オリ主と第六駆逐艦隊   作:神域の

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話がアニメから外れて一旦オリジナルになります


EX-1 ソトの世界

 自分の居る鎮守府から車で三時間程行った所にある、海岸沿いに建てられた鎮守府。それが今回、俺が見学しにいく鎮守府だった。

 総艦娘数は全六隻。

 一部隊で収まってしまう数を聞いた時は、俺はその鎮守府は大丈夫なのかと不安を感じたものだ。

 だが、それは序の口。

 大淀から簡単に紙にまとめられた相手方の鎮守府の情報によると、日々の業務である近海の警備(分かりやすく言うとゲームのデイリー任務)は満足に出来ていないらしく、遠征も数日に一回しか行われないらしい。

 おかげでその鎮守府は評価が悪く、後もう一歩行けばおそらく解散だろうと、聞けば聞くほど崖っぷち感が漂ってくる鎮守府……。

 

 普通なら、こんな鎮守府に見学なんて学ぶ事など無いと思うし、実際に俺も話を聞いた時は長門に行く意味はあるのかと問いただしたりした。

 そんな俺の問いに対して、長門の返答は『ある』だった。

 

 ……今向かっている鎮守府の話には、続きがある。

 なんと、その鎮守府に在籍している艦娘の内の二人の軽重洋艦が、あの『赤レンガ』に長年在籍していた実績があるらしく、その話を聞いた時は俺も「なんで底辺の鎮守府にそんな艦娘が?」と心底驚いた。

 

 赤レンガといえば有名な鎮守府、横須賀、呉、佐世保と並ぶ舞鶴鎮守府の通称であり、今現在では対深海棲艦の最前線対策基地にもなっている四つの鎮守府の内の一つ。

 当然、最前線基地と言うだけはあるらしく、そこに集まる艦娘は全員が全員何処かの鎮守府のエースだったり歴戦の強者だったりと、その四つの鎮守府と他の鎮守府とでは実力に差がありすぎてお話にも成らないらしい。

 長門いわく、「本部の艦娘から見れば、私や赤城、加賀なんかはそこら辺に居るようなものだよ」と笑って言うのに対し、同じ様に提督室にいた陸奥や大淀が何も言わなかったのが長門の言葉が正に正しいのを物語っていて、俺も若干ながら本部の艦娘の強さに興味を持った。

 そんな事があったのは午前中の話。

 

 

 午後になると俺は予定通りに鎮守府を出て、近くを走っていたタクシーを拾った。

 前に鎮守府の外に出た時は、下着を買いに行ったんだったな、なんて思い出しながら。

 何せ鎮守府の購買では男物の下着が売って無いのだ。……まあ、艦娘は皆女の子だから当然っちゃあ当然なんだけど。

 そんな訳で、当時艦娘になったばかりの俺は、女物の下着なんか好んで穿けるか!!と長門に外に下着を買いに行く許可をもらい、意気揚々と外に出掛けたのだけど……。

 まさか向こう先で高尾と愛宕に出会すなんて思ってもいなかった。

 結果、俺は男物の下着の代わりに二人に勧められた女物の可愛い下着を数点買うことになって、手持ちの金はパァ。(女物の下着は男物の下着の5~6倍した)

 そして金が貯まるまでと妥協で穿いていた可愛い下着は、なんというか数日もせずに穿き慣れてしまった。

 あの時の気持ちの言い表しようを、俺は知らない。

 

「……ハァ」

 

 一体、何処で道を踏み外してしまったのかとたそがれながら、俺はぼんやりと外の景色を眺めた。

 鎮守府の外は普通としか言いようがなく、俺が最初に鎮守府以外にいたら艦これの世界だとしばらくは気づかないで生活していたかもしれない。

 

 

