東方渡世抄 〜現実と幻想の境界〜 【更新停止】 作:小鳥戦士
第5話 香鈴堂と蒼刃の荷物
俺が幻想郷で目が覚めてから早二週間が経過していた。
実際俺が活動したのは気絶が多い為一週間弱だが......まあそんな事はどうでもいいか。
その一週間の間は特に何かあった訳では無く、ただただ霊夢の身の回りのお世話(という名の雑用)をしていた。
そして霊夢の雑用(なんか吹っ切れた)をしていてわかった事が。
こ い つ な ん に も し ね ぇ 。
いやね?本当になんもしないんだよ?ずっと縁側に座ってボーッとして。飯の時は喜んでやってくるのだが。
ちなみに食材は魔理沙に持って来てもらっている。魔理沙の住む魔法の森は様々な種類の茸が存在する。
その茸達は俺の知らない茸が沢山生えているとの事で、特にやる事も無かったので暇を持て余していた俺はたいへん興味をそそられた。
そして一度魔理沙に茸盛り合わせを持って来てもらった時がある。その中にはなんと俺の良く知る茸。そう、椎茸とシメジがあったのだ。そして俺の料理人人生が始まる‼︎
〜閑話休題〜
「あんたのご飯はほんと美味しいのよね......どうしてそんな茸で美味しくなるのよ?子供の癖に」
霊夢はそう言ってくれるが、俺は俺以上の料理スキルを持った奴を知っている。実際そいつに教えてもらった様なものだし、あまり自慢はできないのだが.......
「ふっふっふ、俺をなめてもらっちゃあ困る。これでも料理なら負けない自信があるからな。ある程度なら大体作れるぜ?そして子供言うな」
ちょっとくらい背伸びしたっていいだろう。数少ない俺の特技、たとえ教わったものでも、習得できたのは俺の実力あってのものなのだから。
「ふーん......なら今度のご飯はリクエストしていいかしら?」
「おうよ、なに食べたい?」
「おうどん食べたい。作れる?」
......懐かしい。昔地区の野外サークルで作ったなぁ......
「もちろんさぁ☆時間と材料さえあれば出来る。」
「......あんた咲夜みたいね......」
料理が出来れば話は弾む。昔じいちゃんから教わった事が役にたった気がした。
......さて、こんなたわいも無い話もいいがそろそろ行動に移るか。今言って欲しいワードが出たしちょうど良い。
「咲夜?だれだそいつは?」
「ええ、十六夜咲夜。紅魔館のメイドをやってる人間よ。」
「紅魔館?そんな所があるのか...... 聞いた感じ西洋の建物かな?」
紅魔館。それは東方の世界に登場する、知らない人はいないと言える“原作”の名所であり、そこは二人の吸血鬼と魔女、悪魔にメイドといった西洋の塊みたいな存在が住まう館。
俺としても、紅魔館にはぜひ行ってみたい。二次創作や動画などでもよく見かけたものだ。そうだ、せっかく東方の世界にきているんだから、東方の世界の名所全て回るのを今後の目的にするかな。
「あー......そういえばそんな事言ってたわね、あいつ。」
「......なぁ、その紅魔館とやらに連れてってくんね?」
「やだ、めんどくさい、用無い。」
「怠惰の心丸出しだな......」
白々しくも霊夢に紅魔館について質問した。一応俺が東方の世界を知っているのはバラしたく無いので仕方がない。まあ霊夢にはめんどくさいで一蹴されたが。
困ったなぁ...... ちと紅魔館には用事があったのに、これじゃあ紅魔館に行けないじゃん。
「それに紅魔館は吸血鬼の住処よ?行くなら夜にしなさい。」
「えぇ〜......」
まずいな〜......強く言うと怪しまれるからなぁ......紫もいないし。するとドタバタいいながら誰かがやって来た。
「だったら私が色々連れてってやるぜ!」バタン!
