東方渡世抄 〜現実と幻想の境界〜 【更新停止】   作:小鳥戦士

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気付いたら早3ヶ月・・・
失踪はしないんで大丈夫です。


第三章 異変
第14話 プチ異変会議とスキマ落とし


ーーー俺は今、博麗神社に戻り、霊夢に黒い霧について報告しに来ていた。

 

あの後、黒い霧に取り憑かれていたフランを無事回収し、俺は博麗神社に戻る為に紅魔館を後にした。正直もう少し滞在したかったが、報告が優先なのでみんなに挨拶だけ済ましてきた。紅魔館のみんなはもちろん犠牲者はおらず、まだ会う事の出来なかった美鈴に湖に落ちて気絶していた俺とフランの窮地を救われていたらしい。

そして、騒動の原因であり被害者でもあるフランだが、容態は吸血鬼の不死身生で傷は回復しているらしく、目も疲労が抜け次第醒めるとの事。そこら辺はパチュリーがしっかり看病しているため、すぐにでも元気になるだろう。

 

「・・・で、とっっっても面倒くさい問題抱えてノコノコ帰って来たと。あんた一回夢想封印食らってみる?」

 

「ぐ・・・面目ない・・・まさかそんな事態になるなんて思ってませんでした・・・」

 

「あっっそう・・・.はぁ、まぁいいわ。この程度日常茶飯事だもの。そんで?もちろん収穫はあったのよね?」

 

「おうさ。元々持ってたバックは取り戻せたし、便利なポーチも手に入れた。スペルカードだって3枚作れたし、能力の実践を兼ねた戦闘経験も積めたしな」

 

色々あったが、これだけ収穫があれば中々いいほうだろう。正直異変については予想外だが、俺の戦闘の幅が広がったのはデカい。幾ら何でも子供体型には弾幕だけじゃキツすぎる。

 

「いや、そうじゃなくて。あんたの収穫じゃなくてその例の霧についてよ」

 

「あぁそっちか。いやまぁ、霧というか闇というか・・・対象の相手の肉体を乗っ取るって感じかな。見た感じ相手の意識ごと乗っ取って行動する奴みたいだな。しかも厄介な事に、乗っ取った相手の能力すら操ってみせたよ、奴さんは」

 

実際、ルーミアやフランは意識を上書きされたように操られていた様に見えた。全く理論はわからないが、乗っ取る対象の能力をも扱い、その上危機に陥れば脱出もして見せた。もちろん、東方にはいなかったキャラクターの筈なのだが。

 

「・・・なにそれ、そんな奴聞いた事ないわ」

 

「え、マジで?この幻想郷の管理者の一人なんだから知ってると思ったんだけど。てか霊夢さえ知らないならお手上げ状態じゃねーか」

 

「一応管理者は紫だし、妖怪はあまり興味ないんだから仕方ないじゃない」

 

「・・・人はそれを、職務怠慢と言う」

 

「うっさいわね、ぶちのめすわよ」

 

「何この巫女⁉︎横暴だぁ‼︎」

 

霊夢はだら〜と居間で寝転び、俺にお札を投げつけてきた。常日頃から思っている事なのだが、この脇巫女は性格が酷すぎると思うんだ。

精神年齢は高校生とはいえ、子供に対してぶちのめすなんて言う女性が存在するのだろうか。元いた世界にもクソみたいな性格の女はゴロゴロいたものだから霊夢はまだ可愛く見えるものの、こんな性格じゃ浮ついた話も期待できまい。本当、何処かに大和撫子のような落ち着きのある女性はいないものだろうか。

 

「大丈夫よ、あの子人里じゃあそれなりの人気があるのよ?幻想郷を守る美少女巫女ってね」

 

「いや、確かに美少女なんだろうけどさ。この性格を見たら脇目もそらさず逃げていくんじゃない?」

 

「おい、なに自然に会話が成立してんのよ。てかいつの間に来たのよ紫」

 

気付いたら隣にスキマに乗り出すように前かがみにもたれる紫がいた。

あれだ、窓開けて腕組みながら外見てるみたいな

 

「あら、酷いわね。せっかく可愛い霊夢が困っているのだもの。助けに来ない訳がないでしょう?」

 

「・・・はぁ。あのねぇ、そんな母親のような事を妖怪が口走ってんじゃないわよ」

 

「まぁ、育ての親に酷い仕打ち。なんでこんな悪い子に育ってしまったの?よよよ・・・」

 

「・・・キモっ」

 

紫が口元に手を当て力無く萎れたが、霊夢の一言が心を切り裂いたらしく、少女マンガよろしくな悲劇的な面相になっていた。南無。

 

 

「ったく、いいからさっさとそいつについて教えろっつーの。早くしないと私の興味が薄れて対処しなくなるわよー」

 

「いや、ここからは私が説明を受け持とう」

 

いきなり俺の背後から声がしたので振り返ると、そこには金髪で胸部装甲が豊かな長身の女性が静かに佇んでいた。急に現れたという事は十中八九スキマからだろう。

 

