魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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オリ主のキャラがぶれまくってる気がする。熱くなるタイプなのか、冷めたタイプなのか。

んでちょっと長め。


第八話~衝突~

【Monday,April 4 2095

  Person:operator4  】

 

 

 

 

 自分の地位が不動だと感じ、下の者を見下す者ほど不快なものはない。

 いつ、その地位が崩れるかも分からないというのに。

 世の中は常にそうだ。日本に常駐していた俺にでもわかる。

 中華の衰退、幕府の解体、ロシアの崩壊、大日本帝国の崩壊。

 自分が上位にいると思っている者に限って、命取りになるきっかけを見失ってしまう。

 

 

 そんな流れを見てきたからこそだろうか。今目の前の事態には憤りを感じる。

 

 

「いい加減に諦めたらどうなんですか?深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挟むことじゃないでしょう?」

 

 相手は、一年A組。深雪のクラスメイトだった。

 食事も一緒に出来ず、せめて放課後はある程度の交流はしたいという気持ちも理解できなくはない。

 ただ、それは本来本人の了承が前提で成り立つもので、一科も二科もない。

 ただ帰るだけになったとしても、別にくだらないプライドを優先させる必要は無いのだ。

 ただ、目の前の一科はソレを優先させたいようだが。

 

 

 二科は一科に気を遣わなくてはいけないなどと、一体誰が決めたというのか。

 

 

「僕達は彼女に相談することがあるんだ!」

 

「ハン!そういうのは自活中にやれよ。ちゃんと時間は取ってあるだろうが」

 

「相談だったらあらかじめ本人の同意をとってからにしたら?深雪の意思を無視して相談も何もあったもんじゃないの。高校生にもなって、そんなことも知らないの?」

 

 幸いと言っていいべきか、今日の内に出来た友と言えるのであろう存在はそういう不条理をよしとしないタイプの人間だったことか。

 

 騒ぎの中心にいるはずの司波深雪や、達也にとっては幸いかどうかは別だろうが。

 

「うるさい!他のクラス、ましてやウィードごときが僕達ブルームに口出しするな!」

 

(根に持ってるんかなぁ・・・)

 

 思い出すのは昼食時のこと。

 いろいろ嫌味を言った気がしなくもないが、はっきりと差別用語を使ってる点から根に持ってるのかもしれない。

 とは言うものの反省をするつもりはないし、個人的には時間を取られたくない。

 早めにお灸を据えるのが一番だろう。

 

「ブルームブルームうるさいけどさ、お前ら今の時点で俺たちとでは大した差ではないだろ?恥ずかしい思いしておく前にやめておけ」

 

 言ったのは紛れもない事実。レオの戦闘センスは見ていてかなり良い部類だし、エリカに至っては武人の風格さえ感じられる。

 恐らく初撃は間違いなくこちら側。もちろん、初動は頂くが。

 

 売られた喧嘩は相手を叩き潰すつもりで買う。人間社会に権力の根を張る必要が出て来た時からの経験則だ。

 

「・・・そこまで言うんだったら、痛い目を見せてやるぞ」

 

「ハッ、おもしれえ!是非ともやってもらおうじゃねぇか」

 

 レオの言葉で、お互い臨戦態勢になる。

 間合いはさほど遠くない。

 

 

「だったら、教えてやる!」

 

 

 先頭の彼が、CADを抜く。

 これで、"見ている奴に対しても"名分はなんとかなるだろう。

 

 

 素早く間合いを詰めて、腹部に一撃。

 

 それだけで、彼は崩れ落ちた。

 

 

「ほら見ろ。一体どれほどの差があるんだ?」

 

「・・・出る幕がなかったぜ」

 

「アンタは馬鹿みたいに突っ込んでいってたからどっちにしろ無かったわよ。でも一歩遅れたのは悔しい」

 

「"新人教育"ってやつだ。残念ながら俺はお前らみたいに"CADだけを狙うほど優しく"はない」

 

 もはや目の前の一科生のことを気にもかけずに楽しく話している光景は、どちらの側から見ても呆気に取られるしかないだろう。

 

 いち早く我を取り戻したのは、一科側のクラスメイトだった。

 

 後方にいた女子生徒が、とっさにCADを起動していた。

 恐らく起こる効果は、フラッシュによる目くらましといったところだろうか。

 なるほど、先ほど腹に一発食らわせた彼よりはよほど魔法師としての才能はあるのだろう。

 

