魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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いつ再会するのか。今でしょ。
展開を急いている気がするけど多分気のせい。


第二章二話~再会~

【Tuesday ,July 3 2096

 Person:operator4】

 

 

 

 

 

 予想は、当たった。

 それも、考え得る限りで最悪の状況下で。

 

「パラサイトを用いた兵器を、"彼"と関わる形で実地試験をさせる、か」

 

 九島家はやはり、"パラサイト"(創造主様の一部)を軍事転用しようとしている。

 この時点で既に九島家そのものは敵と認識すべき物になった。

 

 しかし、相手が九島家、正確には九島烈であると考えると直接の介入が難しくなる。

 これが七草や十文字であったならば、特殊作戦群予備分遣隊を投入するだけで事足りる。魔法師内では最高クラスの勢力でも、認識できない相手からの奇襲には対応出来ない。

 

 だが、九島は"我々"の存在を知っている。部隊を投入したら、確かに多大な犠牲と共に第九研は制圧出来るだろう。しかし"P兵器"(パラサイドール)を確保出来るとは限らない。寧ろ相手に九島烈がいる以上、ほぼ確実に確保には失敗する。

 

 無論、最悪の事態に陥った場合は"広域消滅処理"を行う手もある。しかし、同時に余りにもそれは目立つ上に非効率だ。

 

 

 だからこそ、目には目を。魔法師には、魔法師を。

 自分で介入できないなら、人にやらせるのが一番いい。

 そして何よりも、この様な厄ネタ程無理にでも解決へと持ち込もうとするのが、"彼"なのだから。

 

 無論問題もある。

 "彼"を四葉経由で動かそうとすると、逆に四葉に対して"彼"を使う事を許容する形となってしまう。彼は何も起きていない時は静かにしてくれていた方が良いのだ。

 

 一方、独立魔装大隊を動かす事も出来ない。元々傘下にある部隊では無い上に、無茶な命令は"彼"を無駄に刺激する事になる。その結果軍機構が崩壊するレベルでの報復の可能性さえある。

 

 

 では、どうするか。

 結果として、俺は形も無い胃袋を犠牲にする事を選んだ。

 

 幸いあれ以降も変えていなかったのであろう彼の携帯端末にメッセージを送り、去年の春と同じ様に、あの公園で再び再開する事にしたのだ。

 

 

 

 そして、火を付けたまま煙草を十分程眺めていた所で"彼"の姿が見えた。

 

「久しぶりだな、達也。てっきり頭数を揃えて囲みに来ると思っていたが」

 

「そんな事がお前に通じるとは思っていない。それに、そろそろだと思っていたからな」

 

「ほう、予期していたのか。それは驚いたな」

 

 ここ暫くは裏にさえ姿を晒してはいなかった筈なのだが。

 そう思っていると、彼自身から"此方の要件"を切り出してきた。

 

「九島家の新兵器の事だろう?お前が持ち込もうとしている話は」

 

「・・・何故知っている?九校戦の競技変更は今日発表されたばかりの話だが」

 

 我々が"P兵器"(パラサイドール)の事を知る事が出来たのは、そう予測し、更に存在を確認したからだ。そしてそれを"四葉に対する抑止力"以上の目的を持たせようとしていたからこそ行動に移った。

 

 しかし、"我々"と同じ速度で彼が情報を把握しているのはおかしい。つまりは、九島家内部に"情報提供者"が居るという事だ。

 

 その推測を知ってか知らずか、彼は答えを返した。

 

「今日匿名でメールがあった。そして、偶然とは考えられない程のタイミングでお前が出てきた。となると、一致しているのは間違いないと考えていい筈だ」

 

「確かに。恐らくは間違っていない。流石に俺もお前に届くメールなどいちいち調査してはいないが」

 

 本当に、話が早くて助かる。

 

「そして、同時にお前だけが誰でも利用出来るだけの図太さを持っている。だからこそ、俺はお前を選んだのだからな」

 

 そう言って此方が渡せる情報が入った封筒を彼に投げ渡す。

 

「国防陸軍対大亜連合強硬派に属する酒井大佐が魔法協会に圧力を掛けたのが元だ。それに乗じる形で九島家は新兵器の実地試験をしようとしている。"我々"は何としてもこれら新兵器の全てを確保しなくてはならない」

 

 新兵器の内容は、伏せたまま。

 同じ様に、四葉にもこの情報は渡していない。

 しかし、どちらもどうせ直ぐ察するだろう。物が物なのだから。

 

「保管してあるであろう第九研に、九島烈がいる可能性を考えると現状での制圧は出来ない。そこで、確実に不在になる競技当日を狙う。スティープルチェースの競技中は、まず間違いなくそっちに居るだろうからな」

 

 そう此方の方針を伝えた後、彼を見る。

 

「もし、お前が介入するつもりであるならば。その時には連絡しろ。必要な物、侵入方法、そして此方の部隊の一部をそちらに貸すつもりだ」

 

「成る程。しかし、それなら何故"今"話した?余りにも、話が早すぎる」

 

 尤もな疑問だ。だからこそ、率直に答える。

 

「今回の件、お前にとって最も重要なのは"誰を味方とするか"。そして、"誰を敵とするか"だ。今回の件には様々な派閥が絡む。"我々"は状況によってどちらにもなり得るが、お前達はそうも行かない」

 

 現状、舞台裏では様々な勢力が水面下で争っている。

 そしていざという時、彼は一体どちらに身を寄せるのか。

 

 権益の拡大を狙いつつ得体の知れない何かを狙う、四葉真夜か。

 四葉の家系そのものを取り持とうとするのか。

 それとも"彼"の力を削ごうとする、四葉分家の意思に靡くのか。

 もしくは、全く別。四葉と争う七草や九島に頼るのか。

 

 また、誰にも頼らず、中立を貫くのか。

 

 

「お前に求めるのは"舵取り"そのものだ。この先の事を、よく見通しておけ」

 

 

 




という事で13巻のうち2/3程まで掛けて原作では手に入れた情報をこの段階で手渡すオリ主。

早いと思います?いえいえ。これはお兄様が絡んだ時点でパラサイドールなぞ解決してるのです。問題は、その前や後。これさえ、本作時系列で四月の時点で始まっていた十師族内部冷戦の枠組の中に過ぎないのですから。

取り敢えず元旦での出来事を元にある種の転換点は用意出来ました。問題は、そこに至るまでの冷戦の道筋ですね。パラサイドールさえ前座になりそうな勢いでどうするものか。この後は原作だとオリ主を知っている周さんとのいたちごっこですしね。九島とお兄様も少し絡ませたいと思ったり。

次回、達也回。坊主もあるよ。

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