オリ主と第六駆逐艦隊   作:神域の

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 本文一万超えました。二話分ですよ。そして0-16におまけが付く予定、グリコ的な。
 シリアスはもう書きたくないけどそれっぽいのをもう一回書いてそろそろアニメの話書きてぇ。オリジナルの話はキツイよ。


0-15 俺はお姉さんだからな

「・・・ねえ、さっきから思ってるんだけど響少し女の子らしくなったんじゃない?」

 

「やっぱり雷もそう思ったの!?・・・あれかしら、記憶を失うとレディに近づけるのかしら?」

 

 皆でスイーツを食べてると雷が爆弾発言をかました。ちなみに響ちゃんのフリは継続中です。

 けど待ってくれ!中の人は男だからっ!男なんだっ!今の方が女の子らしいとか言わないでっ!!というか男の俺より女の子らしくない響ちゃんってなにさ!!

 

「・・・あのさ、記憶喪失の前の私ってそんなに女の子らしくなかったの?」

 

 聞くのがとても怖かった。だってこの店入ったときゾンビって言われたんだぜ?そこは不死鳥じゃねぇのかよ、響ちゃん的に考えて。

 すると暁が俺の質問に対してプンスカと怒りながら答えてくれた。

 

「記憶を失う前の響はね、自分の事を俺って言ってたのよ!それに教室を飛び出したり・・・それも二回っ!まだあるわ、響は平気で嘘つくのよ!レディになるには語尾にザマスを付けないといけないとか、艦娘は戦闘力が10以上あるからかめはめ波が出せるとか、夜に私の後ろにお化けがいるとか――――」

 

「あと響はフラーって、どっかに行っちゃうの!でね、お風呂に入るとき毎回覚悟がどうこうって言ってお風呂に入んなかったの!・・・最近は無くなったけど。あと響は・・・、演習の時凄い怖くなるの。目がね?こう、ギロッってなるの。それから足柄さんに沢山課題を出されて私達と居る時間が減ったし。そうじゃない時も誰かに呼ばれるとそっちに行っちゃうし・・・、私達と居るのが嫌になっちゃったのかしら・・・・・・」

 

 響ちゃんへの愚痴りに雷も参戦、最初の方こそ不満ばかりだったが最後の方は寂しそうだった。この鎮守府に居た響ちゃんは問題も多かったがそれなりに上手くやっていたようだ。

 ・・・だからこそこの場には居づらかった、俺は皆が知っている響ちゃんではないから。

 誰も何も言わなくなりシンとした雰囲気が漂い始める。・・・この空気は駄目だ!気が滅入る!何か話題を見つけなければッ!

 

「・・・あ、そうだ。ねえ誰か餡蜜食べる人いる?食べかけで悪いんだけどもうお腹いっぱいで食べれそうにないんだ」

 

 そう言って沢山残された特盛餡蜜を見る。お皿に残った餡蜜はほとんど減ってなく食べたというより摘んだと言ったほうが正しかった。

 実際に俺はアイスを二口とお饅頭一個、みかんを3~4個食べただけなのだ。

 

「あれっ、響はいつもペロって食べちゃうじゃない、どうしたの?」

 

「ほら、私ってずーっと寝てたんでしょ?それで胃が小さくなって食べれなくなったんだよ、きっと。ゴメン雷、もしよかったら食べてくれない?」

 

「もうっ、しょうがないわね!こうなったら雷様が助けてあげるわ!」

 

「私もお姉さんだから手伝ってあげるんだから!ほら雷貸して、半分こしましょ?」

 

 どちらが半分に分けるかで争っている暁と雷を見ていると話題(スイーツ)を与えたのは成功だと思った。

 ・・・・・・すすり泣く声に気づかなかったらだったが。

 泣いていたのは電だった、電は下を向きながら涙をボロボロと零していた。気づいたのは俺だけじゃなく、暁や雷も争うのをやめて電を見ていた。

 それから少しすると電から言葉が出始めた。

 

「・・・・・・ごめんなさい、ごめんなさい。・・・全部、電が悪いのです。響ちゃんが電を庇ったから響ちゃんの記憶が失くなっちゃったのです、電のせいで響ちゃんは沢山食べれなくなったのです・・・・・・」

 

 言葉は謝罪だった。

 俺はここで初めて気づいた、長門が言ってたチ級の雷撃を受けた理由に。響は電を庇ったのだ、その結果二週間ものあいだ病室で寝込むことになった。その時、庇われた電はベットで横たわる響を見て何を思ったのだろう・・・・・・。

