オリ主と第六駆逐艦隊   作:神域の

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アニメの提督喋んないから出し辛ぇ・・・


0-18 俺が此処に居る理由

 結局俺は二人に今回のあらすじを話す事にした。俺が電を庇って記憶喪失になった事、それを気にして電が居なくなった事、探すために放送を利用した事、そしてそれが原因で解体通知を受けるか自主的に解体されるか選ぶことになった事。

 

「――――で俺は自主的に解体を選んだんです。話を聞くと通知を受けてからの解体だと、そのあと鎮守府などのやり取りが一切できないらしいんですが、自主的なら手紙とかなら大丈夫みたいで」

 

「貴方って本当に、良くもまあそんなに色々な事を起こすわね」

 

「まあまあ加賀さん、これが響さんらしいじゃないですか。・・・でも響さん、本当にこれで皆とお別れで、もう二度と会えなくなってもいいんですか?」

 

 いいわけが無い。俺だって解体は嫌だし手紙なんて書きたくない!!手紙なんて書かずに皆と楽しくできればそれでいいんだ!!・・・でも俺はやらかした。あの時は記憶がなく自分の立ち位置を理解してなかったのもあるが、またやらかしたのだ。

できるならあの時のことはなかった事にしたいが、それを言うと電を放って置いてしまえと言ってるようで・・・・・・。

 俺は赤城の問いに答えられずに視線を下げる、すると赤城は俺に違う事を聞いてきた。

 

「響さん。響さんがここに来た時に私と約束をした事を覚えていますか?」

 

 忘れる訳が無い。俺はここに来て初めて優しい言葉をかけられたのだから。

 

「・・・覚えてますよ。覚えてるからこそ俺は勉強も演習もがんばれました。それと最後にこんな形で裏切ってしまってごめんなさい」

 

「最後じゃないですよ。・・・響さん、もし・・・もし解体が取り止めになったらどうしますか?」

 

「もう無理ですよ、俺は書類にサインをしましたからね・・・・・・」

 

「わかりませんよ?提督にお願いしたら何とかなるかもしれません。私も一緒に行きますから、ねっ?響さん」

 

 そう、もう無理なはずだ。でも・・・もし本当に取り止めになったらどんなに嬉しいことか。

 

「・・・・・・赤城さん、この子でいいの?」

 

「はい。だって演習の時の響さん凄いじゃないですか」

 

「そう、ならいいけど」

 

 そう思っていると二人は何やら話をしていた。そして俺が見ているのに気づくと赤城は俺の頭を撫でてきた。

 

「大丈夫ですよ、私に考えがありますから。加賀さんはどうしますか?」

 

「待ってるわ。私が行っても意味ないもの」

 

「そうですか。それじゃあ響さん、行きましょう?」

 

 そう言って部屋を出ていく赤城。俺はどうすればいいか迷ってしまい加賀さんに目を向ける。

 

「早く行かないと置いていかれるわよ、とっとと行ってきなさい」

 

「あっハイ。では行ってきます」

 

 赤城はどうやって解体をやめさせるのだろう。だけどもし本当に此処に残れるようになったら少しは落ち着こう、そしてもう一度頑張るのだ。今度こそ俺に優しくしてくれる人達の為に。

 

 

 

 それは提督室に行く途中だった。

 

「・・・響さん、少し聞いてもいいですか。響さんは運命を信じていますか?」

 

 何を思っているのだろう、赤城は俺にそんな質問をしてきた。それにしても運命ねぇ・・・。

 

 俺は運命を信じて『いた』。いたと言うのは過去形で今はあんまり信じていない。というよりも便利なのだ、運命ってやつは。そこに失敗や諦めがあっても『運命だから』で済んでしまう。諦めが常だった俺にとってそれは最も簡単な逃げ口上だった。

けど今は違う、それどころか前の失敗にしても諦めにしても頑張れば、努力してれば違った結果が在るんじゃないかと思うくらいだ。

それに努力や頑張りにしても『運命だから』で済んでしまうこの言葉は今の俺は嫌いだった。なので――――

 

「信じてますよ、ただし都合の良い事だけですけど」

 

「ふふっ響さんらしいですね。私もそうかもしれません、ですが――――」

 

 言葉を止めて赤城は一度深呼吸した後、言った。

 

「ですが、運命はあるのかもしれません。というのも私は同じ夢を見るのです。最初は1年、次に半年、周期は短くなり5ヶ月、4ヶ月とまるでこの先の運命が決まっているかの様に何度も何度も――――」

 

「・・・その夢ってやつはどんな夢なんですか?」

 

「・・・・・・私達が決定的な敗北をする夢です。夢では私や加賀さん、他の艦娘も沢山沈んで行きました」

 

「ミッドウェー海戦みたいな夢ですね」

 

「そうです。きっと私達の中に在る戦船の魂が、このままだと同じ末路をたどるのだと言っている気がしてならないんです。響さんは私の話を聞いてどう思ったか聞きたくて」

 

