オリ主と第六駆逐艦隊   作:神域の

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投稿の遅さも相まってカレー大会が終わらない件について

待っていた方すいません、やっと投稿です次は早めを心掛ける所存です



6ー9 オリ主とカレー大会 審査始まるの巻

『…はいっ!時間になりましたので調理はそこまでにして、参加者の皆さんは作ったカレー……もとい料理を持って審査員席の前にお集まりください!!』

 

 霧島が調理終了の合図を告げ、その合図を聞いた俺と大井は他の参加者と一緒に、作った料理を持って審査員達(長門、利根、夕立)の前に立っていた。

 そう。とうとう決まるのだ…血を血で洗う戦いの果てにたどり着く、今年度のお料理チャンピョンが誰か!!

 ……思えば、この短くも長い戦いの間には様々な起きた。

 味方だと思っていた者からの裏切りの刃に始まり、一航戦方の自滅、島風の逃走、デスポイズンクッキング。

 これらの出来事には、ここに残った参加者は誰もが心の中で天に祈り、嵐が過ぎ去るのを待っていただろう。

 それは自分のチームから一人の犠牲者を出した俺も同じだった。

 

 ちなみに、その被害者(ブッキー)はというとまともな状態じゃなかったので、さっきまで料理をしていた台の上に寝かせてきた。

 だか安心してほしい。

 素晴らしく優しい俺は、寝かした吹雪の顔に日差しが当たらないように、白いハンカチをそっと掛け、覚ました時に一人でも寂しく無いようにと寝かした吹雪の周りに余った料理の材料を囲むように並べてきた!

 あれなら、例えば今目を覚ましたとしても孤独感を感じる事は無い。……自分でも惚れ惚れするくらいのアフターケアだ。

 

『はいっ!皆っおまたせー!これよりカレー大会、料理審査に入りまーす!呼ばれた参加者の皆さんは返事と作ったカレー…えっと、料理のアピールポイントをお願いしまーす!!まずはエントリーナンバー1番……睦月ちゃん如月ちゃんチーム!!』

 

 整列して少しすると、司会の那珂ちゃんが審査の為に最初のチームを呼んだ。どうやら料理を出す順番は大会参加順らしい。

 呼ばれた二人は「はい!」と返事をすると、息を合わせて一歩前に踏み出し、審査員一人一人の前に如月がコトリとカレーが盛られたお皿を置いた。

 そのカレーを見た長門が、ジロリといわんばかりに二人に目を向ける。

 

「……これは?」

「……っあの!……えっと」

 

 長門の簡潔な問いに睦月がうろたえる。

 どうやら睦月は、長門を前に緊張してしまったらしい。

 まぁ、普通なら一駆逐艦が戦艦…ましては秘書艦と仲良くおしゃべり、なんてことは滅多に無いので気持ちは分かるっちゃあ分かるが。

 ……だが、そんな滅多な方の俺からすれば……睦月よ…ながもんなんて大した事ないぞ。緊張するだけ無駄っていうやつだ。

 きっと、今の睦月の頭の中は、目上に対して失礼の無いようにすることでいっぱいなのだろう。

 普段ならそれでいいかもしれないが、今日この場はそんな相手に発表……つまりは自分の言いたい事を無礼も承知で言わなければいけない場なのだ。

 となると必要になるのが、目上の相手に対して物怖じしないひとつの心構え。

 

 ……フフフ。よかったな、にゃしい。

 俺から言わせれば、この場は言わば『多少の無礼や問題は心配するに値しない場所』なのだ。それにこの観客の数。

 考えうる限りの最高の舞台。そんなところでやる事なんてたったひとつだろう?

 それは――、

 

 

 

 

 やれっ!にゃしい!!下剋上だ!!どちらが上か分からせるこのチャンス……、今まで下でこき使われた積年の恨みを晴らす時ッ!!

 さあ拳を握れ!!怒りに狂え!!己の全てを解き放てッ!!

 右だッ!!左手を顔の前に突き出し、相手の視界をさえぎったところで右ストレートでぶっ飛ばせ!!

 

 

 そんな俺の思いが通じたのか?

 あたふたとしていた睦月は下を向き、気づけば両こぶしを握りプルプルと肩を震せ、スゥハァと息を調えていた。

 明らかに睦月は上官、それもこの鎮守府でトップにエラい艦娘――長門秘書艦をヤる気だった。

 ……あれか?まさか本当に俺の考えが伝わったとか無いよね?艦娘ってそういう能力とかも実はあったりするの!?

 

 睦月の様子の変化に、俺は「冗談だから!殴っちゃ駄目だから!もし殴って責任うんぬんになったら、俺は関係無いから睦月一人で地獄に落ちてくれ!」と睦月に向かって必死に念じていた。

 だが、どうやら俺のこの念は睦月に届かなかったらしい。

 睦月は覚悟が決まったのか、クワッと顔をあげると、

 

「それはっ…カレーですッ!!」

 

 高々に、見れば分かることを言った。

 

「…あぁ、うん。それは分かるんだが……そうじゃなくてだな?」

 

 睦月の拳よりも破壊力の有る一言に、長門もたじたじである。

 そりゃあそうだった。

 事前に那珂ちゃんが「アピールポイントを言って」と言っていたのに、あろうことか真面目で通っている睦月が英文よろしく、「これは何ですか?」「それはカレーです」と誰でも見れば分かる事を答えたんだから。

 

 時が止まったかのように静まり返る会場。

 その様子に睦月が違和感を感じ、自分が今言った失態に気づくのに時間は掛からなかった。

 

