あいつの罪とうちの罰   作:ぶーちゃん☆

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大変ご無沙汰しております!

みなさまのおかげでこうして後日談を語れる事が出来ました!

それではお久しぶりのさがみんワールドをお楽しみくださいませ☆


【後日談】そして相模南はその扉をノックする

 

 

 

『比企谷………うちを見つけてくれてありがとう……!』

 

 

 

 

………………いやぁぁぁぁぁっ!

 

 

うちは相模南。

つい先日18回目の誕生日を迎えたばかりの総武高校三年生。

現在ベッドの上で布団を抱え込んで悶えている……!

 

もうあれから1週間も経ってるっていうのに……。

それでも油断するとあの日の情景が鮮明に浮かんできてしまい、ここ最近の夜はほぼ毎日のようにこうして悶えている。

 

「……信っじらんない……!こんなにもトラウマになるもんなの……?これが比企谷が前に言ってた黒歴史ってやつか……」

 

そう呟きながら布団を抱き枕のように抱え込んでのたうち回っているうち……。

この現状自体でさえも、今後新たな黒歴史とやらになりそうで恐い。

 

思えばうちの人生……とりわけ高校生になってからの生活はそんな黒歴史ばかりだ。

 

 

高校デビューってほどに変えたつもりは無いが、それでも少しは自分を垢抜けさせてみた一年生時代。

急にまわりからチヤホヤされて勘違いして、自分がクラスの中心にでもなったかのような振る舞いをしてたっけ……。

 

本物の中心と言われる人物の華やかさに卑屈になった二年生時代。

自分の本当の存在価値に気付いてしまい、でも悔しくて認められずに中心として無理に振る舞おうと空回りしていた……。

その挙げ句にやらかしてしまって、後の高校生活に多大な影響を与えることになった。

 

 

ただそのどれもこれもが現在(いま)の相模南を形づくる為には全部必要だったものだ。

 

確かに黒歴史ではあるものの、だから後悔なんかしていない。

浮かれて舞い上がっていた自分も、自分を見失って挫折していた自分も、どれもこれもが大切なうち自身。

 

むしろそんなみっともない自分が居たからこその“今”なんだと思えば、そんなみっともない自分にしてくれた事を神様に感謝してさえいる。

感謝は神様だけじゃなくて、その事を気付かせてくれた誰かさんにもね。

 

 

 

『比企谷………うちを見つけてくれてありがとう……』

 

 

 

…………………いやぁぁぁぁぁっ!

 

 

でもこれは無い!

マジで恥ずかしすぎる!後悔はしていない……といえば嘘に成る程の黒歴史っぷり……。

そりゃ確かにこの気持ちをちゃんと伝えられなきゃ新しいスタートをきれなかったのは分かってる。

だから心の奥底では後悔どころか伝えられて良かった!って気持ちでいっぱいなのも分かってる。

 

でも………でもまさかここまで身悶えるほどの恥ずかしさだなんて……!

 

文化祭で全校生徒の前で惨めに泣いた時も、体育祭で委員メンバーの前で泣き叫んだ時も、うちの部屋に比企谷招き入れて自分の心の内を吐露して泣き叫んだ時も確かにとんでもなく悶えたよ!?……てかうちって泣き叫んでばっかり……。

 

でも……ここまでかぁ〜っ!ここまで恥ずかしいのかぁ〜っ!

本音を曝け出して感謝の想いを心から感謝している相手に伝えるっていうのは〜……!

 

つい先日、偶然比企谷と廊下ですれ違ってしまった時なんかは、もう顔が熱くて熱くて完全にそっぽを向いたまま、ぽそっと一言『お、おす』としか言えなかったもん……。

まぁ、『おう』って返してくれたから良かったけどっ……!

 

 

はぁ……まさかうちがこんな風になるなんて……。

……比企谷も今ごろこんな風に悶え苦しんでればいいのにっ……あの時のうちの顔と言葉を思い出してゴロゴロと転がってればいいのにっ……。

 

てかうちあんな黒歴史早く忘れてほしいんじゃないの!?

でも思い出して今ごろうちの事考えてればいいだなんて、なんて矛盾なんだろ……。てかホントに忘れたらなんかムカつくし!

 

……あー!もうっ!