 ・・・その答えは既に出ていた、『自分のせいで』。電はこの二週間そんな思いをずっと持ち続けたのだろう。それがどんなに辛い事だったたろうかなんて俺には想像だにできなかった。

 

「大丈夫よ!響も気にしてないわ、ねっ響!それにほら、記憶喪失になって響がレディらしくなったわ!」

 

「・・・電は、電はそれでもっ!意地悪でも前の響ちゃんの方が良かったのです・・・・・・!」

 

 そう言って俺の方を見る電。

 何をどうすればいいんだ・・・・・・?俺は皆が知っている響ではない、もしここで俺が電に気にしてないよと言ったところでそれは俺の言葉であって電を庇った響の言葉ではないのだ。

 そんな葛藤をしている刹那の時間が電をさらに傷つける。

 

「っ・・・そうなのです・・・・・・。許してくれる訳が無いのです。響ちゃんは電の事が嫌いだったからっ・・・」

 

 そんな電を俺は見ることしかできない、そして電はおもむろに立ち上がり走って店を飛び出してしまった。

 どうすればいい?追いかけた所で何になる、俺は前のことなんて知らないんだ!

 一連を見ていた店に居た艦娘が好き勝手言っていた。泣かした、鬼畜、イジメ・・・・・・。

 ・・・クソッ!外野は黙ってろッ!!もう俺はどうしていいか分からなかった、どんなに響の口調を真似しても根っこの部分は俺なのだ、俺が許したところで響が許したわけではないんだ!

 それはつまり根本的な解決にならない、俺が許すという事は嘘をつくという事、嘘をつき続けるという事。

 俺だって嘘はつくがあくまで嘘だと分かる物であって誰かの思いを踏みにじる様な嘘はつきたくはなかった。だが何とかしたいという思いも確かにあった。

 『ほっとく』か『ほっとかない』か。どちらを取るか頭の中を思考がグルグル回る。外野がうるさい。暁達が心配してる。俺が許しても意味がない。なんとかしたい。そんな事がグルグルグルグル――――。

 

「・・・・・・めんどくせぇ、てめぇらごちゃごちゃうるせぇんだよ、少し黙ってろ・・・・・・」

 

 静かにそう言うと周りのヒソヒソ話はピタッとやんだ。

 

「・・・響?」

 

「・・・悪い、少し行ってくる」

 

 店を出る前にその場に居た野次馬共を睨みつける、誰も俺と目を合わせようとはしなかったが。

 結局俺はどうしようか決めることはできなかった。だけどあそこでウジウジ悩むよりとりあえず行動を起こしたほうが良いような気がした。

 

 

 

 

 あちこちを走り回ること十分位か、俺の体は限界だった。もともと廊下を歩くのも店に行くのも一苦労だったのだ、体力というのはそんなすぐに戻ったりしない。

 電が行きそうな場所というのもわからない。当たり前だった、俺は何も知らないのだから。

 なんとなくわかっていた事だったが、そんなすぐに見つかるわけがなかった、あちこち走り回るくらいじゃ見つかるわけがないと。それくらいこの鎮守府は広かった、とても一人じゃ探せない。

 

「・・・無理だ、こんなに広いとどこにいるかさっぱり分かんねえ」

 

 俺は電を探すのを諦めた。これ以上走り回っても無駄だ、この調子じゃあ俺が参ってしまう。

 ・・・俺は近くの壁を見つめる。いや、実際には壁のとある一点をだ。

 

「あー、やるしかないかな?後が怖いけど」

 

 ・・・・・・俺は探すのを諦めた、正攻法での話だが。手段を選ばなければ人一人探すのなんて訳ない。

 俺は鎮守府を走り回ってる時に気になったことがある、まあ此処が基地だから当たり前なのかもしれないが。

 方法は簡単、俺が行動を一つ起こすだけ、後は向こうから来てくれるはずだ。

 覚悟は決まった、俺は俺を誤魔化さない。・・・電には本当の事を言おう、俺には許すことも責めることもできないと。そして俺が思った事を言おう、それが慰めになるとは分からないが。

 

 俺は行動を起こすためこの鎮守府でおそらく一番デカイ建物に足を運ぶ。・・・この方法は下手をすれば解体物なんじゃなかろうか、だからといって探すのはやめないが。

 ・・・正直どちらも辛かった。女の子を泣かしたままほったらかすのも、これからやる事で解体されるかもしれないということも。けどさ?どっちにしろ辛いのなら自分の好きなようにやりたいものだろ!