 そんな訳で、道中は何がある訳もなくタクシーに揺られ、俺がした事といえば途中にあった洋菓子店で、相手方に渡すお菓子の詰め合わせを買ったくらい。

 まあ社会人だからね。

 大淀にも、「鎮守府の代表みたいなものなんですからしっかりしてくださいね。……本当にお願いしますね?」と釘を刺されたしね。これくらいはしょうがないのだ。

 自腹だけどしょうがないのだ、うん。

 ちなみに、タクシーの運ちゃんにも待っててもらったお礼として缶コーヒーを一本奢ってやった。

 待ってる間は稼ぎにならないからな。代わりというか、ご機嫌取りというやつだ。それにしても缶コーヒーを渡したときの反応といったらもう、「あっ、ありがとう」なんて笑顔で言っちゃってまあ。

 ……小銭で買える機嫌、なんてちょろい。

 

 と、そんな事を思ってたのがバレたのだろうか?

 後しばらくすると目的地の鎮守府に着くという所で、俺はいきなりタクシーを下ろされることになった。

 運転手いわく、道が続いているにも関わらず「これ以上は進めない」だの、「危険区域が」どうのこうの。

 訳がわからなかった。

 どういう事?なんて聞き返すと、運転手は「えっ、知らないの?」なんて当たり前に言ってくるし……。

 ええ。知ったかぶりしましたよ。

 えっ?知ってますよ、当たり前じゃないですか。と普通に返しましたよ。

 そしたらね?もうね?なんか自然に降りる流れになってましてね……。

 運転手なんか去り際に「お嬢ちゃん、コーヒーありがとね」なんて笑顔で言って来て……、

 俺はもう、感謝してるなら途中で降ろすんじゃねえよと。

 

 

 

 

 心の中で文句を言っている内に、乗ってきたタクシーは見る見る内に小さくなっていった。

 俺はそれを見送る事しかできない。そうしてタクシーが見えなくなった頃、

 

「どうすんの、俺」

 

 どうしようもなかった。

 見知らぬ町で、ただ一人。他のタクシーを拾おうと辺りを見回すも、辺りはどうしてか車ひとつ通っちゃいない。

 それでもどうしようかと歩道の真ん中で途方に暮れていると、風が吹いて手に持っているお菓子を入れている袋がカサカサ鳴った。

 行くしかなかった。例え歩いてでも、だ。

 

「ハァ……めんどくせぇ」

 

 車なら30分としない距離なのに、歩けば何時間掛かるか。

 そんな事を思いつつも、俺は一歩を踏み出した。

 歩かなければ着かないが、歩いていれば何時かは着くのは分かっているし、何より、今日は良い天気だ。

 見上げれば、空は雲ひとつ無い青空。

 こんな日は散歩だって悪くない。

 

 

 

 

 

 ……と、思ってた時期もありました。

 

 

 

 

 

「あぢぃー、死ぬぅ。干からびて死ぬぅ」

 

 俺はついさっき思ったことを後悔した。

 季節は夏真っ盛り。

 雲ひとつ無い空から降り注ぐ真夏の陽射しは、尋常じゃない熱量で俺に容赦なく襲い掛かってきた。

 もう、数分もしない内に汗だくだくである。

 駄目だった。このままでは俺は本当に干からびてしまうかもしれない。

 そう思って、何処か避難できる場所を探すも、辺りの店はどこもかしこも開いていなかった。

 まさか、ストライキか!?なんて一瞬思ったりもしたが、辺りをよく見ると、その考えが違う事にはすぐに気づいた。

 というのも辺りの建物はほとんどが空き家。

 中には窓ガラスが割られたまま放っとかれた建物まである始末で、ストライキと言うよりも――――、

 

「……ゴーストタウンか?」

 

 ポツリと口から洩れた言葉は、思いのほかしっくりときた。

 勿論、人が居ない訳では無く、遠くを見ればお年寄りが歩いていたりはするのだが、それでも平日の昼間という事を考えると人の往来も車の通る数も有り得ないくらいに少なかった。

 まるでこの場所は何か、人が居られない理由でもあるのかと思えてしまうくらいには。

 ……ただ、俺にはその辺が見当もつかない。

 来るまでに通った所とこの場所では一体何が違うのだろうか?