 

こうしてうちの悶々と悶える夜は、今日も通常営業で過ぎて行くのだった……。

 

 

× × ×

 

 

「隼人〜、今日あーし放課後カラオケ行くけど、隼人はどするー?」

 

「うーん。……そうだな。今日は練習試合明けで部活も振り替えで休みにしたから、たまには行こうか」

 

「まじでっ?超楽しみなんだけどぉ!」

 

「隼人くん行くんなら、俺らも行くっきゃないっしょー」

 

「それな」

 

 

今は我がC組でのお昼休み中。

優美子ちゃんが来ると大体教室から人が居なくなるから、最近では普通に葉山くん達も参加するようになっていた。

 

思いがけない葉山くんの参加で優美子ちゃんのテンションが超上がったんだけど、そのあとの戸部くん達の参加表明に露骨に嫌そうな顔をする女王様。

まぁせっかく珍しく葉山くんが参加するのであれば、出来れば二人っきり、無理でも少人数で行って少しでもいい雰囲気になりたいという乙女心だろうね。

いい雰囲気という観点で言えば、戸部くん達って邪魔以外の何者でもないだろうからなぁ……いや、ホントにいい人なんだけどね!?

 

それにしても優美子ちゃんって見た目に反してホント乙女なんだよなぁ……しかも面倒見のいいお母さんみたいな存在でもある。

本当にいい人……。

人って、こうしてちゃんと付き合ってみないと、全然分からない事ばっかりなんだなぁ。

 

 

最近わかった事と言えばもうひとつ。

 

あんなに憧れていたのに。文化祭や体育祭でうちを推してくれた時は……まぁ推してくれたっていっても、葉山くん的には『うちだから』ってワケじゃなくて、ただその場の空気を整えたかっただけだろうけど……あんなにも浮かれてはしゃいでたのに、今のうちの目でみると葉山くんのなにがそんなに良かったのかが全然分かんなくなってるってこと……。

確かにイケメンだし優しいし、みんなの憧れの存在になるのは良く分かる。

でも……ホントにそれだけなんだよなぁ……。

 

ああ……そういえば前に葉山くん狙いって評判だった生徒会長の一色さんが、気が付いたら比企谷の隣で笑ってた所を見て意味分かんない!とかって思ったっけ。

でも正直今のうちなら、一色さんの気持ちがすごくよく分か………るわけ無いっての!

な、なに血迷った思考に支配されようとしてんの!?うち!バカみたい!

 

 

ん!んん!それはそうと戸部くんの参加表明で早織ちゃんも俄然やる気を出してきた。

 

「三浦さん!それって私達も行ってもいいのかな……?」

 

「………は?」

 

うわ……全てを燃やし尽くす優美子ちゃんの「は?」が出ました……早織ちゃん涙目……。

 

「なに言ってんの?はじめっからメンバーに入ってるし」

 

ああ……ホントいい人……。

早織ちゃんが違う意味で涙目になってるよ……すっかり三浦シンパ!まぁうちも充分シンパ気味だから人のこと言えないけどねー。

 

でもカラオケ参加云々は今が初耳なのに、すでにメンバーに決定してるあたりはさすが女王様よね!

 

「南は〜?補習終わったら後で合流するし」

 

「ごめんね、優美子ちゃん!今日補習終わったら寄りたいとこあるんだ!」

 

「あ、そうなん?じゃあまた今度誘うし」

 

 

 

このように、二週間も経てばうちらはすっかり三浦グループの一員になっていた。

まぁ相変わらずもちろん恐いけど、ちゃんと自分の主張を伝えればきちんと考えてくれるし理解してくれる。

まだまだ探り探りの関係ではあるものの、今では場の空気の為にサポートで来てくれていた結衣ちゃんも2〜3日に一度は前のように部室に食べに行くようになってるくらいには、なんかうまいこと行ってるみたい。

 

まぁ元来調子にのりやすくやらかしやすい性格なんだってつい最近自覚出来たうちだから、ちゃんとそこら辺は油断しないようにしてますよ!

 

 

 

こうして今日も楽しくもあり緊張感もあるお昼休みが無事過ぎていくのだった。

 

うーん。なんか始めは最初のうちだけの関係だと思ってたんだけど、ずっとこのままで行くのかな?

 

そして今ではそう望んでしまっているうちが居る事はもう否定できない。

優美子ちゃんたちも……そう感じていてくれたらいいのにな……!

 

 

× × ×

 

 

「南ちゃーん!なに書いてんのー?補習のプリントかなんか?」

 

「うん。ちょっとねー」

 

「南ちゃんも今日のカラオケ行けたら良かったのにー!」

 

「ねー!私も久しぶりに南ちゃんとカラオケ行きたかったぁ……最近補習とかでずっと忙しかったもんねー」

 

「ごめんね!由紀ちゃん!早織ちゃん!次は絶対行くからさ、今日は優美子ちゃんたちと思いっきり楽しんできてっ!」

 

「だね!次は行こうねー。でもやっぱり南ちゃんが居てくれないと、まだちょっと三浦さん恐ーい」

 

「なーに言ってんの!早織すっかり三浦さん尊敬しちゃってる癖にーっ!それにメインは戸部くんだしぃ?」

 