 

 ただし、周りを全く見えていなかったが。

 

 

「止めなさい!自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、校則違反である以前に犯罪行為ですよ!」

 

 その言葉と共に想子の弾丸が打ち込まれ、魔法式が砕け散る。

 出て来たのは、生徒会長・七草真由美と風紀委員長・渡辺摩利。

 その姿を認めると、攻撃しようとしていた女子生徒の顔が蒼白になった。

 悪いことと分かっていても止めることが出来ないのは、まだ人間が出来てない故か。

 

「あなたたち、1-Aと1-Eの生徒ね。事情を聞きます。ついて来なさい」

 

 当たり前だ。帰り際にこのような騒ぎを起こしたのだ。見つかったら風紀委員にお世話になるのは決定事項に等しい。

 ただ、個人的には時間を取られたくはないし、目を付けられたくもない。

 

 その状態を解決してくれたのは、達也だった。

 

「すみません。悪ふさげが過ぎました。」

 

「悪ふざけ?」

 

「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学のために見せてもらうだけのつもりだったんですが、あんまり真に迫っていたもので、思わず手が出てしまいました」

 

「出したのは俺ですけどね」

 

 一応名乗り出ておく。たぶん無意味だろうが。

 

「・・・それを含めて言ってるんだ」

 

「まぁ、いい。ではその後に1-Aの女子が攻撃性魔法を発動しようとしていたのはどうしてだ?」

 

「驚いたんでしょう。それに、攻撃といっても彼女が発動しようとしていたのは目くらましの閃光魔法です。さほど強力でもありませんよ」

 

 やはり、"彼"には見えるか。

 あの時の検査の結果は、やはり間違ってなかったのだろう。

 ただ、それをはっきり言ってしまっていいのか?普通隠すものだと思っていたのだが・・・。

 

「ほぅ・・・どうやら君は、展開された起動式を読み取ることができるらしいな」

 

「実技は苦手ですが、分析は得意です」

 

「・・・誤魔化すのも得意なようだ」

 

 実際に誤魔化せているかどうかは微妙なものだが。

 まぁ十中八九嫌味だろう。そうでなかったらそんなセリフは吐かない。

 

 幸い、誤魔化せてなくても事態は収拾するようだ。

 

「摩利、もういいじゃない。達也くん、本当にただの見学だったのよね?」

 

 ・・・名前呼びってことはもしや知り合いか?これに関しては後で聞いてみるか。

 

「生徒同士で教えあうことは禁止されているわけではありませんが、魔法の行使には起動するだけでも細かな制限があります。魔法の発動を伴う自習活動は、一学期で授業で教わるまでは控えた方がいいでしょうね」

 

「・・・会長がこう仰られている事でもあるし、今回は不問にします。以後このようなことの無い様に」

 

 こう言った後、踵を返し一歩踏み出したところで風紀委員長は足を止めた。

 

「君"達"の名前は?」

 

「一年E組、司波達也です」

 

 達也がそう答えると、視線がこちらに向いた。

 ・・・やっぱり目を付けられるか。まぁいいけど。

 

「同じく一年E組、河原借哉です」

 

「覚えておこう」

 

 その言葉を最後に、彼女達の姿は校舎へと消えていった。

 

「仕事やってるうちに忘れてくれてるとありがたいな」

 

「同感だ。ただ、真っ先に騒ぎを大きくしたお前が言うな・・・」

 

 やはり少し達也にとっては俺が言うべきセリフではなかったようだ。

 だが、今回ばかりは感謝の一言しかない。あそこで時間を取られるのは避けたい。

 

 

 出来れば早いうちに、"彼"から話を聞きたいのもある。

 

 持っている、"能力"をどれほど自覚しているかについてを。

 

 




借哉は武器を落としてやるほど優しくはない。
間合いのつめ方それそのものはエリカの移動とほぼ変わりません。CADに対して一瞬怯んだかどうかの差でしかなかったり。
え?全力かって?そんなわけないでしょうHAHAHA。彼は人の目のあるところで本気なんて出しませんよ。

次はいよいよ一科と二科で一緒に下校。これを機に意識の壁が取り払われる!


かどうかは分かりませんが、楽しみに見てくれると幸いです。

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