風来人が行く!   作:蒼零

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今回でやっと戦闘シーン書けました…短いですけど。


5階:腕試し

右を見れば綺麗な砂浜に透き通るような青い海

左を見ればジャングルを思い浮かべるほど緑が生い茂った森

上を見れば雲一つない青い空に不敵な笑顔で腕を組み宙に浮いている金髪幼zもといエヴァンジェリン

 

「さぁ貴様の力を見せてみろ!」

 

「申し訳ありません。マスターの命令ですので」

 

「おいおいどうすんだよ相棒」

 

え~とこれは一体どういうことだろう?

確かエヴァンジェリンに俺達の世界の話をしたんだ

不思議なダンジョン、蠢く魔物達、多くの不思議なアイテム

様々な事を話終えたのが1時間ぐらい経った時だった

突如話を聞いていたエヴァンジェリンに首根っこを掴まれ、そのまま引きずる様に連れ去られて気付けばこんなことに

 

「というかここは一体どこなんだ?」

 

「マム助さん、ここはマスターが所有する魔法球の中です」

 

「魔法球ってここに来る前に見たあの置物のことか?」

 

ああやっぱりここは魔法球の中なんだ

そういえば茶々丸が居るってことはもしかして原作始まっている?

 

「おい、せっかく私が戦闘の合図を出したのにそれを無視して雑談などするな!」

 

ウガーと吠えるエヴァンジェリン

強い魔法使いなのは原作を読んだことがあるから知ってるけどなんというか子供が背伸びしているみたいで可愛いな

って違うそうじゃなくて

 

「いやさ、どうして戦うことに?」

 

「なに、貴様らの実力を見たいだけだ」

 

「俺達は了承してないよね?」

 

強制的にここに連れて来られてそんな話聞いてないんだけど

 

「ふん、悪の魔法使いである私から施しを受けたのだぞ?等価交換というやつだ、これぐらい付き合ってもらうぞ」

 

「なぁ相棒、ご飯用意してくれたのって茶々丸姉ちゃんだよな?」

 

「うるさい!茶々丸は私の従者だ、つまりは私の施しになるのだ!」

 

いやまぁそれは分かるんだけどどう頑張っても無理だろ

人間一人と強いとは言えない魔物一体のコンビと吸血鬼とロボのコンビ

どうあがいても絶望なんだが

 

「マム助、俺逃げたいんだけど」

 

あっちには聞こえない大きさでマム助に愚痴る

 

「逃げる方法はあるけど、ありゃ逃げても捕まえて戦ってやるって顔だぜ?」

 

そうなんだよなぁ~、逃げる方法は幾つかあるんだけどそんなことしたら後々面倒になりそうだよな

ここは少し戦って、後は負けるか

 

「やるしかないか…はぁ」

 

「落ち込むなって、それならどうやって戦う?」

 

「そうだな、マム助は茶々丸ちゃんと戦ってくれ」

 

何もないとすぐに負けそうだからとりあえず草を幾つか見繕いマム助に渡す

 

「了解、それじゃお互い死なないように頑張るか」

 

パンと手と尻尾でハイタッチをしてそれぞれの相手の前へ歩いていく

 

「私の相手は貴様か」

 

「そういうこと、よろしく」

 

「何心配することはない、手加減はしてやる」

 

「それは有り難いこって」

 

ちらりとマム助を見れば茶々丸ちゃんと戦闘を開始していた

 

尻尾を使った打撃と突進攻撃をするマム助に対して茶々丸ちゃんは上手く捌いていく

対してマム助も茶々丸ちゃん馬力があるパンチを上手く避け、背中のブースターによる急加速も対処している

 

「ふむ、茶々丸の攻撃に上手く対処出来ているとは驚きだな」

 

「それはどうも、相棒として鼻が高いよ」

 

「さて、それではこちらも始めるか」

 

急に纏う雰囲気が変わったエヴァンジェリンは一瞬で距離を詰めてくる

 

「ぐっ!」

 

放たれた化け物級の拳を盾で防ぐが限界が来たのか大破してしまった

もちろんそんな隙をエヴァンジェリンが見逃すことも無く盾を壊した方とは別の手で手刀を脇腹へと放つ

それを紙一重で躱してカタナを振り降ろす

しかし刃が届く前にエヴァンジェリンは距離を開ける

 

「さすが風来人というだけあって近接戦闘は上手いな。ではこれはどうだ?リク・ラク ラ・ラック ライラック 氷の精霊17頭 集い来りて敵を切り裂け」

 

後ろへ下がりつつ謎の呪文を唱えるエヴァンジェリン

ってこの呪文は!?

