ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた   作:おーり

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ネギがいない。そらもいない。麻帆良のまの字すら出てこない超蛇足回
タイトル通りに主役はあの人ですが、設定だけ出ているお人らを登場させようっていう魂胆の駄文です
クロスとかいい加減にしろってみんな言うけど、俺は好きだ


蛇足章・駄言遣い篇
『がんばれ笹浦さん』


 

 

 元関西呪術協会所属の式神使い。

 笹浦福次を表すなら、端的に言えばそんな立場の人間であった。

 だが、現在は関東魔法協会舞浜支部に半所属している、フリーエージェントに近しい立場の傭兵的式神使い。

 呪術協会を内側から瓦解させた、という客観的かつ一側面からしか見ていない実績を買われ、彼は協会を解体させるべく潜り込んでいたスパイであった、という誤りが独り歩きして、いつのまにやらそんな立場の人間として魔法使いらに友好的に扱われている。

 最近のそんな立場に、笹浦本人も少しばかりの懸念が浮かび始めていた。

 

 関東魔法協会の政府直轄支部、という事務所に通うようになって一ヶ月が経過した。

 笹浦には直接与り知らぬことであるのだが、この世界において魔法界は政治関連に結構な割合で手を広げている。

 神秘に准ずる人種であって然るべき、という魔法使いの暗黙の了解を破り捨て現世利益に基づいて行動し、現実社会の法律に則って歴史から爪弾きにされないように行動した結果である。

 であるのだが、その社会システムに入り込む際に、『魔法使いの実績が伴う解決』へと導く手順の大体が認識阻害の乱用だったりする。

 そんなことねーよ、魔法使いだって倫理観ぐらい備えているよ、そんな風に思う純朴な思考が悪いとは言わない。が、それではやはり甘いのである。

 

 この世界各地でもそれなりに反論凄まじい魔法協会なのであるが、一先ず日本においての事例を挙げよう。

 そもそもが設立からして、反対意見をものともせずに首都近くへと協会の名と実をつけた。古い歴史のある組織と思えるだろうが、設立自体は実は最近。

 日本支部の置かれている麻帆良学園自体は明治中期に設立されたのだが、その頃は西洋文化を大々的に取り入れたりすれば先進的と言えば聞こえは良いが国の性質上顰蹙(ひんしゅく)を買う。当時は『協会』などという題目も挙げられず、メガロメセンブリアすら形となっているかは怪しいところ。他にも彼の『連合』が優位性を声高に掲げようとも、疑問点と矛盾点が酷いので割愛とする。

 では『協会』は一体いつごろ出来上がったのだろうか?

 遡れるのは魔法界の『大戦』が収束した後くらいの時期、大体20年程度しか経っていない。それも古くても、だ。麻帆良に集中する人員の年齢層を鑑みるに、もっと若い組織である可能性も垣間見えるので、確実な証左のあるというわけでもないのが問題だが。

 その目的自体は、魔法使いの活動する土壌を日本にも用意する、という独尊的な理屈。元居た呪術系列の術師らを牽制するためなのか首都近くに日本支部を作り、関東近辺土着の術師らを排斥か取り込んだかそれとも攻め滅ぼしたか、まるで古くは日本書記に見られる混沌期の人種対立。

 話が逸れたが、そんな若い組織が現政府に取り入るのには、魔法の力が無くてはやはり形にならないのである。

 たとえその目的が、他の魔法使いを慮っての必要悪である、と自負したとしても、裏ワザ≪チート≫はやはり『卑怯』にしか見えないのだ。

 

 当然ながら、そんな組織だからそれを知る者たちからの目は冷たい。

 その裏ワザでもって得られた、他の部署よりもずっと間取りと広さと設備の充実した中々快適な支部執務室なんかへ足を運んでいると、時折鋭い目が笹浦にも向けられていたのであった。

 正直、胃が痛かった。

 

 

「(しかも俺自身は関東に完全に所属しているってわけでもないんだよなぁ……。まあ、友好的な関係を築こうって魔法使いらも言ってくれてるみたいだし、その点には感謝しているけど)」

 

 

