真剣で私に恋しなさい ACC (アドベントチルドレンコンプリート)   作:ヘルム

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ずいぶん遅くなりました。では、どうぞ!


クローンvsクローン

神羅カンパニー

 

工場の上空には現在、二つの影が一点を目指して走っていた。

一人は黒い髪の毛をツヤかせながら、もう一人は三つ編みにした茶髪を風にはためかせながら、その自分たちでも理解できない妙な懐かしさを感じながら…

 

ドクン

 

と大和の心臓が嫌な高鳴りを見せる。その高鳴りと共に彼は空を見る。それは自分にとって馴染みすぎている気の感触である。それに対し、彼はありえないとは思わなかった。ただ、やはり、とそう思っただけであった。

 

1日前 九鬼財閥 研究所内部

 

マープル「おや、何だい?何か用かい?」

 

そんなマープルの前に現れた大和。その表情は非常に重苦しいものだった。

 

大和「単刀直入に聞きたいことがあるんですが…いいですか?」

マープル「ああ、あたしは特にすることはないからね。なんでも聞いておくれ。」

 

一度、大きく息を吸う。そして、はあ、と吐く。

 

大和「じゃあ、聞きますけど…

 

あなたなら、10年という間に急速成長させたクローンを生ませることができますか?」

 

マープル「……」

 

ある程度その質問に関しては予想していたのだろう。マープルはしばらく黙ったあと、その重い唇を開いた。

 

マープル「正直、環境によるけどね…もしも、九鬼並みかそれ以上の技術があるっていうんなら、

 

できるだろうね。あたしなら。」

 

大和「……」

 

その言葉に対し、驚きもせず、ただ沈黙を貫き続ける大和。

そのことを気にしないような素振りをしながら、マープルは続ける。

 

マープル「神羅のことはよく知らないというわけではないけど、そんな詳細は覗き込めないことが多かった。当然だろうね。技術を他に奪われたらたまらないだろうしね。だが、あんたの過去を見させてもらったけど、あれだけの研究を行えてた組織がクローン技術で遅れをとるなんていうことは、

 

ない、とあたしは断言できるね。」

 

大和「……」

 

なおも沈黙を続ける大和に対し、呆れたかのように息を吐き、そして更に言葉を紡ぐ。

 

マープル「言いづらいけど、言わせてもらうよ。

 

あんたの友達のクローンはほぼ間違いなくできてると考えていいだろう。」

 

そして、マープルは改めて向き直るように大和の方へと真剣な眼差しを送る。

 

マープル「で、どうする気だい?」

大和「…どうする、っていうのは?」

マープル「そこで惚けても意味がないことくらいあんたが一番良くわかってるだろう?いざ、友達と全く同じ顔の別人を相手にして、あんた、倒せるだけの覚悟があるのかい?」

大和「そんなの!あるに決まって…」

マープル「あたしゃ、これでも星の図書館と呼ばれる知識の巣窟で名を売ってるんでね。あんたみたいな青二才が感情を隠しているのか、いないのかなんてすぐにわかるんだよ!強がりを言ってそのあと、被害を被るのは、あんただけじゃないかもしれないんだ!正直にいいな!」

 

一際ドスの効いた声がマープルのいる研究所に響き渡る。

それに対し、完全に後手に出てしまった大和は後ずさりしそうになった足を懸命に止めながら、黙り込み、やがてしばらくして、彼は口を開いた。

 

大和「正直、難しいと思う。」

 

それが大和の答えだった。

 

マープル「だろうね。さっきから顔に出まくってたからね。あんた」

 

やれやれと言った調子で彼女もその言葉に対応する。

 

マープル「で、改めて聞くけど、どうする気だい?」

大和「正直、何もない…どうやって、それに対応すればいいのか、って考えてもどうしても分からない…」

マープル「…そうかい。」

 

そんな情け無い答えを聞いたというのに、マープルの方は案外冷静な上に素っ頓狂な答えを返してきた。

そして、この老人にしては珍しく意地が悪くない、優しい笑みを返して.

 

マープル「じゃあ、あたしの方から策がある。まあ、こっちとしても、あの暴れん坊をなんとかするためとか、色々理由があるから好都合な状況だからね。」

 

神羅

 

大和(正直な話。最初は反対しようと思っていた。でも、オレが迷った末にだれかが犠牲になって大怪我をしたらそれこそ一大事だ。)

 

だから、と心の中で付け足しながら空を見上げて言葉を紡ぐ。

 

大和「あとは…頼む。」

百代「ん?何だ?何を頼むんだ?」

大和「いや、何でもない。こっちの話だ。気にしないでくれ。姉さん。」

 

それよりも、と話を切り替える大和。

 

大和「オレたちはあの三人組の気を気にしよう。どうせ、あのロッズとかいうやつには落とし前つけさせる気でいるんだろう?」

百代「当たり前だ!負けたまんまでは、格好つかない上に、嫌だしな。」

 

大和はそんな相変わらずの百代の言葉を聞いた後、それに対し笑みを浮かべながらわずかに感じた懐かしい気に関して、完璧に気を逸らし、百代以外の自分の仲間たちに告げる。

 

大和「それじゃ、オレたちはカダージュたちを探すから、みんなは傷を癒す意味合いも含めて、どこか安全な場所に避難していてくれ。」

ワン子「な!?ちょ、ちょっと待ってよ!大和!」

クリス「そうだ!自分たちはまだ戦える。」

大和「お前たちが大丈夫でも、少なくとも、まゆっちはもうだめだろう。実質あのドラゴンの攻撃に対して、もっとも被害を受けていたのはまゆっちだ。そうだろう?」

 