 

「魔法の射手 連弾・氷の17矢!!」

 

詠唱の終了と共に現れる氷の矢

それは寸分狂うことなく俺へと向かう

防ぐにしても盾は使えないし、カタナで切り落とすにしても強度が心配

ならばと鞄から一本の杖を取り出し林に向けて振ると一つの光弾が現れ木に当たる

氷の矢が俺に当たる直前、体が急に浮き上がり木へと引き寄せられる

 

「なるほど、今のが不思議なアイテムというやつか」

 

「そうだ、これは"飛びつきの杖"振って出た光弾が当たった場所に飛んでいく」

 

「ほう、こちらでは目にしたことないアイテムだな。だが避けるだけではどうにもならんぞ?」

 

「さて、どうかな?」

 

会話の最中に俺はあるものを取り出している

 

「ん?それは弓か?そんなもので私を射ち落とす気か?」

 

手にしたのは弓と一本の矢

それを番えて狙いを定めて引き絞る

エヴァンジェリンに狙いが決まった途端一気に矢を放つ

 

「こんな矢など簡単に…なに!?」

 

距離があるのでひらりとエヴァンジェリンは避けるが急に矢が避けたエヴァンジェリンへと進行方向を変える

今放ったのは"必中の矢"狙った相手に必ず当たるという矢だ

追尾する矢に困惑している間に更に追加で二本放つ

 

「くそっ!なめるな、氷盾!」

 

魔法により現れた盾により三本全てが止められてしまった

だがそれで良いんだ、時間は稼げた

 

「やっかいな矢だったな。ん?あいつはどこだ?」

 

先程まで居た場所に俺が居ないことに気付いたエヴァンジェリンだがもう遅い

手にするは何かが入った白い袋

 

「そこか、今度こそ倒れるがいいリク・ラク ラ・ラック ライラック 来たれ氷精闇の精!!闇を従え吹雪け 常夜の氷雪」

 

俺を発見したエヴァンジェリンは再度詠唱を始める

対して俺はピッチャーの様に振りかぶる

 

「闇の吹雪!!!」

 

「いっけ~~~~!!!」

 

俺の投擲とエヴァンジェリンの魔法が鬩ぎ合う

しかし徐々に俺の投げた白い袋が魔法を散らしながら進んで行く

 

「な、なに!?へぶっ!」

 

自身の魔法がまさか真っ向から負けるとは思っていなかったのか驚愕しているエヴァンジェリンの顎に白い物体がHIT

情けない声を上げて墜落してくのだった

 

 

 

* * * * *

 

「まさか私が負けるとは」

 

「いや、最初から本気なら負けてる。それに今は全力出せないよね?」

 

墜落したエヴァンジェリンを介抱して数分後

目を覚ました彼女は今回は私の負けだと宣言してくれた

"今回は"の所に引っかかりがあるけど取りあえずは何とかなったとほっと一息

 

「確かにそうだが…ん?お前に私が封印されていることは話してないよな?」

 

「え!?いやぁなんとなくだよ、こっちでも呪いとかあるし、そんな感じがしたからね」

 

あぶね~原作読んでたからとか言えるわけないし

 

「そ、そういえばマム助達はどうなったんだろう?」

 

一応身体速度を上げる"すばやさ草"とか持って行ったけど

 

「そうだな、あの魔物は中々良い動きをしていたが茶々丸には勝てんだろ。それよりも最後のあれはなんだ?私の魔法を破るほどの威力なんてそうないぞ」

 

やっぱり気になるよね、自分の魔法を貫いたんだし

 

「あれのこと?教えても良いけど怒らないでよ?」

 

「大丈夫だ、私は寛容だからな」

 