「ちょっ!由紀っ!?」

 

「あははっ!まぁ楽しんできてねっ」

 

 

うん。確かに行きたい気持ちは無いこともない。てか結構行ってみたい。

ホント信じらんないよね……うちが三浦グループと一緒にカラオケ行きたいって思うようになるなんて。

 

でも……やっと決心が付いたから……。

そう思い立ったその時に足を踏み出さないと、いつまでもその場に留まったままになっちゃうんだって事は、すごく実感してるから。

 

 

楽しげにカラオケへと向かう由紀ちゃんと早織ちゃんに別れを告げて、うちは補習へと向かう。

 

でももちろんうちが向かう先は、その補習の先にあるあの部室……。

 

 

× × ×

 

 

今日もきっちり二時間分の補習を終え、うちはひっそりと静まり返った特別棟へと伸びる渡り廊下をひとり歩いていく。

 

 

季節は七月。

真夏の日差しに照らされた梅雨の晴れ間のジメジメ感で、クーラーの効いた教室以外は暑くて仕方ないはずなのに、今うちが掻いている背中を滴れる汗は明らかに異質なモノ。

 

……冷や汗って、こんなに暑くても出てくるもんなんだな……

 

 

あー……緊張してきた……嘘です。補習中からずっと緊張してました……。

 

うちが学校に出てこられるようになってからもう二週間。そのあいだ、行かなきゃ行かなきゃとずっと思ってたあの部室に、ようやく行く決心が付いたのだ。

 

ホントはもっと早く行くべきだった。

うちを救ってくれたあの人達に、まだきちんとお礼も言えてないのだから。

でも中々足が動かなかった。

うちはきっと歓迎はされないだろうから……由紀ちゃんから聞いた話だと、うちらはかなり嫌われてるらしいからね。

 

まぁそりゃそうよね。

うちは比企谷だけじゃない。雪ノ下さんにだって酷い事したわけだし結衣ちゃんにだって酷い事してきた。

結衣ちゃんだって、大好きな部室でのランチタイムを捨ててまでうちの為に一緒にお弁当を食べるのなんて、ホントは嫌だっただろう。

 

だからあの部室に行くのが正直恐かった。いつもみたいに逃げ出したかった。

でもそういう自分は、あの日、あの場所で卒業したんだ……!

NEW相模南としての新しいスタートを切ったあの場所で……!

 

 

それに………うちへのプレゼントの回収にも行かなきゃだしねっ!

あいつ、ちゃんと用意してくれてるのかな……?

 

 

 

……そしてうちは扉を叩いた。あの苦い思い出の文化祭以来のこの扉を。

震える手で……遠慮がちに……。

 

ノックの音が小さすぎたのかな?聞こえなかったのかな?

 

もう封印したはずの悪癖が、『聞こえなくて良かったね。このまま回れ右しちゃいなよ』と顔を出しかける。

 

そんな弱気じゃダメでしょ!との思いと、つい安堵してしまった情けない思いが入り交じり交錯する。

 

 

「…………どうぞ」

 

 

その澄んだ美しい声に肩がビクリと揺れる。

 

「……よしっ」

 

そう小さく呟くとうちはゆっくりと深呼吸し、ついにその扉に、奉仕部の重い重い扉に手を掛けるのだった……。

 

 

 

 

続く

 





ありがとうございました!

正直まさかお気に入りが1000を超えるとは思いませんでした(驚愕)

まさかあの嫌われ者の相模SSがこんなにも読んで頂けるとはっ……と同時に、完結したあとはお気に入りなんて減ってくもんかと思ってましたから!

なのでダブルで感動です!ありがとうございますっ☆


あとひとつお詫びです(汗)
最終回の後書きで、さがみん視点と八幡視点のどちらがいいかアンケート取るかも!みたいな事言ってたのに、勝手にさがみん視点で書いてしまいました><

というのも、アンケートするにしてもその告知の場がありませんでしたし(他の作品の後書きで告知するのもなんか違うし)、そもそも二択でアンケートってのもあんまり意味ないかな……と。

本編はさがみんSSなのに八幡視点で締めたので、後日談くらいはさがみん視点で締めようかな?と思ったのも要因のひとつです。


それでは後日談②でまたお会い出来たら幸いです!


【追伸】
別作品の宣伝になっちゃうみたいで嫌なのですが、あいつの罪とうちの罰のみ読んでくださっている読者さまの中で、鶴見留美回のルミルミを気に入っていてくださってる読者さまがおられましたら、現在連載中の短編集にて“その”中学生ルミルミをヒロインとした短編を連載中ですので(短編を連載中って文法的になんかおかしいっ)、もし興味がございましたら覗いてみてくださいませ!

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