魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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暗闘(ドンパチ)


第二章五話~排除~

【Tuesday ,July 10 2096

  Person:operator4 】

 

 

 

 

 

「指揮官から全分隊へ。状況を知らせろ」

 

『此方アルファ、目標通過予測ルートを視認。攻撃準備良し』

 

『此方ブラボー。アルファを確認。同じく攻撃準備良し』

 

『此方チャーリー、第九研を監視中。今の所動きは有りません』

 

『デルタ、目標を視認。後五分で襲撃予定地点に到着』

 

 

 七月十日、昼。

 第九研へと続く山道の近く。そこで、特戦群予備分遣隊と共に"目標"の襲撃の為に待機していた。

 

 

 

 周公瑾の情報は、思ったよりかなり早く手に入った。正確に言えば、彼の行動頻度が意外なほど高かったが故ではあるのだが。

 

 彼の目的は、亡命方術士を第九研内部に潜り込ませ系統外魔法によりP兵器を暴走させる事だった。

 この様な情報を素早く手に入れる事ができた四葉の諜報能力には我々をして驚かせられる節がある。

 

 尤も、彼らは既に人手を待機させておき、命令のみを待っていた可能性も無い訳ではなかったがそれは後で確認すれば良い事だ。

 

 そして我々はP兵器の"確保"を目的とする以上、余計な要素を入れられてしまうのは困るのだ。

 その為、特戦群予備分遣隊と共に襲撃。方術士を"無力化"し、素早く撤収する予定にある。

 武力介入により我々の存在を感知させられるのは痛手だが、九校戦で投入される分においては此方の部隊が担う役割は援護と回収だけで良い。

 

 少々第九研の制圧が"荒い"物になる可能性もあるが、武力行使時の状況をより良くするには致し方のない事だ。

 

 

 

 各分隊の報告で作戦が順調に進んでいる事を確認し、指示を続ける。

 

「今回の作戦は敵勢力の懐に近い。行きはHALO降下で静かに降り立ったが、帰りは各分隊で散開しつつ回収地点まで徒歩、そこからヘリによって帰還する運びとなる。一撃が命だ。確実に目標を仕留めろ」

 

 魔法師に対して、現代兵器は基本無力だ。

 一度存在を認識されては、その力を発揮する事は難しい。

 故に、待ち伏せとそれによる奇襲を選択したのだ。態々"夜間HALO降下の後、時刻まで指定の位置で待機する"などと言う無茶を通してまで。

 

 仕留める為の武器は、小火器を除けば軽車両用のロケットランチャーと設置式EMP兵器のみ。

 それさえ連べ撃ちなど出来る筈も無い。一撃必中が求められる。

 

 

 しかし、彼らはそれを可能にする。

 その為の、特殊作戦群なのだから。

 

『アルファ、目標確認。EMP兵器、起動用意』

 

 襲撃地点へと、車列が入る。

 3台の小型バンの、恐らくは中央の車両が目標だろう。

 

 全員が、固唾を飲んでその時を見守る。

 

 

『EMP兵器、起動』

 

 

 その言葉と共に、車列を中心として左右から強力な電磁パルスが発生する。

 元々襲撃を予測していなかったであろう目標は碌な対EMP装備を搭載しておらず、一瞬で車両の行動能力を奪う。

 

 それと同時に、車列中央に向けてロケットランチャーが発射される。

 EMPで電子機器を破壊された以上防御は出来ず、回避運動さえ満足には出来ない。

 

 放たれたロケット弾は綺麗に車列中央のバンに命中し、爆発。方術士諸共バンを爆炎に包んだ。

 

『此方ブラボー。目標の無力化を確認』

 

「状況は此方が優勢だ。アルファ及びブラボーは前後の護衛部隊を始末しろ。逃げる際について来られては堪らん」

 

『アルファ、了解』

 

『此方ブラボー、了解』

 

 直ぐに、銃撃戦が始まる。

 とは言ってもこの状況下では最早一方的な虐殺と同じだ。直ぐに片が付く。

 

「デルタはチャーリーの後方200mの地点まで移動しろ。全目標の無力化が確認でき次第撤収する。チャーリーの援護だ。第九研側には地の利がある。速度を重視し、チャーリーの撤退を支援しろ」

 

『了解』

 

 そう指示を出し、チャーリーが移動を開始した時点で銃声が止む。

 

『此方ブラボー、アルファと共に敵の無力化を確認。敵の生存者は無し』

 

「良くやった。全分隊速やかに回収地点へ急げ」

 

 その指示を最後に通信を切る。

 念の為にチャーリーとは別に、第九研を視認できる位置にいたが今の所反応は鈍い。九島烈がいると考えれば余りにも対応の稚拙さが目立つ。

 

「案外九島もいざこざを抱えてるのかも知れんな・・・。方術士の受け入れは誰かしらの独断なのか」

 

 そう考えると納得が行く。そもそも救援に行く事自体が不味いのだろう。九島側はこの襲撃には知らぬ、存ぜぬとしか言えないのだ。

 そうなると、後始末は幾らか楽になる。

 

 

 とにかく、これで九校戦で起こりうる不測の事態は回避した形になる。

 

 この襲撃に対する九島、七草の行動を確認した後は九校戦に投入されるパラサイドールの確保に専念すれば良い。

 

 問題は、周公瑾の動向。

 潜り込ませる筈の方術士が護衛ごと潰されたとなると、どう行動に出るのか。

 あの"物の怪"ならば、逃げの一手を打つ公算も強い。しかし、何も出来ないまま帰ると言う事はあるだろうか。

 

 否。恐らくは、最後の一手を打つ筈だ。

 更に言えば、確実に奴自身が直接動く。手駒を使った所で潰される可能性があるならば、間違いなく自分で動くだろう。

 

 そして、パラサイドールの暴走を目的とさせるならば。

 奴が現れる場所は、凡そ一つしかない。

 

「鍵は、"彼"にある・・・か。しかし、どうしたものか」

 

 "彼"に、周公瑾の事を教えるべきだろうか。

 実際にその時になれば俺と"彼"(達也)しか奴と対峙できない。

 

 しかし、彼自身でその情報にたどり着く可能性もある。

 まだ、時期尚早だろう。

 

 そう結論付け、その場を後にした。

 

 




やりました(愉悦)。

やはりオリ主が絡む以上、原作ルートは引っ掻き回さなくては。第一章で言う入学編~九校戦編の様に引っ掻き回す所存。ついでに銃火器でドンパチ出来て満足。一方的だけど。

しかし、不安も有ります。そう、話数です。
転換点を唯でさえ元旦に据えたせいで一年間における冊数が短くなっているのに結構な流れで物語が加速して行きます。ダブルセブンがほぼ省略された以上合計冊数は5冊程。達也回と合わせても四十五話~五十九話まで行けばいい方でしょうね。まぁ転換点までの話だしあまり気にせん事にします。

次回、達也回in奈良。本来得ていた情報は既に手元にはあるが、果たして目的は如何に。


時に、現在スマホからの投稿なのですが段落開けの空白を入れているつもりなのにサイトでは段落が開いていない様に見受けられる。どうしたらいいかと悩むと、多機能フォームでの改行が必要になっていることを確認。全話を見やすいよう修正してます。完了次第最新話の後書きにて。

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