それはそうと、後七日ほどで新刊が発売されますね。恐らくは在庫切れが目立つかと・・・。
自分ですか?どちらかというと贔屓にしてる本屋のチェーン店で予約しました。なおその店は基本的に入荷がざるなので"予約だけするけど買うかは分からない"というわけ分からない状態になってますが。
【Sunday,April 6 2095
Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】
「あっ、おつかれ~」
「お兄様」
部活連本部へ報告を終えた後、生徒会室へ深雪を迎えに行く予定だったが、その道のりの途中である昇降口のところで運よく見知った顔と共に深雪がいた。
「お疲れ様です。本日は、ご活躍でしたね」
「大したことはしてないさ。深雪の方こそ、ご苦労様」
自分の顔を見上げる深雪の髪を、眼差しでねだられたとおり、達也は二度、三度とゆっくり撫でた。
深雪は気持ちよさそうに目を細めながら、こちらを見詰め、その瞳を逸らさない。
「兄妹だと分かっちゃいるんだけどなぁ・・・」
「何だか、すごく絵になってますよね・・・」
「どちらかというと猫と飼い主に見えたのは俺だけなのか?」
上から順にレオ、美月、借哉である。
相変わらず少々黒い方のジョークを吐く。しかし、それよりも気になることがないわけではない。
「ところで借哉、俺が第二体育館にいた時、何をしてた?」
確か彼は位置こそ遠いもののこちらの状況を把握していたはずだ。せめて応援に来てくれてもいいものだと思ったが
「校舎の屋上であんぱんと牛乳食いながらそこらじゅうを監視してたら第二体育館で騒ぎが起こってるなーって思ってさ」
「突っ込みどころは多々あるがまず委員長は"巡回"といっていたんだが・・・」
「まぁある程度はしたさ。心配するな」
「常にするものだとも思うんだが・・・?」
そして限りなくぶれないところも変わらず。どうも自分の興味の向くこと以外には案外無関心な立場を貫く節が彼にはある。そのように気楽に生きれたらどれほどいいことか。
「んで、巻き込まれるのは嫌だなーって思いながらいろいろ見てた」
「借哉はやっぱり高みの見物か。まぁ、似合ってなくもないがよ」
「風紀委員のペナルティがなければいいけどね」
「心配するな、ゴミはきちんと片しておいた」
「そこじゃねぇよ・・・・」
「なお思ったよりアンパンと牛乳の組み合わせは監視には向かんかった」
「味も聞いてはいない・・・」
ほぼジョークだけの会話を繰り出してくる借哉。かなり楽しんでいる節があるが、他人事でいられるのもそう長くはないはずだ。
そう思っていた矢先、ある意味最も突っ込んで欲しくなかったものが借哉の口から飛び出した。
「それで、あの時使ってた無系統魔法はなんだ?ある程度検討はついてるんだが、詳しく話を聞いてみたいと思うんだが」
「そういえば私もチョッと気になるかも」
借哉の言葉に、エリカが賛同を示す。
だが、ここで話すと長話になりかねない。場所を移したほうがいいだろう。
「話してもいいんだが、ここで話すのもなんだ。せっかくだから何処かで軽く食べていこう。一人千円までなら奢るぞ」
「おいおい、合計すると結構かかるぞ?大丈夫なのか」
「気にするな。ただし、千円を過ぎた分は自腹だからな?」
恐らくエリカやレオ、美月などはきちんと分かっていた為にあえて言わなかったのだろうが、逆に分かっているのにあえて口に出す借哉を見て、案外施しを好むタイプではないのかもしれないと、少々思った。
「で、その桐原って二年生は殺傷性ランクBの魔法を使ってたんだろ?よく怪我しなかったよなぁ」
「致死性がある、といっても高周波ブレードは有効範囲の狭い魔法だからな。刀に触れられないという点を除けばよく切れる刀と変わらない。それほど対処が難しい魔法ってわけじゃないさ」
入った先のカフェで先に出されたドリンクを飲みつつ、捕物劇の話に入る。
「でもそれって、真剣を振り回す人を素手で止めようとするのと同じってことでしょう?危なくなかったんですか?」
「大丈夫よ、美月。お兄様なら、心配要らないわ」
そう話す深雪に対して、面白そうに聞くのはエリカだった。
「随分余裕ね、深雪?確かに十人以上の乱戦を捌いた達也くんの技は見事としかいえなかったけど、桐原先輩の腕も決して鈍らじゃなかったよ。むしろ、あそこの中では頭一つ抜け出てらし、本当は心配じゃなかったの?」
それに対して、深雪は
「ええ、お兄様に勝てる者などいるはずがないもの」
