魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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ちょっと最近の話に比べると場面も文字数も少なめ。
切り際がいいからね、仕方ないね


第十九話~戒告~

【Saturday,April 9 2095

  Person:operator4  】

 

 

 

 

「・・・今度は"当たり"か?」

 

 新入部員勧誘週間とかいう馬鹿騒ぎも四日目。

 個人的には"まだ"なのだが。いくら"必要なこと"とはいえ、人混みの中は疲れて仕方ない。

 

 

 何故、初日は屋上で過ごしていたのに今は"巡回紛いの事"をしているのか。

 理由は単純。"エガリテ"との接触の為にある。

 

 初日、"ブランシュ"下部組織の"エガリテ"の構成員を発見できたのは良かった。ただ、問題はこれで"第一高校に対する工作の可能性"が限りなく上昇したことだ。

 恐らく今現在は現地での手足の確保、もとい勧誘を行っているのだろう。

 別に工作自体には文句はない。問題は、"自分自身が関与しなければ"という点に尽きる。

 これ以上、目立つ訳にも目立たせる訳にも行かないのだ。

 "彼"も、"我ら"も。

 

 現状工作が発生した場合、どうしても風紀委員になってしまった以上"関与せざるを得ない"。それにより校外でも目立ってしまった場合は周りから余計な関与を巻き込みかねない。

 つまりは、"穏便に済ませろ"と釘を刺したいのだ。

 どこぞの特殊部隊のように、スマートに。

 

 

 だが、ここでも問題はもちろん発生する。

 達也自身のヘイトの問題だ。彼は一科生からまるで親の仇のように見られている。理由は恐らくは"剣術部のエースを容易く倒した"からであろうが、エリート意識に凝り固まった奴らによる攻撃が激しいのだ。

 てっきり個人的には達也が二科生かつ腕を立つところを見て、早いうちに彼に接触してくると思ったのだが、全く関係ない奴らしか寄ってこないため疲れる事この上ないのだ。

 

 しかも、追跡のために達也の付近にいるためにどう足掻いても達也の被害の後始末を任せられ、やっと終わって追いついたと思ったら同じような案件に巻き込まれる。

 "彼"に接触した後に釘を刺す事で"こちらの仕事"の邪魔をするなという意味を含ませたいのにこれではまさに"自分は熱心な風紀委員です"と言っているようなものだ。

 

 

 だが、今回は問題ないようだ。

 襲撃者の右手から見える、リストバンド。

 恐らくは能力の調査だろう。魔法を発動して直ぐ、高速歩行の魔法を使って逃げ切る。

 だが、何処にいくかは予測できる。そこに一足先に、向かうのみ。

 

 

 

 結局、場所についてから五分ほど経ってからだろうか。先ほどの襲撃者が、やってきた。

 

 

「どうも、"厄介者"。いや、こういう風に言った方がいいか?

 

 

 ブランシュ下部組織、エガリテのメンバーにして剣道部主将の、司甲先輩?」

 

 

 先ほどの襲撃者、司甲はまさか声を掛けられるとは思っていなかったらしく、目に分かる位驚いていた。

 

「風紀委員?!馬鹿な、何故ここまで」

 

「びっくりしただろ?お前のやり口はまだ"見えてる"ってことだ」

 

「くっ、こうなったら!」

 

 そう言ってCADを向けてくる司に対して、手を上げることで敵意はない事を示す。

 

「心配するな。別に"風紀委員"の仕事をするつもりはない。あんたらの"目的"に関しても同じだ」

 

「・・・何が目的だ」

 

 CADをそっと降ろした司先輩が、訝しげに聞いてくる。

 そこに、出来るだけはっきり脳に残るように、告げる。

 

「あんたらが何をしようとしてるかは知らん。しかし、やるとするなら"静かにやれ"。"こっち"に支障が出ると困るんだよ」

 

「・・・?」

 

 何を言ってるのか分からないらしく、本格的に反応が鈍くなってきている。

 だが、構う事はない。上に伝えてくれさえすればいいのだ。

 元々、一応は魔法師の団体である"ブランシュ"に対してはパイプどころか連絡手段さえもたないのだ。そうなると、下っ端から報告してくれるのが一番いい。

 

「"派手"にやりすぎるなよ。場合によっては、こっちからお前達を"潰す"必要が出てくる。よく、考えるんだな」

 

「待て、お前は・・・一体?」

 

 そう聞く司に対して、笑みを浮かべながら答えた。

 

「さぁ?何だろうな。人によっては"蛇"と呼ぶし、"猫"とも呼ぶ。"牛"とも呼ぶし、"狐"とも呼ぶ。"烏"と呼ぶものもいれば、"兎"と呼ぶものもいる。お前は、"俺たち"を一体何と呼ぶ?」

 

 意味ありげな、というより本当に意味がある台詞を吐く。

 こんなことは、達也に対しては言えない。あいつが理解するにはまだ早く、そして直ぐに"察する"ことができそうだから。

 こんなことを言うのは、ほぼ道楽に近い。未知のものに対して考える人間の姿というのは、中々に面白い。

 

「は・・・?」

 

 司がもう一度聞こうとする前には、既に彼の視界からは消えている。

 ただ、彼の前には風が吹くだけ。

 

 

 まるで、未知との遭遇をしたかのような、不気味な、風が。

 

 




意味ありげなことを吐いたオリ主でした。
彼が挙げて言った動物は何でしょうね?たぶん大半の人が分かると思うんです。
ちょっと偏ってるかなとも思ったりしたけどそこはしゃーない。

後、前話では誤字申し訳ありません。改めて指摘してくださった方、ありがとうございます。

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