「あれはギタンって言って、お金なんだ」

 

「はぁ!?」

 

そうだよね、普通お金があんな威力だすとか想像つかないよね

この世界では未来で小銭を使って戦ってたシーンがあったけど、それでも強力な魔法を打ち破るほどの威力は出せないしね

 

「他にも理由があるんだけどね。まずはこれ」

 

エヴァンジェリンに見せるのは俺の手首にあるもの

必中の矢で時間稼ぎをしている間に鞄から取り出して装備したもの

 

「これはなんだ?」

 

「これは腕輪なんだけどね、ただの腕輪ではなく様々な能力が付いた特殊なものなんだ。右手首についているのは"必中の腕輪"って言って、投げたものが必ず当たるというもの。左手首のは"遠投の腕輪"で投げたものに貫通の特性を与えるんだ」

 

「なるほどお前の世界にはこんな不思議なものもあるんだな。だがそれだけではあれほどの威力にはならないだろ?」

 

そうこの腕輪の効果だけではさっきの魔法は打ち破れなかった

多分矢とかなら魔法で消滅してたかも

 

「それでさっきの話に戻るんだけど、俺達の世界ってお金も武器になるんだ」

 

「そうなのか?それは財布に悪い武器だな」

 

「そうなんだけど威力は投げた金額に比例するんだ、今回は1万ギタンだったんだけどね」

 

「まて、それじゃぁもっと投げる金額を増やせば…」

 

あちらでは投げたギタンの10分の1がダメージになる

つまり1万投げれば1000ダメージになるわけだ

ちなみに体力が1000以上のモンスターなんてそういない

本当にボスと名が付く奴らぐらいだ

実際は1000ダメージも無かったと思う

貫通性能があったとはいえ魔法の中を突っ切ったんだから

 

「はぁ…全くお前の世界はハチャメチャだな」

 

「まぁそう言わないでさ、それよりもマム助達はどこだろう?」

 

気になり二人の姿を探すと

 

「マム助さん、こちらのお菓子はいかがですか?」

 

「茶々丸姉ちゃん、このびすけっとっていうお菓子美味しいな」

 

「喜んで貰えてなによりです」

 

茶々丸の膝の上でマム助がビスケットをむしゃむしゃと食べており

その姿を茶々丸は嬉しそうに見ていた

 

「「なにやっとるか!!お前らは!!」」

 

エヴァちゃんとはもってしまったのは仕方がない

こちらが必死に戦っているのにパートナーはのんびり休憩していたなんて

 

「おうお帰り相棒」

 

「お疲れ様ですマスター」

 

なんでこいつらこんなに仲良くなってるんだよ

 

「何をくつろいどるかお前らは!」

 

「本当に何やってるんだよマム助」

 

「いやさ、小腹が空いたって茶々丸姉ちゃんに言ったらおやつがあるって言われてさ」

 

言い訳しつつももしゃもしゃとビスケットを頬張るマム助

それを光悦した表情をしながら愛でる茶々丸ちゃん

 

「茶々丸!私達が戦っている最中に休憩とは何事だ!」

 

そうだぞ、茶々丸ちゃんもおやつなんて与えずにちゃんと戦わないと

 

「マスター」

 

「なんだ?言い訳ぐらいは聞いてやろう」

 

「こんな可愛いマム助さんに危害を加えるなんて出来ません!虐待です!」

 

見た目は可愛らしくて傷つけたくないのは分かるけどさ…

 

「何を言っとるか!このボケロボが~!!」

 

とんでもない言い訳でブチ切れたエヴァンジェリン

それでもガイノイドゆえか淡々とマム助に餌付けをする茶々丸ちゃんはある意味凄いと思う

 

「なぁあの金髪姉ちゃんはどうして怒ってるんだ?」

 

と全く分からない感じのマム助

こいつもある意味大物だよな本当にさ

 

「ああっ!マスターそんなに巻かれてはっ!」

 

「え~い!こんな駄目ロボ巻いてやる!」

 

後ろでは茶々丸ちゃんが艶のある声でネジを巻かれているのは気付かない振りをしておく

 

う~んこの後どうしよ?




こんな茶々丸もありですよね?

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