魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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部活動勧誘週間に入りましたね。
なおオリ主は活躍しません。なぜなら暗躍するから。


第十五話~情報~

【Wednesday,April 6 2095

  Person:operator4  】

 

 

 

 

 

「全員揃ったな?そのままで聞いてくれ。

 今年もまた、あの馬鹿騒ぎの一週間がやって来た」

 

 入学して僅か数日で風紀委員。これを好ましく思うかどうかは人次第だと思われるが、恐らく一般的な人にとっては名誉なことだと思うだろう。

 

 生憎と、新しく入った達也と俺にとっては何の価値もないものであったが。

 

「今年は幸い、卒業生分の補充が間に合った。紹介しよう。立て」

 

 渡辺委員長による釘刺しが終わった後、俺達を紹介するためであろう指示が入った。

 打ち合わせも予告もなかったが、まごつくことなく、すぐさま立ち上がった。

 

「1-Eの司波達也と、河原借哉だ。今日から早速、パトロールに加わってもらう」

 

 ざわめきが生じた理由は、恐らく二つ。

 一つは、1-Eというクラスを聞いたことから。

 もう一つは、恐らく"入学して直ぐに騒ぎを起こした奴が務まるのか"という不安から。

 

 まぁ、達也に関しては問題はないだろう。巻き込まれでもしない限り。

 

「誰と組ませるんです?」

 

「前回も説明したが、部員争奪週間は各自単独で巡回する。新入りであっても例外じゃない」

 

「役に立つんですか」

 

「心配するな。二人とも使えるやつだ。扱いは難しいかもしれんがな。実力で不満があるという奴は後で模擬戦でも申し込んでみろ。簡単にはいかないと思うぞ」

 

 渡辺委員長の返事に対して、質問した風紀委員は肩をすくめた。

 

「そんなことは分かってますよ」

 

「なら問題ない。他に言いたいことのある奴はいないな?では早速行動に移ってくれ。レコーダーを忘れるなよ。司波、河原両名については私から説明する。他のものは出動!」

 

 その言葉と共に、全員が一斉に立ち上がり風紀委員式の敬礼をする。

 どうも変わっているというより、古臭いといった方がいいであろうものなのだが、かっこいいからいいということだろう。

 

「さて、まずは二人にはこれを渡しておこう」

 

 横並びに整列した二人へ、渡辺委員長が腕章と薄型のビデオレコーダーを渡した。

 

「巡回時は常にソレをブレザーの右ポケットに入れ、違反行為を見つけたら直ぐにスイッチを入れろ。ただし撮影を意識する必要はない。風紀委員の証言は原則としてそのまま証拠に採用される。保険ぐらいに考えてもらえばよい」

 

「わかりました」

 

「了解です」

 

「携帯端末を出してくれ。委員会用の通信コードを送信する。・・・よし、確認してくれ」

 

 "学校用"の携帯端末に、正常に受信される。

 とりあえず常に"仕事用"と"裏仕事用"と"私用"の三つを携帯している。仕事用は正に"俺たち"の存在を知っている数少ない人間との連絡に使うもの。"裏仕事用"は単純に非合法工作などを行う際に使う端末。最後の"私用"は基本的に近辺の人間との交流に必要な時に使うもの。その点"私用"を使うのはある意味間違ってないのだが、風紀委員会との連絡に私用端末を使うというのは何かおかしい気がしなくもない。

 

「報告の際は必ずこのコードを使用すること。こちらから指示ある際も、このコードを使うから必ず確認しろ。最後にCADについてだ。風紀委員はCADの学内携行を許可されている。使用も指示を仰ぐ必要はないが、不正使用が判明した場合は委員会除名の上、一般生徒より厳重な罰が課せられる。一昨年はそれで退学になったやつもいるからな。甘く考えないことだ」

 

 途中まで聞いて、では不正使用をしたら抜けさせてくれるのかと思ったりはしたが、退学にまで発展するとなると控えるべきだろう。まだこの学校で、否、"彼"の周りでやらなくてはいけないことがある。

 

「質問があります」

 

 何かしら気になる点があったのだろう。達也が渡辺委員長に質問を投げかけた。

 

「許可する」

 

「CADは委員会の備品を使用してもよろしいでしょうか?」

 

 尤も、その内容は俺にとっても渡辺委員長にとっても予想外だったが。

 

「自前のCADは使わないんか」

 

「毎回持ってくるわけじゃないんでな」

 

「別に使っても構わないが、理由は?釈迦に説法かもしれないが、アレは旧式だぞ」

 

「確かに旧モデルではありますが、あれはエキスパート仕様の高級品です。バッテリーの持続時間の減少にさえ目を瞑れば、クロックアップできます。しかるべき場所に持ち込めば、相応の値段がつきますよ」

 

「・・・それを我々はガラクタ扱いしていたということか」

 

「とりあえずは予算に困った時はそいつを売れば問題ないな」

 

「・・・売らないからな?まぁ、そういうことなら好きに使ってくれ。どうせ今まで埃を被っていた代物だ」

 

「では、この二機をお借りします」

 