いきなり戸が開いたと思ったら魔理沙がやってきた。はて、色々ねぇ.......ありがたいもんだ。
「サンキュー魔理沙。また茸料理作ってやるよ。」
「よっしゃ!楽しみにしとくぜ!」
うんうん、年下の女の子が嬉しそうにしてるのは眼福眼福。(体は小さいですが蒼刃は年上です。)
「さてさて、んじゃあちょっくら行ってくるわ。しばらく博麗神社には帰らんと思うから頑張れよ。」
「はぁぁ⁉︎ちょ、ちょっと⁉︎その間ご飯は⁉︎」
全く......俺がいない間なにしてたんだよ。飯くらい自分で出来るだろ。
「今まで通り自分でやってろ。行こうぜ魔理沙。」
「お、おう。」
「こらぁぁぁ‼︎待ちなさ〜〜い‼︎‼︎」
「断る。」
「お前.......あとで怒られても知らないからな?」
俺と魔理沙は脇だし貧乏巫女から逃げる様に魔理沙の箒で飛び去った。後ろからはあんたら後でしばく的脅迫があったが気にしない。
そして魔理沙、なんだその顔は。にやけてるぞ。お前実は乗り気だろおい。
****************
〜幻想郷上空にて〜
「なぁー魔理沙ー?どこいくんだ?」
「ん〜......まずは香霖堂に行く。知り合いがやってる店でな?そこには現代から幻想郷に流れ着いた物が山程あるんだ。もしかしたらお前が知っている物があるかも知れないな。」
「ほぉ〜......あるかな〜...... 俺の荷物。」
「なんだ?落としたのか?」
「ん〜、多分幻想郷に来た時落としたかな〜って。」
「ふーん......」
実際、博麗神社で目が覚めた時には俺が持っていたバックは無くなっていた。終業式の時、すぐに帰るために持ってきていたものだ。ケータイも入ってたし。
ちなみに服装に関しては制服から普通の服に変わっていた。なんと言うご都合主義。服のサイズもピッタリだ。
......しかしここまで手がこんでんだ、何かしらの干渉があったとみて間違いないな......一体だれが......
「後ちょっとで着くぜ〜」
「おう......わかったんだけどさ。」
「ん?」
そして少し気になる事がある。
「なんで俺魔理沙に抱きかかえられる様に箒乗せられてんの⁉︎」
「いやだってお前落ちたらあぶねえだろ?空飛べないんだし。それに年相応だろ?」
「なるほど確かにそうだっじゃなぁぁぁい‼︎最後のは認めん‼︎俺は年上だッ‼︎」
「わかったわかった。そう言うことにしといてやるから」
「絶対わかってねぇだろぉ.......」
なんで俺は幼児化したんだよ......誰得だろうが馬鹿野郎......
「おい、見えたぜ?これが香霖堂だ!」
魔理沙はどうやってるのか、箒をふわっと浮かせながら着地した。そして目の前には少しこじんまりとした建物があった。
「これが......香霖堂......」
博麗神社に続く、東方の世界の名所。香鈴堂をみた瞬間、俺は感動した。やっぱり東方の世界に来たらここには行かねばと雑用しながら考えていたものだ。
しかし......
「この某ファーストフードのチェーン店のキャラクターの人形はなんなんだろうか......」
よく昔マッ○で見かけた○ナルドじゃねーか。こんなのも流れ着いたのか......?つーか店の玄関に置くか?
「こーりん!邪魔するぜ〜!」
カランコロンと軽快な音を鳴らしながら魔理沙は入り口のドアを開けた。中は意外にも整っていてとてもリサイクルショップとは思えない。香鈴堂って店の中は整ってるんだな。二次創作ではゴチャゴチャしてたのに。
店の奥には灰色の髪をして眼鏡を掛けた優男感がある男がいた。彼は魔理沙を見ると気だるそうな表情をした。
「はぁ......魔理沙、邪魔するなら帰っておくれ......ん?そちらの方は?」
彼は俺に気づくと魔理沙に尋ねた。
「あぁ、こいつは最近幻想郷に入って来たやつでな?とりあえず連れてきた。」
「へぇ......珍しいね。最近は幻想入りする人なんていないのに......おっと、自己紹介が遅れたね。僕は森近霖之助。この香霖堂では道具屋の店長をしているものだ。よろしくね。」
知っている、知っているとも。
彼は気前良く自己紹介をしてくれた。もちろんこちらも自己紹介をせねばなるまい。
「はい、望月蒼刃です。紹介に預かりました様に、最近幻想郷に流れ着いた不束者ですがよろしくお願いします。」
「‼︎⁇」
「ふふ、よろしくね。でも敬語じゃなくてもいいよ?堅苦しいのは好きじゃないし。」
「あー......うん、わかった。」
「え、え?え?蒼刃なんかへんなもの食ったか?」
へんなとは失礼な。
「目上の人に対してこれは常識なの。習ったろ?」
「え?あ、あぁ。」
......こいつ、やっぱり忘れてやがんな?
「ふふふ......魔理沙は昔から敬語は苦手でね?よく噛んでは泣いていたんだよ......懐かしいなぁ。」
「な、な、な、なひぉ‼︎」
「魔理沙動揺し過ぎ。噛んでる噛んでる。」
この幻想郷でも魔理沙は昔女の子らしかった時代があったらしい。しかしなんでのぜのぜ口調になったのかなぁ?
ていうかさっきの仕返しタイムのチャンスじゃね?