 まあ、唯一分かる事といえば、俺は休むことも出来ずにもうしばらく炎天下の中を歩かなければならないという事くらいか。

 

 それから憂鬱になりながらも一時間程歩いた頃。

 目的地までの距離は詳しく分からないが、体感的にまだまだ歩かないと駄目だなと思う様な場所で、俺はふとある所を見て固まった。

 それは空き家が多く並んでいる場所の中心で、その場所にもまた家が立っていた様だった。

 

 ……そうだ、様であって今はもう、そこに家は無い。

 ただそこには、家だったであろう瓦礫が山になっていて、その瓦礫に混じりながらも、燃えて体が半分になったぬいぐるみが、濁った瞳で悲惨さを俺に訴えた。

 

 ……人が居ない理由なんて、少し考えれば分かる事だった。

 結局の所この辺りは、通ってきた場所に比べて海が近いだけだ。

 

 深海棲艦のいる海が。

 

 簡単な話、この辺りは深海棲艦の攻撃が頻繁にくるのだろう。

 持っている資料にも、今向かっている鎮守府は近海警備が上手く出来てないと書いてある。

 そりゃあ人だって居なくなる。

 普通の神経してたら、いつ死ぬか分からない場所になんか留まりたくないもんだ。

 そんな中、ちらほらと見かけた年寄り連中は例外なのだろう。

 何かしらの理由で逃げる事ができず、いつ死ぬかも分からない場所で生活する事を余儀なくされる。

 俺はそんな現実を目の当たりにして、持てる言葉を失った。

 

 他人など、死のうが苦しもうが関係無いと思っていた。

 親しい人達だけ守れれば良いと、そう思って生きてきた。

 だからというか、自分でも意外だった。

 まさかこんな程度で狼狽える事になるなんて。

 

 前に聞いた、『艦娘は人類の希望だ』と言われている事を思い出す。

 ……ああ。その言葉の意味が、今なら分かる。

 あの言葉は、比喩でも大袈裟でも何でもなかった。

 深海棲艦と唯一戦える艦娘は、人類にとって本当の意味で最後の希望だった。

 

「……ははは、馬鹿らしい」

 

 出なくなった声を押し出す様に、俺は笑う。

 可笑しすぎる、世も末だ。そう思った。

 

 だってそうだろ?

 

 人達が言ってる希望の中に、俺も混じってるんだろ?

 俺はそんな柄じゃないのに。

 

 周りの人が自分を「希望!」「希望っ!」と、変にもてはやすのを想像してしまって、俺はその場でしばらく静かに笑っていた。

 しょうがないんだ。

 俺が希望なんて似合わないし、そんな風に呼ばれているのを想像すると可笑しくって可笑しくって――――、

 

 

 

 

 クソみたいな現実を前に、俺は普段、当たり前の様に行っている近海警備ですら、絶対に敗けられない事を本当の意味で知った。




おまけ

わかる人にはわかるオリ主の一部ステータス

暁型二番艦 駆逐艦「響」
レベル「――」
基本ステータス
命中力「3」
火力「3」
回避力「3」
装甲力「9」
装備力「3」
行動力「29」
個性
○〈口ぐせ/背景6〉男の頃の名残。本人は一切直す気が無い。
○〈自由奔放/性格11〉自己中心とも言う。何故か周りに嫌われてない。
○〈大胆/性格12〉怒こられる様な事もへっちゃらで行う。
×〈規律/航海5〉オリ主は叩けば埃が出る。
×〈待機/航海7〉自分の意思でない場合、待ってると体が震えるよ。
○〈突撃/戦闘6〉わずかな隙も一瞬で埋める。味方を庇う為に射線上にも出る。
アビリティ
【神出鬼没・展開】オリ主は相手の裏をかく事だけを考えている。
【虎視眈々・攻勢】隙があれば致命傷を狙う。
【護衛艦・守勢】こんなでも一航戦の護衛艦です。
【度胸・艦種/駆逐艦】戦艦の砲撃、雷重の魚雷にも怯まない命知らずな一面。

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