魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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ちょっとしたつなぎ回、かな?原作と対して変わったところはないんですが、その後の話がスムーズに進むので達也視点で書かせてもらいます。
流石にこれ単体じゃあれなので連続投稿できるようがんばります。


第十六話~発端~

【Wednesday,April 6 2095

  Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】

 

 

 

 

「達也くん、遅いわよ」

 

「・・・悪かった」

 

 借哉と別れた後、エリカと合流するべく教室へ向かったが誰もいなかったため、仕方がないからLPSを元に合流したが、周りは落ち着いて合流できるほど平和ではなかった。

 もはや夏祭りのそれとほぼ同じではないかと言えるほどのテントの群れに、進入部員獲得の為に勧誘してくる部員達。もはやここの中で落ち着くのは無理だ。

 今更ながら十分も遅れたことに申し訳なく感じてきた。

 

 一番の理由は、借哉の"私用"が何なのかを確認しようとした為であるが。

 

 

 結果は、"何も得られなかった"。

 正確には、入学式前と似た"力"を使って何物かと連絡を取ったのであろうことは見て取れた。ただ、肝心の内容がさっぱり分からない。"彼"にばれないようこっそりと"視ていた"為、細かな観察は何も出来なかった。

 

 完全な、無駄骨。

 これさえなければ一応は教室で合流できたのかもしれないと、思わなくもない。

 

 

「・・・謝っちゃうんだ?」

 

 もっともエリカにとってそんなことは関係なく、むしろ待ち合わせ場所にいなかったことを気にしている様子ではあるのだが。

 

「十分とはいえ、待ち合わせの時間を過ぎているのは確かだからな。俺が遅れたことと、エリカが待ち合わせ場所にいなかったことは別問題だろ?」

 

「あぅ・・・ごめん」

 

 だからこそ大真面目な顔で返答されると素直に謝ってしまうのだろう。エリカにしては珍しく一矢も射返すことができなかった。

 

「達也くんってさ、やっぱり性格悪いって言われてない?」

 

「心外だな。性格に文句をつけられたことは無い。人が悪いといわれたことならあるが」

 

「同じじゃん!てか、そっちの方が酷いよ!」

 

「あぁ、違った。人が悪いじゃなくて悪い人だった」

 

「そっちの方がもっと酷いよ・・・」

 

「随分疲れているようだが、大丈夫か?」

 

「達也君、絶対、性格悪いって言われたことあるでしょ?」

 

「実はそうなんだ」

 

「今までの流れ全否定なのっ?」

 

 エリカががっくりと項垂れたが、時間は有限だ。

 早めに行くに越したことはない。

 

「まぁ、冗談はこのくらいにして、早く行くことにしよう。このまま留まってても邪魔なだけだしな」

 

「それじゃ、エスコートよろしくね。達也くん」

 

 

 

 

 その後、ちょっとしたハプニングがあったものの(具体的にはエリカが勧誘に捕まったりなど)、とりあえず最初に二人が向かった場所は第二小体育館だった。

 尤も、逃げた先から最も近い場所がここだった、というのが一番だったのだが。

 

 第二小体育館、通称「闘技場」では剣道部による模範試合が成されていた。

 中でも女子二年生の演武は目を見張るものがあった。

 力ではなく、技で打撃を受け流している。しかも、彼女の方にはまだ余裕がある。

 模範試合にふさわしい華のある剣士だと思う。

 しかし、エリカにとってはさほど面白いものではなかったようだ。

 

「お気に召さなかったようだな」

 

「え?ええ・・・。だって、つまらないじゃない。手の内の分かっている格下相手に、見栄えを意識した立ち回りで予定通りの一本なんて。試合じゃなくて殺陣だよ、これじゃ」

 

「いや、確かにエリカの言うとおりなんだが・・・」

 

 エリカの意見に対しては、自分でもほぼ同じように思っていたため自然に口元が綻んだ。

 

「宣伝の為の演武だ。それで当然じゃないか?よくプロの武術家で真剣勝負を見せることを売りにしている人達がいるけど、本物の真剣勝負なんて、要するには殺し合いなんだから」

 

「・・・クールなのね」

 

「思い入れの違いじゃないか?」

 

 結局はエリカにとっては面白いものではなかった。ただ、それだけの話。

 エリカが乱入騒ぎでも起こす前に、エリカを促してその場を後にしようとして、先ほどとは別種のざわめきが背後から伝わった。

 ハッキリとは聞こえていないが、何事か言い争っているのは分かる。

 

「何かあったみたいだね。さて、どうするの?"風紀委員さん"」

 

 エリカが好奇心でウズウズしたように聞いてくる。

 もちろん、無視など論外だ。本来はしたいところではあるのだが。

 

「一応は見に行くさ。必要なら止めるけどな」

 

 

 

「剣術部の順番まで、まだ一時間以上あるわよ、桐原君!どうしてそれまで待てないのっ?」

 

「心外だな、壬生。あんな未熟者相手じゃ、新入生に剣道部随一の実力が披露できないだろうから、協力してやろうって言ってんだぜ?」

 

「無理矢理勝負を吹っかけておいて!協力が聞いて呆れる。貴方が先輩相手に振るった暴力が風紀委員にばれたらあなた一人の問題じゃ済まないわよ」

 

「おいおい壬生、人聞きの悪いこと言うなよ。防具の上から、竹刀で、面を打っただけだぜ、俺は。仮にも剣道部のレギュラーが、その程度のことで泡を吹くなよ。しかも、先に手を出してきたのはそっちじゃないか」

 

「桐原君が挑発してきたからじゃない!」

 

 切っ先を向け合っておいて、今更口論もなかろうにとは思いはしたが、当事者同士が疑問に答えてくれるのは有難かった。

 

「面白いことになってきたね。さっきの茶番より、ずっと面白そうな対戦だわ、こりゃ」

 

「見ている限りでは面白いんだがな・・・」

 

 エリカの言うとおり、確かに先ほどの演武よりは面白いことになるだろう。ただ、その後始末をするのは間違いなく風紀委員である自分だ。

 余計に時間を取られることを思うと、余り好ましくは思えない。

 

「おっと、そろそろ始まるみたいよ」

 

 もちろん、そんな浅はかな願いもむなしく、張り詰めた糸が限界に近づいていた。

 万一に備え、ポケットに突っ込んでいた腕章を左腕につける。隣の生徒がギョッとした顔で達也を見る。

 

 しかし、今注目すべきは対峙する二人。

 

「心配するなよ、壬生。剣道部のデモだ。魔法は使わないで置いてやるよ」

 

「剣技だけであたしに適うと思っているの?魔法に頼りきりの剣術部の桐原君が、ただ剣技のみに磨きをかける剣道部の、このあたしに」

 

「大きくでたな、壬生。だったら見せてやるよ。身体能力の限界を超えた次元で競い合う、剣術の剣技をな!」

 

 

 それが、開始の合図となった。

 

 

 "彼"が体育館外から見ていることを"眼"で確認しながら、いざという時のための"準備"を始めた。

 

 




ってことでつなぎ回みたいなもんでした。
もうすぐ1巻分が終わります。めっちゃ長くてびっくりしたけど書いてるとこんなもんなんだなぁと感じております。

なお、赤旗計画に関しては完全にオリジナル設定です。10月末のあれをやるとしても手回しは並列でやりつつ今の段階には大詰めにはいっているのかなぁと思ったり、大亜からの干渉が異様に多かったりするので、そこから作り上げたものです。

さて、次回、オリ主視点。体育館外とはいっても、誰も玄関から覗いてるとはいってないよ。

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