オリ主と第六駆逐艦隊   作:神域の

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0-16 駆逐艦 響の処分について

 俺の記憶が戻ってから一日経ち、いつもの様に太陽が空に上がっていく朝。季節はもうすぐで梅雨が来る頃・・・なのだが、太陽のアンチキショウは夏が待ちきれないのか、まだ春なのに眩しい輝きを放っていた。

 俺が来た時はまだ寒かったんだけど、いつの間にか日が経ってやがる・・・。

 

「ねぇ、響はさっきから何をやってるの?」

 

「見てっ、分からないかっ、雷っ!・・・・・・畜生!最後の最後で締まらねぇ!なんて我侭な奴だ、あっちこっち跳ねやがって・・・・・・」

 

「ごめん、全然分かんない」

 

「嘘やろ・・・。じゃあヒント、ヒントをやろう。俺は鏡の前に居ます、髪を手で掴んでいます、さあ答えはっ!!」

 

「あっ!髪を引きちぎるつもりね!そんなことしちゃ駄目よ――――」

 

「違うから、髪束ねてるだから、しないよそんな事。前から思ってたんだけど走ると髪が首にまとわりついてね、電にゴムを貰ったんだ」

 

「・・・嘘。あの響がおしゃれしてるなんてっ!」

 

「響おねえちゃんとお揃いなのです!」

 

「もうっ、なんで響だけおねえちゃんなのよっ!それより響!この暁お姉さんに前に言ったレディらしくするっていうのはどうしたの!?」

 

「ああ、アレね。やめた。なんというか、やっぱり俺にレディは向いてないよ。それにレディは暁が居るし、俺は俺らしくする事にしたよ」

 

 あの一件で分かった事がある、それは俺はゲームやアニメの響じゃないってこと。もともと無理だったんだ、どんなに見た目が響でも、どんなに響の真似をしても、俺は響になれなかった。

 ならば、それでいいじゃないか。俺が響に()るんじゃなくて、響が俺に()ればいい。それで皆と居れれば問題ないんだ。

 そしてくせっ毛との戦いが終わる、響ちゃんヘアーはなかなか強敵だった。

【挿絵表示】

 

 

「・・・ハラショー!これなら走っても問題ないなっ!」

 

 俺は俺のまま皆に認めてもらう、これは心の決意の証。まぁ、髪が邪魔ってのがほとんどだけど。

 

「ねぇ、皆・・・」

 不意に――――

「俺はさ、例えばどんなに遠く離れても皆と仲間で居られるよね・・・・・・?」

 

 皆と一緒に居たいって思った時からどうしても聞きたいことを聞いた。

 

「響おねえちゃん、どっかに行っちゃうのですか!?」

 

「あはは、もしもだよ。ちなみに俺はもう二度と会えなくなったって仲間だと思ってるよ」

 

 皆と一緒に居たいって思った時からどうしても伝えたいことを言った。

 

「・・・全くもうっ!響ったら、そんなの決まってるわ!例えっ!私達がどんなに離れようともっ!二度と会えなくなったとしてもっ!ずっと、ずーっと仲間よ!!ねっ皆?」

 

「当然よっ!私は皆のお姉さんなんだからね!?これからもずっとお姉さんなんだから!!」

 

「なのです!暁ちゃんも雷ちゃんも響おねえちゃんも、ずーっと電のおねえちゃんなのです!」

 

「・・・まぁ、そうだよな。当たり前だったわ。それより皆、早く飯食い行こうぜ」

 

 さっきの空気は何処へやら、後ろからは俺に対する様々な批判が飛んでくる。が俺はそれを無視して部屋を出た。

駄目だ、どうしようも無く口元が緩んでる、きっと今の俺はニヤニヤで物凄い事になってるだろう。

 

「――――響おねえちゃん、待って!電も行くのです!!・・・あれ?響おねえちゃん頭抑えて何してるのです?」

 

「・・・・・・打った。マジ痛い」

 

 急に後ろのドアがバカンと開いたのだ。俺はドアの近くに居たので後頭部にドアがヒットした。

 ニヤニヤが苦悶の表情になったのは言うまでもない。

 

 俺が頭を抑えている間に暁達も部屋から出てきたので皆で食堂に向かう。

 けどさ、俺を見た瞬間「またか」って言ったあとため息つかないで!もっと、どうしたの?とか、大丈夫?とかあると思うんだ!!

 

 それから食堂で朝食を食べていると雷が「所で、響は今日何するの?」と聞いてきた。

 というのも、まだ病み上がりで本調子ではない俺は提督から一週間の自由を貰っていた。その間に体調を整えろということだろう。

 

「昨日はほとんど部屋にいたからね、今日はリハビリがてら港を散歩しようかな。それよりそろそろ教室に行く時間じゃないか?なっちー、ネチネチ言ってくるからめんどくさいぜ、俺はゆっくり食べるから気にするな」

 

「えー、響だけずるーい!!私も散歩したい!・・・何とかならないかしら?」

 

「諦めろ、それにずる休みしたら頼りがいが無いぞ?俺も体力戻ってきたら授業出るつもりだからさ、我慢して行ってきなさい!」

 

「むー。・・・しょうがない、行ってくるわ!響、また後でね?」

 

「それじゃあ響おねえちゃん、行ってくるのです!」

 

「――――全く、勉強が嫌だなんて雷はお子様なんだから・・・って、待って!何で暁を置いてくのよ~っ!!」

 

「いってらー。・・・・・・・・・はぁ」

 

