風来人が行く!   作:蒼零

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7階:杖の能力

「それにしてもお前の世界には面白いものが多いな」

 

「ん?そう?」

 

食事を終えて再度アイテム整理をしているとエヴァンジェリンがやってきた

やはり異世界のアイテムは珍しいのか色々と手に取っての説明会が始まった

 

「この石はなんだ?」

 

「それは"デブータの石"っていうもので、追尾性能がある石だよ」

 

「ふむ、こんな石ころにも不思議な力が宿っているんだな」

 

その石にはかなりお世話になった気がする

主に変化の壺に入れるものとしてだけど

そうそうデブータの石もだけど矢や石などの遠距離武器って飛距離があるんだけど、ゲームの一マスはこちらでは10mほどになる

つまりデブータの石は3マスだから実際は30mほど飛ぶことになる

矢は10マスだから100mになるとか凄いよね、さすが異世界

 

「この杖はなんなんだ?」

 

と今度は杖か

 

「それは"身代わりの杖"って言うんだけど…実際やってもらった方が良いか、俺に向かって振ってくれよ」

 

「こうか?」

 

俺に向かって振られた杖は光弾を生みだし、その光弾はまっすぐ俺へと直撃する

 

「うおっ!」

 

「どうだ凄いだろう?」

 

一瞬体が煙に包まれたあとに聞こえるエヴァンジェリンの驚く声

鏡が無いので分からないが、俺の声から察するに成功したみたいだ

 

「大きな声が聞こえましたが、何かあったのでしょう…マスターが二人?」

 

先程の大声で心配になってやってきた茶々丸ちゃん

彼女に目に映るのは"二人の"エヴァンジェリン

この杖は振った相手を自分と同じ姿にするというもの

つまり今回は俺がエヴァンジェリンになったというわけだ

見た目も声も、もちろん魔力すらエヴァンジェリン本人と全く同じ

ということで少し遊んでみることにする

 

「茶々丸」

 

「なんでしょうか、マスター」

 

いつもエヴァンジェリンが呼ぶように茶々丸ちゃんを読んでみるといつもの様に応答してくれた

 

「どうやらあいつの仕業みたいでな、こいつは偽物だ」

 

「な!?ふざけるな!茶々丸、こいつこそが偽物だぞ!」

 

「え?え?」

 

「茶々丸、私の従者なら私が本物だと理解してくれると信じているぞ」

 

「こらボケロボ!まさか本物が分からないわけないだろうな?」

 

一人は優しく、もう一人は荒々しくお互いを偽物扱いする

もちろん俺は優しく話したほうな

 

「大丈夫だ、たとえお前が私を偽物であると間違えても、責めはしないさ」

 

「いいか!間違えたらどうなるか分かっているだろうな!」

 

「私は信じているぞ。お前は私の最高の従者なのだからな」

 

「…分かりました。本物のマスターはあなたです」

 

ビシッと指を指されたのはエヴァンジェリン…ではなくエヴァンジェリンに化けた俺

 

「なんだと!?」

 

「ケケケ、コレハ面白イナ」

 

本物は選ばれなかったことに驚いていた

そんな本来のマスターの後ろで笑うのはチャチャゼロ

どうしてか、俺が偽物だと気付いたみたいだ

妹である茶々丸ちゃんには教えてないけど

 

「私は生まれてから1年も経っていませんがマスターの判別は出来ます。こちらのマスターこそ、私が仕えるべきマスターです」

 

「…俺ハラインガアルカラ分カルケドナ」

 

そういえばエヴァンジェリンとは魔力を受け取る為に繋がっていたな

 

「………いいのだ、どうせ私なんて…」

 

ってそんなことよりエヴァンジェリンがショックを受けて部屋の隅でいじけてやがる

これはやり過ぎたな

 

「さてと…茶々丸、いや茶々丸ちゃん?俺が偽物だからね」

 

咳払いを一つしてネタバレをしてみるが何故か慌てた様子ではない

どういうことだ?

 

「…録画中です」

 

ずっと瞬きもしないでエヴァンジェリンを見続ける茶々丸ちゃんがこぼした一言

もしかして俺が偽物だって気付いてた?

 

「今までのマスターの会話から判断しました。それがなければもしかしたら選んでいたかもしれませんが」

 

会話パターンからどちらが偽物か割り出したのか

でもここまでしなくても…

 

「先ほども申した通り、私は生まれてから1年も経っていません。その為感情というものをあまり理解していませんでしたので、新しい感情を知るためだと姉さんが…」

 

「オイ、ソレハ言ウナヨ」

 

地面にのの字を書いていたエヴァンジェリンを笑いながら見ていたチャチャゼロが止めようとするが時すでに遅し

 

「やはり貴様の仕業か~~~!!!」

 

「落チ着ケ御主人。コレモ勉強ダゼ?御主人ニ成リ済マサレタ時ノナ」

 

「うるさ~い!」

 

茶々丸ちゃんの暴露でブチ切れたエヴァンジェリンがチャチャゼロを追い掛け回す

対するチャチャゼロはあんな御主人初めて見たぜと更に茶化しながら逃げていく

 

「行っちまったな」

 

「そうですね」

 

部屋に残ったのは俺と茶々丸ちゃんの二人

 

「それではマム助さんのお世話がありますのでこれで失礼します」

 

エヴァンジェリンの扱いが一日で酷くなった茶々丸ちゃんは別室でお腹が満腹になって爆睡しているだろうマム助のお世話をしに部屋を出て行った

 

「さて、整理の続きでもするかな」

 

遠くの砂浜で数十mも砂が舞い上がっていたり、海が凍っていたりしてるのはとりあえず見なかったことにしておく

とかなんとかしているうちに杖の光弾が当たった時のように再度煙に包まれた

それも一瞬で終わり丁度窓ガラスに映った俺の姿を見ると元の姿に戻っていた

変身してから時間にしておそらく20分も経ってない

あっちの1ターンはこちらでは1分みたいだ

 

「逃げるな~!」

 

「ケケケ」

 

未だに続く追いかけっこを見つつ砂浜の整備は大変になるなぁと思いながら俺は道具の整理を続けるのであった


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