 

 デカイ建物に入り中を探索しているとお目当ての部屋を見つけた。鍵は・・・、掛かってない。どうやら運がついてるようだった。俺はその部屋の扉を開けて中に入った。

 

「誰ですか・・・って、ちょっと辺りを弄らないでください!」

 

 中には艦娘が居た、軽巡 大淀だ。まあ鍵が開いてれば中に誰か居るのは普通か。だが関係ないね、俺は既に腹を括ったんだ。

 俺はうるさい大淀を無視して辺りを見回す。するとちょうど真ん中あたりにお目当ての機材を見つけた。

 

「ちょっと響さんですよね!?何しようとしてるんですかっ!?」

 

「落ち着けよ、一分も掛かんないから。少し待ってな」

 

 俺は機材の前に立つとそこにあるボタンやスイッチに目をやる。スイッチはオフ、ボタンは『校舎』『寮』『演習場』など様々。大淀は俺が何をしようとしているのかわかったのだろう、しきりに「だめですって!下手をすると解体ですよっ!」と止めてきた。

 

「そっか、解体は嫌だなぁ」

 

「ですよね、だから早く部屋から出ていって――――」

 

「けどな大淀、アンタは少しずれている。嫌な事と出来ない事は別物なんだよ、だから・・・嫌という理由は俺が引く理由にはならないんだ」

 

「――――え?」

 

 俺は機材のスイッチをオンにし、見当たる限りのボタンを全て点灯させる。そして目の前にある『マイク』に向かって――――

 

 

「『えー、マイクチェックの時間だオラァ!!チェック・・・はいいや、めんどくせえ。コホン、電ー、聞いてたら早く戻っておいでー。後あれだ、電見かけた奴がいたら俺・・・じゃねぇ駆逐艦 響に教えるように、以上!!』」

 

 言いたいことは言った、なのでスイッチをオフに戻し大淀にお礼を言う。

 

「大淀さん、ありがとうございました。それじゃ」

 

「どうしようどうしよう、提督になんて言えばいいか・・・」

 

 知らん、俺に聞くな、俺は今忙しいんだよ。

 頭を抱えている大淀を無視して『作戦司令室』をあとにする。

 ちなみにさっき見ていたのはもうお分かりだろうがスピーカーだ。このスピーカー、気づけば鎮守府のいたるところに付いていた。これなら鎮守府にいる限り嫌でも電は見つかるだろう、早く探しに行かなければ。

 

 ・・・この放送は、後に白虎復活の咆哮と一部の艦娘に囁かれるのはどうでもいい事だったりする。

 

 

 

 

「駄目だ、まだ見つからねぇ。どうなってんだ、あれだけ盛大にやれば嫌でも出てくるだろ、普通は」

 

 あれから外に出て電を捜索しているのだが一向に手がかりが見つからなかった。

 もしかして場所を指定しなかったのが悪いのか。けどなぁ、もう一度放送って訳にはいかんよなぁ。

 

「やっほー響、大復活だねぇ。放送聞いたよ、末っ子駆逐艦を探してるの?」

 

 そんな事を考えていると後ろから声をかけられた。軽巡 川内だ、この様子だと響ちゃんとは親しい間柄だったのだろう。

 

「そうなんですよ川内さん、電がどこに行ったか知ってますか?」

 

「うん、少し前に寮の方で見かけたよ、だから――――」

 

「マジか!えーっと、寮ってどっちです!?」

 

「えっ!?分かんないの?向こうの方だけど――――」

 

「あざーす川内さん!ご達者でぇ~!!」

 

「早っ・・・うん、いつもの響だ、やっぱり心配掛けるだけ無駄だったか・・・・・・」

 

 後ろで何か聞こえたがよくわからなかった、それよりも今は電だ。さっき川内は寮って言ってたからおそらく自分の部屋にヒッキーしてるんじゃないか?

