東方渡世抄 〜現実と幻想の境界〜 【更新停止】 作:小鳥戦士
前作についてはまた書いて見るかなぁ......
弾幕ごっこには、幻想郷の決闘法の為幾つかルールがある。
と言っても、弾幕を使う以外に確立したルールは無く、相手とどのような決着を着けるかなどの細かい設定を付けるだけである。そこに細かいタブーはない。
つまり、弾幕ごっことは人間と妖怪、神が対等に勝負する為の基礎でしかない。
その為弾幕ごっこは楽しむ遊びとしての顔もあるのだ。
そして、弾幕ごっこをする為に必要な弾幕。その弾の構造は自分の持っている力が関わってくる。霊力なら博麗霊夢、魔力は霧雨魔理沙、神力ならば東風谷早苗、妖力ならば八雲紫など、当てはまる力は1人一つ。その力が無くなるまで弾幕を放つ事が出来る。
そして俺はその4つの力の内、『魔』の力の所有者である霧雨魔理沙と合間見えている。まぁ魔力がなんだ。そこまで弾幕が変わる訳では無いのだから。多分。
ちなみに今回は3回当てたら勝ちになる。
ヒュンッ!
いつ始まったのかわからないが一瞬魔理沙の手が光る。
「いやそんな不意打ちはやめろっ⁈」
瞬間、俺の目の前に星型の弾幕が迫ってきた。
俺は身体を捻じって避ける。
考え事をしていたためスタートの合図がわからなかった。もしかしてスタートの合図とかないのかな?
「うぉ⁈......あっぶね。よそ見厳禁ってか。」
でもそこまで早くはなかった。一応俺は魔理沙の弾幕を避ける事は出来た。でもこれくらい普通に躱さなくては幻想郷では生きていけない。本来ならもっと無数の数の弾幕が襲い掛かってくるのだから。今の弾幕は腕試しみたいなもんか。
ただ......
「なっ⁉︎」
結構びっくりしてる様だった。......そんなに自信あったのかね今の弾幕。
「んじゃこっちもやるかな。」
俺は弾幕を出した事はない。そもそもそんな芸当ができるならあっちで学生なんてやってない。今頃世界の有名人だ。その為弾幕ごっこで必要不可欠な弾幕を俺は苦手としている。ちなみにさっき少しだけ練習してもあまり上手く出来なかった。
だったら必殺、ラーニングだ。
「イメージイメージ......力を収束して撃つイメージ......」
見えないなにかを圧縮させる感じをイメージし、念じる。すると俺の周りに3つ程丸い弾幕が形成された。弾幕は蒼色、限りなく紺色に近い。
「よし、成功っとぉ!」
蒼い弾幕は魔理沙に向かって一直線に放たれる。が、弾速は遅い。先程の魔理沙の弾幕はしっかり弾が見えなかったのに対して俺の弾幕は野球ボールを投げた程度の速度だ。やはり苦手は苦手、慣れや相性がある様だ。やはり遅い弾幕の為か、魔理沙は楽々弾幕を躱している。
「おいおい、さっきはビックリしたけどお前の弾幕遅く無いか?」
魔理沙が挑発みたいな事をしてくるが気にしない。だって本当に遅いもん。
「わかってるよ。仕方ないだろ?弾幕なんて使った事無いんだから。今はお前の真似しないと撃てないの。つーかそっちもあんな弾幕じゃ当たらないぜ?」
「へっ!初心者には負けられないって......うん?」
内心で魔理沙は驚愕した。まさか、自分の弾幕を一度見ただけで弾幕の使い方を理解し、それを実践し成功させたと言うのか?この少年は?
「ん?どうかしたか?まさかもう降参かぁ?つまんないなぁ.....」
「なっ!そんな事ないぜ!」
魔理沙はかなり焦った。このままグダグダ続けばこいつは確実に戦いの中で成長し化ける。しかしそれを相手に悟られる訳にはいかなかった。
「ならその証拠を見せてくれよ?つまらなすぎて寝てしまいそうだぜ。」
実際、蒼刃は魔理沙の弾幕を余裕で躱している。基本正面安置でいるが弾幕が来るとその弾の軌道がわかってるかの様に身体を捻じったりして全て躱しているのだ。それも、弾幕ごっこのエキスパートと呼ばれる幻想郷の実力者、魔理沙の弾幕をだ。
「〜〜!いいぜ、なら見せてやるよ‼︎」
魔理沙は懐から小さな箱を取り出して構える。この戦いを早く終わらせる為には自身の十八番が1番手っ取り早かった。
しかし、その作戦は蒼刃に筒抜けだった。
......よしよし、掛かった掛かった。
やっぱ魔理沙ってキャラクターは挑発がかなり有効なんだよなぁ.....
