魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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大筋はあっても、書き方が分からない。
よくあると思うんです


第九話~交流~

【Monday,April 4 2095

  Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】

 

 

 

 

「・・・借りだなんて思わないからな」

 

「貸してるなんて思ってないから安心しろよ。腹は大丈夫か?」

 

「・・・余計なお世話だ」

 

 借哉に殴られた男子生徒がようやく立てるようになったらしく、悪態を付いてきた。

 文字通り"痛い目"にあったのに曲げることのないその姿勢は、評価に値するだろう。

 

「本当にお気楽でいいことだな。もう一発欲しいらしい」

 

「やめろ借哉。今度は庇えないぞ」

 

 特に、未だ誰よりも血が上っていそうな奴の目の前で態度を変えない事に関しては。

 男子生徒はこちらの方を向き、名乗りをあげた。

 

「お前が言ったとおり、僕の名前は森崎駿。森崎の本家に連なるものだ。」

 

「・・・それで?森崎の本家に連なるお坊ちゃんがどうしたんだ」

 

 借哉の煽りが混じった質問に対して、森崎は棘のあるセリフを返した。

 

「俺はお前達を認めない。優れた者(深雪さん)優れた者(僕達)といるべきなんだ」

 

 そう捨て台詞を残して、他の男子生徒に肩を借りながら姿を消していった。

 

「あそこまで強情張りだと逆に感心するな。どこまで意地を張れるか、見ものだな?」

 

 借哉がこちらに対して視線を向ける。

 別に森崎のプライドをへし折ることに興味などない。

 興味があるとしたら、そんなことを問いかける張本人についてだ。

 

「お兄様、もう帰りませんか?」

 

「そうだな。四人とも帰ろう」

 

 とにかく精神的に疲れた。これ以上ただ面倒なだけの事は避けたい。

 そう思って足を進めようとして、

 

「あ、あの!」

 

 呼び止められた。

 先ほどの女子生徒だ。

 出来るだけ今日はこれ以上関わりたくなかったのだが、そう断る前に相手から先に口を開いた。

 

「光井ほのかです。さきほどは本当にすみませんでした。失礼なことをしたばかりか、庇ってくれてありがとうございます。森崎君はああ言いましたけど、大事にならなかったのはお兄さんのおかげです」

 

「・・・どういたしまして。でも、お兄さんは止めてくれ。達也、でいいから」

 

「分かりました。それで、その・・・・」

 

「・・・なんでしょうか?」

 

「・・・駅までご一緒してもいいですか?」

 

 どちらかというと、好意的な意味を含むその言葉に、全員拒否する道理などなかった。

 

 

 

 

「・・・じゃあ、深雪さんのアシスタンスを調整しているのは達也さんなんですか?」

 

「ええ。お兄様にお任せするのが、一番安心ですから」

 

「少しアレンジしているだけなんだけどね。深雪は処理能力が高いから、CADのメンテに手が掛からない」

 

 "普通の"高校であればごく当たり前にありそうな雰囲気。

 しかし、"魔法科"高校という枠で見てみると"一科"と"二科"がこのような状況を作り出しているのはかなり珍しいといえるだろう。

 お互い、きちんと理解しようとさえすれば案外仲良くなれるのかもしれない。

 

「CADの基礎システムにアクセスできるスキルがあるんだからな。大したもんだ」

 

「しかも高校生でそれだからな。将来有望な魔工技師になれるな」

 

「どうせならあたしのホウキも見てもらえない?」

 

「無理。あんな特殊な形状のCADをいじる自信はないよ」

 

「あはっ、やっぱりすごいね、達也くんは。これがホウキだって分かっちゃうんだ」

 

 そういってエリカが取り出したのは、先ほどの騒動でエリカが使おうとしていた警棒だった。

 とはいっても、それをCADだったと分かっていたのは俺以外だと深雪ぐらいだろうが。

 

「えっ?その警棒、デバイスなの?」

 

「うんうん、普通の反応をありがとう、美月。皆が気が付いていたんだったら滑っちゃうとこだったわ」

 

「・・・どこにシステムを組み込んでるんだ?さっきの感じじゃ、全部空洞ってわけじゃないんだろ?」

 

「ブーッ。柄以外は全部空洞よ。刻印型の術式で強度を上げてるの。硬化魔法は得意なんでしょ?」

 

「・・・術式を幾何学模様化して感応性の合金に刻み、想子を注入することで発動するって、あれか?そんなモン使ってたら、並みの想子量じゃすまないぜ?」

 

 レオの得意分野だけあって、そこそこ悪くない回答を出した。

 しかし、結果は半分はずれだった。

 

「流石に得意分野ね、でも残念。強度が必要になるのは、振り出しと打ち込みの瞬間だけ。その刹那を捕まえて想子を流してやれば、さほど消耗しないわ。兜割りと同じよ」

 

 ただし、エリカからもたらされた正解は限りなく次元が違うものだったが。

 

「エリカ・・・兜割りって、それこそ秘伝とか奥義に分類される技術だと思うのだけど。単純に想子量が多いより、余程凄いわよ」

 

 深雪が全員を代表して答えた、何気ない指摘だったがエリカの強張った顔は彼女が本気で焦っていることを示していた。

 

「達也さんも深雪さんも凄いけど、エリカちゃんも凄い人だったのね・・・。うちの高校って、一般人の方が珍しいのかな?」

 

 美月の天然気味な発言に答えたのは、それまで押し黙っていた北上雫だった。

 

「魔法科高校に一般人はいないと思う」

 

 この言葉で、いろいろと訳ありの空気は霧散する。

 その言葉に一番反応したのは借哉だった。

 

「確かに、全員並みの人間じゃあないよな。まぁ退屈しないでいいのかもしれんがな」

 

「本当にそう思ってるのか?心底面倒くさそうな顔をしているぞ」

 

 そう返すと、借哉は意味ありげに笑った。

 

「まぁ、そういう気持ちもない訳ではないがな。ただ、単純に"興味がある"ってだけだ。俺自身の問題もない訳ではないしな」

 

 そう言うと、彼は一枚の紙切れを渡してきた。

 恐らく中身は、公には話せない内容。

 

 

 やはり、そう来るか。

 何もない場合は、こちらから提案するつもりではあったのだが。

 

 

 紙切れの内容は、たった一文のみ。

 全ては、そこで始まると言わんばかりのものだった。

 

 

 

 

『21:00 高校付近の公園にて待つ。内容は"入学式前の事について"』

 

 




最近どんな感じに書こうか悩んじゃうんです。
こんな感じに進めようとは思ってるけど、どういう風なやり取りが自然か、みたいな。
元コミュ障の私には到底わかりっこないんで行き当たりばったりなんですけどね。

ついでに、エリカのCADについては借哉は気づいていませんでした。
中が空洞ってのは分かるけど、それ武器になんの?みたいな。
ただ、魔法師だしそういうもんなのかって流してるだけです。

次回、始めてのお話(腹黒)。やっと序盤の雰囲気に戻れる。

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