落とし穴、落ちた所で、生神に   作:美坂 遙

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それから2日間は特に変わった出来事もなく

平和な日常だった

ただ4日目の朝部屋で寝ていると

馬の足音が教会の間絵で止まったと思ったら

カイルさんとシエルが部屋に慌ただしく入ってきた

 

「カイルさんどうしたんですか?

シエルも居るみたいだし。」

 

「夏希君、今日来る予定だった商隊が

魔物に襲われていると連絡が来た

伝令の話ではキメラらしいんだが

夏希君が倒した奴よりも頭が多いらしい

もしものために手伝ってくれないか?

もちろん報酬は出す」

 

キメラは頭が多いほど格が高いんだったな

世話になってるし報酬は要らない事を伝え

クリエも呼び出した

 

「クリエ、商隊がキメラに襲われているらしい

俺達も助けに行くぞ!」

 

「分かりました、カイル様移動手段は馬ですか?」

 

「ああ、馬を三頭用意した。

夏希君は乗れるのかい?」

 

馬は乗ったことがないなぁと考えていたが

クリエが乗れると言うので

クリエの後ろに乗って行くことになった。

 

「あんた、馬にも乗れないの?

情けないわねぇ。」

 

・・・言い返せない。

 

 

 

俺達は西にある谷へと向かった

 

「カイル様、商隊には護衛は何人くらい居るのですか?

長距離移動の商隊に魔物に対抗出来る護衛が

居ないとは考えられないのですが。」

 

「護衛は5人居たらしいが岩陰からの奇襲で

1人が重傷な上にうちの集落への物資を積んだ

荷馬車の車輪が破損したらしくてな

魔法を使って補助しながら移動してるせいで

戦えるのが3人しか居ないらしい」

 

 

谷に入った所でこの前のキメラと同じ様な鳴き声と共に

メ~と言う山羊のような鳴き声も聞こえた

それを聞いたシエルとカイルさんは

すぐに魔法で障壁を展開し俺達にも障壁を掛けた

 

「山羊のような鳴き声が聞こえたと思うけど

山羊の頭は魔法を使うから念のためだよ

使う属性は目の色で分かるが、

今張った障壁は物理攻撃は防げないから注意してくれ」

 

「あんたの分は私が張ってあげたんだから

感謝しなさいよ」

 

「ああ、ありがとう

そういえば、シエルは前衛なのか?」

 

カイルさんは後衛だしクリエと俺は前衛だけど

シエルは聞いてなかったな。

 

「あたしはどちらかと言えば前衛だけど

中衛も出来るわよ?」

 

そう言って二本の剣を取り出した

器用に馬に乗りながら振っている

 

「シエルは魔法も地と闇が使えるから

色々応用が効くからね。」

 

「シエル様は二刀流の魔法剣士なんですね

扱いの難しい二刀流なのに魔法も使いこなすとは

凄いですね。」

 

クリエが褒めるとシエルは嬉しそうだ

 

「今回はシエルとクリエが前衛で囮になり

俺が弓で牽制、夏希君はクロのシャドーダイブで

隠れて近づき荷馬車を回収しに行ってくれ

君の倉庫になら入るだろ?

回収後は他の馬車と一緒に撤退だ」

 

クロのシャドーダイブは俺も入れるのか

クリエに確認すると

今のクロだと五分位ならいけるらしい

倉庫に容量制限が無いのは訓練の時に話してたのを

カイルさんは覚えていたようだ

 

「探索魔法で確認したが商隊は

なんとか追撃をしのいで居るみたいだ

もう少しで見えるから頼むぞ」

 

そう言って馬を走らせ

商隊が見えると俺とクロは馬から下り

崖の影に隠れた

 

 

 

俺とクロが姿を隠して馬車に近づき様子をうかがっていると

クリエとシエルが数分後崖の反対側から現れ

キメラと戦闘開始した

 

クリエは渡してあったビルゴを抜き

シエルは双剣を構えると商隊との間に陣取ったようだ

 

キメラが二人に気を取られている隙に

カイルさんは岩陰に隠れて弓を構えている

 

「商隊の護衛はそこの角にある岩陰まで

死ぬ気で馬車と荷馬車を護りなさい

そこに仲間が隠れています

合流後は谷を抜けこの先の集落に向かいなさい」

 

「わかった。救援感謝する」

 

商隊は指示に従いこっちに向かってくるようだ

俺はクロにシャドーダイブを解除させると

岩陰から手を出し合図した

 

「護衛の皆さん荷馬車に生き物は乗ってませんか?

今から荷馬車を回収します」

 

「何?乗ってはなかったと思うが

この量をどうやってしまうつもりだ?」

 

「俺の神器は特別なんですよ

ほら早く荷馬車から離れてください」

 

荷馬車に乗っていた商隊の人を

馬車に移ってもらうように促し

荷馬車に誰も居ないのを確認すると

スマホを触れさせ馬車馬を残し倉庫へしまった

 

「他にも荷物があれば出してください

少しでも馬車を軽くしないとダメですから」

 

そう言って振り返ると商隊の人達は唖然として固まっていた

俺がもう一度合図するとようやく荷物を取り出し持ってきた

 

「それでは出発しましょう

俺も同行します」

 

そう言うと俺は馬車の後ろに飛び乗った

 

「わかった、みんな急ぐぞ」

 

護衛のリーダーらしき人は馬車馬に乗ると

商隊の人達に声をかけた

 

商隊が撤退を開始したので俺は

クリエ達を確認してみると

クリエはキメラの周りを走りながら

後ろ足をきりつけていた

シエルは双剣を振る動作で

石の針をキメラに打ち込んでいる

 

カイルさんは弓を撃ちながらこちらを確認すると

先に行くよう合図を出した

それを確認すると俺達は全力で走り出した

 

 

 

撤退を開始して数分後、谷の方で青い光の玉が撃ち上がった

それを確認すると護衛や商隊の人達が

安堵したような顔をした

 

「あんたの仲間達は無事にキメラを倒したみたいだな

若いのにたいしたものだ」

 

なるほどさっきの色は討伐達成の色なのか

 

「それにしてもこの地方にはキメラは居ない筈なんだが

一体何があったんだろうな」

 

「数日前この先の集落でもキメラが現れました

たまたま俺が立ち寄ったことで間に合いましたが

数人死傷者が出ました」

 

それを聞いた護衛の人は少し考えると

番だったのではないかと言った

番なら縄張りを広げ本来居ない場所に現れる事もあるらしい

 

「番だとしたら人間に危害を与えなければ討伐されずに、

子供は魔獣に成れたかもしれないのにな」

 

そう言うと谷の方を眺めだした

 

 

 

魔獣の意味を聞ける雰囲気ではないから

後でクリエに聞こう・・・


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