機動戦士ガンダムSEED⇔(ターン)   作:sibaワークス

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陣営入れ替えガンダムSEEDです。


PHASE 2 「再会、ザフトのキラ」

 

『当然のことながら、また友人として会えることと信じていた。

 いつ何処で出会っても友達になれる。

 そんな相性のよさというか、気安さというか、

 そういう当たり前の感覚を、あまりに信じすぎていたのかもしれない』

 

 

 

 

 

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ヘリオポリス宇宙港の管制室はパニックに陥っていた。

 

「こちらヘリオポリス。接近中のザフト艦、応答願います。ザフト艦、応答願います!」

無許可で進攻してくるヴェサリウスに対して、再三の通告をするも、全く反応が無い。

「管制長!」

「落ち着け……えーい!アラートを止めんか! 接近中のザフト艦に通告する。

 貴艦は既にわが国の領域を大きく侵犯している!

直ちに停船されたし、ザフト艦!直ちに停船されたし!」

 

  時折、こうして領域を侵犯されることは今までにもあった。

 

 それらは戦略的な意味を持つこともあったし、挑発と牽制であることもあったが

 それは結局 パフォーマンスであり、政治手段でしか無かった。

 戦争の一部ではあるものの……今回も、と管制長は思いたかった。

 

 しかし、この接近はいつものそれと、明らかに様相を違えている。

 

 Nジャマー妨害が出ているのである。

 Mコロイドによる対ビーム用の撹乱幕も感知できていた。

 つまり、それは……。

「強力な電波干渉、ザフト艦より発信されています! 

 これは明らかに攻撃を想定した戦闘行為です!」

 

「な……!」

 

 有無を言わさぬ、武力行為であるということだった。

 

 

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 港にある輸送艦には、管制室からすぐに連絡があった。

 

「電波妨害直前にモビルスーツが出ている! 艦を出せ! 

 どうせ港はすぐ封鎖される……メビウス全機出すぞ!」

 

クルーゼは、ブリッジクルーに指示を出すと、

自身もモビル・アーマーに搭乗する為にデッキへと向かった。

 

彼に「エンデュミオンの鷹」の呼び名を与えた愛機、

純白のメビウス・ゼロがあるのだ。

 

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 港の奥深く、宇宙港のベイから直接、資源採掘所まで繋がっているルートがある。

 

これは、通称「坑道」と呼ばれていた。

ヘリオポリスのような資源衛星型コロニーは、通常資源を採取する小惑星に

人間が住む居住区がくっついている形をしている。

その資源衛星、いわゆる"鉱山"と呼ばれるエリアから、

 すぐに宇宙に資源を持ち出せるようにしたのが「坑道」だった。

 

 この坑道は、資源の搬入、搬出が簡単であるが故に、あることにも適していた。

 「大型機械の建造」である。

 

 今、ヘリオポリスの坑道には、連合軍が作った、その巨大な建造物が隠されていた。

 全長400Mは在ろうかという巨大な宇宙船……連合軍の秘密兵器

 「強襲機動特装艦 アークエンジェル」であった。

 

 オーブの国営軍需企業「モルゲンレーテ」。

 連合軍は兼ねてからこの企業と秘密取引をしており、

 共同でこの艦と、艦載機となるモビルスーツの開発を進めていた。

 

 ――が、その情報があろうことか敵軍に漏れていたのである。

 

 「迂闊に騒げば向こうの思うつぼだ。対応はヘリオポリスに任す」

 艦長である、ジェレミー・マクスウェルがクルーに向けて言った。

 「モビルスーツの搬入を急げ……いざとなれば艦は出すと管制塔に伝えろ!」

 ――何事も無ければ、この艦と共にアラスカに降りて、息子に会う約束だった。

 ――それに、姪のシホにも会わねばならない。

 逼迫した状況の中、ジェレミーは脳裏に一瞬だけそのようなことを考えた。

 そして次の瞬間には忘れ、いざとなれば地上に出ているバルトフェルドを呼び戻さなければならないと思った。 

 