そしてこれはスペカ宣言だろうな。そしてそのスペカはやっぱり......
「これでも食らっとけ‼︎恋符『マスタースパーク』‼︎」
魔理沙の代表的な技であり、東方の中でも有名なスペカ、恋符『マスタースパーク』。その気になれば山一つ消し飛ばせると言う極太レーザーが、八卦路を介して蒼刃を襲う。
〜霊夢side〜
試合開始前、霊夢は立ち上がりから魔理沙が蒼刃を圧倒し、一方的になると思っていた。
実際魔理沙は幻想郷では実力者であり、幻想郷の異変を解決する異変解決者である。蒼刃の実力がどの位なのかは不明だが、それを差し引いても魔理沙には及ばない。そう思っていた。
しかし、いざ弾幕ごっこが始まった時、霊夢は考えが甘かったのでは無いかと感じた。
蒼刃は魔理沙の弾幕を躱したのだ。しかし蒼刃は弾幕ごっこがどんなものなのかを詳しく知らない筈。弾幕の速さも目で追えない程のものだったと言うのに。もちろん魔理沙も当たると思っていたのかかなり驚いていた。
しかしまだ驚きは終わらない。彼はこう言ったのだ。
ーんじゃぁこっちもやるかな。ー
そして彼は蒼色の弾幕を3つ作り出し、魔理沙に向かって放つ。やはり弾幕はなれていない様で、弾幕自体は物を投げた程度の速度しかでておらず、魔理沙は楽々躱す。別段、今のやり取りは普通の流れであり、おかしな点は無い。
だが、今彼は何故平然と弾幕を放てた?
ついさっきまで弾幕自体知らなかった外来人なのに魔理沙の弾幕を躱し、その上一度弾幕を見ただけで弾幕を扱える蒼刃の戦闘センスは計り知れなかった。
その時、魔理沙と蒼刃の挑発の掛け合いが終わった。結果は蒼刃の勝利、まぁどうでもいいけど。
しかし問題は、挑発を受けた魔理沙の行動だった。なんとスペルカードと八卦路を構えたのだ。
「あっ......!あいつ......!」
初心者になんて物を放とうとしてるのよあいつは!
初心者に放つならまだ他にもスペカはある。しかしそれでも魔理沙が高威力のスペカを放つと言う事は......
(あいつ......見事に挑発を受けたわね......)
そして、必殺の光線が放たれる。もちろん蒼刃には為す術もなくその光に飲み込まれた。しかし余りにもスムーズに事が進んだ為に霊夢はある事に気づけなかった。
「ああ......やられちゃった。なんで挑発なんかしたの......ってしまった‼︎蒼刃‼︎」
そう、蒼刃の救出だ。ちらりと霊夢は紫を見るが、紫はかなり落ち着いており扇子で口元を隠す仕草をしている。
「紫ッ⁈なに落ち着いてるのよ⁈早く助けに.....」
「落ち着きない霊夢。魔理沙を見てみなさい。」
「え?」
この状況で魔理沙を心配しなければいけないことは、霊夢は理解出来なかった。しかしそこに答えがある、それがわかった今、そちらを見るしか無い。
そこには何かに驚愕し、歯軋りしている魔理沙がいた。
「ん?何イラついてるの?......え?」
さらに魔理沙は放ち続けているのだ。オーバーキルにも程があるマスタースパークを。
霊夢は驚愕した。魔理沙がマスタースパークを放ち続けているという事は、まだ蒼刃はやられていないと言う事だ。
あの距離、あの位置では回避できる場所は無い筈。
だが、一つだけ退路があった。
「なっ......なるほどね。」
「ね?まだ終わって無いでしょう?」
蒼刃は、マスタースパークの下を潜って避けていたのだ。
そのままマスタースパークを滑る様に魔理沙に迫る。