魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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本編突入。っていうかとりあえずここまで書かんことにはしゃーない・・・


第二話~入学~

【Sunday,April 3 2095

  Person:operator4  】

 

 

 国立魔法大学付属第一高校。

 日本の魔法師教育機関の中のトップの一つ。未来の日本を支える数少ない魔法師の育成機関。

 最も、"我々"の立場からしたら悩み種しか作り出さない施設の一つでしかないが。

 

「流石に性急に事を運ぼうとしすぎたか・・・」

 

 魔法科高校に関しては、二科生制度というものが存在する。

 より優秀な魔法師を優先して育てるために、優秀でない半分の生徒を切り捨てること。

 その点だけを見れば限りなく効率的な制度だ。しかし、この制度は半ば必然的に一科生と二科生の間に差別を作り出すことになる。

 ソレが何を言いたいのかというと。

 

「"1時間半前から二科生が何の理由もなく"高校の敷地内を歩き回っていれば嫌でも目立つ・・・・」

 

 焦る気持ちはあった。出来るだけ事を穏便に"処理"する為には早期の対象発見が必要だった。しかし、その点を除いても、というかその観点で見ても"流石に捜索開始時間が早すぎた"。これでは"河原借哉"という存在は記憶されやすくなってしまう。

 

 我々"管理者"や"調整者"はそもそも優秀な魔法師としての能力は持てない。なぜなら"管理者権限"それそのものが限りなく魔法演算領域を使用する為、残された領域はそもそもが二科生レベルのものでしかないのだ。しかも、皮肉なことに"つい90年程前"まではそういった魔法師の力が自分達でも使えることさえ分からなかったのだ。能力など低くて当たり前である。

 

「別に存在の形跡を残すことに問題はないし、顔もいざとなったら"変えられる"が、後の処理に"調整者"を使うのは非効率的だ・・・。出来るだけ控えめに行動したほうがいいか」

 

 そうは言っても難しい話だ。何せ完璧に"目立たないまま"では探す手段が自分の足以外になくなる。いざ長引く時のためには何かしら"裏で操ることの出来る存在"が必要だ。

 二科生にだってそれなりの子集団は存在するはず。それをまず見つけることができれば保険も利くだろう。

 

「そうと決まれば、取りあえずは開館までは目立たん場所にいるか」

 

 方針が決まれば行動もおのずと決まってくる。持ち込んでいた缶コーヒーを開け、中身を飲みつつ目立たなさそうな場所を探す。

 

 結果、一番よさそうだったのは今時古いスクリーン型を使っている生徒の近くのベンチだった。

 同じように早く来過ぎた二科生らしく、暇つぶしに読書をしているようだ。

 とは言うものの、感じた印象というのは文学少年のソレとはまるで違ったが。

 

(高校生で"熟練の兵士と変わらない"雰囲気を身につける奴・・・か。これは"魔法師の世界"では当たり前なのか?それとも"こいつだけが特別"なのか?)

 

 とはいえ、"魔法師"の世界にはいない"管理者"が魔法師の中の常識など分かるわけもなく、考えに詰った末にコーヒーを飲み干し、缶を捨てに行こうとする、が。

 

「・・・ここってまさか缶のゴミ箱がないのか?」

 

 否、施設内にはない事はない。ただ"新入生が今現在入れる場所の中には缶のゴミ箱がない"だけで。

 いくら"目立ちたくないから"とはいえ、流石に敷地内に潜入するのは骨が折れる。

 

(・・・仕方ないか)

 

 出来るだけ、先ほどの二科生にも見えなさそうな場所までやってきたあと、コマンド画面を開く。

 

『/command delete "in the hands"』

 

 コマンドを入力し、缶を"世界から消去"する。

 "管理者権限"の使い方を限りなく間違えている気もするが、ここでポイ捨てをして"生徒会長"に悪い意味で目を付けられるよりはマシだ。

 そう思いながら、元の場所に戻ると

 

 

 先ほどの二科生が、こちらを凝視していた。

 

 

(馬鹿な、あそこで誰も見ていないことは確認済み。しかも、あいつは"そこから1歩でさえ動いてない"じゃないか!しかし、なぜそれほどまで"信じられない"というような目で見てくる?!)

 

 顔に困惑の色を出さなかったのはただ3000年を超える人間社会の中での経験の賜物でしかない。

 必死で思考を巡らせる。"彼"は何物なのか?"彼"の口を封じるにはどうしたらよいのか?

 考えること数分、出た結論は

 

(こいつを精密検査するべきか)

 

 最低でも"彼"は"先ほど俺が何をしたのか"を有る程度理解できている。そんなことが出来るのはまさに"管理者"や"調整者"の持つ情報把握能力のみ。

 もし"彼がバグであった場合"、速やかに処理することで見られたことに関しても処理できる。何より今回のことから推測されるバグは"今までで最も性質が悪い"。

 "バグでなかった場合"は後の処理が面倒だが、上手く口を閉じてもらえればそれで済む話。

 

 "眼"を凝らし、"彼"をスキャンする。

 

 結果は、"黒"。"バグ"の対象者だった。

 

 出来るだけ不自然にならないように彼から離れ、建物の影に入っていく。

 そして、視界が切れたところでコマンド画面を再度開く。

 

『/command delete "Recent target"』

 

 先ほどと同じコマンド、しかし規模はまるで異なる。

 サイズ、物体問わずありとあらゆるものを"削除"できるこのコマンドは、"バグ"の対象者を速やかに処理する為に元々はある。そのコマンドを持ってすれば、今回の処理も楽に終わる。

 

 その、はずだった。

 

 "眼"は捉えていた。"彼"がまだそこにいることに。そして何よりも"コマンドが彼を受け付けなかった"ことに。

 

(そんな馬鹿な・・・。最悪の想定の斜め上を行ってる・・・。コマンドが受け付けることのない対象はまさに"我々"以外にはない。"創造主"様から新たな"調整者"の追加連絡などない、となると程度は想定より上だが、やはりあの"バグ"は・・・)

 

 数々の経験をいくら詰んではいても、この"バグ"は今まで発生したことはなかった。

 一体どうすればいいのか、まずは何をするべきなのか。

 

 

 

 

 "調整者レベルの権限と能力を持ってしまったバグ"に対して。




とりあえず河原の立場で入学式前をば。
コマンド画面を開くっていうのは、プロローグであった視界の中央に(ryってやつです。
SAOのメニュー開く時のアレに近いのかな?横にスライドする感じだけど。
まだ入学式それそのものには突入しない!・・・はず

あと、タイトルが"調整者"なのに主人公"管理者"なんですよね。なんでかっていうと、単純に語呂が一番よかったから。タイトル詐欺にも程があるね・・・。

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