 が、その全てが叶うことが無かった。

 

 キラ達、ザフトの仕掛けていた時限爆弾が爆発したのだ。

 

 

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ゴォオオオンと、文字通りの爆音がして、

それだけで鉄をも焦がしてしまうであろう、光と熱風と煙とが、

密閉された坑道を埋め尽くした。

 

 

 艦の近くに居た連合軍の兵士たちは光に包まれ形も残らなかった。

あとの兵士たちは熱風と煙とに次々と焼かれていった。 

 

 

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(よし……!)

 

先行班の仕掛けていた爆弾が爆発すると共に、

キラ達は坑道から地上へ向かうルートへ飛び出した。

 

「艦はやったのか!?」

「あの爆発だ、やれてなくても、直ぐには動けない」

「なら、鉱山側から占拠する! ヴェサリウスからジンも出ている!」

「了解!」

キラたちはアークエンジェルが埋まってしまったのを確認すると、

地上や各地に残存している連合の兵達に強襲を仕掛けた。

 

 と、コロニーの内部に15メートル大の影が入ってきた。

 ザフトのモビルスーツ・ジンであった。

(カズイ……)

キラはその機体を見つめた。

あのマシンにも、キラの友人が乗っているのだ。

 

 ザフトのモビルスーツはマシンガンをコロニー中に撃ち込んだ。

 ドラム缶サイズの弾丸をばら撒ける代物である。

 轟音と硝煙が今度は地上をも支配していく。

 

 と、それに炙りだされるように、

鉱山の部分――坑道のさらに奥の、コロニーの資源基地から

大型のトレーラーがいくつか出てくるのが見えた。

 

連合軍が、モビルスーツの襲撃を知って、慌てて運び出そうとしているのである。

 

「あれだ! 連合のモビルスーツ!」

「報告じゃ、五機のはずだって――」

「工場に隠してるって可能性があった!  僕らでいく!サイ達はアレをお願い!」

 

 工作班から送られてきた情報を元に、キラは仲間を伴って、工場区の方へと向かった。

 

「了解だ、キラ! 死ぬなよ……」

 

サイ、トール、ミリアリアはキラたちを見送ると、トレーラーに襲撃を仕掛けた。

 

 

 

 

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 ヘリオポリス全域に緊急避難警報が発令された。

アスランたちの居る研究室にもサイレンの音が聞こえてきた。

 

そして、巨大な振動――。

 

「隕石!?」

ディアッカが机にしがみついて言った。

だが、アスランは――

「違う、駆動音? モビルスーツの!?」

 

聞きなれた音を耳にして、急いでカレッジの建物から外に出ようとした。

 

「モビルスーツのって……」

慌てて机の下に隠れたニコルがアスランの言葉に動揺した。

「とりあえず外に出よう……その、君も!」

「あっ……ええ」

アスランは仲間と、部屋の隅に居たピンクの少女を連れて、外へと飛び出した。

 

「!?」

アスランは目を疑った。

 

 さっきまでバカな恋の話をして通った道が、煙を立てて燃えている。

 そして、アスランを眠らせた、温かな日差しの空には――

「ミサイルだぁあああ!」

ニコルが悲鳴を上げた。

 

 コロニー守備隊がミサイルを放ったのである。その先には、

 

(ジン!? 特務隊仕様のジンなのか!)