「はにゃああああ!!ちちち違うんですう長門秘書艦!それはカレー何ですけどただのカレーじゃなくって――」

 

 手をばたつかせて睦月が先程の訂正に入る。その様子は明らかにテンパっていて、自分が言いたいことがまとまらないまま、思った事がそのまま口から出ている様だった。

 それは聞いているこちらとしては、何が言いたいのか良く分からない状態だ。

 だから、

 

 

「ぷっ……!!」

 

 睦月の横で肩を震わせて笑いをこらえている如月さんよ、そろそろフォローに入ろうぜ。睦月が面白い反応をしているのは分かるが……、そろそろ睦月がいたたまれないから。

 

 そんな事を思っていると、笑いがこらえきれなくなったのか、睦月や長門達から顔を反らすように後ろを振り返った如月と不意に眼があった。

 

「……メトメガアウー、シュンカンスゥキダトキヅッイター」

「ぶっほっ!」

 

 その時ふと思い浮かんだフレーズ。

 それを俺は考え無しに口ずさんだのだけど、……如月ぃ、俺の歌は……はにゃってる睦月より面白いの?

 思った問いに如月は答えない。

 ただその場にしゃがみ込んで顔を手で覆うだけだ。

 

「ぷ…ぷぷっ……ふふふ…」

 

 ……おそらく、笑っているのを隠しているつもりなのだろう。だが無意味だ。笑い声が口から洩れてしまっている。

 すると、そうこうしてる内に自分ではどうしようも出来ないと悟った睦月が、助けを求めてキョロキョロしだして後ろを向いてしゃがみ込んでいる如月を見つけるのにそうは時間は掛からなかった。

 

「あああーっ!!如月ちゃん!なんで座ってるの!?私だけじゃなくて如月ちゃんも何か言ってよぉ!!」

「ふふっ……ちょっ、待ってね睦月ちゃん。…ぶふっ…今はダメ……!!ダメだからっ……!」

 

 助けを求める睦月の顔は恥ずかしさで真っ赤だった。顔も耳も首も。目元には涙まで浮かべている。

 だけど如月はそんな睦月を意に返さない。睦月の方を見ようともせず、ただ駄目と言うばかりだった。

 一体、何がダメなんだろう?腹筋?腹筋かな?

 笑い過ぎで腹筋が爆発しちゃうのかな?

 

 そんな風に如月の腹筋を心配していると、睦月が何故がこちらを向いているのに気がついた。

 俺の方をぶれる事無く、ただじっと…潤んだ瞳でこちらを見てくるのだ。

 

 ……なんか、凄い優越感。

 可愛い女の子が正面に立って俺を見つめている。

 そしてスッと目を瞑り、恥ずかしそうにしながらもけなげに唇を差し出してくる女の子。

 俺はその女の子の肩を抱き寄せ、軽く触れるような優しいキスをするのだ。

 

 それは男なら一度は夢見るシチュエーションなのではなかろうか。そして今のシチュエーションはそれに酷似しているのではなかろうか!!

 まぁ、俺はイケメンだからね。そんな事が起きたとしてもしょうがないね。

 ……ただ、ひとつだけ気になる事があって……実はその睦月(ヒロイン)、俺の頭の中の雰囲気と違い「やっと……、やっと見つけたわこのヒトゴロシィ!!」と言わんばかりに怨念篭った目で俺を睨みつけている。

 

「…ひっ」

 

 そんな睦月の様子を不思議に思っていると、だんまりだった睦月の口から言葉が漏れる。

 ひ?ひってなんだ?……やっぱり人殺し?

 そんな俺の疑問に知ってか知らずか、睦月は「ひ」の後に続く言葉をポツリポツリと呟く。

 

「ひ…ひびきちゃんの……」

 

 この時、俺は理解した。

 睦月が今、俺に言わんとしている事が理解できた。

 だけど何故だ。

 俺は何もしていないのに。

 どちらかというと今回の失態、睦月自身の自爆だと思うのだけど、どうして俺は――、

 

 

 

「響ちゃんのバカァ!!……うえ~ん!!」

 

 

 

 ――事あるごとに馬鹿と呼ばれるのだろう?

 

「ぷぷっ…まって、睦月ちゃフフフッ」 

「解せぬ」

 

 年頃の女の子の気持ちほど分からない物はない。

 俺はただ、周り半数以上からの「ああ、アレのせいなのね」という冷たい視線を受けながら、真っ赤にした顔を両手で隠しながら走り去っていく睦月、そしてそれを笑いながら追って行く如月を見ている事しかできなかった。

 

 

『……えーと、コホン。睦月ちゃん如月ちゃんチーム、逃亡したため失格ゥ!……ということで、次行っていいですか?いいですね!?……え~、ではエントリーナンバー……色々あって2番!!五航戦チーム、準備お願いしまーす』

 

 そして漂う微妙な空気の中、意を決して口を開けた那珂ちゃんは強引に大会の進行を進める。

 その強引っぷりは、呼ばれた五航戦の二人が「アッ、ハァイ」とまの抜けた返事を返した後に、呼ばれた訳を思い出して慌てて審査員達の前にカレーを並べ始める程。

 最初に置かれた睦月達のカレーは、勿体ないのかどうかは分からないが審査員3人がくちいっぱいにカレーを頬張り、「もっもっ」と食べていた。

 その様子は見ているこちらとしては、シュールでシビアでなんというか――――

 

「……電もお腹が空いたのです……」

 

 

 ……せやな。

 横からボソリと聞こえた本音に、俺は無意識に頷いた。


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