東方渡世抄 〜現実と幻想の境界〜 【更新停止】   作:小鳥戦士

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えー.......約一ヶ月お待たせしました。


第6話 チートなポーチと初めてのスペカ

「じゃあ、また来るよ。これからよろしく」

 

「うん。よろしくね。君は数少ないお客様だからね、いつでも来ていいよ」

 

「おうよ」

 

俺はこーりんと軽く別れを告げ、魔理沙の箒に跨った。魔理沙の箒は音もなく浮かび上がり、更に上昇していく。

 

「またな〜!」

 

そして、地上から手を振るこーりんが見えなくなるまで俺たちは上昇した。

ある程度昇りつめたらしく、魔理沙は気になっていたという質問を投げかけてきた。

 

「んで?お前一体何を貰ったんだ?商品見てたからよく知らないだぜ」

 

「んー.......俺がこの幻想郷で生きていく為に必要なものを選んだ。おそらく俺としては一番の必需品だ」

 

「ほー.......ん?じゃあ今それはそのリュックに入ってんのか?案外ちっせぇものなのか?」

 

確かに、魔理沙の言う通り俺は今リュックしか持っていない。しかもそれを背負っているのだから、そこに入ってると思うのも無理もない。

だが、ここは幻想郷。常識に囚われてはいけない。

 

「いやね?俺が選んだのはとてもリュックには入らなかったよ。」

 

「なんでだ?入らないと言ってる割にはそうは見えないぜ?」

 

「だろ?最初俺も戸惑ったさ。だってリュックに入んねーもん。もう腰のベルトに挿そうかと思ったね。まぁ本来ならそれが正しいんだが......まぁそれを見かねたこーりんがくれたのさ。このポーチを」

 

「(腰のベルトに挿そう?)そのちっちゃいポーチがなんなんだ?」

 

そう、一見何も変哲もないただの小さなポーチに見える。黒い色合いをベースに、青色の雷の刺繍をあしらったデザイン。

まぁ少し派手な見た目ではある。

が、皆はこんなケースを体験した事は無いだろうか。

 

特に気にする事の無い事柄、もしくはあまり目立たず、必要の無いと見られたゲームのアイテム。しかしそれが今後の人生、ゲームの進行に大きく関わってくるという事を。

この事から求められるものは、何事も第一印象に縛られてはならない... である。

 

今回も然り、いかに小さなものでも中身が大切なのである。

 

 

「これ、四次元ポケット.....即ち擬似スキマを内蔵してんだよ。だからなんでも入るし、出したいものを出したい時に出せる優れもの....らしい」

 

「...........は?」

 

しかしスケールがデカすぎるのも考え物だと思う。

......正直あまりに有能すぎて引いたのは内緒である。

 

 

〜少年少女移動中〜

 

 

「な......なるほど.....あいつとんでもねーもん拾いやがったな」

 

「ああ......俺も最初驚き過ぎて声が出なかった。完全に○ラえもんじゃねーかって叫びたかったよ」

 

「○ラえもん?なんじゃそりゃ」

 

「いや、なんでもない。忘れてくれ」

 

「?.......まぁいいや。なんか飲みもん持って来るぜ」

 

「おっ、サンキュー!」

 

魔理沙は飲み物を取りに部屋から出て行った。現在、俺は魔理沙の家にお邪魔している所である。魔理沙の家は、魔法の森という東方の名所の一つに建っている家で、怪しげな茸や木々が所狭しと生えている森である。ちなみに香鈴堂も魔法の森の入り口付近にあったりする。

 

さて、このスキマポーチ(蒼刃命名)をどうするか。俺は正直言ってこれはかなりやばいんじゃ無いかと考えている。東方の世界観を壊しかねないし、そもそもこんな洒落にならないアイテムが落ちていたという話もかなり怪しい。

 

別にこーりんを疑っている訳じゃない。確かに二次創作などに出てくるのは少し裏ボス感というか、こう、何か隠してるって印象を受けたことはある。でもここのこーりんは優しい奴だ。もし何か思惑があったのならば、こんな役に立つ物を簡単に手渡す訳がない。

 

だったら何故そんな簡単にこれが落ちていた?場合によっては神器にもなりかねない代物が?