 関西の協会が解体されて、フリーの術師となった笹浦には仕事が必要だった。

 抜ける際に近衛家から相応の謝礼は貰えたものの、大体が借金の返済で消失。しかも借金はまだ残っている。

 しかし、式神使いという潰しの効かない資質を持っているお蔭で普通の仕事に就く気にもなれず、かといって関西系列は彼を雇うことに忌避感が生まれるのは仕方のないことだった。

 そんな彼を救ったのが、冒頭の間違った実績を買った魔法協会なのである。

 元が組織人なおかげで、何処かに所属している、というだけで彼の不安はその時一時的とはいえ安らいだのであった。

 

 とはいっても、特別彼が能力を発揮して働ける仕事も、今のところは無いのだが。

 

 冒頭で言ったように、此処は政府直轄とはいえ舞浜支部。

 此処に所属する魔法使いたちの主な業務は、『夢の国でお客の気分を害さないように演出』することなのであった。

 

 

「(……まさかネズミの国が魔法使いの演出で成立していたとはなぁ……)」

 

 

 水兵姿のアヒルの着ぐるみで正体を隠した笹浦の傍では、国の主役が高らかに笑っていたという。

 ――ハハッ!

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

「……どうしてこうなった……っ!?」

 

 

 夜の王国≪ランド≫。

 帳も照明もすっかり降りた、『国』の総てが寝静まった丑三つ時。

 笹浦福次は物陰に身を潜め、見つからないように静かに呻く。

 平凡な日常を謳歌する、そのHomeの最たる庭であったはずなのに、一転して邪気と狂気に晒された最悪の戦場。

 知らぬうちに陥れられた、と頭を抱える笹浦は、共に隠れている他の魔法使いたちを尻目にしつつ『原因』を思い返す。

 

 

 話の元は、舞浜支部に『仕事』を持ってきた魔法協会の他支部の魔法使いであった。

 何処から仕入れた話であったのか。笹浦の所属する舞浜支部近辺に『闇の福音』レベルの違法魔法使いが潜伏している、という情報を引っ提げて、彼らは意気揚々と討伐へとやってきたのである。

 本物であれば多数の戦力が必要であるのは必至であるから、そうやってぞろぞろと引き連れてきた上で、舞浜支部の他の魔法使いに助力を乞うのも至極当然の流れになって然るべきであろう。

 偽物であったとしても、魔法使いが脅威を日本から取り除いた、という実績と箔を彼らは得られる。起こった事実は一つなれど、世の真実などは声がでかいものが騙ればいくらでも書き換わる。要するに“そういうこと”だ。

 

 仕事に不満はあっても、笹浦自身は現状には不満はなかった。

 揉め事は少なくとも荒事にはならないし、命の危機もなければ得られる収入で生活も何気に安定している。

 『王国』の裏方、という立場でしかないけれども。式神使いである、というプライドなんて働いているうちに心の自室のごみ箱に放り込んであるけれども。

 少なくとも、借金の返済に追われて食うにも困る生活をしていた時よりはずっと人間らしい生活だったので、他の魔法使いが『王国』の住人にこき使われるように魔法を扱っていることに不満を垂れ流していても、自分としては他の魔法使いみたいな愚痴を口にする気にはなれなかった。

 ちなみに借金の返済と一口に言ったが、其処にダークでシリアスな理屈や理由は隠れておらず、関東に来た際、競馬で摩って螻蛄(オケラ)となっただけである。来ると思ったのだが、ケンタウロスホイミ。と名前の神秘に引っかかったこの屑に同情の余地は、無い。

 

 話が逸れたが。

 現状に不満を抱えていた舞浜支部の他の魔法使いは、彼らの持ってきた情報に大いに沸いた。

 闇の福音レベル、なんて言ってもこの数ならば倒せると息巻いた。

 というか、『本物』クラスの魔法使いがこんなところにいるはずがない。どうせ名前を騙っただけの偽物であろう、と。

 情報の真偽を確かめようともせずに、勝利を確信していただけなのであった。

 

 これもまた笹浦の与り知らぬ情報なのであるが、件の情報を持ってきた者たちもまた現状に不満を持つ『魔法使い』であった。

 彼らは麻帆良に所属しておきながら、正規の教員免許を所持していないために非常勤扱いとなっている。出身こそ様々だが、魔法世界などの生粋の魔法文化に触れて育った『外様』である。中にはメガロメセンブリア出身の者もいたりした。