 暁達が食堂から見えなくなると大きなため息が出た。別に暁達と居るのが疲れたとかじゃない、・・・ただスカートのポケットに入っている物が問題だった。

 俺はその物を取り出し昨日と同じ様に眺める。それはただの紙だった、昨日から何度も見返してくしゃくしゃになったただの紙。だけどその紙に数行書かれている内容が問題だった。

 

「はぁ、・・・ぁぁぁ、暁達になんていうかなぁ」

 

 何度見たって変わらない、昨日から見続けて暗記もしてしまった紙の一番上にはこう書かれていた。

 

 『海軍艦隊解体処分報告書』

 

 速い話、解体だった。理由は作戦司令室を無断、私的使用した事。昨日、提督にあった理由は休暇とかの話ではなく、俺の処分についてで一週間の自由は病み上がりの俺を心配しての最後の温情だった。

 出来る事なら解体や移動はやめて欲しいがあの時の行動は今でも後悔はなかった。それに今朝も皆が言ったのだ、『遠くに行っても会えなくなっても仲間』だと。それで良かった、それだけで俺の頑張りは無駄じゃなかったと胸を張って言えた。

 

「・・・けど、嫌なものは嫌だぁぁぁ・・・何とか方法はないものか・・・・・・」

 

 とりあえず朝食を食べよう、方法はそのあと考えよう。俺はテーブルに半分以上残ってるサンドイッチに手をかけちびちび食べる。俺はまだ、まともに食べ物を食べることができなかった。

 

「・・・ねぇ駆逐艦、私、北上さんと朝食を食べたいんだけど」

 

 両手に紙とサンドイッチを持っていると不意に前から声がかかる。

 今の時間、食堂は混むからな。相席くらい気にしないのに、律儀な奴だ。

 

「ああ、いいですよ。適当に座ってださい」

 

「は?何言ってるの?私はアンタに退けって言ったんだけど」

 

 何言ってる?それはこっちのセリフだ。俺は紙から女に目線を移す。

 ・・・大井か。服がヘソだしてないから誰だか一瞬分かんなかった。俺も雷巡コンビにはイベントでお世話になったものだ。

 

「・・・席ならそこを使って大丈夫ですよ?」

 

「ちっ、アンタ耳ついてる?私はどっかいけって言ったの」

 

 どうやらさっき聞こえた声は空耳じゃないらしい。これはもしかしなくても喧嘩を売られていた。

 

「・・・俺の耳が無い様に見えるか?それならテメエの目は飾りだな」

 

「なんですって!駆逐艦の分際で生意気な――――」

 

「おーい大井っち、場所取れたー?」

 

「はーい、場所は取れたんですけどゴミが散らかってて今片付けてるんですー」

 

「よければ私も手伝うよー」

 

「大丈夫ですー。北上さんはゆっくり来てくださいー」

 

「・・・・・・随分分厚い皮を被ってるな、ゴミって俺のことか?」

 

「はっ!アンタ以外に誰がいるのよ、鎮守府のゴミがっ!大人しく解体されればよかったのに」

 

 その言葉を聞いた時、ここ最近同じ言葉を聞いたのを思い出した。

 そういえば俺にそう言ったのも二人組の片割れだったな、服装も髪型もよく似ている・・・・・・間違いない、あの時の艦娘は大井だ。

 

「俺はテメエにそこまで言われる筋合いは無いと思うんだが・・・・・・?」

 

「しらばっくれやがって・・・・・・、アンタは一度ならず二度までも私と北上さんの語らいを邪魔してるのよ!!(・・・・・・北上さんと話してる時に大音量で喋りやがって、クソ)」

 

「身に覚えがねぇよ。それに仮に邪魔してたとしてもそこまで言われる筋合いもねぇよ。・・・頭茹だってんじゃねえの?」

 

 俺は手に持っている物を置きガタンと立ち上がる。ゲームでは世話になったから大井は好きだったが目の前のコイツは嫌いだ。

 一触即発。今、俺と大井の周りの空気はまさにそう呼ぶのに相応しかった。お互いに何も言わずただ睨み合い時間だけが過ぎていく・・・・・・。そんな膠着状態を破ったのは俺でも大井でもなく北上だった。

 

「お待たせ大井っち、朝ごはん持ってきたよー。・・・あれ、これゴミ?」

 

「――――あっ!待った!!」

 

「――――駆逐艦 響は一身上の都合により解体を・・・解体?アナタ解体されるの?」

 

「えっ!?嘘!北上さん見せて見せて!!・・・・・・ぶっ、駄目じゃない響ちゃん、大事な書類は綺麗にしないと。そういえばこの紙、名前とか判子とか無いけど書き方分かる?分からなければ教えてあげましょうか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

 紙は控えだった。大井は俺が解体されるのが嬉しいのか、上機嫌で北上の前だというのに猫かぶるのを忘れていた。

 

「あのさ?大井っちそろそろ――――」

 

「でもこれでこの鎮守府も少しは良くなるわねー!だって一番の馬鹿が居なくなるんだものね?アンタの姉妹艦も清々するんじゃない?アンタ問題起こしてばかりだものねぇ」

 

「・・・そんな事無い、暁達はきっと悲しんでくれるはずだ」

 

「はっ!そんな事ある訳・・・あぁ!!そうよね!きっと悲しんでくれるはずだわ!だって貴方の姉妹艦ですものね?きっと姉妹揃って馬鹿なんでしょ!?」

 

「           」

 

 それからの事はあまり覚えていない。気がついたら俺は加賀さんに引きずられながら食堂を後にしていた。




 大井っちは北上と手を繋ごうとすると響に間を通られたり、北上さんと話していると響の放送ジャックで声が聞こえなかったりでたいそうご立腹な様子。

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