その言葉を受け、反論をした。クリスとワン子は黙り込む。

それを見た大和は仕方がないと言った調子で肩をすくめワン子の頭に手を載せ、撫でながら言葉を続ける。

 

大和「何も、攻めることだけが戦いじゃない。守ることも立派な戦いだ。だから、お願いだ。みんな。」

 

大和の必死な表情を見た皆は、その瞬間考えを改めて一様に頷いていった。

 

大和「じゃあ、行ってくる。姉さん。後ろに乗ってくれ。」

百代「いや、二手に分かれた方がいいだろう。その方が手っ取り早い。何、大丈夫だ。奴らの強さは知っている。もう、油断はしない。」

 

そんな百代の言葉に対して若干の不安が頭によぎるが、だが、すぐに大丈夫だ、と判断した。自分よりまだ(・・)弱いからといって彼女は自分の姉である。それだけで大和にとっては十分に信じる価値があった。

 

フェンリルにまたがり、エンジンをかけた後、大和は一瞬悲しげな表情を右の空に見せて、すぐに思い直したかのように前と向き直ると、

 

大和「じゃあ、後でな。」

 

と、百代に対して手を振りながら、大和はアクセルを踏み、ゆっくりと加速していった。

そんな表情をしている大和に対して、終始、百代は気づかないふりをしていた。

 

神羅 上空

 

?「ん?何だ?こっちに気づいてねえのかな?離れていくぞ?」

 

黒い髪をたなびかせながら、ザックスのクローンであるザックス(・・・・)は相方である、同じくエアリスのクローンであるエアリス(・・・・)に声をかけた。

 

元の人物と同じ名前であることから、神羅の凶悪性は非情なものであると理解できる。

エアリス「さあ?分からないけれど、これなら何とか近づけるんじゃないかな?」

ザックス「そうだな。そんじゃ、近づかせてもらいますかね!」

 

そう言ってザックスが足に力を込めさらに加速しようとした瞬間…

強烈な殺気が二人を襲う。それは覆い尽くさんばかりの気の塊がぶつかったものだと理解した瞬間に、ザックスは横合いへと吹っ飛ばされる。

 

ザックス「ぐっ!?」

 

突然の事ながら、ザックスはバスターソードを横に置くような形でなんとか対応仕切った。

 

吹っ飛ばされた先は、神羅社員の住民が利用するマンションであった。

 

ザックス「なんだ?お前…」

 

ザックスが睨んだ先には、長い黒髪を嵐のように吹き流しながら、立ち、方天画戟を地につけ、仁王のように睨みを利かせた女性が立っていた。

 

項羽「なるほど、マープルの言う通りこれは胸糞悪いな。同じクローンだということがなお一層、それを引き立ててくれる!」

 

珍しいというほどではないにしろ、今の項羽は特別機嫌が悪かった。

それも当然だろう。自分の眼の前に、仲間の友であるクローンが敵として配置されているのだから

 

ザックス「聞こえなかったのか?オレは誰なのか?って聞いたんだけどな。」

項羽「ああ、そうだったな。貴様には罪はない。だから、その膨大な気をオレに放つことを許してやる。だが、少々ムカついたのでな。その憂さ晴らしと暇つぶしに付き合ってもらうぞ!

 

我が名は項羽。貴様を倒すものの名だ。覚えておけ!」

 

傲岸不遜な口調と共に突進する項羽。一時困惑していたザックスだったが、すぐに気を取り直して項羽に向き直り、彼も突進する。

 

項羽「はああああああ!!!」

ザックス「おおおおおおお!!!」

 

大剣と戟かぶつかり合う。瞬間、マンションの窓が全て粉塵と化したように割れ、柱が砕け、折れる。二人は衝突した後、わずかに静止し直後、嵐のような打突と共にお互いがぶつかり合い、戦いが始まった。

 

エアリス「ザックス!!っ!?」

 

名前を叫んだすぐ後に、エアリスは杖を前に構える。

何者かが、こちらを狙っていると感じ、防御の構えを取ったのだ。

そして、その予想は当たっていた。ゴオッという風切り音と共に重い矢が彼女の額を襲い、向かう。それを杖を軽く回す形ではたき落とそうとする…だが…

 

エアリス「ぐっ!?」

 

予想以上に重い。かなりの量の気を溜め込んだ矢であることは確かである。だが、また少しエアリスが力を込め、倒しこむように振ると、その矢は呆気なく落ち、地面に小さなクレーターを作り上げた。

 

エアリス「そこ!!ディア!!」

 

言った瞬間、杖の先から赤い光が灯る。そして、その光が爆裂的な輝きを伴ってその向かいにある、なにもいないように思われるスーパーの物陰へとその光を炸裂させる。

そこから人影が出てくる。

 

与一「ほう、さすがは闇の組織の斥候だ。俺の闇属性の気には敏感なよう…バグ!!」

弁慶「この状況でその厨二病はウザイから、止めな!」

義経「弁慶。やっぱり、与一の言うことは時々分からなくなるんだが、これは義経の修行不足の影響なんだろうか?」

 

本人たちにその気はないのだろうが、トリオでコントをするかのような登場の仕方をしながら、源氏三人組は出てきた。

 

エアリス「あなたたちは?」

弁慶「あんたを倒す者って言えば、充分なんじゃない?」

 

弁慶の言葉と同時に三人は構えの姿勢を取る。それを合図と取ったのか、エアリスの方は彼らにその穏やかな表情には似合わないほどの鋭い眼光を殺気と共に三人に向ける。

 

ここにクローン同士の対決という前代未聞の大戦が始まる。


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