 魔法界にとって『麻帆良』というのは一種のステータスとなっている。そんなところへ派遣される彼らは、魔法使いの社会からすればエリートなわけである。

 しかし意気込んで現実世界へ渡ってみれば、寄越される仕事は魔法使いとしては特に必要とされていないものばかり。土地を守るために侵入者を迎撃する、という専守防衛ならばまだ良い方で、教師を志したというわけでもないのにやりたもない授業を興すことで己の時間も取られてゆく。生徒側もこちらのやる気のない内心を察しているのか、碌に授業を聞いているというようにも見えない。

 要するに、与えられる現実が納得のできないものばかりで腐っていたわけである。同時に、そんな仕事ばかりを押し付ける近右衛門に対するフラストレーションもまた募るばかりであったりもしていた。

 そんな折に与えられた、というか見つけてしまった、『魔法使いの本分』にもっとも適している、と思われる情報。そして仕事。

 無駄に気持ちは逸り、やる気になったままに千葉の房総入口へと足を向けたのは、何気に近右衛門すらも与り知らぬことなのであった。

 

 そんなわけで、魔法協会からはこれ以上の増援はない。

 日本支部の筆頭であり、責任者である近衛翁にすら連絡の行っていない事項。

 正義の魔法使い側からしてみれば「協会長の見過ごした大敵を討つ」という屁理屈だが、傍から見ても「手柄を独り占めしたいがために報告の義務を怠った」のは一目瞭然だ。

 彼らからしてみれば、「まさか敵わないはずが無い」という理由にもならなかった傲慢は、戦場が『興った』数分で覆されたのである。

 

 

「――ねぇ、お友達になりましょう?」

 

 

 ――ッ!?

 

 と、恐ろしい程に静まり返った広場に、楽しそうな少女の声が鈴の様に響く。

 思わず気づかれないように、笹浦は己の口を両手で塞いだ。

 

 こつ、こつ、と誰を探すでもなく徘徊する、彼女の服装は、夏場だというのに長袖の学校制服で、それが何処のモノなのかは詳しくない笹浦には窺い知れない。

 その上に、更にケープを纏った黒髪の、一見しただけでは何処にでも居そうな高校生くらいの少女。

 時期的に格好は暑そうなのだが、今の園内の気温は夏場だというのに酷く冷め切っていて、身動きを取らないままだとそのまま凍死してしまいそうなくらいに凍えている。だからこそ、逆に恰好が似合うようにも思えてくるのだが、その気温の低下が心理的に要因するものとしか思えないのは至極当然の連想の結実なのである。

 心理的要因の原因こそ、その彼女にあるのであるということも。

 

 

「こ、この化け物が、ぁぁぁああああアアアアッ!!」

 

「あら嬉しい、そちらから来てくれたのね」

 

 

 背後から魔法の射手を撃とうとでもしたのであろうが、一人の魔法使いが叫び声をあげた瞬間に『変質』した。

 ブヨブヨとした白い肉塊へと見る見るうちに変わってゆき、声に似た『音』を発しながら、だらしなく地面へと投げ出される。

 それきり、『彼』は動くことは無くなった。

 

 

「このままじゃ可哀そうね。カタチを与えてあげる」

 

 

 その白い『肉塊』に、少女が優しく語り掛けて手を翳す。

 距離があったのだが、いつの間にか近づいていた彼女が手を翳すと、彼は見る見るうちに『形成』されてゆき――、

 

 ――等身大のぬいぐるみのような、服を着た動物をモチーフとした『王国』の『住人』へと姿を変えたのである。

 思い返してみれば、『彼』は同じ職場で働く“同僚”であった。

 

 そのことに気づいた瞬間、恐ろしくなった笹浦は這い蹲って逃げ出した。

 気づかれないように、必死になって、影に陰に隠れる様に死角を進む。

 『変えられて』しまった『彼ら』に命が残っているのかどうかは、彼には与り知らぬことなのであった。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

 ……おそらくだが、あれで魔法使いは全滅した。

 あの少女こそが、彼らの目標であった『魔女』だ。

 確か、魔法使いらから渡された資料には『十叶詠子』と、名前だけがあった。

 ……が、

 

 

「……は、はぁ、はぁ……っ、っくしょう……っ、捕まって、たまる、か……っ」

 

「――こんにちは、笹浦福次さん」

 