一分一厘の躊躇もない断言だった。
「・・・えーっと」
さすがにエリカも絶句するしかない。
「まぁ確かに高周波ブレードってのは刀に触れられないってだけじゃない。超音波を使うもんだから酔うやつもいる。その状況でも安定した実力を出せるってのはまったくもってすごいことだろうな」
「借哉よ、お前が褒めても嫌味にしか聞こえねえ気がするんだが」
「日ごろの言動のせいかな?」
「行動のせいでもあるね。あの昼はびっくりしたよ」
借哉自身も、本当に俺の技量を褒めてはいるんだろう。
しかし、どうしても昼の乱闘事件の一件でそこらへんはイーブンに見られかねない。
尤も、本人曰く"素人相手だったからこそあそこまで綺麗にできた"らしいのだが。
「でも、超音波酔いのために耳栓まで用意する奴もいると聞く。そんな魔法に対して何時も通りに動けるってのはすごい事だとは思うがな?」
「確かに、ソレはいえてるよな。まぁ、耳栓なんて持ってくる奴は最初から計算づくなんだろうがな」
「そうじゃないのよ。単に、お兄様の体術が優れているというだけではないの」
レオの言葉に対して、深雪は失笑を堪えながら返す。
「魔法式の無効化は、お兄様の十八番なの」
その言葉に、真っ先に食いついたのはエリカだった。
「魔法式の無効化?情報強化や領域干渉でもなくて?」
「ええ」
「それって結構レアなスキルだと思うけど」
「そうね。少なくとも、高校の授業では教えないのではないかしら。教えられても誰にでもできることではないのだし」
まるでレアなスキルなどは使ってないといわんばかりの答えに、一人答えを出しつつあるのは、借哉だ。
「俺の予測なんだが、体育館のなかで乗り物酔いみたいな症状が来なかったか?超音波酔いとは別物だぞ」
「う~ん、あたしは大したことにはならなかったけど、確かにそういう人もいたみたい」
「それ、お兄様の仕業よ。お兄様、キャスト・ジャミングをお使いになったでしょう?」
そう微笑む深雪に対して、ため息の白旗を掲げた。
「深雪には適わないな」
「それはもう。お兄様のことならば、深雪は何でもお見通しですよ」
「・・・・もういい。兄妹同士仲睦ましくいいことだが、ここは話を戻そう。胸焼けを起こしそうだ」
そうげんなりした顔で借哉が話を続ける。
「ただ、"アレ"はキャスト・ジャミングなのか?二つのCADを同時に使用することで相手方のCADも巻き込む形で封殺する、ってのは分かってる。お前風紀委員本部から二つCAD持っていってたしな」
「そこまで分かるのか。ある意味話が早くて助かるが、少々微妙な気分だ」
「余り詳しくはないんだがな。ある程度の知識を学んだ際に少し気になったアイデアってだけだ」
確かに"彼"は魔法師の卵である割には一般的な魔法科所属の二科生よりも魔法に関する知識には疎い。その割には頭は良く、理論を聞いたら応用を利かせられそうな発想を今のようにしてくる。
彼自身の"仕事"のスキルなのか、それとも素人ゆえの柔軟的な考えなのかは、分からないが。
「お前が言ったとおり、二つのCADをそれぞれ逆方向の起動式を展開することで、相手の魔法の永続的維持を不可能にするタイプのものなのは間違いない」
「じゃあそれこそキャスト・ジャミングに近いけど、それに必要なアンティ・・・なんだっけ」
「アンティナイトよ、エリカちゃん」
「そうそうそれそれ。ソレが必要なんじゃないの?」
これに対して、憶測の形で正解を述べたのも、また理解が早かった借哉だった。
「それは恐らくアンティナイトそれそのものをCADなどで変わりにしてるからだろうな。ただ、その場合対象となる魔法にどうしても限りがでてくる。恐らくはそこらへんに違いがあるのだろうな」
「本当に説明が要らなくて助かるな。ただ、全員とも余り口外してくれるなよ?この技術は悪用される可能性を考えるとそうやすやすとバレるわけには行かない」
「まぁそりゃそうだね」
「了解した。まぁ、そこらへんは気をつけるさ。」
そう軽口をいいつつ約束してくれると、少々安心できる。
そう思い、残っていた最後のドリンクを飲み干した。
ってことで十八話でした。
眠気に襲われながら書いたんでもしかしたらミスがあるかも。
指摘してくださるとありがたいです。
次回、未定。
たぶん日はもしかしたら跨ぐかも。
【追記】案の定ありました・・・。指摘してくれた人ありがとうございます。
【追々記】更にもう一個発見した為修正。そう長くはないのところです。雑な仕事でほんとすみません