 そしてほんの少し走ると『見慣れた寮館』が見えた。おそらく俺が知らなくても体のどこかが覚えていたのだろう。それを見たとき、これから俺はどこに行けばいいか分かった。

 

 そんな安堵からだろうか?足元にあった普段なら躓きようもない小石に足を取られて転んでしまう。

 全く、転ぶなんてカッコ悪い。あと少しなんだからフツーにたどり着かせてくれよ・・・・・・。

 俺は立ち上がるためによっと掛け声を出して立ち上がる――――が視点は相変わらず地面に近かった。

 何故?そんな思いが胸いっぱいに広がる。そして今の自分をよく見ると体が地面に付いたままだった。訳が分からない、いつ俺はまた転んだんだ?

 いつ転んだかなんて分かる訳が無かった、俺は初めから立ち上がっていないのだから。それに気づいたのはもう一度立ち上がろうとした時。相変わらず視点は変わらないままで、その時に初めて自分の状態を悟った。

 限界だった、二週間も寝込んだのにもかかわらずリハビリもなしに走り回ったツケを今ここで払う羽目になった。足はガクガクと痙攣し、耳から聞こえる音はぜうぜうという荒い呼吸だけ、もしかしたら俺は掛け声すら出せてなかったんじゃないか?

 

 おそらく、間違いなくこの先に電がいるのだ。・・・自分でも何故ここまでムキになるのか分からない、だけどここまでくると自分が行かなければいけないという使命感がある気がしてならなかった。

 あと少しなのに、あと少しなのにたどり着かない。目からは理由もなく涙が溢れてくる。

 ・・・違うだろっ!今したい事は泣く事じゃなくてたどり着くことだろうがっ!!なら、這ってでも進むべきだっ!

 そんな思いが通じたのか体にほんのわずかだが力が入るようになった。・・・これなら立てる、進める、たどり着ける。けどこれっきりだ、次に転んだらもう立てない、道を間違えても駄目、電がいなくても駄目。

 ここまで駄目駄目だと笑えてくるな、けど行ける・・・ここでたどり着けばなんの問題もなかった。

 

 俺は立ち上がるためにガクガクと震える足腰に力を入れる、四つん這いからゆっくりそっと立ち上がる。視点は地面から離れ高い位置にやって来た。今度こそ立てた、三度目の正直って奴だった。

 視界はぼんやりだが寮の入口はちゃんと見えた。そして電のもとに行くために一歩踏み出す。

 

 ・・・・・・いたかった。視点は地面ととても近かった。俺はまた転んだのだ、もう立てないとあれほど分かっていながら。

 情けなかった、何もできない自分が。悔しかった、どうする事もできない自分が。それでも俺はたどり着かなければいけない気がする、他でもない『俺』が。

 そんなやりきれない思いが言葉になって自身の口から漏れて聞こえる。

 

「・・・あと、あと少しなんだ・・・・・・。諦めきれない!・・・だれか、誰か俺を助けてくれっ・・・・・・。・・・なんだってするっ、解体されたって死んだって構わない!・・・だれでもいいんだ・・・・・・、神でも悪魔でもッ・・・・・・!!」

 

「・・・・・・響ちゃん?」

 

 思いが通じたのかもしれない、俺のそばには誰かが立っていた。

 

「・・・誰だ?」

 

「睦月だよ、響ちゃんはどうして此処に居るの!?さっきの放送ってやっぱり響ちゃんなの!?体は大丈夫なの!?」

 

「そんな事はどうでもいいんだ・・・・・・。それより睦月、俺を電の所へ・・・電の部屋へ連れてってくれないか?もうまともに立ち上がれないんだ、入口まででいいんだ・・・・・・」

 

「えっ?電ちゃんの部屋って響ちゃんと同じ部屋だよね・・・。別にいいけど何かあったの?」

 

「なんだろうな・・・、俺にもよくわからないや。・・・だけど、どうしても行きたいんだよ」

 

「そうなんだ・・・。分かった!響ちゃん、肩貸してあげる。立てる?」

 

 睦月はそれ以上何を聞くわけでもなく俺を立たせるのを手伝い、肩を貸し、部屋の前まで連れてきてくれた。

 

「響ちゃん、ここでいいの?よかったら部屋まで付き添うよ?」

 

「ありがと睦月。でもここからは一人で行きたいんだ・・・・・・」

 

「うん、そういうことなら・・・・・・」

 

 そう言って睦月は来た道を戻ろうとするが、何か忘れ物をしたかのように俺の方へ戻ってきて言った。

 

「あのね・・・電ちゃん、響ちゃんが入院してからずっと元気がないの。きっと電ちゃんを元気にできるのは響ちゃんだけだと思うの。だからね、響ちゃん頑張って!ファイトだよ!」