 どう思ったか・・・ね。アニメを知っているのでその夢が予知夢か否かを答えるのは簡単だ、けどそうじゃない、俺が思った事を赤城は聞きたいのだ。俺が思っていることをどう伝えようか、そう考えてると提督室が見えてきてしまった。

 

「・・・変な事を聞いてしまいましたね。それじゃあ響さん行きましょう?大丈夫ですよ、きっと提督も許してくれますから」

 

 そう言うと赤城は提督室の扉をノックして中に入ってしまった。

ああ、なんてことだ・・・・・・。俺には心の準備をする暇も無いのか。そんな事を思っていると扉が締まりかけていた。俺は考える。一度閉じた扉をノックして一人で入るか、このまま赤城と入室するか・・・・・・。

 後者に決まってんだろ!!一人で入るとかどれだけ勇気が要ると思ってるんだ!!俺は閉じかけた扉をガシッと掴み、隙間に体をすべり込ませる様に中に入る。

 中には赤城、長門、そして提督が居た。赤城は俺が中に入ったのを確認すると「失礼します、一航戦 赤城です」と自分の名前を言った。俺も見ているだけじゃなく名前を言わなければ・・・・・・。

 

「失礼します!!くちゅくかっ・・・・・・」

 

「「「・・・・・・・」」」

 

「・・・くちゅくかっ・・・ん、響です・・・・・・」

 

 ・・・噛んだ。それも同じところを二回。いくら自分が緊張してるとしてもだ、これはあんまりだと思う。しかも俺が二回目を噛んだ時、長門は回れ右をし、隣からは吹き出す音が聞こえ、提督の肩に限っては今も小刻みに震えている。

 

「・・・もぅやだ。帰りたい、泣きたい、寝たい」

 

「落ち着け、響。でだ、今日は二人で何をしに来たんだ?」

 

 長門が赤城に聞いてくる。

 

「そうでした。・・・提督、実はお願いがあって参りました。駆逐艦 響の解体の件についてです。この、響さんの解体決定を取り消すことはできないでしょうか」

 

「駄目だ。これ以上軍規を乱されては他の艦娘に示しがつかない。それこそ響に特別な理由が無い限り、この決定は取り消せん。響もそれについては昨日説明し納得している」

 

 なんで提督じゃなくて長門が答えるんだ・・・。けれど提督は長門の受け答えに待ったも付け加えもしない。提督も同意見なのだろう、だからこの会話に口を挟まない。

 そして無い。俺に今までの騒動、迷惑をチャラにできる特別な理由なんて一切存在しない!

 なのに赤城は「理由は有ります」と、目の前の二人にはっきりと言った。

 

「提督は前に仰言ってくれました。私の護衛艦は私が決めていいと。私はこの・・・、響さんを護衛艦にしたいと思っています」

 

「は?俺!?」

 

 意味がわからなかった。それこそ理由が無い。どうして俺が赤城の護衛艦になるんだ!?だって俺はここに来てなんにもやってないんだ、同情なんかで選べるものなのか?

 誰もが唖然としている中、赤城だけが俺に向き直り目線を同じにして言葉を続ける。

 

「もちろん、響さんが受けてくれるならですが」

 

「なんで、なんで俺なんですか?駆逐艦なら他にも沢山いるのに――――」

 

「んー。なんとなく、ですかね?」

 

「・・・同情ですか?」

 

「そうかもしれませんね。だって響さん頑張ってたじゃないですか。聞きましたよ、足柄さん達に大量に課題を出されても文句を言いつつ一人だけ教室に残って課題をやってるって。あの放送だって電ちゃんの為だったんでしょう?なら良いじゃないですか、少しくらい報われても。・・・・・・それに響さんも言ってくれたじゃないですか、約束を覚えているって。私と一緒に頑張ってくれるって」

 

 ――――ああ、きっと此処が分岐点だ。

 

「赤城さん、護衛艦ってホイホイ変えられたりするんですか・・・?」

 

「提督に頼めば出来るかもしれませんが、私は変える気はありませんよ」

 

 ――――鎮守府に居れるかどうか此処で決まる。

 

「俺でいいんですか?」

 

「響さんがいいんです」

 

 ――――此処で駄目なら俺にこの先はもう無いんだろうなぁ。

 

「後悔するかもしれませんよ?」

 

「後悔させないでくださいね?」

 

 後は『よろしくお願いします』とか『任せてください』とか言えば鎮守府に残れるような気はするが、最後の最後で何かが突っかかって言葉は出ない。

 きっと俺は無意識に何かをやらかしているんだろう、だから言葉が出てこない。

 ちらりと横目で提督の方を見る。二人はこちらを静かに見ている。

 

「提督、響さんが護衛艦を引き受けてくれた場合、解体の件は無かった事にしてください。お願――――」

 

「待って!赤城さん!!」

 

 ・・・分かった、なんで残りたいはずなのに言葉が出てこなかったか。

 何もしてないから、自分の事なのに赤城しか頭を下げていないから。

 俺は赤城よりも頭を下げるのが当然なのに、当たり前の様に見てただけだから。

 