こうなるとまたあの考えが近くなってきた。俺の幻想入りもとい、別次元への転生。その原因が第三者の思惑によるものでは無いかという線だ。

正直転生は絶対第三者によるものだろう。そもそも自然現象で次元移動とかあったらたまったもんじゃない。まぁ、もう転生してしまったものは仕方ない。それによく二次創作(これ言うの何回目だよ)で見かけた転生神とやらもそろそろ出てきて欲しいものである。いい加減説明が欲しい。号泣会見でも開いて釈明しろってんだ。

 

「(そもそもなんで東方の世界なんだ?俺を転生させた奴の利益になる事なのか?.......やっぱり情報が少な過ぎる。これじゃあなんの解決も......)」

 

「なーに難しい顔してんだ?」

 

「ッ⁉︎」

 

長い長い思考に陥っていた俺は、頬に冷たい感覚がした瞬間的に横に飛び跳ねた。最初は何が起きたかわからず混乱してしまいそうだったが、そこには驚いた表情をした魔理沙の姿があった。その時やっと状況を呑めた。魔理沙は冷たい飲み物を頬に当てたのだ。

 

「え、いや幾ら呼んでも反応しないもんだから.......ごめんな?」

 

「いや......ちょっと考え事してただけだ。ごめんな、気付かなくて」

 

本当に思考に呑まれ過ぎだ。魔理沙を驚かせてしまった。

 

「まぁいいや...... ほれっ」

 

「うわっと.......ん?」

 

魔理沙がその手に持っていた飲み物を投げてきた。驚きはしたものの、落とさず落ち着いてキャッチ。だが、その飲み物が驚きの物だった。

 

「はぁ⁉︎なんでコーラがあるんだよ⁉︎幻想郷には無いはずだろ⁉︎」

 

投げ込まれたカンの表面はコーラと大きく書かれていた。

 

「へっへっへ、驚いたろ?これ紫が現代から持って来たものだぜ。あの能力でたまに現代から色々持ち帰ってくるんだよ。それがこのコーラだぜ。」

 

 

『境界を操る程度の能力』

 

それは幻想郷を創りし者、八雲紫の固有能力。その効力の範囲は凄まじいものであり、幻想郷最強クラスの能力とも言える。簡単に説明するなら、生命の生と死の境界を操る事が出来るし、現在地と目的地の境界を操る事ができるなどなど、もはややりたい放題である。

 

「ほぉ〜....... 」

 

「なぁなぁ、このコーラってよ、どうやって作るんだ?この....... よくわからん事が書いてあるのが謎すぎる。なんだ?新手の魔術か?魔術文字なのかこれは」

 

そんな素敵で愉快な魔法で作られてはいない。

いや、現代の物を幻想郷の考えで理解してしまうのは無理もないのかも知れない。そもそも幻想郷に現代の物は必要ないのだから、いざ実物を手にとっても頭にクエスチョンマークが浮かび上がるだけだ。しかしただの商品説明を魔術記号だなんて.......俺からしたらぶっ飛び過ぎだ。なにかジェネレーションギャップならぬ別次元ギャップを感じる。

 

〜少年説明中〜

 

「ラベルね〜.......つまりこれは魔術なんかじゃなくただの説明なのか。いや悪い悪い、思考が明後日の方向に飛んでたぜ」

 

「俺としては明後日じゃなくて異次元の方向まっしぐらだけどな」

 

もしそれが魔術として成立してしまった場合は失神する。ショックで立ち直れないだろうな。

まぁ、とりあえず幻想郷に対するカルチャーショックは置いといておこう。

 

「というかそろそろ本題に移ろうぜ。こんなんじゃ日が暮れる」

 

俺は手元のコーラの取っ手を引き倒し、カンを開ける。プシュっと軽快に炭酸が抜ける音が響き、炭酸が抜けない内にグイッと飲み干した。

久々の炭酸はやっぱり美味しい。現代が懐かしいぜ。

 

「んっ......そうだな、そろそろスペカについて話そうぜ」

 

魔理沙もコーラを飲み干し、スペカについて話を始めた。

 

そもそも俺の目的は紅魔館であり、魔理沙の家は考えに無かった。だが魔理沙も霊夢の言う通り夜の方がいいと言い出した為、急遽予定変更して魔理沙の家に来ている。

その際ついでにスペルカードについて聞いておこうと思い、魔理沙に頼んだのだ。引き換えに俺のキノコ料理を代償に。

 

「それじゃあ、まずスペカのブランクはあるか?」

 