 

「・・・ああ、任せろっ!」

 

 手を振って去っていく睦月を見送り俺は目の前にある扉の横にあるネームプレートを見る。そこには『雷・暁・電』そしてコピー用紙で書かれた平仮名の『ひびき』という文字、正直力が抜けた。

 なんで響ちゃんだけこんな適当なの?・・・まあいいか、今はそれよりも大事な事がある。ここまで苦労してきたんだ、居なかったらキレる、マジでキレる。でも誰かにぶつける訳にもいかないので辺りを走り回ることになるだろう。・・・・・・なんか走ってばっかだな。

 俺はドアを開けて中を見回した。すると二つある二段ベットの片方、上っかわに布団で出来た団子を見つけた。

 あれじゃあ俺の放送も聞こえない訳だ、・・・居て良かった。

 だがここで問題が発生する。俺は考えなしにここまで来たので電にどうやって話しかければいいか分からない。

 

「いーなーずーまー?」

 

 とりあえず読んでみる。するとそれに答えるかのようにビクリと動く布団の塊。ただ返事はなかった。

 沈黙が部屋を支配する。俺が此処にきた理由は電がそこにちゃんと居ると分かった瞬間どうでも良くなってしまった。

 そして、しばらく立っていると体が早く休ませろと痙攣し始めた。流石にヤバイと思ったのでその場で寝転がることに決めた。

 暇だった。暇でとても退屈だ、だけどそれが妙に心地いいのはなんでだろうな?そんな事を思っていると電がこちらに話しかけてきた。

 

「・・・響ちゃんは電のことを怒りにきたのですか・・・・・・?」

 

「・・・・・・やだよ、めんどくせぇ。あれだぜ、あれ、俺がどれだけモノマネしたと思ってるんだ。それなのに皆響っぽくないって・・・皆が言ってる響ちゃんの方が響ちゃんじゃねえよ・・・・・・」

 

「?」

 

「こっちの話、気にするな。で、なんで俺が怒りに来たって思ったんだ?」

 

「だって記憶喪失になる前の響ちゃんは電の事が嫌いだったのです」

 

「ふーん、そっか」

 

「そうなのです!だって響ちゃんは電に意地悪ばっかしてきたのです!!」

 

「・・・例えば?」

 

「夜遅くに起こされたり、残しておいた苺を食べたり、髪をグシャグシャにされたり、それから――――」

 

「ふふっ・・・そんな事かよ、やり返せばいいじゃねえか」

 

「・・・・・・電が悪いのです。初めてあった時、響ちゃんとぶつかって怒らしちゃったのです」

 

「それだけ?それで怒ってたらそれは前の響が悪いよ、理由がちっさすぎる」

 

「今の響ちゃんは覚えてないからそんな事が言えるのです。思い出したら電のことが嫌いになるに決まってるのです」

 

「そしたらほっとけ。もしそうだったら所詮その程度だって事だよ」

 

「・・・でも、響ちゃんはあの時電を助けてくれたのです」

 

「あの時って俺が寝込むことになったアレか」

 

「なのです。・・・・・・どうして響ちゃんは電を助けてくれたのですか?」

 

「知らないから分からん。だけど予想なら立てられるよ・・・、前の響は電を助けたかったんだろう。それも自分の命を投げ打ってでも」

 

「だとするとおかしいのです!だって響ちゃんは電の事が嫌い――――」

 

「じゃあ間違ってんだろ、その嫌いって奴が」

 

「えっ?」

 

「前の響は知らないが俺なら殴るよ、嫌いな奴は。とてもじゃないけど同じ部屋には居れないな。きっと響は好きだったんだよ、暁も雷も・・・電も」

 

「電は響ちゃんに嫌われてないのです・・・?」

 

「そんな訳ない、身代わりになるくらいなんだ、大好きだっただろう」

 

 ひとしきり会話が終わり布団から顔を出した電と目があった。

 

「・・・どうして響ちゃんは床で寝転がっているのです?」

 

 それは俺が立っていた場所が床だったからだよ。だけど言うのが面倒なので手を振って伝えることにした。

 

「・・・うー。響ちゃんはいっつもそうなのです。どっかに行っちゃうと原っぱで寝てたり長椅子で寝てたり、だから皆に猫みたいって言われるのです」

 

 あー、だから『白虎』なのかね?不死鳥じゃなくて、鳥はそこらで寝ないもんな。

 そして俺の中で電に何を伝えるかまとまった。真面目な話だ、しんどいが畳まで移動することにした。

 

