人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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75話 アイテム

 5月31日(土)

 

 放課後

 

 ~Be Blue V~

 

「お疲れ様です」

「お疲れ様。まだ時間あるからゆっくりでいいよ」

 

 お店に出ていた三田村さんからそう言われ、奥で用意を整える。

 今日は赤い無地のYシャツだ。

 

 そして着替えて、服を用意してくれたオーナーにスキルカードの話をする。

 

「オーナー、例の物が手に入りました」

「まぁ! もう手に入ったの?」

「こちらです」

 

 封筒に入った約束のスキルカード二枚をオーナーに渡す。

 

「一枚は回復魔法、もう一枚は爆発による攻撃魔法です。どちらかは付箋を見てください」

「ありがとう。何か加工がしてあるみたいだけど、材料は羊皮紙みたいね……治癒促進は手に入ったかしら?」

「買えました、ただまだ使っていません」

 

 オーナーにスキルカードは神社で複製できる可能性があることを伝えた。

 まだ確かめていない。しかし実験用にローグロウも買ってある。

 もしできたなら、余分に治癒促進を確保するつもりだ。

 いずれ使える時が必ずくる。

 

 そんな俺にオーナーは、

 

「これ以外は貴方の物、好きに使うといいわ。でも後悔のない様にね」

 

 さらに複製できる可能性があるなら、その方法を考えてみる。

 そう興奮したように言い残し、オーナーは地下の倉庫へ繋がる廊下に歩いて行った。

 

「さて、今日も頑張りますか」

 

 気合を入れて、仕事に励んだ。

 

「占いお願いします」

「私もいいですか?」

 

 占いのお客様がだいぶ増えてきた。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 夜

 

 ~長鳴神社~

 

 だいぶ遅くなった……

 夜中の神社は明かりがなく真っ暗だ。

 もっとも俺は暗視能力のお陰で困らないが。

 

 くだらない事を考えているうちに、目的地へ到着。お稲荷様を祭っている(やしろ)にコンビニで買った稲荷寿司を供えて、ローグロウのスキルカードを一緒に置く。

 

「このカードを増やしていただけませんか? お願いします」

 

 深々と頭を下げて拝み、その場を後にする。

 これで五日だったかな? 

 成功するかも分からないけど、やってみるしかない。

 

「ワン! ワンワン!!」

「!」

 

 犬の声がした方を見ると、コロマルが駆けてきていた。

 

「ガルルルルル……」

「あー……ここの神社の番犬だよね? 俺はただ参拝に来ただけなんだ」

「グル……」

「仕事があってこんな時間になったけどね」

 

 コロマルは人間の言葉を理解している節があった。

 落ち着いて説明をしてみると、徐々にうなり声が小さくなっていく。

 

「なんなら調べてもらってもかまわないよ。賽銭泥棒とか、やましい事は何もしてないからね」

「…………ワフッ」

 

 どうしたんだろう? コロマルはうなるのをやめ、急に来た道をかけ戻っていく。

 疑いは晴れたと考えていいのだろうか? 戻ってくる気配は無い……帰ろう。

 

 腹減った……

 巌戸台まで来たんだし、わかつで食べていこう。

 

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 

 影時間

 

 ~タルタロス~

 

 今日は攻撃魔法に重点を置いたトレーニングを行う。

 足でシャドウの攻撃をかわし、敵の弱点となる魔法を的確に選択して放つ。

 その際魔力(SP)の流れに注意し、魔力(SP)のみを使って放つことを心がける。

 何も考えずに魔法を使うと、魔力(SP)と一緒に微量の体力(HP)を放出している時があったのだ。

 無駄以外の何者でもない。

 魔法も魔力の流れが滞る部分があり、そこを勢いで突破しているような感覚に気付いた。

 流れをスムーズになれば勢いをつける力がいらず、消費量を抑えられるかもしれない。

 

 タルタロスマラソンを行いながら、きつくても一発ずつ正確に、丁寧に。

 

 “まだいける! まだいける! あとちょっと! 諦めんなよ!!”

 

 そんな事は言ってないが、それくらい遠慮なく自覚を促すアドバイスに従い、自分が限界と感じるさらに一歩先、本当に安全かつ限界の一歩手前で行う地道な反復練習。

 

「忘れてた」

 

 魔法といえばこの前カノのルーンを刻んだ石の実験がまだだった。

 持ってきている石の中から目当ての石を取り出し、魔力を流し込む。

 アナライズやアドバイスがさらに強化できないか……と期待していると

 

「熱っ!?」

 

 石から噴出した炎で手が包まれ、反射的に石を放り投げる。

 

「“ひらめき”とか“道しるべ”とか象徴的な事じゃなくて……ストレートに“火”が出るのかよ……」

 

 ドッペルゲンガーが間にあったから火傷は免れた。

 でも普通に石を握っていた手が熱い。

 シャドウが撃ってくるアギと同じくらいの熱さだ。

 当初の目的からすると失敗だけど、攻撃に使えるかもしれない

 

 ……たしか攻撃魔法や回復魔法と同じ効果を出す”ジェム”ってアイテムがあった。

 上手くやればこれでジェムを作れる(・・・)んじゃないだろうか?

 今も火を噴き続ける石を見るていると、期待は持てそうだ。

 

 作るとしたら火だけでなく氷や雷に関係するルーンもある。

 それも今度実験しよう。

 

 あと見本として本物のジェムが欲しいな。あれはどこで手に入るんだったっけ?

 骨董品屋はおぼえているけど、あれはまだ店が無いし、交換する宝石もない。

 タルタロスなら宝箱。階数が関係するのか……

 いや、最初の方から何かのジェムが手に入ったのをおぼえている。

 少なくともバスタードライブより前には何かがあったはず。

 ……そういえば10Fの門番シャドウ(ダンシングハンド)はまだ何も落としてない。

 門番シャドウを倒すとゲームでは換金アイテムか何かが手に入ったし、実際5Fの門番シャドウ(ヴィーナスイーグル)からは銀の仮面が手に入った。

 

 他に心当たりもないし、確かめてみよう。

 

 そう決めた俺は転送装置へと駆け出した。

 

しかし、残念ながら今日はダンシングハンドがいなかった。

 しばらく通い続けてみよう。




影虎は夜の神社でカードの複製を試みた!
コロマルから不審者扱いされた!
影虎はジェムの作成ができないかと考えている……

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