は既に手ごろな窓から脱出している。
既に外に出ている以上、無理に瓦礫をどかす必要もない。
「エリカ達に止められるかどうかは分からんが、一応戻ろう。"彼"は既に外へ逃げている」
「分かりました、お兄様」
また先ほどの死体を見るのはいい気がする訳ではないが、仕方ない。
エリカ達に対して"彼"が実弾を撃たないという保障もない。早めに援護に向かった。
結局、外に出たときにはエリカ達は"彼"を止めることはできなかったようだ。
外に出たときに目に付いた光景は撒き散らされた催涙ガスに、使用済みの閃光手榴弾。それと、レオに毒を吐いているエリカだった。
「アンタ本っ当に猪みたいよね~。私一人であの後追いかけられるわけないじゃない。せめてあの目潰しには少しは対応してほしかったわ」
「うるせ。どっちにしろ追いつけなかったんだからどうしようもねぇだろうがよ」
恐らくレオが閃光手榴弾に真っ先にやられたのだろう。今も耳を痛そうに押さえながら目を擦っている。
近づいてくるこちらに気づいたらしく、二人が声を掛けてきた。
「あっ、達也くん。ごめん、追いかけようとはしたんだけど・・・」
「すまねぇ。逃がしちまった」
申し訳なさそうに謝る二人に対して、軽く手を振って気にしていないことを伝える。
「仕方がないさ。元々襲撃を掛けてきた連中を潰す為に来たんだ。出来れば捕まえてある程度の情報は欲しかったが、別にどうしてもってわけじゃない。怪我がないだけよかったさ」
「そう言ってくれるとありがたいけど、やっぱり悔しいわ」
「同感だな。むしろあの時には殺されてるかもしれなかった。最低奇襲ぐらいには対応できるようにしねぇと・・・」
それでもまだ完全には立ち直れない二人に対して、後のことを考える。
逃げたのが誰か分かっている以上、あとでこっそりと聞けばいいのだが、おそらくほとんど中核となることは聞けずに終わるだろう。彼自身も話せる訳ではないはずだ。
となると、出来るだけ知りうる人間がほしい。出来れば、ブランシュ日本支部のメンバーの生き残りがいればいいのだが。
そんなことを考えていると、後ろから声が掛かった。
「司波、無事か」
そう言って近づいてきたのは、裏口から工場内に入った克人だった。
「はい。自分は大丈夫です。しかしエリカとレオが少々。さほど深刻ではないので問題はないはずですが、一応診察してもらった方がいいかもしれません」
そう伝えると、克人は頷いた。
「分かった。こちらの方では"敵"はいなかった。だが・・・」
「何かあったんですか?」
克人をして言葉を濁らせる事があったのかと、改めて聞く。
内容は、ある種いい方向に進むものだった。
「ブランシュの日本支部長と、その他数名が助けを求めてきた。今桐原が連れてくる。こちらでも何が起こったのかわからない。」
桐原が連れてきたのは、確かにブランシュ日本支部のリーダーである司一だった。
被弾は肩に一発のみだが、かなり疲弊している。事実、へたり込みながらうわ言をいくらか呟いていた。
「何かしら聞けそうな状態ですか?」
「しばらく時間を置く必要があるだろう。今家の者を向かわせている。落ち着いてからこちらで話を聞いた後、お前達にも伝える」
「分かりました。お願いします」
そう頼んでから、司一に目を向ける。
彼の目は焦点が定まっておらず、どこか遠くを見ているような様子でうわ言を何度も呟いていた。
「奴は、化け物だ・・・。なんで、あれほどまで・・・」
そう何度も呟くと、いきなり彼はハッとしたように言った。
「そうだ、甲の奴は言っていた。『"蛇"とも呼び、"猫"とも呼ぶ。"牛"とも呼ぶし、"狐"とも呼ぶ。"烏"と呼ぶものもいれば、"兎"と呼ぶものもいる』。そうか、まさか、あいつは・・・!」
いきなりの言葉に、戸惑いを隠せない。
しかし、問い詰めようとした時に、彼の頭が突き飛ばされたかのように後ろに倒れた。
一拍ほど置いた後、銃声が聞こえる。
「スナイパーだ!全員伏せろ!」
そう声を掛けて狙撃手が撃ってきた方向と距離を確認する。
遅れて銃声が聞こえるという事は、恐らくは1kmを超える距離からの射撃。
狙撃手を見つけることは難しい事でもないが、ここで"分解"を使うのはまずい。
だが、幸いその後の射撃は来なかった。
「・・・おそらくはもう大丈夫だ。これ以上の射撃は来ない」
ファランクスを展開し、銃撃から全員を守ろうとしていた克人は何時まで経っても来ない銃撃を前にそう判断して、展開を解いた後振り返る。
「恐らくは元々自分達が目標ではないかと。狙っていたのは初めから彼だったのでしょう」
そう言いつつ既に死体となった司一に目を向ける。彼は頭に弾丸を受け、一発で事切れていた。
「『"蛇"と呼ぶし、"猫"とも呼ぶ。"牛"とも呼ぶし、"狐"とも呼ぶ。"烏"と呼ぶものもいれば、"兎"と呼ぶものもいる』・・・か」
彼が呟いた最後の言葉の意味を、理解しようとする。
確か、出てきた動物は全て・・・。
しかし、答えは今だ分からず、今はここにはいない"彼"に向けて疑問を吐くことしかできなかった。
「お前は・・・一体"何"なんだ・・・・」
答えは今だ、知る術はない。
意図したように書けたかかどうか、今だ心配でならないラストでした。
とりあえずこれで入学編は終わり。もしかしたら次回から九校戦にはいるかもしれない。
・・・実際どうやってオリ主を絡ませるかを限りなく悩んでいるのが九校戦なんですよね。どうしようこれ、みたいな。別に達也自身に手を出すわけでもないのにオリ主が無頭龍に喧嘩を売る理由もないんですよね。精々始終暗躍に尽きる可能性が大っていう。目立たないけど、仕方ないね。
後今更ですが改めて、投票及び感想、及び誤字等の指摘本当にありがとうございます。誤字指摘などには自分が気づかない至らぬ箇所を見つけることが出来て本当にありがたいですし、感想等はこれからどう話を作ろうかというときの感想にもなっていたりします。余り出来が良いとは言えないであろう本作ですが、これからも温かい目で見守っていただければ幸いです。
次回、未定。もしかしたら投稿遅れるかも。