魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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伏線回。


第二章十五話~印象~

【Tuesday,October 21 2096

  Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】

 

 

 

 

 周公瑾の捕縛。

 四葉真夜から協力を"依頼"された一件。

 

 実際難しい話ではある。黒羽単独では捕縛する事が出来ず、四葉が総出で当たっても取り逃がす可能性がある。故に九島家にまで行って協力を仰いだ。

 

 それ故に"依頼"として来た理由に疑問が残る。

 

 確かに彼を捕縛するのは国防、及び諜報の観点から重要ではあるのだろう。また、その背後にあるであろう"何か"が四葉の利となる事も。

 

 であるのならば、本来は有無を言わせない"命令"と言う形を取る筈だ。

 最早九島家が衰退しつつある現状だからこそ、七草や十文字に対して一定の成果を示す事で優位に立つ必要が有るのだろうから。

 

 

 加えて言うならば、"彼"の動向も気になる。

 

 

 河原借哉はパラサイドールの一件以降は目立った動きを見せていない。

 

 派手な事はした。その影響で後始末に追われている可能性も無い訳ではない。

 しかし、正にこう言った案件は"彼"にとって有利となる案件が転がっていても不思議では無い。

 

 しかし、“彼"は今回の一件では静観に徹している。

 

 

 

 もしくは、"彼"は既に動くべき局面を見据えているのか。

 

 

 

 そう考えても、間違いでは無い事態が起こっていた。

 

 七草家の執事だった名倉三郎が"京都"で殺害されたのだ。

 

 元々七草の守護領域は関東近辺であり、京都で死体を残すと言う事は"仕事"をしなければならなかった事を意味している。

 

 そして、京都では周公瑾が今でも逃亡を続けている。

 

 事情を知る人から見れば、無関係と思える事では無かった。

 そしてそれは七草真由美からしても他人事では無かったのだろう。

 彼女からの協力要請を受け、二十一日に向かう事になった。

 

 

 

 彼女に協力する事が出来たのは、無論それが糸口になる予感がした事も事実だがもう一つ理由がある。

 

 簡潔に言えば、"京都の伝統派古式魔法師"が此方に対して比較的ではあるものの協力的だったのだ。

 

「"烏"の邪魔をする事がどれだけ命知らずな事かは私にも分かります」

 

 私立探偵を使って接触を図ってきた呪い師はそう言っていた。

 恐らくは第九種魔法開発研究所の壊滅の一件で"烏"が関わっていると判断したらしい。

 

 期せずして恨みが晴れた形となった以上九島家や十師族相手に敵対する必要性がないと言う事らしい。尤も鞍馬や嵐山の場合は大陸側に乗っ取られている為、未だに抵抗は続くだろうとの事だったが。

 

 

 

 結果はまずまずと言った所。

 周公瑾か、それに近しい者の手口が分かった分相手の術の効果は半減する。

 いざ相対した時には比較的とは言え楽になるだろう。

 

 幸いな事に空きがあったホテルの一室で、先に帰った深雪に電話し終えた所で部屋の扉がノックされた。

 ドアの手前にあるモニターを点けると、そこに映ったにはドレスアップした真由美だった。

 

「どうしたんですか、こんな時間に?」

 

 扉を開けてそう訊ねた。

 

「達也くん、少し聞いて欲しい事があって。ついでだけど、お食事もまだでしょ?地下のフレンチを予約しちゃったから、一緒に食べに行かない?」

 

 どうやら此方がエスコートするのは決定済みらしい。

 

 しかし、彼女は聞いて欲しい事があると言っていた。

 状況だけを聞けば色恋沙汰の様な気もするが、今回に限って言えばそういう訳でも無いだろう。

 

「分かりました。着替えますので、ロビーで待っていただけませんか」

 

 そう述べ了承の意を取った後、ドアを閉め最低限のドレスコードを満たすであろうスーツに着替える。

 

 

 ロビーに着いた後にレストランでウェイトレスに案内されたのは、周りを壁で囲まれた個室だった。

 

「・・・うん、盗聴の心配はないみたい。達也くんは何にする?」

 

 そう辺りを見回して真由美が聞いてくる。

 やはり気を配らなければならない内容なのだろう。

 

「そうですね、俺はコースにしようと思います」

 

「なるほどね。アラカルトも楽しそうだけど、初めての店だしコースの方が無難かな」

 

 こう言ったやり取りの後、一先ず料理が運ばれてきた所で真由美が口を開いた。

 

「最近、家の方で妙なやり取りをしてて」

 

「妙・・・と言うと?」

 

「内容は一切不明。態々手紙の形式にして、毎回違う人が持ってくる。父はそれを読んだら直ぐにその場で燃やして、返事を書き始める。書いてる所を見る事は出来ないし、父はそれをまた毎回違う人に頼んで違う場所に持っていく」

 

「随分と防諜を気にしたやり方ですね。そのやり取りが始まったのは?」

 

「多分、九月の初め頃。最初の頃は少し様子がおかしかった様にも思うわ」

 

 全く持って内容が分からないやり取り。しかし、一番気になるのは一つだ。

 

「どうしてそれを俺に話そうと?」

 

 此処までなら十師族にとっては有ってもおかしくない事だ。態々此方に話さずとも、彼女には相談相手が山ほど居るはずだ。

 

 此方の問いに対して、真由美は少々恥ずかしそうに述べた。

 

「最近ね、父が達也くんの事をどう思うか、なんて事を聞き出して」

 

「・・・俺を?」

 

 思わず聞き返す。

 この話の流れで俺が出てくる要素は一切無かった筈だ。

 しかも、内容の意味も不明。彼女が俺に対して何を思う事がどう繋がると言うのか。

 

「別に、そういう訳じゃ無いんだけど・・・。私に取ってはほら、達也くんは弟のようなモノだし」

 

 唖然としているところを見て、真由美は慌てて手を振る。

 

「それで、ほら。もしかしたら達也くんに迷惑が掛かるかもしれないって思って。念の為にね」

 

「はぁ・・・態々ありがとうございます」

 

 彼女の様子に幾らか毒気を抜かれながらも思う。

 

 俺が彼女に纏わる厄介事を被るとは、どういう事なのか。

 

 無性に、この事が後に響く様な気がしてならなかった。

 

 

 

 





という事で繋ぎ編・・・ではなく古都内乱編終了。此処は原作との変更点がさほど無いので・・・。

伏線の意味は一体なんでしょうね。とか言いつつ案外原作読んだ方々なら分かりそうな気もする。

次回、四葉継承編突入。

なお現在原作を参考に出来ない状況下なので呼び方や設定に矛盾が出たかも知れません。その場合は随時修正します。

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