 その場で跪き、額と手のひらを床につける――――。

 

「お願いします!許してください!もう二度とこのような真似はしません!」

 

 土下座。これが俺の精一杯の誠意だった。

 

「お願いします!此処に居させてください!居させてくれたあかつきには必ず戦果を上げると約束します!」

 

 もう許されるまで頭を上げる気は無かった。

 

「お願いします!駆逐艦の身では敵艦を倒すことはできないかもしれませんが、脅威は振り払うと約束します!敵艦載機を誰よりも撃ち落とします!誰よりも敵艦を引き付けると約束します!」

 

 謝るだけじゃ駄目なのか、それでも今の自分には謝ることしかできなかった。

 

「お願いします!許してください!昨日の書類を、無かった事にしてくださいッ・・・お願いします!」

 

 謝っているのに向かいからは何の反応も帰って来ない。・・・駄目なのかもしれない。気付くのが遅すぎたのかもしれない。

 けど、これからはしないから、お願いだから、許すと言ってください・・・・・・っ!

 

「・・・響、顔を上げろ」

 

 何分謝り続けただろう、長門がやっと話しかけてきた。が、上げない。許されるまで迷惑だろうとなんだろうと動く気などハナっから無い。

 

「・・・提督、私から話してもよろしいでしょうか?・・・・・・ありがとうございます。駆逐艦 響、今さっき言った言葉に偽りは無いな」

 

「ありません」

 

「お前は赤城の護衛艦を務める気はあるのか」

 

「やらせてください。きっと、誰よりも役に立って見せます」

 

「そうか。響、顔を上げろ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・分かった、許すから顔を上げろ」

 

 よっしゃぁぁあ!粘り勝ちだぁ!

 だが俺は、表情を出さないようにしながら顔をゆっくりと上げる。

 すると赤城が俺に「ふふっ、響さん嬉しそうですね?」なんて話しかけてきた。

 

「えぇ?嘘?なんで?」

 

 ポーカーフェイスは完璧だったろ!?何故一発でばれる?

 自分の顔をペタペタ触るが顔に表情が出ている様子は無かった。

 

「全く、すぐこれだからな・・・」と長門が薄く笑い、「だが・・・、駆逐艦 響!これまでの件、ただで許す訳にはいかない。提督と相談した結果、罰は受けてもらう」

 

 提督と相談?一体いつしたんだ・・・、そう思っていると赤城が「響さんが謝っている間、長門秘書艦が提督と話してたんですよ」とこっそり教えてくれた。

 罰か、何をすれば許してくれるのかな。そんなことを考えてると長門が再び口を開く。

 

「罰は一週間・・・いや、一ヶ月間の鎮守府に対する無償奉仕だ。いいな?」

 

「分かりました!この響!精一杯努めさしていただきます!」

 

 良かった・・・今回は本当に駄目かもしれないと思っていたから。

 けど無償奉仕ね・・・何をするんだろう?まあドブさらいでもトイレ掃除でもなんでもやりますけどね!!

 

 もう目的は済んだので提督室から退室しようとした時、俺はお礼を言うのを忘れてるのに気づいた。

 

「・・・赤城さん、長門秘書艦、提督、・・・・・・本当にありがとうございます。これからは赤城さんの護衛艦として、恥じない戦果を必ず上げます。・・・失礼しました」

 

 提督室から出るとドッと疲れが押し寄せてくる。もう、その場で座り込みたい気分だ。

 それから少しすると提督室の扉が開き、中から赤城が出てきた。

 

「響さん、良かったですね」

 

「ははは、ホントに。・・・でも、護衛艦になっちゃいましたけど俺で本当にいいんですか?」

 

「もちろんです。さあ早く弓道場に戻りましょう?加賀さんにも響さんの事を教えてあげないと」

 

「加賀さんは俺が護衛艦になったこと認めてくれますかね?」

 

「大丈夫ですよ、だって加賀さんも響さんを護衛艦にしようか迷ってましたから」

 

 なんですとっ!?それじゃあ俺、モテモテじゃねーかっ!!どうなってんだ、これはもしかして憑依特典なのか?そうなのか?

 

 そんな話をしながら歩いていると、ふと、赤城が提督室に行く前に話していた夢の話を思い出した。

 確か・・・アニメだと主人公の吹雪が艦載機を一機撃ち落として運命を変えるんだったなぁ。・・・・・・よし、決めた!

 

「そういえば赤城さん、さっきの夢の話なんですけどね?もしですよ?もしそんな運命が本当に有るとしたら・・・・・・ぶち壊しましょう!完膚なきまでに、粉々に、二度とそんな夢を見なくなるように」

 

「!!・・・そうですね!壊してしまいましょう!その時は響さん、頼りにしてますよ?」

 

 俺はその問いに力強く頷く。

 ぶち壊す。これからアニメの出来事を完膚無きまでにぶち壊して見せよう!!

 

 他の奴にはできないが俺なら出来る。だって俺は――――

 

 

 

 

 ――――『オリ主』なのだからッ!!


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