魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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達也回です。まだ連載再開したばかりなのに不安を抱くけど問題などきっと無いと思いつつ進みます。


第二章三話~拠所~

【Wednesday,July 4 2096

 Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】

 

 

 

 

 

「おはようございます、師匠」

 

「おはようございます、先生」

 

「やぁ、おはよう」

 

 深雪と共に八雲の所へ、"昨日の事"を相談する為に訪れた。

 

 九島家による、九校戦を舞台にした新兵器の実験。

 そして、その確保を目的とする、"烏"。

 

 これらの事は、自分達だけでは処理できない。

 その為にも八雲の知り得る事を、可能な限り教えてもらう必要があった。

 

 

 結界と、深雪の各種障壁魔法で盗聴の心配が無くなった部屋の中、八雲は"彼"から渡された資料に目を通していた。

 

「・・・一部隠されてはいるみたいだけど、流石は"烏"、と言うべきかもね。この時点で既に核心に迫っているとは思わなかったよ」

 

 そう、やけにさっぱりと笑いながら言う八雲が言う。

 

「隠されていると言うのは、新兵器の詳細ですか」

 

「うん。こっちでも、流石に符丁位は分かる。"P兵器"と呼ばれているみたいだ」

 

「となると、やはり・・・」

 

 彼らが重要視する兵器。

 そして、"P"の持つ意味。

 

「恐らくは、二月の時のパラサイトを利用した物だろうね。全くもって危険な代物を、危険な競技で試すなんて。正気を疑いたくなる話だよ」

 

 パラサイトを利用した兵器。最低でも九校戦の環境でもある程度まともに使えるのであれば、生物兵器の様にばら撒く形のものでは無いだろう。

 しかし、極めて厄介なものに変わりはない。あの時にパラサイトに決定打を与える事が出来たのは、深雪だけだった。

 

「・・・となると、私もお兄様と一緒に向かうべきでしょうか」

 

 そう深雪が八雲に聞くが、彼は首を振った。

 

「いや、"彼ら"であれば恐らく回収手段を用意してると考えて良いだろうね。君たちに接触したのは、"その方が楽だから"という事じゃないかな」

 

 楽だから。確かに、借哉自身は戦力を持ってはいたが二月の時は他と比べても出遅れていた。そう考えると、此方を利用しようとする事は理に適っている。何より、彼は面倒を嫌う節がある

 だが、他にも理由がある。彼自身が、此方に言っていた様に。

 

「師匠。"彼"は、"誰を敵とし、味方とするかを決めろ"と言っていました。これは、どう言う事でしょう」

 

 

 そう尋ねると、八雲は暫く黙った後に口を開いた。

 

 

「・・・ふむ。"烏"がそれを求めているとなると、知っている方が良いかも知れないね。余り、言いたくは無いんだけど」

 

 そう言って、八雲が此方を見る。

 

「具体的には、四月始めから。人間主義団体の事件を始まりとして四葉と九島、そして七草が実質的な冷戦状態に入ってる。そして、動向を見る限り九島の狙いは"君達"にもあるみたいだ」

 

「俺と深雪に、ですか?」

 

 確かに二人とも一年前から騒ぎの中心にいて、多少なりとも注目を集めた。

 そして、その素性を九島や七草が探ろうとするのも不自然では無い。しかし、それが実質的に四葉と敵対状況になる中で尚、と言うのは違和感がある。

 

「そう。具体的には君達の出自、と言えばいいのだろうね。それを除いても、思えばパラサイトの一件では九島はかなり積極的に行動してきた。そしてそれに呼応するかの様に、四葉も。そして四月には、更に七草までもが活発化している。特に現在は四葉と七草の間で行動に対立が見られるし、その隙を縫う形での今回の九島の行動もある」

 

 確かに、これには思い当たる節があった。

 反魔法師的勢力の情報は、文弥と亜夜子を通して恐らくは四葉真夜から齎されている。そしてどちらが先かは分からないが、結果として四葉は七草に対して行動の相違を見せている。現在は沈静化しているとはいえ、八雲がそう言う以上は関係が改善された節は無いのだろう。

 

 格好だけ見れば、四葉は孤立していると言っていい。しかし、状況は恐らく平行線を辿っている。

 

「つまり、"彼"は俺たちの立ち位置を把握する為に現れたと言う事ですか」

 

 そう尋ねると、八雲は頷いた。

 

「多分ね。君達だけが自由に動けて、君達だけが利益に縛られず、君達だけが彼らに重視されている。この先で彼らは四葉、七草、九島のうちどれが勝利を収めるかより、どこに君達が身を寄せるのか。それを、この一件で測るつもりなのだと思うよ」

 

 そう言った後、八雲は立ち上がり話を締めた。

 

 

 自分達が、どこを拠り所とするか。

 無論、深雪の事が最優先であるのは確かだ。故に、四葉以外の選択肢が無い、という訳では無い。

 現状でも独立魔装大隊は此方に好意的と言えるし、FLTに関しても発言力は遜色のない物となっている。やろうと思えば、全てから逃げる事さえ出来るだろう。

 

 しかし、"彼"が聞くと言う事は重い意味を持つ。

 "彼"が見通している厳しい道を、果たして大きな味方無しで切り抜けられるのか。

 

 とはいえ、すぐに決められる話でもない。いつも通り、状況が決めてくれるだろう。

 不安そうに此方を見る深雪にそう言って安心させながら、部屋を後にした。

 

 




と言う事でお兄様が現在の状況把握に入りました。

書いた通り現在は4、7、9の間で実質的な冷戦状態にあります。スティープルチェース編はパラサイドールを巡る戦いをダシにした四葉と九島+七草の暗闘をメインに据えて行きたいと思います。

なおオリ主が考えた勢力選択肢がやけに多いのはミスでは無く、要するに見えている立場が違うからこそです。そんでもって四葉は傘下にいても味方扱いされてないから基本干渉しようとしないスタイル。それ故に直接お兄様に接触した訳です。

次回、オリ主回。溢れ出る小競り合い臭。

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