魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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ちょっと長め。んでルビタクなるものを使用してみたいんだけど・・・これ大丈夫なん?


第七話~摩擦~

【Monday,April 4 2095

  Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】

 

 

 

 

 世の中には偶に"既にこうなることが決定していたのではないか"と思う時がある。

 例えば、今回がそう。

 昨日深雪に話し、四葉にも報告を済ませ、独立魔装大隊にまで伝えて、対策を立てようとした"彼"が、まさか同じクラスだとは夢にも思わなかった。

 ともかく、名前も得ることは出来たことだし、状況は前よりはいい方向に向かっているのだろう。

 

 

「さて、終わったか。昼間でどうする?」

 

 ガイダンスが終わり、昼食まで間が開いたところで前の席にいるレオから声が掛かった。

 残念ながら、食堂が開くまで後1時間は待つ必要がある。適当な場所を見つけた方がいいだろう。

 

「ここで資料の目録を眺めているつもりだったんだが・・・OK、付き合うよ」

 

「なんだ、達也も決まってないのか・・・・」

 

「そう無理言うもんじゃないさレオ。でもやる事がないのは確かだ。どこか見たい場所とかないのか?」

 

 同じく"彼"も手持ち無沙汰になったのだろう。希望を聞いてきたものの、生憎さほど見たい場所があるわけではない。

 

「いや、特にはないな。何か見に行くなら合わせるよ」

 

「それじゃあ、工房に行ってみねぇ?」

 

 達也の答えに対するレオの提案は、これだった。

 

「闘技場じゃないのな」

 

「借哉にもそういう風に見えるのかね。まぁ間違いじゃねえけどよ。硬化魔法は武器術との組み合わせが重要だからな。自分で使う武器の手入れぐらいは自分で出来るようにしないとな」

 

「なるほど・・・」

 

 レオの希望進路は機動隊員や山岳警備隊員だといっていたし、案外自分の適性や進路に関してしっかり考えているのだろう。

 

「工作室の見学でしたら一緒に行きませんか?」

 

 三人で話がまとまったところで、隣の席から遠慮がちな同行の申し入れがあった。

 

「柴田さんも工房の?」

 

「ええ・・・私も魔工師志望ですから」

 

「あっ、分かる気がする」

 

 美月の頭越しに乱入してきたのはエリカ。先ほどと類似したパターンだ。

 

「おめーはどう見ても肉体労働派だろ。闘技場へ行けよ」

 

「レオ、それブーメランになってるぞ・・・」

 

「ほんとその通りねこの野生動物」

 

「そこ煽ってくスタイルなの?」

 

「なんだとこら。息継ぎも無しで断言しやがったな?」

 

「まず落ち着こうぜ?なんでこう出会った直後にこうなるかね」

 

 エリカとレオの口げんかに挟まっていく借哉は宥めているつもりなのかもしれないが、何故煽ってるようにしか見えないのだろう。

 意図的にやってる可能性もないわけではないが。

 

「へっ、きっと前世からの仇敵同士なんだろうさ」

 

「あんたが畑を荒らす熊なら、あたしがソレを退治するハンターだったのね」

 

「さあ、行きましょう!時間がなくなっちゃいますよ」

 

 美月による強引な軌道修正。しかしこれに乗らない手はない。

 

「そうだな!早くしないと、教室に残っているのも俺たちだけになってしまう」

 

「まぁ、とりあえず早く行こうか」

 

 ここで口喧嘩していても埒が明かない。こういうときは早めに行動するのが一番いい。

 

 

 

 

「工房見学、楽しかったですね」

 

 一時間ほどかけた工房見学の結果は、決して悪いものではなかっただろう。

 最低でも、お互いに打ち解けることができたという点では悪いとは言えない筈だ。

 

「あんな細かい作業俺にできるかな・・・」

 

「アンタには無理に決まってるでしょう?」

 

「なにおぅ!」

 

「お前ら飯の時ぐらい楽しく食えよ・・・煽りながら食っても美味くはならんぞ」

 

 ・・・打ち解けたはずだ。

 エリカとレオはほぼ食べ終わり、美月と俺はまだ半ば。"彼"は既に食べ終わり、コーヒーを口にしていた。

 

 

「お兄様。ご一緒してもよろしいですか?」

 

 恐らくは見学が終わった後なのだろう。ちょうど深雪には"彼"のことを伝える必要がある。いいタイミングと言ってもいいのだろう。

 

「深雪、ココ開いてるよ」

 

「ありがとう、エリカ」

 

「・・・えと、誰?」

 

「入学式の総代くらいは一応覚えるもんだと思うが・・・」

 

「司波深雪。妹だ」

 

 "彼"は基本毒舌なのだろうか?さり気なく毒を吐いてきている気がする。対象は無差別のようだが。

 

 

 レオに対して自己紹介をしようとした深雪の言葉は、深雪のクラスメイトによって遮られた。

 

 

「司波さん、もっと広いところに行こうよ」

 

「いえ、私はこちらで・・・」

 

 深雪の柔らかい拒絶に対して、先頭の男子生徒は肩の紋を見て、

 

"雑草"(ウィード)と相席なんて、やめるべきだ」

 

「一科と二科のけじめくらい、つけたほうがいい」

 

 後ろで頷く女子生徒までいる始末。

 

「なんだと・・・?」

 

 レオが立ち上がり、睨みを利かせる。

 今すぐにでも火が着きそうな状況下で、下手したら油を注ぎかねないような消火を始めたのは、"彼"だった。

 

 

「お前ら本当に黙って飯を食うことさえできないの?」

 

「といっても借哉、ここまで言われて黙ってられるか」

 

"雑草"(ウィード)は黙ってろ」

 

「まず飯に対して失礼だろうが。喧嘩しながら食うのは19世紀の西部劇で十分なんだよ。まず家族団らんの時を邪魔するもんじゃないってことぐらい分かるだろ?"花冠"(エリート)さんよ」

 

 一科生の言葉が途切れる。彼ら自身、理解できないのではないのだろう。

 

 結局、一番気まずさを感じていたのは"彼"自身だったようだが。

 

「・・・すまんな。飯を不味くしちまった。とりあえず俺は食い終わってるから先に行くわ。食い終わったら知らせてくれ」

 

 食器を持って、返却口へ向かう彼を深雪のクラスメイトは恨めしそうに見ていた。

 

「・・・出来損ない風情が深雪さんに失礼な」

 

 その言葉を最後に離れていった。

 

「感じわりーな」

 

「同感。偉ぶっちゃって」

 

「お兄様、お騒がせして申し訳ありません」

 

「いや、いいさ。ちょうど話したかったところだしね」

 

 深雪を交え、再び食事が再開された。

 "彼"は俺たちに気を遣ったのだろうか?

 

 

 その割には、あの場で一番苛立っていたような気がするが。

 

 




二日目から少々言葉がきついオリ主。基本的に柔らかな毒舌キャラを目指していなくもない。

オリ主が思ったより切れてると思いますが、それは彼自身の今まで見てきたものから考えている価値観に寄るものです。
彼は上から見下ろす人というのを毛嫌いしています。そういう人は基本的に俗物で、持っている"自我"も高等な人のそれと比べると"獣"に近く、"創造主"が余り必要としないものだからです。また、上から見下ろす人に限って見下ろしてたはずの人に足元を掬われたりしているところを何度も見ているのもあったりします。

案外激情的なキャラなのかもしれません。自分でも全体像は余りつかめてないんですけどね。

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