「なぁ、電。大事な話があるんだ、きっと電からすれば辛い話になるかもしれない」

 

 すると電も俺の雰囲気が変わったのを感じてかベットから降りて俺の前に座った。

 

「・・・やっぱり電のこと恨んでますか?」

 

「違うよ、そういう事じゃないんだ。俺には電を怒こる事も恨む事も許す事も出来ないんだ」

 

「どういう事なのです?」

 

「俺はね、響であっても前の響ではないんだよ。知らないんだ、ここにいた事も皆と何をしたかもどうして此処に居るかも知らないんだ。別人と言ってもいい、もう居ないんだよ・・・皆が知ってる響は」

 

 俺の言いたい事が分かったのだろう、電の目からは涙がポロポロ溢れ出る。泣かすつもりはなかった、だけど偽るつもりや当回しに言うつもりもなかった。

 

「電の・・・電のせいなのですか・・・・・?」

 

「そうかもしれない。だけど電、泣いてばかりじゃ駄目だ。それじゃあ響が助けた意味がない、・・・きっと響は電に笑って欲しいはずだよ」

 

「・・・・・・わらう」

 

「そう。そしてそれが電にできる唯一の償いであって義務でもあると思う。俺はね・・・、電はいなくなってしまった響の分も泣いて怒って・・・・・・笑わないといけないと思ってる」

 

「響ちゃんの分も・・・・・・」

 

「辛いよ、きっと。でもそうすれば、もし響が電の事を怒っていたとしても恨んでいたとしても、絶対許してくれるさ。だって――――」

 

「・・・・・・」

 

 言葉が出なかった。何も考えてない訳じゃない、ただ・・・俺が言うとその言葉の意味が安っぽくなる気がした。

 電は俺の話の続きを聞きたいのか涙をこらえてこちらを見ていた。

 けれど、これは俺が言うことじゃない。何も知らない・・・憶測だけで話している俺が安っぽく言っていいものじゃない。

 俺はその先を誤魔化すため、電に近づきワシャワシャと頭を撫でた。きっと今の俺の顔は酷い苦笑いだろう、自分でも顔が引きつっているのがよく分かる。

 

 だけどそんな俺の行動が電の事線に触れた様だ。電は「・・・響ちゃん」と言うと――――

 

「響ちゃんっ!ひびきちゃんっ!あ”ぁぁぁ――――――――」

 

 電は俺の服にしがみついてわんわんと泣き出した。俺はこんな事は初めてでどうすればいいかわからなかった。

 とりあえず電をあやすように背中をポンポンと叩く。ポンポンと、ゆっくり、同じリズムで・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

「――――ただいま~って居た!!見て雷!響も電もこんな所で寝てるわ!私達がどれだけ待ったと思ってるのよっ!プンスカ!」

 

「それより暁、二人共このままだと風邪引いちゃうかもしれないわ。ベットに運ぶの手伝って!」

 

「・・・全く、二人共手のかかる妹なんだから!・・・あ、電が響の服を掴んで離さない・・・・・・」

 

「暁、電を上に運ぶのは難しいから響と同じベットでいいんじゃないかしら?」

 

「そうね、ナイスアイディアだわ!そうと決まれば早速始めましょう!」

 

___________________________________________

 

 

 俺は夢を見ていた。何で夢かって?そりゃあ俺が空飛んでるからさ。

 体の自由は効かない、ただそこに浮いてるだけの状態。そしてその下に白い髪の女の子が居た。

 艦これの響だ。響は扉の前でぼーっとしていた。しばらくすると中から誰かが呼んだらしい、響はフラフラと扉を開け中に入って行く。

 

 すると途端に視点が変わる。どうやら響が行く場所に俺もついて行くようだ。ちなみに響は中に入ってもぼーっと立っていた。中にいた長門が話しているにもかかわらず。

 大丈夫かアレ、ながもんの顔引きつってるぞ。

 そして話が終わると響は礼もせずに部屋から出ていく。駄目だった、響は駄目な子だった。

 

 視点が変わる。響は部屋を出た瞬間何を思ったのか廊下を爆走して外に飛び出した。外で昼寝をしてる子を飛び越え、二人の女の子の間をくぐり抜け、跳んだり跳ねたり回ったり・・・・・・。

 