 "CADを二機"。本来二科生の生徒にしてはありえない選択だが、達也のスキルから考えるに、一つだけ可能性が無い訳ではない。ただし、もし予想があっていたら化けの皮が剥がれかけることになるが。

 

「二機?本当に面白いな、君は」

 

 そう笑う渡辺委員長の、認識の浅さは仕方のないものとして割り切った。

 

 

 

「さて、俺はエリカと合流することになっているんだが、借哉はどうするんだ?」

 

 部活連本部へ行く渡辺委員長と別れたところで、達也から声が掛かった。

 

「適当に巡回してるさ。ちょっとこっちでも別に私用があってな。他の奴らにはよろしくいっておいてくれ」

 

「わかった。また乱闘騒ぎなんて起こすなよ?」

 

「わかってるっての。もう懲りた」

 

 お互い軽い嫌味を掛け合いつつ、離れる。

 

 

 "私用"というのは、まさしく"俺個人の本来の仕事関連"のことなのだが。

 

 

 誰にも人目の付かない場所で、コマンドを開く。

 パスを開く時の速度も、何時もと同じ。

 しかし、相手が違う。それも、"調整者"経由で"連絡するように言伝された"のだ。

 

 

 〔operator3:連絡が遅かったじゃないか。何かあったか?〕

 

 

 俺が、生まれた時からの同期から。

 

 

 

 〔operator3:そっちは長期的バグ処理の最中か。ご苦労なことだな〕

 〔operator4:全くそっちは平和でいいな。さすが独裁国家なだけあるよ〕

 

 "管理者No3"。当初中央アジアあたりの管理を任され、今は大亜連合とその周辺の管理をしている。外交関連ではかなりハードな所だが、生憎彼にはソレに見合うだけの"調整者"の数を揃えているし、何より"管理者"にとってはあまり外交関連は本職ではない。ある意味最も気楽な場所といえるかもしれない。

 

 〔operator3:まぁそうカリカリするなよ。数少ない"同期"なんだ。思い出話ぐらいしたってバチは当たらないだろうさ〕

 〔operator4:それは言えてるが、生憎今は時間がない。さっさと用件を済ませて、思い出話はまた今度にしよう〕

 〔operator3:相当切羽詰ってるようだな。まぁ、内容はだるいから聞かんでおくさ。さて、本題だ〕

 

 そこそこの前話も終わり、いよいよ本題に移る。

 

 〔operator3:本来は伝えるべきかどうか悩んだんだがな。念のために日本にいるそっちには伝えておこうと思ってな〕

 〔operator4:厄介ごとか?出来るだけ簡潔に頼むぞ。その方が理解が早くなる〕

 

 じれったくなってきて、答えを急かす。

 

 帰ってきた答えは、確かに"わざわざ管理者の立場であるNo3から連絡する価値のあるものだった"。

 

 〔operator3:大亜連合が日本に対して大規模な行動を起こすつもりらしい〕

 〔operator4:期限は半年以内ってところか?〕

 〔operator3:いや、一年間に渡る大~小までの対日工作の集合群のようだな。あっちでは赤旗計画(ホンジー・プロジェクト)と呼んでいる〕

 〔operator4:勝利の赤旗、か。三年前のことを気にしすぎだな。で、一番最初の行動はいつだ?〕

 〔operator3既に始まってるな。ベラルーシ再分離独立派を炊き付けて、魔法関連施設を襲撃、情報を奪取させるつもりのようだ〕

 〔operator4:そうなると俺の方にも支障がでてくるかも知れんな。伝えてくれてありがとうな〕

 〔operator3:そっちに支障が出るなら中止させることもできるんだが?〕

 

 さすが同期だけあって気遣いが出来る。

 ただ、今回は気持ちだけ受け取っておくべきだろう。

 

 〔operator4:いんや、構わんさ。元々俺たちは"バランスを保つ"のが本懐。戦争に発展するかもしれないというレベルでしかない事案に俺たちが動くのは"職務から外れてる"。まぁ、もしも行き過ぎるようだったらそれなりの"制裁"を用意する必要があるだろうな。その時は頼むよ〕

 〔operator3:了解。せいぜい幸運を祈るよ。今度酒でも飲めたらいいな〕

 

 その言葉を最後にパスが切れる。

 

 相変わらず、気楽な奴だ。昔は相当苦労してたようだからまだ許せるが。

 

 

「・・・魔法関連施設の襲撃、か。俺の方じゃなけりゃいいんだがな」

 

 

 そう願いつつ、恐らくはここに来るのだろうなという直感が、確かに働いていた。

 

 




てな感じで、始めて別の管理者がでてきました。
お互いのことはあくまでNo3とかNo4とかいう感じで認識してますが、一応彼にも表向きの名前というのはあります。
え?その肝心の名前はなんだって? ・・・中国語とか毛ほども分からんのでまだつけてないです。

果たして早めに対策を立てられることになったオリ主はAKやらRPG7やらといった古臭い武器を持ったあいつらに対してどんなことをするのか。

・・・書きながら考えます。

次回、騒ぎが起きるかも。未定なんだけどね。

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