ズダーン、と転ぶ吹雪。今夜だけで何回見たか分からないこの光景。
・・・・・・正直、飽きました。
「しっかし、これだけやってるのに全然上手くならないね」
「そんな事ないですよ、川内さん!私だって響ちゃんと川内さんにサポートしてもらえば立てる様になったんですから!!」
・・・ブッキーよ、上手くなったのか?それ・・・・・・。
とはいえ、根性だけは凄まじい物があるのは確か。
なんたってブッキーは、一度も休まず玉に乗っては転けるを繰り返しているのだから。
そしてその光景を見続けた俺と川内さんもナイスガッツと言わざるおえない。
「・・・まぁ、最初はサポートもろともズッコケたブッキーにしてみれば物凄い飛躍と言ってもいいんじゃないんです?」
「そう言われるとそうなんだけどさー」
「・・・響ちゃん、褒めるならちゃんと褒めてよぅ」
「いや、そこまで褒めたつもりはないんだけど――――おっ」
気づくと特訓してから大分時間が経っていたらしく、空は大分明るくなっていた。
明るくなれば周りの草木や地面もハッキリと見えてくるものだ。
朝日に照らされた草花は、朝露でキラキラと輝いていてとても幻想的だった。
「綺麗ですね――――」
「そうだね、私は夜も好きだけどこの時間も好きだなー」
二人も同じ事を思っているのだろうか、俺と同じ方向を向いてそんな事を言っていた。
・・・・・・だが、いまの俺にはそんな事はどうだってよかった。
俺は二人の特訓を見ている時から気になった事がある。
「・・・・・・響?どこ行くの?」
「いや、少し・・・・・・」
俺は草木が茂っている所へ向かい、一本の小枝を片手に二人の前に戻ってくる。
「響ちゃん、それ何に使うの?」
「まぁ、見てな。凄いぜ、これ」
そう言ってブッキーの足元、バランスを取る練習に使っていた玉と玉の間に小枝をそっと置く。
完成だ・・・・・・!!
「響ちゃん、なにこれ?・・・えーと、川内さん、これ何か分かります?」
「うん、全然分からない。きっと何かのおまじないじゃない?」
「ふふっ・・・ぜんぜんっ、違い・・・ますっ・・・ブフォ!!」
もう駄目だったッ・・・!!笑いが止まらねぇッ!!
駄目だ、笑うな・・・堪えるんだッ・・・・・・!!まだ終わっていねぇ!!
「ブッキー・・・特訓ッ・・・GO!!・・・・・・くふふふふ」
「なんか、怪しいな響ちゃん・・・・・・」
「怪しく無いよ!!だって枝置いただけじゃん!そこに!!」
「そうなんだけど・・・・・・これってさっきみたいに乗ればいいの?」
「YES!YES!YES!別に枝が何かなるってワケじゃないからその片は気にせんでええよ・・・!!」
ブッキーはこちらに疑いの目を向けるも俺が何を考えてたか分からないらしく、渋々とバランスをとる練習に挑む。
・・・・・・踏んだぁ!!玉と玉を踏んだぁ!!ブッキー、なんていやらしい子!!
すると川内さんが俺の隣にやってきて、ブッキーに聞こえない様に枝の意味を聞いてきた。
「ねぇ響、あれって何か意味あるの?」
「無いっす!!自己満足・・・・・・くふふ・・・ふひぃ」
「じゃあなんでそんなに笑ってるのさ!教えてくれてもいいじゃん!!」
「わっかりました。・・・川内さん、ブッキーは今に乗ってますか?・・・ふふふふ」
「なにって・・・バランスとる特訓――――」
「ちゃうねん・・・もっと短縮に!ブッキーの乗っている物を!!想像力を働かせて!!・・・ふひひひひ」
「・・・想像力って・・・・・・!!?――――ボファ!!ひび、馬鹿!!ダメでしょ!?女の子がそれやっちゃぁ!!」
どうやら川内さんも気づいたらしいッ!俺の作り上げた万人に受けるであろうアートにッ!!
簡単な話、枝じゃなくてもよかった。細長ければ。
地面に置いた意味も無い。大事なのはイメージ、そして周りとの調和。
「た~まがひとつで~ただの玉~ た~まがふたつ~で玉々だぁ~」
「ちょっ!?ストップ響!それ以上は駄目だって!!」
「どうしたんですか川内さん?――ととっ・・・うわぁ!!」
川内さんが肩を揺さぶっている間、ブッキーがバランスを崩し転んでしまったっ!!
そしてブッキーが転んだにも関わらず、俺の作ったアートは特に崩れることなく、そしてあろうことか奇跡が起こってしまった・・・・・・!
尻餅をついて転んだ吹雪は、体育座りのような体勢で打ったお尻を摩っている。だが問題はそこじゃない。
そんな体制を取っている吹雪の股元に・・・俺のッ!!アートがッ!!あるんだよォォ!!