アスランには見覚えのある機体だった。

 

 

 ZGMF-017 ザフトで最も使用されている汎用モビルスーツ『ジン』であった。

アスラン自身も数回は乗った事のある機体である。

 

しかもその機体は一般的なグレーの塗装がされている機体ではなく、

特務隊と呼ばれる、ザフトの中でも特殊な任務を行うエリート部隊用のものであった。

 兵器としての主張を込めた、カーキグリーンに塗られている。

 

 と、あれば、事態が、自分が想像した以上の事であるのに、アスランは気づく。

「逃げるぞ!」

 アスランたちは、近くのシェルターへと避難しようとした、が――

「!」

 ピンクの髪の少女が突然あらぬ方向へ向かって走り出した。

 

 

「おい、君! なにを――くそっ!」

 

「アスラン!」

「すぐに戻る! 先に避難しててくれ!」

 

 

アスランはほうっておけず、彼女を追って走り出した。

 

 

 

 

少女は、カレッジの裏側にある、モルゲンレーテの工区へと向かっているようだった。

「おい!待てよ!」

アスランは必死に彼女のあとを追った。

「お気遣い無く――私には確かめねばならぬことがあるのです!」

彼女は信じられない速度で駆けぬけていく。

――並みの少年たちより、ずっと足の速い自分が追いつけない事に、

アスランはいささか戸惑いながらも、彼女を見失わないように懸命に走り続けた。

 

 

すると、

 

あるブロックで、彼女が立ち止まって、カードキーでモルゲンレーテの工場区へのゲートを開けた。

 

(――?)

 

あんな少女がどうして? と、思った次の瞬間、

アスランは少女を追って入った工場区で、信じられないものを見た。

 

ゲートの向こうは手すりになっており、その下、階下に見える光景には……。

 

 

 

 

「やはり……そうでしたか……」

 

「モビルスーツ!?」

 

 

 

 

 

 トレーラーに詰め込まれたモビルスーツが、並べて2体、置いてあった。

 どちらも、ザフトのものではなかった。

 

 全く、アスランが見たことのない機体。

 

 ザフトが標的としている、連合の秘密兵器であった。

 

 

 

 アスランは必死に事態を飲み込もうとしたが、

その思考は直ぐに、ザフトの攻撃によってさえぎられた。

 

ズゥウウウウウン!!

 

工場の何処かが崩れる音がした。

 

 

 

 思わず身を伏せるアスラン。

 しかし、少女はモビルスーツを見詰めたまま、全く動じずに立っていた。

 

「……連合の俗物たち。 父を欺き、さらにはわたくしに黙ってこんな……」

 

 少女が何か呟いた気がした。

しかし、アスランは先ほどからの轟音で耳が麻痺しており、良くは聞き取れなかった。

 

すると――

 

(やっぱり特務隊!)

 

上空からフライトユニットをつけたザフトの兵士が降下してくるのが見えた。

真紅のノーマル・スーツ。 

間違いない、ザフトのエリート部隊であった。

 

彼らは、アサルト・ライフルを乱射しながら、

眼下にあるモビルスーツ搬送用のトレーラーに降りていく。

トレーラーの陰からも、別の影が出てくるのが見えた。連合の兵士だ。

 

その場は、銃撃戦の舞台となった。

 

(連合とザフトがヘリオポリスで――?)

 

今の状況が信じられないアスランだったが、それでも理性は失わなかった。

 

(逃げ……あの子も……!)

 

アスランはモビルスーツを見詰める彼女の手をとった。

「なにやってる、逃げるぞ!」

「!? あなた――わたくしは!」

アスランは手を引いて、最寄のシェルターまで走った。

 

 

 

 

「もう無理だ!此処には二人は入れんよ!」

シェルターは既に満杯になっていたが、一名だけは入れるようであった。

 

「なら、友人を、女の子なんです」

アスランは彼女一人をシェルターに入れようとした。

「お離しになってください! わたくしは」

「死ぬぞ! ……オレは大丈夫だ」

「……ああ」

 

少女はそこで、アスランが何故、自分の手を引いて走ったか理解したようであった。

 

「――ありがとう、このご恩は忘れませんわ」

「いや……」

「あなた、お名前は?」

「オレは…………アスラン・ザラ」

「ありがとうアスラン、私は――ラクス――」

と、彼女が名前を言いかけたところで、今までで、一番激しい振動がした。

 

