ふと浮かび上がった意識の中、最初に思ったのはなんで廊下に立っているんだろう・・・という事だった。しばらく、ぼーっと立っていると目の前にあった扉から入っていいぞ、という声が聞こえたので考えもなくフラフラと扉を開け中へ入っていく。
「提督、彼女が明日から配属になる艦娘です」
自分を呼び入れた女性を見た瞬間、意識が覚醒すると同時に此処がどうゆう場所か分かってしまった。
【艦隊これくしょん-艦これ】プレイヤーは提督となり旧日本軍の駆逐艦や軽巡洋艦、重巡洋艦を擬人化した「艦娘(かんむす)」を集め、艦隊を編成、育成、強化しながら、無敵の連合艦隊を目指す育成シミュレーションゲーム、サーバーの増設が日夜耐えない、TRPG、アニメ化など凄い人気が有るゲームだ。だったはずだ。
――――――。」
と思っていたら目の前に居る提督と呼ばれた人物の話を聞き流してしまった・・・。まあ、此処にきた理由がこの鎮守府に配属になったからであり、自分がその艦娘のようなのでこれからよろしく。みたいな事を言えば問題ないだろう。そう思っていたら自分を呼び入れた女性が話しかけてくる。
「しばらくしたらルームメイトが迎えに来るはずだ、分かっているだろうが正式な配属は明日になっている。今日は色々あって疲れているだろうから部屋でゆっくり休むといい」
もう部屋から出ていいぞ。そのような目配せをもらい廊下に戻るため、お辞儀をして部屋から出た。
カチャと開けパタンと閉まるトビラ・・・一人になった事で頭が急速に冷えていく、冷えてゆく事で頭が働き出す。マズイ、自己紹介どころか挨拶すら録にしてない。ヤバイ、なんで自分は艦娘になって居るのだろう。そういえば提督は男なのか女なのかわからなかった、中性的などではなく顔や声が思い出せない、居るのに居ないという感じだった。あれっ艦娘ってことは俺も戦う事になるよな・・・
――――――どうしようどうしようどうしよう。じっとはしていられなかった、留まっているといろんな感情が溢れ出てくる。焦り、不安、悲しみ、恐怖、絶望、そして――――
湧き上がる感情を抑えようと歯を食いしばり、声が出ないようにと長い廊下を一心不乱に疾走する。
「ちょっとあなた!廊下は走っちゃ・・・きゃあ!!」
後ろの方で俺を静止する声が聞こえ頭の片隅であの娘が迎えに来てくれた娘かな、と思いつつも走るのをやめない。
建物を出て校庭を駆け抜けお店の前を通り過ぎ目的もなく無我夢中で走り続ける。
「はあっ・・・はあ・・・・・はあ・・・はあ・・・」
海が見えた所で体力が尽きながらそれでも前に進む、とりあえずあの高台だ・・・あの高台に行こう・・・・・・
もう歩いているのか走っているのかわからないヨロヨロした足取りで高台にたどり着き前のめりに倒れこむ。
体が動かなくなっても心は動くのをやめない。焦り、不安、悲しみ、恐怖、絶望、苦しみ、そこで気づく、苦しいのはうつ伏せになってるからだ・・・と。あれだけ走ってうつ伏せなってれば当然だと仰向けになり大きく、深く深呼吸する。
「・・・ぅぅ・・・ぁぁぁ・・・・・・」
そして抑えていた感情が声と一緒に溢れ出す、きっと無意識の内に誰もいない場所にきたかったのだろう。
ここなら大丈夫、ここなら誰もいない、ここなら素直な自分を出せる・・・・・・
「・・・・・・ぁぁあ・・・あアハハハハハハハッマジかよ!!憑依?転生?いや!どっちでもいいな!ハハハッ!!グッバイ日常!!はじめましてファンタジー!!」
笑いながらSFだっけ?と思わないこともない。テンションが高いのは負の感情よりこれからの楽しみが1:9で優っているからだ。俺tueeeとか冒険とか可愛い女の子とイチャイチャとか(必須)したいじゃん男にうまれたからには!!