 そのあとも視点は変わっていった。お風呂、教室、海、お店・・・・・・。そしてなんとなく気づいた、これは俺が憑依した響ちゃんの記憶なんじゃないかって。

 視点は変わる、好き勝手して、ふてくされて、怒られて、頑張って、頑張って、頑張って。

 

 響はなんか凄かった。足柄に大量の紙を渡され、川内や那智、利根に連れて行かれ、暁達と遊ぶ時間も削って頑張った。俺にはどうしてここまでやるか理解ができなかった。

 

 そして長門に呼ばれたのか暁型の四人が提督室だろうか?とにかく同じ部屋に集まっていた。・・・きっと俺が響に憑依する原因になった任務なのだろう。

 そして出撃する時がきた。おそらく響は戦うって事を理解してる。だからだ、理解できない。何であそこまで頑張ってまで戦おうとするのか。

 

「もう後がないからだよ」

 

 今までなかった声、響を見ると響もこちらを見ていた。そして周りは何もない白か黒かも分からない空間に変わってた。

 

「というか、何でお前はそんなに他人事なんだ・・・・・・?」

 

 響は俺を馬鹿にしたような目で見て言った。けどさ、これは響であって俺じゃないだろ。

 

「はぁ・・・、これでも思い出さないとは・・・。しょうがねぇ、実力行使だ・・・!」

 

 ・・・思い出す?そんな疑問など関係なしに目の前の響は拳を握る。

 俺は身動きがとれない。つまり響が今振りかぶっている拳は避けることができないって事。

 

「・・・自分で言うのもアレだけど、少し落ち着けっ!!」

 

 放たれた拳は真っ直ぐ俺の顔面に向かって来て――――

 

___________________________________________

 

 

 

「――――ふぎゅっ!・・・とても痛い!何事!!」

 

 目が覚めた。どうやら俺はベットから落ちたようだ、でも柵からどうやって落ちるんだ!?

 真実はベットにあった、電だ。俺のベットにおへそ丸出し、パンツ丸出しの電が寝ていた。おそらく俺は電に落とされたのだ。・・・ん?

 

「分かる・・・分かるぞぉ・・・。思い出したぁ!!ヤッホイ!!キタ、勝った!!もう何も怖くない!!」

 

 記憶が戻った!というか鎮守府の出来事全部忘れたら俺どうしようもないよ!!そりゃ、憑依したって勘違いするよ!

 

「響、うるさいっ!!」

 

「ふはは、グッモーニン暁ィ。今日も元気だカレーが旨い!聞いて聞いて!俺、記憶が・・・戻りましたぁ!!」

 

「響ちゃん!・・・記憶が戻ったのですか?」

 

 俺のハイテンションに次々起きる雷、電。そして起き抜け早々、電が俺に質問をしてきた。

 正直、昨日はあんな事を言ったので顔を合わせづらいが開き直ることにしよう。

 

「ああ、戻った。だから電、もう気にしなくていいよ。今まで心配かけてゴメンな?」

 

「うぅぅ、良かったのです・・・・・・。あの・・・響ちゃんは、電の事嫌いですか・・・?」

 

「・・・無いな。それは無い、絶対無い。だって大好きだからね、電も暁も雷も」

 

 少し恥ずかしかったが言った。言わないと分からない事があるから。もうすれ違いは嫌だった。

 

「えへへ、もう一ついいですか?どうして響ちゃんは電を庇ってくれたのです?」

 

「そんなの決まってる。だって――――」

 

 そう言って昨日の事を思い出す。昨日は勘違いで言うのをためらったが『俺が響』だというのなら話は別だ。俺が何で電をかばったか?そんな事決まってんだよ・・・・・・。

 

「――――だって俺は電のお姉さんだからな。頼りなくて悪いがそれでもお姉さんだからな、妹守る位訳ないさ」

 

「~~~~っ!!うんっ!!響ちゃんは、響おねえちゃんは電のおねえちゃんなのです!!」

 

「なんでッ!!なんで響だけおねえちゃん!?電、私は?優雅でエレファントな私はっ!?」

 

「そうよッ!!暁より響より私!!ねぇ電?困った事があったら私にたくさん頼っていいのよ?」

 

「えっと・・・でも、二人より響おねえちゃんの方がカッコイイのです!」

 

「「ガフッ!!」」

 

 なんか勝った。なんというか、ここはやはり中の人の年齢差が出たな。

 俺はそんなやりとりを見ながらうんうん頷いてた。


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