魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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オリ主視点からみた体育館騒ぎです。
だってそっちのほうが新鮮かと思って・・・


第十七話~監視~

【Wednesday,April 6 2095

  Person:operator4  】

 

 

 

 

「さて。とりあえずは早速騒ぎが起こったな。」

 

 校舎の屋上で、戦前までは定番であったらしいアンパンと牛乳を嗜みながら第二体育館の様子を観察していた。

 

 本来なら、近くに見に行くという選択肢もないわけではなかったが、生憎人混みの中に好き好んで入りたくはない。

 

 それに、元々の視力だってただの人間の比ではない。少々遠く、窓越しに見ることになったとしてもなんら問題はない。

 

 

「とりあえず問題が起こるとしたら達也のそばからだろうとは思ったが、まさか本当に起こるとはなぁ」

 

 しかし、さほど驚きはない。

 案外、この世界には自分達"管理者"や、"調整者"でさえ知らされてはいないが、そうであるのではないかと思えることがある。

 

 例えば、今のように。

 人には必ず決められた道筋というものがあるのじゃないか、というもの。

 決められたとき以外は死ねないんじゃないかと思えるほどの偶然性。どれほど注意してもミスを犯す必然性。そのように、人間が生まれ持つ"運命"というものを、例えプログラムと同じように世界を認識している"我ら"でさえ信じていたりする。

 

 達也の場合はどうもトラブルに巻き込まれるのが必然であるのだろう。

 彼が腕章をつけてすぐ、騒動の中心であった二人の剣士の試合が始まった。

 

 

 それにしても、と思う。

 

「高々九十年。それだけでも、武道一つはこうも変わるものか・・・。中々虚しいものだな」

 

 剣道の試合形式にある程度沿った形で始まったこの戦い、しかし俺が一番印象に残っていた"剣道"のそれとは大きく異なっていた。

 

 たしか、剣道がスポーツになりつつあると危惧されていたあの頃だったか。

 今の剣道は、少なくともその頃とはかなり違ってきている。

 昔より、実戦としての戦いを意識している形。

 しかし、そこに見てて多様性を感じるほどのやりとりはあれども技はない。

 決め手となる場所が、結局は分かりやすい弱点しかないのだから。

 

 

 結局、女子生徒が男子生徒から一本を取った。

 その部位でさえ、昔とはだいぶ異なる。肩で一本が入るとは、相変わらず変わったものだ。

 

「果たして昔のものがいいのか、それとも過去のものがいいのか。俺には答えは出せんが、最低でも今の剣道はどちらかというと"昔に逆戻りした"のかもなぁ」

 

 

 そのように感慨に浸っていると、いきなり悲鳴が聞こえた。

 そして体育館から僅かに漏れでている不快そうな音。

 

「なるほど、高周波ブレードか。確かにこれは"真剣"と差し支えないな」

 

 男としてのプライドがそうさせたのか、負けた男子生徒がCADを操作し、魔法を発動させたようだ。

 

 高周波ブレードの一撃を、女子生徒は大きく飛び退ることで避ける。

 当たってはいない。せいぜい、掠っただけ。

 しかし、胴には細い線が走っている。それも、この線は"切れた跡"だ。

 

「ほぅ。元は竹刀でも魔法を使えばここまで化けるか。この切れ味はそこらの真剣よりは上だな。少々過小評価していたかもな」

 

 所詮"我ら"にとっては魔法なんていうものはただのバグの産物でしかない。しかし、もしここまで簡単に能力を向上させることができるなら、対人限定に関しては使っても問題ないのかもしれない。

 

「さて、本来はもう少し高周波ブレードの切れ味を確かめたいんだが、もう"魔法は発動されている"。ご愁傷様としかいえんな」

 

 