「ブッーー!!もう、もう駄目ッ!!ヒィヒィヒィ・・・腹、腹イテェーーッ!!」
「いたた・・・・・・。ところで響ちゃんはどうしてそんなに笑ってるの?」
「ひっひっひっ・・・ち○ぽっ!ち○ぽッ!ちー○ぽッ!!」
「あぁ・・・とうとう響が壊れた・・・・・・」
「え・・・・・・どういう事・・・・・・?」
「ブッキーにッ!ち○ぽがッ!生えました~ぁッ!!ひぃ~ひっひっひっ」
「ちん?・・・・・・キャーー!!ばかぁ!響ちゃんのばかぁ!!変態!」
ここまで言うと流石に吹雪も俺が小枝を置いた意味が分かったらしい。
そうです、下ネタです!!
しかも吹雪、自身の股元に俺が作った下ネタを持ってくるというチンプレイ。
もう笑いが止まりませんっ!!
この感動を届けてくれた吹雪に是非のお礼を言わねば・・・・・・。
「ぶふふ・・・・・・ブッキー、ナイスち○ぽプレイ!!」親指をグッと立てる
そんな俺の言葉が戦闘開始の合図だった。
吹雪は顔を真っ赤にしたかと思うとおもむろに立ち上がり、俺をボコスカと叩き始めたのだった!!
「うぇ~ん!ばかぁ!響ちゃんのばーかぁ!!」
「やめろブッキー!!ブッキーのせいで俺の腹筋は既に崩壊してるぞぅ!?痛いっ!ちょっ待って、マジ痛い!川内さんヘルプ!!この子バーサークしてるぅ!!」
「うん、無理。流石にあれは女の子にやっちゃ駄目だと思うよ」
なんということだ・・・・・・川内さんに見捨てられてしまった!
それでも俺は助けを求めるべく、背中を吹雪にバシンバシンと叩かれながら川内さんの方へと一歩、一歩と足を運ぶ。
そしてあと少しで川内さんを身代わりにできる、という所で吹雪の攻撃が俺の脇腹に当たる。
「あふん」
痛くはなかった。だが当たり方が悪くずるり、と掠めたせいで俺の力が急に抜け、後ろでドカドカと俺の背中を叩いていた吹雪もろとも転んでしまう。
「キャーーーー!!!」
そして俺が転んだ途端、悲鳴が上の方から聞こえる。
なんだ?と思い、上を見るとそこには・・・・・・パンツ!!パンツですッッ!!
「はじめましてッ!自分、響といいますッ!これからヨロシクオナシャス!!」
「馬鹿響!!なんで私のパンツに自己紹介してるの!!それより早くスカートを離して!!」
・・・・・・どうやら俺は転んだ拍子に川内さんのスカートを掴んでしまったらしい。
でもね川内さん、スカートだけでよかったじゃない。俺なんてパンツごとっすよ?あれには俺も顔を抑えて片隅にしばらくいる他に方法はなかった。
そんな事を思ったが声には出さずパッとスカートを離し立ち上がる。
そして、わざとじゃないにしろ川内さんに迷惑を掛けてしまった手前、どうしても言わなければいけないことがある。
「・・・あの、川内さん・・・・・・さっきは――――」
「あー、響?そこまで怒ってないから気にし「白でしたね」・・・へ?」
「いや、さっきのパンツは白でしたね。無地の。なんて言うか・・・意外でした。・・・悪い意味じゃないですよ!?ほら、年頃の子ってセクシーな物に憧れたり・・・・・・うん、健全的でとても素敵だと思います」
「・・・・・・ふ、ふふふふふ」
「・・・あれ?川内さんどうしたの?プルプルして。ち○ぽが今になってツボりました?」
「響ちゃん、今のは川内さんに謝るところだと思う・・・・・・」
「ひ~び~き~・・・・・・覚悟は出来てるんでしょうね・・・・・・?」
「えっ?覚悟なんて・・・・・・無ぇよ!!ある訳ないだろバーカ!!元はと言えば川内さんが助けなかったのが悪いんじゃー!!」
「・・・響、言いたいことはそれだけ?」
「・・・・・・あとひとつ。・・・ブッキー!!助けて!!このままだと俺、超ヤバイ!!ヘルプミー!!」
「・・・・・・あのね響ちゃん」無表情からニコリと笑い、「響ちゃんは一回酷い目にあった方がいいと思うな!」
「イヤァァァ!!人殺しィィイイ!!」
「ふふふふふ、大丈夫・・・痛くないよ・・・・・・?ただちょっと私と同じ思いを・・・響のパンツを見るだけだから・・・・・・」
「ヤメロォォ!!俺のパンツに価値なんて無いんだよッ!!・・・来るな、来るなァァ!!」
そんな事はお構いなしに川内さんは俺の方へにじりにじり、と近づいて来る。
だが俺は希望を捨てたわけじゃないんだ!!俺は生きる・・・生きるぞォォ!!
「そんなこんなで昨日に続き今日も行われた追いかけっこは互いに吹雪のパンツを見るということで収束に「なんで私のパンツなのっ!?」・・・・・・ですよねー」
「響、私今回はマジだから」
「・・・えーと、ごめんなさい・・・・・・?」
「もう遅いッッ!!」
オラァ!と言う掛け声と共に俺はあっさり捕まり、川内さんにスカートを奪われてしまいました。
めでたしめでたし(泣)