「ああ、これを持っておきなさいって霊夢が。それ以来何も教えてくれなかったがな......一応3枚ある」

 

「ははは...霊夢らしいぜ......じゃあスペルカードルールについては?」

 

「それは教えてくれた。なんか博麗の仕事とかなんとかって嫌々と」

 

「あいつ本当にやる気無いな⁉︎.......まいいや、ルールがわかるなら問題無い。じゃあスペカ作るか...じゃあまず作りたいのをイメージ...「待て待て待て待て!」なんだよ?」

 

魔理沙が訝しむ様に此方を見てくる。いやいや魔理沙よ、そんななんだよみたいな顔すんなよ、此方としてもなんだよな気分だわ。

 

「そもそもイメージだのなんだの言われても訳がわからん」

 

「ええぇぇ〜....そんな事言われてもな〜......」

 

魔理沙は少し困った顔を見せてくる。しかしなにか思いついた様な顔に戻った。

 

 

「そうそう、思い出した思い出した!えっとな?この幻想郷で始めてスペルカードルールが出来た時な?霊夢にスペカの作り方について教えてもらったんだよ.......」

 

魔理沙は昔を思い出しながら俺に説明してくれた。

まぁ、結構話が長かったから省略するけども。その大半が霊夢との思い出話や自慢話だったから省略するわけじゃないという事は先に説明しておく。

 

ーー話を戻そう。

魔理沙が言うには、人のイメージは千差万別。スペルカードは創造主のオリジナルであり、類似する時はあれど同じものは作れない。

芸術や美術的な要素を含んだ弾幕ごっこはある種のスポーツであり、幻想郷の正式な決闘法である....という事らしい

 

「という事だぜ」

 

「長過ぎるわ‼︎どんだけ話しやがるんだこの馬鹿‼︎」

 

一時間も一つの話に掛けるか?いいや掛けない。断言出来る。だから俺が怒鳴るのもおかしくないよな?

ていうか、魔理沙の話した事は既に知ってる。伊達に東方を知ってる訳じゃないんだから。俺が言いたいのはイメージ出来ても理論がわからんって事だ。なんだよ、どうしてイメージするだけでカードが出来るんだよ。わけわかめだよ。

 

「ははは!悪い悪い。つい熱くなっちまったみたいだ。まぁそれに考える必要は無いぜ?なんとなく、なんとなくでいいんだよ」

 

「なんとなくねぇ......やってみるか」

 

俺はスペカのブランクを顔の目の前に構え、目を瞑る。

 

「そうだ、自分の得意なことを元にするのもありだぜ?私が魔法を元にスペカを使う様にな」

 

... なるほど、その手があった。てかそれを早く言え。俺が得意な事と言えばあれがある。

 

スーッと、俺のスペカが浮き上がってくる。その紙に刻まれた名は

 

「幻符『夢幻蹴夢』......これが俺のスペルカードか.....」

 

白かったブランクカードは絵柄と名が浮かび、紙自体の色が俺の弾幕と同じ濃い青色となっていた。

この世界のスペカは弾幕の色に既存するのだろうか。

 

「どれどれ......うーん、これは一回撃ってみないとわからないぜ。でもまぁ、いい出来だと思うぜ?初めてにしては」

 

「まっ、撃って見てからのお楽しみってこったな。ん?ちなみに魔理沙はスペカを何枚持ってるんだ?」

 

「私か?あんまり数えてないからわかんないけど......10枚は越してると思うぜ」

 

うーん、攻略サイト見た事あるからある程度はどんなスペカかはわかるっちゃあわかるんだが....10枚か、なら大体目星はつく。

 

「ていうかそろそろ紅魔館に行こうぜ。もうそろそろ頃合いだろ?」

 

辺りはもう太陽の光は消えつつあり、夕暮れの景色が広がっていた。




はい、家のトイレの中からこんにちわ。小鳥戦士です。

さて、今回の投稿は前回の投稿の約一ヶ月後......つまりひじょーに長い間がありました。いや本当にすみません....
ま、まぁ、今回も部活うんぬんではあるのですが......

さて、今回は約4600文字くらい......個人的には短い感がありますが読者様方(数少ない)はどう感じるのですかね....

そろそろ書く内容が薄くなって来てしまいましたので、これで終わりにしようかなと。
では皆、さようなら。

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