まぁいまは艦娘で男じゃないけど問題ナッシング!!逆に考えるんだ女の子とお風呂でキャッキャッウフフできるからいいさと考えるんだ・・・・・・
「フフフフ・・・・・・たまんねえなオイ・・・今の姿なら合法だよ合法」
っいけない、心の声が漏れてしまった・・・俺の心の理性が変態行為は許さんぞ!と言っているが全くもって問題ない。だって今の姿は幼女だよヨウジョ!!幼女がヤマシイコト考える訳ないジャナイカ!!
それに他の人のがダメなら自分のがあるしね!!(歓喜)
――――それから妄想の世界に入ってかなりの時間が経ったようで冷たい風が吹くとともに我に返った。
そういえば迎えに来てくれた娘には悪いことしたな、案外この時間になっても探していたりするんだろうか。
仲良くなれるフラグを折った事を後悔しつつ宿舎を目指す。ルームメイトとのこれからを思うと少し・・・いやかなり憂鬱になる。俺が迎えに来た娘の立場ならブチギレてるいらない自信があるから・・・
薄暗くなった港をどう謝ろうか考えながら歩いていると前の方から何人かの声が聞こえてきた。その声は次第に大きくなりお互いの顔が確認できる距離になると喋っていた女の子達が、「あっ」と言って駆け寄ってくる。
「いた!やっと見つけたわ!迎えに行ったら凄いスピードでどっか行っちゃうんだもの、心配してたんだからね?」
この八重歯が特徴的な茶髪の女の子、『駆逐艦 雷』は励ます言葉や甘やかすセリフをバンバン言うためダメ男製造機なんて呼ばれてる艦娘だ。
「せっかく今日で第六駆逐隊が揃うと思ってたのに雷がどっかに行っちゃたなんて言うから、ビックリしちゃったわ!」
藍色の髪の女の子が『駆逐艦 暁』艦これには「いいこと?暁の水平線に勝利を刻みなさい!」というキャッチコピーがある為か一部のロリコン提督に狙われたりしている。YESロリコンNOタッチ!!おにーさんと約束だ!!
そして最後に駆け寄って来る髪を後ろにまとめた雷にそっくりな女の子が『駆逐艦 電』ゲームでは最初に選べる艦娘の一人としてプロフィールがある、大きくなるために毎日牛乳を飲んでる、慌てんぼうで、よく人とぶつかる・・・・・・あれ?デジャヴ??
そう思ったのも束の間、電は見事に目の前でつんのめって勢いを殺さないまま、俺のみぞおちにサッカー選手顔負けのダイビングヘッドをかましてくれた・・・意識が落ちる直前に聞こえた、大量のごめんなさいと二人の慌てた声・・・最後に思ったことはまだ誰とも録に喋ってねえぞって事だった・・・・・・
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ヤッホーみんな!僕だよ。今私は・・・脱衣所にいマース!!えっ何?聞きたいことがある?・・・・・・そうだよね・・・まだ自己紹介してないもんね・・・俺ことッ!前世ロリコン提督だった私はッ!駆逐艦 響になっていたのだ!!・・・えっ?何?違う?脱衣所に居る理由?風呂入るために決まってるジャナイカ!!
「響ちゃん、すみっこでうずくまってどうしたのです?もしかして電とぶつかった所、まだ痛いのですか?」
「・・・大丈夫だよ。私も後で逝くから電は二人と先に入ってて、私には色々準備があるから・・・」
「わかったのです!お風呂で待ってるから早く来てくださいね?」
そう言ってパタパタと駆けていく電・・・見えなくなったとこで「はにゃっ!」とゆう声が聞こえたのでおそらくコケたのだろう・・・・・・うん、もう現実を見よう・・・ナンデ?オフロ??俺、数時間前まで男だったんだけど!?てゆーか突撃するの?死ぬよ?俺が。さっきお風呂でイチャイチャとか考えてたって?バカ野郎!現実と妄想は違うんだよ!!
