魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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繋ぎ回。少なめです。


第二章十四話~博打~

【Monday ,August 17 2096

  Person:operator4】

 

 

 

 

 結局の所。

 幾ら権力を持ち、武力を持ち、知識を持っていたとしても。

 

 時代などと言う物を変える事は出来はしない。増してや、人の心など。

 九島烈に言った言葉を思い出し、思案に浸る。

 

 幸せさえ保障されれば、他は要らない。

 成る程、それは真理なのだろう。その真理を、思っていたより俺は軽く見ていたのかも知れない。

 力を持つ故が苦悩など、今迄の人間にどれ程あっただろうか。

 

 そしてそれを九島と同じ様に、四葉や"彼"が望んでいたのだとしたら。

 

 後は自ずと決まってくるだろう。

 

 

 

「・・・それで、結末はどうだった」

 

 そう、モニターの向こう側に居る四葉真夜に問いかける。

 本来、魔法師のフォックスハントは魔法師の方が有利なのだが。

 

「残念な事に逃げられたわ。監視の事も考えると恐らくは横浜中華街からも逃げ出すでしょう」

 

「今はまだ国外へ出てないだけマシだな。横浜と言うホームグラウンドから追い出す事が出来たのなら取り返せる。其処だけは念頭に置いておけ」

 

 本当に、マシでしか無い。

 怒っても仕方がない以上表には出さないが、今決着を付けた方が本当は良かったのだ。

 

 無論、四葉自身が策を練っている可能性はある。

 そうである以上、油断は出来ない。信用なぞ以ての外だ。

 

 とは言え、七草に寝返るだけの道理も無い。

 今はまだ、機を待つ他無い。

 

 強いて言えば周公瑾含む、いくつかの火種だが・・・。

 

「それで、結局お前達だけで可能なのか」

 

「潜伏先の特定に凡そ一月、そこまでが正念場ね。後は達也さんに頼めば時間の問題でしか無いわ」

 

「アレに頼るつもりか」

 

 そう此方が訝しげに聞くのに対して、真夜は笑みを浮かべながら答えた。

 

「折角貴方達が背後に居るんだもの。"彼"が使い物になるかどうか、四葉に従えるのかどうか。試してみても良いんじゃ無いかしら」

 

 確かに、一理ある。

 しかし一方で、これは只の確認作業にしかならないだろう。

 

 "彼"の行動基準など、初めから一つしかない。

 

 妹・・・司波深雪の意思・意向・利益に沿うかどうかだ。

 そしてそこには倫理や道徳、道理が介在する余地は無い。

 

 そしてそれは四葉真夜も分かっている。

 問題は、それを社会が許容せざるを得ない様に先制出来るかだ。

 

 仮に、四葉真夜が出し抜かれた場合。

 ある意味では日本の危機にまで至る。

 

 

 しかし、同時に付け入る隙が出来る。

 

 

 此方にとっては、年末までが見定める期間だ。

 四葉真夜が、四葉が最後まで舞台の上に立つ資格があるのか。

 

 

「まぁ、良い。可能と言うのなら任せる。今回は下手に出ても仕方がないしな。好きな様にしろ」

 

「えぇ、そうさせて貰うわ」

 

 そのやり取りを最後に、通信が切れる。

 

 煙草に火を点け、後の事を考える。

 

 此方側の得策は、可能な限り"彼"に恩を売る事。

 残念な事に今回の一件ではパラサイドールの実働体全てを彼に任せた形になっている。簡単に言うならば借りが有る。

 本来なら今回の支援で全てが済んだ筈だが、これのおかげで後一歩が必要となって来ている。

 

 無論、このやり取りが信頼関係の積み重ねにも繋がる以上悪い話では無い。

 今回の場合、"彼"に此方が不可欠な存在だと思わせれば良いのだ。

 此方にとっては駒である。だが、後ろ盾としては最大級。代わりなど存在しない。

 

 一方で都合の良い存在と思われ過ぎる訳にも行かない。

 "彼"との関係はどう妥協しても対等以上であらねばならない。

 

 

 つまり、周公瑾の件では静観が最も良いだろう。

 後に残るは、唯一人。

 

 

「無粋な輩は馬に蹴られるのが道理。では草葉も残らぬ、馬さえ斃れる大地では・・・」

 

 

 

 この先にあるは無数の不幸、無数の不条理。

 欲に塗れた外道が織り成す黒き渦。

 

 そこに残るは修羅の世界。

 屍肉を喰らい、骨さえ残さぬ外道達の天国。

 

 時代がそれを望んでいる。

 それを砕くも慣れるも、決めるは主役のみ。

 

 

 

 そして此方には全てのカードがある。

 勝つも負けるも、"彼"が選ぶ唯一つの選択によって決まる。

 

持ち金全てを賭けても(オールインでも)まだ足りない。折角の山場なんだ。此処で賭けなきゃいつ賭けると言うのか」

 

 

 思わず笑みが浮かぶ。

 

 

「折角七草が除草剤を撒いてくれるんだ。お膳立てされるのなら、乗らなきゃな」

 

 

 

 

 全てはいずれ来る、ただ一回のコイントスに。

 

 

 

 

 

 

 




と言う事でスティープルからの繋ぎ含めてひと段落。次は達也回とログを挟んで四葉継承編に移ると思います。

と言うのも今回はオリ主が絡む必要が無い。名倉さんの生命を気にすべき道理はオリ主にはありませんし、色んな意味でハッスルやらかした結晶であるお孫さんを何とかしてもしゃーないし出来るはずも勿論ない、と。ヘイグ兄貴なら幾らでも綻びが出てくるんでそこにオリ主が飛び込む余地が有るんですが・・・。まぁ、仕方ない。

次回、達也回。古都内乱を使用した盛大な繋ぎ回。此処らへんからは完全に部分部分すっ飛ばしという意味でスピードアップ。

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