5月31日(土)
放課後
~Be Blue V~
「お疲れ様です」
「お疲れ様。まだ時間あるからゆっくりでいいよ」
お店に出ていた三田村さんからそう言われ、奥で用意を整える。
今日は赤い無地のYシャツだ。
そして着替えて、服を用意してくれたオーナーにスキルカードの話をする。
「オーナー、例の物が手に入りました」
「まぁ! もう手に入ったの?」
「こちらです」
封筒に入った約束のスキルカード二枚をオーナーに渡す。
「一枚は回復魔法、もう一枚は爆発による攻撃魔法です。どちらかは付箋を見てください」
「ありがとう。何か加工がしてあるみたいだけど、材料は羊皮紙みたいね……治癒促進は手に入ったかしら?」
「買えました、ただまだ使っていません」
オーナーにスキルカードは神社で複製できる可能性があることを伝えた。
まだ確かめていない。しかし実験用にローグロウも買ってある。
もしできたなら、余分に治癒促進を確保するつもりだ。
いずれ使える時が必ずくる。
そんな俺にオーナーは、
「これ以外は貴方の物、好きに使うといいわ。でも後悔のない様にね」
さらに複製できる可能性があるなら、その方法を考えてみる。
そう興奮したように言い残し、オーナーは地下の倉庫へ繋がる廊下に歩いて行った。
「さて、今日も頑張りますか」
気合を入れて、仕事に励んだ。
「占いお願いします」
「私もいいですか?」
占いのお客様がだいぶ増えてきた。
……
…………
………………
夜
~長鳴神社~
だいぶ遅くなった……
夜中の神社は明かりがなく真っ暗だ。
もっとも俺は暗視能力のお陰で困らないが。
くだらない事を考えているうちに、目的地へ到着。お稲荷様を祭っている
「このカードを増やしていただけませんか? お願いします」
深々と頭を下げて拝み、その場を後にする。
これで五日だったかな?
成功するかも分からないけど、やってみるしかない。
「ワン! ワンワン!!」
「!」
犬の声がした方を見ると、コロマルが駆けてきていた。
「ガルルルルル……」
「あー……ここの神社の番犬だよね? 俺はただ参拝に来ただけなんだ」
「グル……」
「仕事があってこんな時間になったけどね」
コロマルは人間の言葉を理解している節があった。
落ち着いて説明をしてみると、徐々にうなり声が小さくなっていく。
「なんなら調べてもらってもかまわないよ。賽銭泥棒とか、やましい事は何もしてないからね」
「…………ワフッ」
どうしたんだろう? コロマルはうなるのをやめ、急に来た道をかけ戻っていく。
疑いは晴れたと考えていいのだろうか? 戻ってくる気配は無い……帰ろう。
腹減った……
巌戸台まで来たんだし、わかつで食べていこう。
……
…………
………………
影時間
~タルタロス~
今日は攻撃魔法に重点を置いたトレーニングを行う。
足でシャドウの攻撃をかわし、敵の弱点となる魔法を的確に選択して放つ。
その際
何も考えずに魔法を使うと、
無駄以外の何者でもない。
魔法も魔力の流れが滞る部分があり、そこを勢いで突破しているような感覚に気付いた。
流れをスムーズになれば勢いをつける力がいらず、消費量を抑えられるかもしれない。
タルタロスマラソンを行いながら、きつくても一発ずつ正確に、丁寧に。
“まだいける! まだいける! あとちょっと! 諦めんなよ!!”
そんな事は言ってないが、それくらい遠慮なく自覚を促すアドバイスに従い、自分が限界と感じるさらに一歩先、本当に安全かつ限界の一歩手前で行う地道な反復練習。
「忘れてた」
魔法といえばこの前カノのルーンを刻んだ石の実験がまだだった。
持ってきている石の中から目当ての石を取り出し、魔力を流し込む。
アナライズやアドバイスがさらに強化できないか……と期待していると
「熱っ!?」
石から噴出した炎で手が包まれ、反射的に石を放り投げる。
「“ひらめき”とか“道しるべ”とか象徴的な事じゃなくて……ストレートに“火”が出るのかよ……」
ドッペルゲンガーが間にあったから火傷は免れた。
でも普通に石を握っていた手が熱い。
シャドウが撃ってくるアギと同じくらいの熱さだ。
当初の目的からすると失敗だけど、攻撃に使えるかもしれない
……たしか攻撃魔法や回復魔法と同じ効果を出す”ジェム”ってアイテムがあった。
上手くやればこれでジェムを
今も火を噴き続ける石を見るていると、期待は持てそうだ。
作るとしたら火だけでなく氷や雷に関係するルーンもある。
それも今度実験しよう。
あと見本として本物のジェムが欲しいな。あれはどこで手に入るんだったっけ?
骨董品屋はおぼえているけど、あれはまだ店が無いし、交換する宝石もない。
タルタロスなら宝箱。階数が関係するのか……
いや、最初の方から何かのジェムが手に入ったのをおぼえている。
少なくともバスタードライブより前には何かがあったはず。
……そういえば10Fの
門番シャドウを倒すとゲームでは換金アイテムか何かが手に入ったし、実際5Fの
他に心当たりもないし、確かめてみよう。
そう決めた俺は転送装置へと駆け出した。
しかし、残念ながら今日はダンシングハンドがいなかった。
しばらく通い続けてみよう。
影虎は夜の神社でカードの複製を試みた!
コロマルから不審者扱いされた!
影虎はジェムの作成ができないかと考えている……