魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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第二章八話~計画~

【Saturday ,August 4 2096

  Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】

 

 

 

 

 

「良くもまぁ"こんな手"(警備員に成り済ます)を使おうと思ったな」

 

「まぁ・・・。これが手っ取り早かったからな」

 

 エリカ達と顔を合わせた際に借哉が現地で警備員をやっていたと聞かされた時は最早何と言えば良いか分からなかった。

 

 実際効果的だ。恐らく最も怪しまれずにコース内に侵入出来る。

 しかし、随分と荒い方法ではある。後ろ盾がしっかりとしているか、逆に何もない人間でないとこのような手は打てないだろう。

 

 

 しかし、今回に限って言えば大事なのはこの様な茶番(喜劇)では無く、実際に行う"仕事"の方だ。

 

「それで、当日はどうするつもりなんだ?」

 

 段取りについて借哉に聞くと、彼から資料が渡された。

 表紙には、"作戦要項"の四文字が。作戦名を用意しない辺り彼らしいとも言える。

 

「当日、競技開始三十分前に応援要員が検知システム異常の確認の為に侵入出来る手筈になってる。無論、そこから先の作戦時間はフリーだ。お前や部隊の侵入を知る数少ないまともな警備員も"見たら忘れろ"を徹底してある」

 

「つまり、制限時間は無いんだな?」

 

「基本的にはその通りだ。流石に競技終了三十分後辺りを目安にはしてもらうがな」

 

「競技当日以外の日に忍び込む事は可能か?」

 

 そう聞くと借哉は少し悩んだ表情を見せる。

 P91(ピクシー)を持ち込んで居る以上位置が早い段階で判明する可能性もある。その時に忍び込む事が出来るならその方が良い。

 

 暫く考え込んだ様子を見せた後、借哉は口を開いた。

 

「・・・二日ほど待てば警備員の偽装身分証明書が作れるとは思う。体面の事も考えるとどうしても一個分隊は付ける必要が有るが、その際はそっちの行動に合わせる様各種指示を出してくれて構わない」

 

 つまり、日を置けば有る程度万全の体制で挑める訳だ。

 この案は、現状ではかなり良いと言える。複数人の軍人の援護を受けながら行動出来るのは相手の数が多い場合の保険となる。

 これでいざという時には直ぐに介入出来るだろう。

 

 

「分かった。必要装備に関しては後で端末に送る。揃えておいてくれ」

 

「あぁ、分かった。指定した日から大体一日から二日で届くとは思う。他に質問は?」

 

 そう聞く借哉に対して、先の奈良市での調査結果を絡めながら聞く。

 

「確か九島に方術士が流れ込む予定だったと聞いたが」

 

 奈良市で深雪が黒羽から貰った情報はP兵器、つまりパラサイドールに関する性能などが書かれていた。

 一方、八雲が手に入れた情報の内容は車両事故で死んだのが九島家に受け入れられる予定であった方術を用いる亡命者三名等で有る事だった。

 恐らくは、彼らの能力からパラサイドールに何か行おうとしていたのは確実だろう。そしてそれを忌避した借哉が事前に芽を潰したと考えるのが自然だ。

 

 そして、此方の質問に対して借哉は全面的に肯定した。

 

「鋭いな。お前の言いたい通り、彼らは九島に行く予定だったし、下手にあれを弄られて性能が変わってしまうのは不味かったから潰した。お陰で様々な物が見えてきたがな」

 

 それには肯定せざるを得ない。

 あの事件で九島内部でもまたこの実験に対して様々な考え方を持つ勢力が有るのだと言う事を確認出来たのだから。

 

 

 その点では、藤林は実験に対して反対する勢力に居る、と言う事も考えられるが今回は無視する。例え彼女の助力が得られたとしても微々たる物になってしまうだろう。

 

 

 取り敢えずは、今回はお互いに敵ではなく寧ろ味方に近い立ち位置だと言うのは理解した。しかし、それでも問題はある。

 

「第九研に対する襲撃計画はあるのか?」

 

 彼自身は第九研がメインの襲撃目標だと言っていた。しかし、今回の様子を見る限り寧ろ九校戦で投入されるパラサイドールの方に比重を置いている節が有る。

 その間、借哉はどうやって襲撃するつもりなのか。

 

 そう思って質問すると、彼は笑った。

 

「九島烈が出てこないならば、やりようは幾らでも有る。部隊を全て此方に回している訳でも無いし、いざという時は賑やかになるか何も無くなるかの二択だ」

 

 つまり破れかぶれで失敗したら全てを消し炭にすると良いたいのか。

 実際一番早い解決方法では有るもののそれをやって特に制裁を気にすることも無く行動に移せる点格差を感じずにはいられない。

 "分解"などを大っぴらに見せられず使う事も難しい此方からすると羨ましい話である。

 

 

 兎も角、これで全ての確認事項をチェック出来た。

 後は九校戦での仕事の合間を見つけつつ攻めれば済む話だ。

 

 

 

「ところで、達也」

 

 思い出した様に借哉が声を掛けてくる。

 

「そっちの"家"の分家筋の方が何かしら動いてるのは分かってるよな?」

 

「含む意味が広すぎて分からないな。どう言う事だ?」

 

 何かあるのか。

 そう思って聞くも、借哉は首を振った。

 

「いや、いいや。どうせお前の事だ。何かあってもその場のノリで解決出来るだろうさ」

 

 まるで自分に言い聞かせる様に話す借哉は、何処か此方からも見えない遠くを見据えている様だった。

 

 




と言う事で喜劇的登場を果たした借哉との打ち合わせが終了しました。
この時点では競技前に介入する気満々のお兄様。まぁどの道止められるんだろなと。

次回、オリ主回。もうちょっと背景整理したいが如何に。

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