「それで?蒼刃くんは何をしに来たのかな?探しものかい?」
.......忘れてた。俺荷物探しに来たんだった。
「あぁ、実は俺の荷物がなくなってな?黒のリュックサックなんだが.......」
「あー、確かそんなバック拾ったような.......ちょっと待ってね。」
俺の探し物は見つかりそうらしい。幻想郷はスマホ使えるのかな?ゲームは無理そうだけど。パズドラとか。
「そういやまだ中は見てなかったなぁ......蒼刃くん、これかい?」
「おお!本当にあった!いやーよかった〜......」
霖之助さんが店の奥から持ってきたバックは、全体が黒い少し小さめのバックだった。それは紛れもなく俺のバックであり、俺と一緒に幻想郷入りしていた事になる。
「で?そのバックは何が入ってるんだぜ?」
いつのまにか興奮が収まっていた魔理沙が尋ねてきた。そうだ、中身確認しなければ.....
「うーんと......水筒、タオル、充電器、財布に筆箱、それから...... あった携帯!」
よかったぁぁぁ〜.......しかも充電100%に充電器残量100%付きだ!これで勝つる‼︎
「ケイタイ?なんだそれは?」
「僕も気になるね。どうやって使うんだい?」
「あぁ〜そっか、幻想郷には携帯なんて無いんだったな。簡単に言うとこれは携帯電話といって遠くにいる奴と連絡出来る機械だ。まぁ相手も持ってないと意味無いけどな。」
「へぇ......通信符の様な物かな。現代は進んでいるんだね?」
「あぁ、俺がいた世界はこの携帯......通称スマホが周りにかなり普及しててな。流行の物だな。」
「へぇ〜.......そうだ蒼刃くん。僕は能力を持っていてね。『物の名前と用途がわかる程度の能力』って言ってね?例えばこの掃除機。名前と用途はわかるんだけど使い方がわからなくてね?まぁ能力の欠点なんだが.......教えてくれないかな?」
ほへぇ〜......やっぱりそんな欠点があったか〜。よく二次創作で見かけたものだ。確かにそうなるわな、だって名前や用途がわかってもどんな使い道があるかは知らないのだし。
「あぁ、もちろんだ。そもそも掃除機ってのはーーー」
〜少年説明中〜
「なるほど.......これを動かすのには電気と言う物が必要なんだね......しかし電気......ちょっとこれは使えないかな......」
「確かに幻想郷には電気がないからなぁ......もし霊力とか妖力とかで動かせればいいんだけどなぁ......(チラチラ)」
「.......ふむ、それはいい考えだね?僕の知り合いに河童がいるんだ。その河童なら作れるかもしれない。」
「河童もいるんだ......(棒読み)河童がエンジニア......(更に棒読み)」
「そうだよ?最近では『コーガクメイサイ』って物を作ったらしいね?」
「へー(棒読み)コーガクメイサ光学迷彩⁉︎」
光学迷彩ってえぇぇ⁉︎あの姿消すやつだよね⁉︎あんなん作れるの⁉︎
「ふふふ......流石にあっちにはそれは無かったみたいだね?」
「いや......確かあった思うが......そんな簡単な、いや設備も整ってない所じゃ作れないから驚いてんだよ......」
いくら二次創作のキャラだからってぶっ飛び過ぎだろ。
「じゃあまた今度時間が空いたらその河童に会いに行く?霊力とかで動く装置も作ってもらいに行く時。」
「行きますッ‼︎いや行かせてくださいッ‼︎」
ダメだ!こんなチャンスは2度と無いぞ‼︎必ず行かなければっ‼︎
「ふふふ......あっ、そうだ。機械の事を教えてくれたお礼をしなきゃね?ここにある物ならなんでも一つ、プレゼントするよ。」
「え?いいのか?特にそんなもらえる様な事はしてないぜ?」
「これは幻想郷に新しく来たきみの歓迎の意味も含んでいるんだよ。まあ、遠慮せずに選んでくれ。」
「そっか........ありがとう、なら選ばせてもらう。」
森近霖之助.......いいやつなんだな。
そんな感謝と発見を感じながら、俺はある物に目を付けた。
「じゃあ.......これを頂くよ。」
俺は一つ、店に入った時から目を引いていたものを選んだ。
はい、部活のバス移動の中からこんにちは。小鳥戦士です。
そして皆さん、あけましておめでとうございます!
2016年もよろしくお願いします。
いやー、2015年は早かったですね。しかもなんだかんだであと3ヶ月ほどで僕も小説書いて一年ですよ。その割りには前作潰すわ話数少ないわ......あまり時間は無いですがちょこちょこ更新していきますので今年もよろしくです。
さて、今回から“幻想”の章も第二章です。そうです。僕の前作の終わった章でもあります。まぁ今回は終わらす気は無いですが。
そして章の副名である“蒼刃ムービング”。意味は幻想郷での初めての移動という意味を含んでいます。
さて......とくに報告は無いのでこの辺りで締めさせていただきます。では皆さん、さようなら。