魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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投稿が遅れました。理由は余り無いです。そして今回も前振りです。




第二章十話~密会~

【Saturday ,August 14 2096

  Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】

 

 

 

 

 結局の所、実際に行動に移るのは当日になった。

 自分自身では感じていなかった物の、過密なスケジュールは知らず知らずの内に自身を疲弊させていたらしい。

 今思えばあの時無理して襲撃に行ったとしても十全な結果を得る事は出来なかっただろう。そう考えると、深雪が止めてくれたのは有難い事だったと言える。

 しかし、相手に時間を与えてしまったのは事実。お互いにとは言え準備が整った相手に仕掛ける以上厳しい物になる。

 

 

「・・・つまり、俺に非合法破壊工作員となれと言う事ですか?」

 

 だからこそ、此方を良い様に利用しようとする"味方"には不満が残る。

 

「そう解釈されても仕方が無いと思っているわ」

 

 藤林が毅然とした態度で此方の言葉を受け止める。彼女自身の立場から考えると仕方が無いとも言える。しかし、それで納得する義務も此方には無い。

 

 彼女が要請して来たのは、パラサイドールの処理。

 風間少佐の命令によるものであると彼女は言ったが、彼女自身が藤林家の出身。私情もあるかもしれないが、パラサイドールそのものに細工をされた可能性が薄い以上不自然な動きだ。

 

 とは言え、元々やろうとはしていた為断る理由はない。しかし、監視が着く可能性を考慮すると考えざるを得ない。

 何しろ"彼"と組む予定だったのだ。"彼"と独立魔装大隊は未だ関係が改善されていない。

 "彼"は気にしていないだろう。しかし、もし監視の目に捉えられた場合は独立魔装大隊側にとっては"司波達也が独立魔装大隊を裏切った"と映る可能性がある。

 後ろ盾を失うリスクがある。十師族として認められていない現状では限りなく危険だ。

 

 とは言え、現状後ろ盾としての効力も失われているのは事実。そうでなければ、こんな事を頼んでは来ない。

 

 では、"彼"に寝返るか。

 これも難しい。今は幾らか沈静化したが、"彼"にとって一番排除したい敵とは俺自身だ。また、今回の件以外では貸しが多い訳でもない。場合によっては背中から撃たれる可能性だってある。

 

 

 "共通の敵"さえ見つける事が出来た場合、今回の様に共闘関係には出来るのだが・・・。

 

 

 答えは、幾らか時間を置いた後に出た。

 

 

「・・・良いでしょう」

 

 

 そう答えた。

 様々な問題はあるが、そもそも独立魔装大隊さえ"今の所関係が良かった"と言うだけであり完全に味方とは言えない。相互に利用し合っていた以前の関係に戻ったとも言える。そう考えると、自らの立ち位置の問題はどうとでもなる。

 

 更に言えば、今回"彼"と手を組む事を見せる事で独立魔装大隊に対して牽制に近い効果も得られるかもしれない。

 最初から誰かしらの駒になる気は無い以上、あまり都合のいい存在と考えられるよりは良いだろう。

 

 そして、何よりも支給される装備面に関しては独立魔装大隊の方が良い。"彼"が非魔法師勢力である以上、最新の魔法装備は簡単には用意出来ないだろう。"自前の武装・戦力"が現状を打開するには何よりも必要だ。今回の件で、恐らくは"破棄された筈の最新鋭装備"を手に入れる事が出来ると考えると悪い話では無かった。

 

 渡されたムーバル・スーツや車について説明した後、藤林は此方の言葉に対して逃げる様に別れを告げた。

 

 

 

 まったく、呆れるほどにくだらない茶番だと笑われても仕方ないだろう。

 

「・・・終わったぞ、借哉」

 

 作業車から出た後に端末で呼び出す。

 そこから1分も経たずに、"彼"が姿を表した。

 

「この事態を利用して二股とは恐れ入るな。第三勢力でも立ち上げるつもりか?」

 

 挨拶の代わりに皮肉を言ってくるが、洒落にさえならない。出来る事なら一番に避けたい事の一つであると言うのに。

 

「そこまで面倒な事をする気は無い。それに、どの道今回の件では利害が一致しているだろ」

 

「そうだな。それじゃあ"仕事"の話に移ろう」

 

 そう言って借哉が資料を渡してきた。

 

「作戦開始は事前の話の通り競技開始三十分前、午前九時を予定している。こちらの部隊の内アルファ分隊がパラサイドールを管理しているであろう移動拠点の捜索、制圧を行い、ブラボー分隊が俺と共に第九研を襲撃する流れになっている。チャーリー分隊をお前の直掩につける。好きに使ってくれ。通信はお前が使う機器でも出来るだろう。詳しくは資料の中にある」

 

 と言う事は、"彼"はこの後直ぐに部隊の一部と共に移動するのだろう。恐らくは奇襲が目的。と言う事は、あまり時間を掛けると作戦そのものが上手くいかない可能性も出てくる。伝えるべき事は素早く伝えた方がいいだろう。

 

「分かった。俺は先頭で戦う。そっちの部隊は牽制と後始末だけやってくれればいい」

 

「だろうな。それじゃあその通りに。八時五十分には指定の地点に部隊を待機させておく。何か要望はあるか?」

 

 その問いに対して、一つだけ答えておく。

 

「作戦開始時間を遅くすることは可能か?こっちは周りの目もある。開始直前あたりが都合がいいんだが」

 

 場合によっては周りの目を誤魔化す必要もある。そう考えると、案外競技開始時刻に近い方が動きやすい。

 

 こちらの要望に対して、"彼"は直ぐに頷いた。

 

「分かった。作戦開始時刻を九時二十分に変更しておく。ただしそれを過ぎた場合はアルファ、ブラボー共に作戦を開始せざるを得ない。間に合うようにしろよ」

 

 そう言って"彼"は煙草に火をつけ、手を振りながら去っていく。

 

 

 まったく、ひどい茶番劇だろう。

 しかし、それも明日までだ。

 

 例え誰かの思惑通りであったとしても、"自分達の為に"片を付ける。

 

 





と言う事で別行動に致しました。
最初は借哉とお兄様の共闘をやろうと思っていましたが、借哉が第九研を標的としないと成り立たないので少々強引ながらここから借哉は別行動です。

なお1分隊規模で襲撃を掛けるには不十分では?と言う問いについては追々。

まぁ某ゲームでは特殊部隊員二名だけで基地襲撃して帰ってきた人も居ますし。

次回、オリ主回。朝日が昇る前に動き出す。

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