「早く!」

アスランは彼女をシェルターに押し込んだ。

と、ドアが閉まったところで、警報レベルが最大となり、シェルターのドアがロックされた。

 

 

 

 アスランは彼女の名前が少し気になりつつも、その場をあとにするしかなかった。

この分では近くのシェルターにはもう入れないだろう。

 

 

 さっきのあの工場区を抜けて、別のブロックに向かうしかないと思った。

 

一旦、このブロックを抜けて、地上に出ることも考えたが、

こちらに攻撃を仕掛けてきたザフトのモビルスーツがいるのだ。

 

 たとえ銃撃戦が行われている可能性があっても、自分ならそれが一番安全だ――。

アスランはそう判断すると、急いで先ほどの工区へと足を向けた。

 

 

 

工場の崩壊が酷くなっていた。辺りからは黒々とした煙が立ちこめ、

あちこちから、火の手が上がり、金属と薬の焼けたような嫌なにおいがした。

 

 手すりの下では銃撃戦が行われているようだった。

アスランは腰をかがめて、その様子を伺うと、音が止むのを見計らって一気に駆け出した。

 

 ――階下のトレーラーでザフトの襲撃に耐えていた連合の士官が、

その気配に気がつく。とっさに銃口を向ける――が、

「子供……ザフトじゃない?」

と、アスランが明らかに民間人であるのに気づいて、銃を降ろした。

しかし、

「――おい、少年! 伏せろ!」

連合の士官が、叫ぶ。

「っ!?」

 その声を聞いてアスランが振り返る。

 咄嗟に、自分が狙われていると気がついた。

 

 階下にいた赤いノーマルスーツを着たザフト兵が、アスランをライフルで狙っていたのである――が、

 

「チィ!」

 

 それに気づいた連合の士官がそのザフト兵を撃ち抜いた。

 「ぐぁっ」

 悲鳴を上げて、その場に崩れ落ちるザフト兵。 

 

 しかし、ザフト兵は事切れる前に、銃の引き金を引いていた。

 何発かは間に合わず、銃口から発射され、アスランの体を掠めることになった。

 

ババババ!

 

「っ!」

 思わずアスランは、弾丸をよけようとして、手すりに足をかけ、階下に飛び降りようとした。

 

――と、そこへ

 

「ア、アフメドォッ!? ……よくもアフメドを!」

撃たれた兵士の仲間であろう、別のザフトの赤いスーツが、連合の士官に飛び掛った。

 

至近距離である。

ザフト兵は、邪魔になるライフルを捨てて、ナイフを取り出して斬りかかった。

 

「危ないっ!」

助けなければ。と本能的に感じて、アスランは跳んだ。

 

そして、連合の仕官と、ザフトの赤いスーツの間に割って入った。

 

 

 

 

 

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「――アスラン?」

 

 

 なぜか、ナイフを持った、ザフトの兵士が動きを止めた。

 ザフトが着る、ノーマル・スーツのバイザーの色は濃く、

 宇宙服であるため、その中の顔を良くうかがい知ることは出来ない。

 

はずであったが、

アスランは、その兵士が誰であるか、直ぐにわかった。

 

 

「キラ・ヤマト……」

 

 

数年ぶりの再会であった。

 

 

 

血と、炎を浴びながらの……。

 

 

 

 

 

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「乗れ!」

と、後ろに居た連合の士官が、アスランの手を取った。

そして、トレーラーに横たわっていたモビルスーツのコクピットに、彼を押し込んだ。

 

 

と、ひときわ大きな炎が工場を包んだ。

 

コロニーの外では、ヴェサリウスが艦砲射撃を開始していたのである。

 

キラ・ヤマトも、その炎から逃れる為に、アスランたちが乗り込んだ物の、

横に寝かせてあったモビルスーツに、自身も潜り込んだ。

 

 


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