あぁ・・・なんて展開の速さだ・・・[意識回復→遅くまで外にいて冷えた→お風呂で暖まろう→脱衣所(今ココ)]10分も経ってないよ・・・
「早すぎるよ・・・島風もビックリだよ・・・神はなんてしれn「響~準備って何してるの?ずーっと外に居たんだから、あったまらないと風邪ひくわよ?」・・・ウン、ソウダネ」
風呂場の方から暁の処刑宣告が聞こえる・・・クソッ!覚悟を決めろ駆逐艦 響、風呂なんて服脱いで体洗っておしまいじゃあないか!そうと決まれば話は早い!
ようやく服を脱ぎ始めたのだがあと少しで手が止まってしまう・・・
「うわぁ、響のパンツって縞パンなんだな・・・うわぁ、ブラの柄もパンツとお揃いなんだな・・・やっぱ、下着も脱がないと風呂に入れないよなぁ・・・」
ふと横の鏡を見ると顔を真っ赤にした響の下着姿が、やっぱ男だった俺が女の子の裸を見るのはマズイよな・・・その時ある考えが浮かび上がる、それは・・・見なけりゃよくね?である。
「オゥケィ・・・目をつぶってパンツを脱げばいい・・・行くぞ!!!」
下着を脱いで、籠の中にシュゥゥト!!超 エキサイティング!!この勢いのまま響、突撃する!!
ガラガラガラバァーン!!「URYY「きゃあっ!!響!静かに入ってきてよねっ!そんなのじゃ一人前のレディになれないわよっ!」・・・・・・うっす・・・アレ?」
奥で体を洗って居る雷電達も、びっくりしたのですとか、そんな入り方じゃだめよ扉が壊れちゃうわとかいっている。何、見てるって?いや目閉じっぱとかあぶないからね、で少し目を開けたらナント!!湯気が仕事してるテンプレ。まあ湯気だし近づいたら見えちゃうだろうけど近づきませんよ?だってロリコンはロリコンでもロリコンという名の紳士ですから!!
「響、いつまで立ってるの?せっかくだからお姉さんが背中を流してあげるわ、早くこっちに来て」
「はうゎ!・・・大丈夫だよ?別に一人でも」
さっきからなんだ一体?フラグを立てている自覚はあるが回収が早すぎるぞ!島風も脱帽だよ!!
「あのね?実は暁が、響は来たばっかで不安だろうからって髪も洗わずに待ってたの。だからね?お願い!!」
雷よ・・・一体いつからそこに居たんだい?お風呂だから雷はもちろんSUPPONPONだけど見てないからセーフって、待って!押さないで!マズイから!アカン、シャレにならん!
そうやって暁の所に連れてかれる俺・・・見ないようにと目を瞑ったのが間違いだった・・・暗闇の中を押される俺は床にあるトラップ(石鹸)に掛かり転んでしまう。三人の心配する声を聞き、大丈夫と言って立ち上がろうと目を開けると、屈んで心配そうに見つめる暁の顔が目に入った。ここは風呂場。お風呂に入るには裸にならないといけない。暁だって例外じゃない、自分の目線が意識せずにゆっくり、ゆっくりとしたにむかう。かおから、くび、むね、おへそ、そして あしのつけねに めせんが きたところで 『両目に激痛が走る』
「うわぁぁぁ目がぁ、目がぁぁあ!!」
「響!?何やってるの!電、水持ってきて!はやく!!」
「な、なのです!」
・・・どうやら俺の理性がスクランブル発進して両目に石鹸を塗りたくったらしい。でもね、遅かった遅かったんだよ・・・・・・バッチリ見えたから、網膜焼き付いたから・・・・・・付いた石鹸と一緒に罪悪感も落ちないかなーって思いながら目を洗うのでした。
損害報告
響 両目大破 疲労(中)