【Tuesday ,August 7 2096
Person:operator4 】
軍事教練のメニューだ。
特戦群の一人が、九校戦の競技一覧を見て確かそう言っていた。
渡河戦、上陸戦を想定したロアー・アンド・ガンナー。
直接の近距離戦を鍛える為のシールド・ダウン。
そして、森林間の行軍、侵攻を想定しているスティープルチェース・クロスカントリー。
特に最後の一つは高校生にやらせる様な競技ではない程だ。
素人目に見てもこれらの競技の性質から、強硬派の手引きによるモノだと分かるだろう。
何せこれらのメニューのほぼ全てが防御戦を主としていない。精々が離島奪還、若しくは幾らか譲ったとしても機動防御が精々と言った所だろう。
尤も、飛行魔法が出てきて以降は最初の一つは特殊部隊以外は必要ない教練科目になるかもしれないが。
問題は、国防軍強硬派が今尚情勢を把握せず、独断に走っている点だろう。
物事には必ず時期がある。そして、物事を起こす前には必ずそれに対して身内割れを起こしてはいけないのだ。
その点では彼らは直接武力行使を行なっていない点穏健派よりは良い性格をしている。しかし、武力さえ使わなければ何でも構わない訳では無いのだ。
何より、彼らには前科がある。
最初に、戦略級魔法の使用を後押しし、後の上陸戦まで検討していたなど。
此方の
今迄消してきた敵と同じ様に、彼らもまた瓦解させなくてはならない。
四葉が直接、彼らの処置を行なってくれる。
後は、"九島の件"のついでに彼らの企みを阻止するのみ。
とは言え、微妙にまだ動く時では無いのかもしれない。
「準備は出来ているか?」
そう部隊員に聞くと、彼は頷いて偽造された"彼"の身分証明書を差し出す。
「問題はありません。"お客さん"の準備が出来たらいつでも行動可能です」
「各種戦闘装備は」
「ムーバル・スーツでしたか?あれは届いたらしいです。どうも飛行魔法を使える様にした物で、原理的にはアーマースーツに近いらしいですが・・・」
「我々では嵩張るだけの代物だな。一応此方の各種非殺傷武器も一式揃えてやってくれ」
そう指示し、一旦その場を離れる。
夜になり、"彼"から動くとの連絡が来たものの、まだ完全な動員体制には至っていない。
無論彼が何にも増して動くと言うのであれば共に出るつもりではある。しかし、"彼"の多忙さと疲労具合から察するに恐らくは止められるだろう。彼自身がそれらの微妙なコンディション把握が出来ていない。そして、それを妹さんは必ず見過ごさない。
つまる所、恐らくは今日動く事は無い。
状況を推測すると動くのは恐らくは当日となる。
となると、幾らかの準備の余裕が出てくる。
既に侵入する手筈は整い、各種装備も整えつつある。
彼が他に求めるとしたら、恐らくは唯一つ。
此方からは絶対に提供出来そうにない代物。
「後ろ盾。偽装書類さえ見破られ、正体が露呈した際にあると望ましい"拠り所"」
しかし"彼"は敵に近い。また、共闘関係にあると見られても構わないが味方と見られると困る。
となると、露呈した際に戦力を一時提供する用意さえしておけば良いだろう。
腐れ縁として放置されそうになったのなら適当な強硬派残党を嗾けてマッチポンプすれば良いのだ。どうせ"彼"には見破れない。見破る前に蹴散らしてしまう以上見破っても仕方ない。
そう結論付けた所で端末にメールが届く。
送り主は、"彼"から。内容はやはりと言うべきか、"作戦実行時期の競技当日までの延期"。
これを見越して本格的に準備していない以上特に困る事もない。緩い準備態勢を解く様に通達し、各々の待機場所に戻っていく。
悲しい事に、去年とは違いホテルの部屋に泊まれない。その場に居続けてもコーヒーやその他が尽きる事が無いのは喜ぶべき事だが。
やるべき事は、全て予定通りにやれている。
後は、当日を待つのみ。
九島の
国防軍強硬派も。
そして、九島烈の企みも。
全て、この時に片を付ける。
ほぼスティープルチェースのみとは言え二巻使って九話。この分だと思ったより早く時系列が年を越しそうな気配。
ここら辺はオリ主が既に高校生では無いが故の弊害。出来るだけ絡ませたいとは思うけど。
さて、次回。前日か当日かは不明。原作より結構早い段階で距離が離れていきそうなパターン。