 再び女子生徒に向かって剣が振り下ろされる直前に、"彼"が飛び込む。

 非接触型のCADによって、無系統魔法が放たれる。

 恐らく今頃は乗り物酔いに似た症状が館内で多発しているだろう。

 なぜなら、あの魔法はやはり

 

「CADの同時使用による想子波の意図的な発生による限定的なCADの封殺。ある程度の話を聞いたときに可能ではないかとは思ったが、技術的には難しいはずだ」

 

 元々魔法科高校に潜入する時のため、一定の魔法の知識は仕入れた。

 その時に、思ったアイデアのうちの一つがそれ。

 技術的には難しいはずのソレを、容易く実行できるということは。

 

「最低でも技術者関連の職についてるな。恐らくはFLT専属、ってところか」

 

 どうも人が悪いとは思っていたが、これに関してはばれると本当に嫌味に近いものになりかねない。何せ魔法関連の企業では大手であるFLTの専属エンジニア。年収もそこらのサラリーマンとは比べ物にならないはず。

 

 そう考えると、恐らくはFLTのモニターというのはダミーだ。案外尻尾は早くつかめるものらしい。

 

 

 高周波ブレードからただの竹刀へとはや代わりしたものでは、"彼"を倒すことはできない。

 結局先ほどの男子生徒は拘束されていた。

 今現在は無線で呼びかけているのだろう。そろそろ応援の要請でも来るか。

 

「まぁ、少し遅れても問題はないだろう」

 

 結局は観察を続けることにする。剣術部の連中が"彼"に対して何かしらの文句をつけてるようだ。

 まぁ、二科生ごときがでしゃばって一科生の先輩を無力化しているのだ。面目など丸つぶれだろう。

 

 

 結果、期待を裏切らずに乱闘が発生した。

 といっても、達也自身から何かをすることはない。ただ、攻撃を避けるだけ。

 それだけで、八人はいるであろう剣術部員は翻弄されている。

 痺れを切らし、魔法を行使しても先ほどの無系統魔法で封殺されている。

 

「果たして俺と同じ轍は踏むまいとしているのか、それとも単純に面倒くさいだけか・・・」

 

 見世物感覚で今まで見ていたが、どうやら今の乱闘に先ほどの女子生徒が達也の援護に行こうとしていた。

 確かに、先ほど"彼"に助けられていたのだ。ここで行くべきなのには違いがない。

 しかし、彼女は剣道部の主将に止められ、結局は参加することはなかった。

 

「不自然だな。今までの流れなら納得しそうにないんだが・・・」

 

 自分を助けた相手が困っている。ああいう奴らの場合、むしろ助けにいくといって聞かない場合の方が多い。

 

 そう思い、主将をよく観察する。

 そしたら、手首にあるものがみえた。

 赤と青で縁取られた、白のリストバンド。

 ベラルーシ再分離独立派の反魔法師団体"ブランシュ"の下部組織。

 No3が言っていた魔法関連施設というのは、恐らくはここだろう。

 

「やはりあいつはトラブルには巻き込まれる性質なのかもしれんな・・・」

 

 本来は敵である"彼"に苦笑しつつ、勝手に哀れむ。

 だが、こちらにとっては好都合な展開になりつつある。

 

「だが、おかげで早めに見つけることが出来たな。精々関わらせないでくれよ」

 

 

 

 

「"エガリテ"さんよ」

 

 




っていうことでやっと一巻分が終わりました!やったね!
原作ではこの時点で司氏がリストバンドつけていたかどうかとか全く分からないんですが、一応今回はつけてた設定にしました。ご都合主義です。

なんか好き勝手な改変ばっかり目立ちますが、そこは愛嬌と思ってみていただけると幸いです。

後、普通に感想のところに返信って出来るんですね。始めて知りました。
次回以降もしも何かあればそちらの方に返信するって形にしていきたいと思います。
尤も、自分でこれはあとがきに書きたいなと思ったらそちらの方にも書きますが。

次回、二巻に移ります。乞うご期待。

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