魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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どっちで書こうか悩んだんですよ。
結局、日付を跨ぐことはないんだし達也側で書こうってなりました。

んで、つかの間の日常が戻ってきたよ!次の日からまた嵐だけど。


第十四話~夕刻~

【Tuesday,April 5 2095

  Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】

 

 

 

 

「本当にお疲れ様だな。勝利祝いに何か奢ろうか?」

 

「どうせコーヒーしかないんだったら自分で買うから心配するな」

 

「ルートビアのつもりだったんだがな」

 

「東京でどう買うかも気になるが、それ以上に奢るといって何故ソレを選んだのかが一番気になる」

 

 服部副会長との模擬戦の後、もはや確定的になった風紀委員入りに抗議する余地などなく、今は借哉と一緒に渡辺委員長に連れられていた。

 

 といっても、遠いわけではなく、

 

「にしてもわざわざ生徒会室と風紀委員会本部の直通階段があるのか。どんだけコスト掛かってるんだろうなこれ」

 

 借哉が言ったとおり、直通階段があるためさほど苦労することはない。消防法は無視なのかと思いたくなる。

 

 渡辺委員長に続いて裏口を通り抜け、本部室へ足を踏み入れた二人は、一時硬直した。

 

「少し散らかっているが、まあ適当に掛けてくれ」

 

「少しっていうか・・・・有り体に言うと酷い。これが本当に女子も所属する委員会が使う部屋なのだろうか」

 

「そこまでいうか・・・」

 

「気持ちは分かるが抑えろ借哉。本人の前で言うのは失礼だ」

 

「気持ちは分かるのか・・・!」

 

 足の踏み場がないほど散らかっているわけでは、確かにない。

 だが、書類とか本とか携帯端末とかCADとか、とにかく色々な物で埋め尽くされた長机を見た場合、とても整理整頓をされてるとはいえなかった。

 

「達也。今回の場合、俺らがするべき行動はたった一つだと思うんだが」

 

「そうだな・・・」

 

 正直、見ていて耐えられない。

 

「委員長、ここを片付けてもいいですか?」

 

 

 

 そういうことで、借哉は棚の整理を、俺と委員長は机の上を整理することになったのだが。

 

「・・・なんていうか、言葉に出来ない」

 

「・・・すまない。こういうのはどうも苦手だ」

 

「借哉、このCADは恐らく棚のやつだ。そっちに入れておいてくれ」

 

「了解」

 

 ほとんど渡辺委員長は片付けに関しては役に立ってはいなかった。

 棚の方も先ほどよりかなり綺麗になりつつあるし、机も俺の周りはかなり整頓されてきた。

 

「うーん・・・このCADの群れはぶっ壊れてるかどうかもわからんな。達也、後でこれ見れるか?」

 

「分かった。だが先に固定端末の方を見させてくれ。CADは余り人気があるわけではないだろうからな」

 

「了解。棚にしまっておく書類はあるか?」

 

「左三つは時期が古い。一応分かる場所に片付けてくれ」

 

「左三つね。とりあえず本の近くに置いておく」

 

 恐らくそろそろ完全に片付けは終わるだろう。

 前よりは格段に良くなるはずだ。

 

 そこに、階段を降りてきた真由美がやってきた。

 

「・・・ここ、風紀委員会本部よね?」

 

「いきなりご挨拶だな」

 

 開口一番このセリフは借哉のそれと同じくらい無礼な気もするが、彼女の場合は気心が知れている為問題はないのだろう。

 

「だって、どうしちゃったの、摩利。リンちゃんがいくら注意しても、あーちゃんがいくらお願いしても、全然片付けようとしなかったのに」

 

「事実に反する中傷には断固抗議するぞ、真由美!片付けようとしなかったんじゃない、"片付かなかった"んだ!」

 

「酷い言い訳を見た」

 

 最後のセリフは、やはり借哉の物。

 先輩相手でもこの毒舌は変わらないのだろうか?本人は何気なく言っている気がするから余計性質が悪い。

 

「なるほど、早速役に立ってくれてる訳か」

 

「まあ、そういうことです」

 

 背中を向けたまま答えた後、ハッチを閉じて振り向いた。

 

「委員長、点検終わりましたよ。痛んでいそうな場所を交換しておきましたから、もう問題ないはずです。借哉、そこのCADはまた後で直す。今から直すと日が暮れる」

 

「使うかも分からんものだ。暇な時でいいさ」

 

 そう返す借哉も棚の整理は終わったようだ。バックから缶コーヒーを取り出していた。

 

「よかったじゃない摩利。事務ができる人が入ってくれて。どうやらスカウトに成功したみだいだしね」

 

「最初から拒否権はなかったように思いますが・・・」

 

 もはや諦念が入った声で真由美に応える。

 その態度が、真由美にはお気に召さなかったようだ。

 

「達也くん、おねーさんに対する対応が少しぞんざいじゃない?」

 

 とりあえず言いたいのは、自分に姉はいない。

 コーヒーを飲んでいた借哉も噴き出しそうになっていた。とことん人の苦労を見るのが好きなようだ。

 

「会長、念のために確認しておきたいことがあるんですが」

 

「んっ?何かな?」

 

「会長と俺は、入学式の日が初対面ですよね?」

 

 含む意味は、それにしては馴れ馴れしくないかというもの。

 しかし、どうやら悪手だったようだ。

 

「そうかぁ、そうなのかぁ。ウフフフフ。達也くんは、私と実はもっと前に会った事があるんじゃないか、と思っているのね?入学式の日、あれは運命の再開だったと!」

 

「ほんと見てて面白いな。嫌味抜きで」

 

「それを嫌味というんだ・・・」

 

「まぁ、そういうな。事実面白くなりそうじゃないか。案外悪くないんじゃないかと俺は思えてきたよ」

 

 そう笑いつつ、俺と真由美のやりとりを面白そうに見る借哉。

 

 

 彼は冷酷なのか、それとも愉快な人物なのか。この姿を見てると時々分からなくなる。

 だが、確かに彼の言うとおりではあるのかもしれない。

 案外、風紀委員入りも悪くはないのだろう。少なくとも、自分自身を認めてくれるという環境が少しでもあるという点から。

 

 そう、思い直すことにした。

 

 




完璧なお掃除回でした。

原作との違いは、この後沢木先輩方が達也たちと会いません。
理由?食堂で暴れたという事件が昼に起こったのでその後始末ですよ。ご苦労なことです。

服部さんに関してはあの人森崎とかと比べるとさほど性格が曲がってはいないんですよね。完全な実力主義的思考な故に、二科生でも実力がある人は案外認められるタイプ。
ただ、魔法科高校では二科生は今まで須らく彼にとっては無能だったでしょうから、こうなるのも仕方はないでしょう。

次回、一番うっとおしいイベントが待っているっ!

・・・はず

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