 

 ――……名前だけがわかったからって、何になるっていうんだ……。

 

 必死で逃げ切って、さっきの場所から距離を置いたはずの『国』の玄関口に、『彼女』が自然と佇んでいた。

 己の名前を知られていることにも、最早違和感は無い。

 

 

「なんなんだ、なんなんだよお前は……!」

 

「わたし? 魔女だよ。ふふ、ただの魔女」

 

 

 何が可笑しいのか、柔らかく微笑んで応えられる。

 瞬間、己の身体を寒気が襲い、ぞわりとした感覚に思わず我が身を抱きしめた。

 ――その指の隙間から、腕の肉が融解して蕩け出す。

 

 

「――うぁ……っ!?」

 

「すごいなぁ、笹浦さんは何か特別な自分でも持っているのかな? 普通はすぐに溶けちゃうんだ、この『魔女の森』では」

 

 

 分かっていたんだ。

 対峙した瞬間から、この世界全てが彼女の『領域』になっていたということが。

 

 

「自分を保てている人は簡単に崩れないで、新しい魔女になれるの。最近はそんなにいなかったから、ちょっとだけ嬉しいよ? 変わったら、すぐにわたしの『魔女団(カヴン)』に入れてあげるね」

 

「、ぃ、やだ……! 助け……、っ!」

 

 

 言葉の意味を理解できないが、絶対に碌なことにならない。

 そう確信できるのだが、抵抗感が減っていることに驚いて、必死で声を嗄らした。

 

 融解してゆくのは、己の身体だけじゃない。

 心と呼べる『ナニか』も、一緒にどろどろと溶けて行っている。

 そうわかるのは、あんなに悍ましかった筈の彼女の声が、次第に心地の良いものとなっているから。

 そう思えてくる、変化する己の心情に悲鳴を上げたいが、それすらもかつての己の声だったのかも、今の俺には判別は出来ず。

 

 ――誰にも看取られないままに、『自分』は此処で終わるのだ。と理解した。

 

 その時だった、

 

 

「――先輩、目に余りますよ」

 

 

 黒尽くめの服を着た少年と、臙脂色の服装の少女が、俺たち2人の間に割入っていたのは。

 ……何故か、枯れた草と鉄錆びのような匂いが芳しかった――。

 

 

 

 





~魔女・十叶詠子(トガノヨミコ)
 日本に点在する5人の魔女の一人。存在するだけで“異界”を発生させ、引き寄せた人間を『変質』させてしまう『魔女の森』を領域に持つ『異界の魔女』
 助かる術は基本的に皆無。呑み込まれた人間は『魔女』になるか『食事』になるか
 当然それらは比喩表現なので、変質した先が当人の希望に沿っているモノなのかどうかは誰にも分らない。少なくとも5人の魔女に匹敵するような正当な『魔女』へと変質した者は、今の所皆無かと思われる

~黒尽くめの少年&少女
 一体ナニモノなんだ…
 あ、この先登場はしません



誰もが予測していなかったであろう、実はクロスしていたのはあの話
でもさわりの伏線だけならちょいちょいありましたよ? まあその時はバララ●カさんの存在感に埋もれてしまった感じがひしひしとありましたけど
笹浦さん? さぁ? なんとか助かったんじゃないっすかね(適当)

お待たせしましたが時系列的に今の時期かな?という理由で更新した完全なる番外です
ちう凡、というネギマジZに連動する裏話的な意味合いで更新いたしました
あれ、これ本当にネギまの二次創作だっけ?と思った貴方へ。俺にもよくわかりません

この先2話ほど、このおまけ的な『駄言遣い篇』が更新される予定ですが、クロスした先が主体となって携わるのでネギまonlyでやれや、と言いたい方にとっては多分読まなくても平気です
そっちが欲しければちう凡かネギ恥へどうぞ
このスレッドとしては、一応は完結を見せましたので。百話に届かせるだけの穴埋めですから

しかし穴埋め目指すのがなんだか百物語的でちょっとだけどっきどきですね
少しづつ火を消して行っているのが己の命の火でないことだけを祈ります

……これが終わったら俺、魔法科魔王を放り投げてone-pieceをオリ主で書くんだ……
べ、別に魔王の構成で心が折れたとか、そんな理由じゃねーですし!

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