「君とは初めてだな。そこで固まっている紫様の式神を務めている八雲藍という者だ。よろしくたのむ」

 

「あぁ前言ってた紫のお仲間さんか。聞いてると思うけど望月蒼刃だ。よろしく」

 

「あぁ」

 

軽く挨拶を済ますと、八雲藍はまず俺向けに博麗大結界について説明をくれた。とはいえ大方の事は知り得ているのでもっと細かな事を教えてくれた。

曰く、この幻想郷を囲む結界は基本的には来る者拒まずで、入ったら普通は幻想郷から出る事は出来ないという ーーそもそも入ってくるような奴らは外では存在する事すら出来ないがーー ほぼ一方通行なものである。

そして、万が一にも幻想郷が危険に晒される事のないよう紫が結界を通った者がいるかどうかわかるよう術式を組んであるという。

 

「・・・?」

 

説明してくれるのは有難い。いくら俺が東方を知っているとはいえ、流石に全部は覚えていない。記憶や認識が間違っていないかの確認になる、重要な説明だ。

・・・しかし、何故彼女の俺を見る眼が鋭い雰囲気を漂わせているのだろうか

 

「・・・だが、何故か我々幻想郷の管理者達が知らない者がいる。それには勿論君も含まれているんだ。紫様の術式に接触せず、この博麗神社に現れた君がね」

 

「ん?・・・まてまて、なんで俺を怪しんでるんだよ。明らかに疑っている眼をしてるぞ」

 

「あぁ。正直言うと君が一番怪しいからな。君が現れた同時期にその闇とやらが出現し住民を乗っ取り危害を加え、その闇自体は望月蒼刃....君自身が撃退している」

 

藍はこちらを睨み、疑いの目を隠すことなく向けてきた。

 

「まさか、俺が幻想郷を混乱させた上でなんらかの方法で思い通りに事を済ませ、囮の闇は証拠隠滅・・・と?そんなアホ事俺がするわけ・・・」

 

「あぁ、概ねその通りだ。早めに罪を認めてもらえると有難い。あまり余裕が無いものでな」

 

ピシィ・・・ッ

 

さっきまでの空気が一変し、張り詰めた空気になり始めた。このままでは一触即発、すぐにでもお互い手が出るだろう。彼女ーー八雲藍は自身の感情を抑えれずにいた。望月蒼刃の突然の来訪により結界が不安定となり、今の今までずっと掛かりっきりになっていたためにストレスが溜まっていたため、ここまでに至るまでに拍車がかかってしまった。

 

対して、蒼刃の態度は冷めきっていた。

 

「はぁ・・・あのなぁ、俺にそんな能力は無いし、そもそも幻想郷に来たばかりなんだ。今は幻想郷の住民と親睦を深める事を目的に動いてる。せっかくの異世界なんだ、住民とは仲良くしておきたいしな。そんな右も左もわからん奴が幻想郷を陥れようだなんて無理だろ」

 

「・・・・・・」

 

「そして極め付けに・・・この身体だ」

 

蒼刃は自分の小さな身体を自嘲するように指差す。

彼には八雲藍とは違い、怒気が溢れてはいなかった。それもそのはず、自らに何も非がある訳もなく、ただの八つ当たりに近い態度の相手に対し自らも落ちぶれる必要が無いためである。また、蒼刃は交渉事、つまりは対人に対して高いアドバンテージを有していた。では何故高いアドバンテージを誇るのか、それは彼の奇妙な体験によるものなのだが・・・とにかく、彼は八雲藍よりこの場では自身が優位な立場にあると踏んで冷静に対処する事が出来たのだ。

 

「これで信じてくんないか?正直俺に非があるとは思えないんだけど」

 

俺が尋ねると、藍は口に右手を添え考え込んでしまった。そのままシン...と静まってしまったが、沈黙に耐えれなかったのか、霊夢が全員に聞こえるように喋りかけた。

 

「ねぇ、私の神社で物騒な事やめてくんない?若干壁にヒビ入ったんだけど」

 

「そうよ藍。彼は怪しい塊だけど悪い事をするような人間じゃないのよ?それに焦っていては異変解決には繋がらないわ。一度落ち着きなさい」

 

「・・・はい、申し訳ありません」

 

霊夢だけでなく、主である紫にも指摘され、渋々といった具合に謝罪した。しかしそれでも藍は俺が怪しい事に懸念が抜けないようだった。・・・これ初対面としては最悪じゃね?仲良くなれるのかなこれ。

 

 

 

 

それからは異変の詳しい詳細だとか、互いの近況報告や俺の為に幻想郷の今現在の状況説明してくれたりだとか、特に進展があったわけでもないため割愛

 

「さて、とりあえず今後の対応として幻想郷の有力者にこの事を伝えて解決まで警戒してもらいつつ、周辺の警備またはこの異変解決に協力を求める。以上ね」

 

ぱん、と手のひらを合わせ、紫はそう話し合いを締めた。今回の異変、相手が強力な能力を有している事を考慮して実力のある住民に助けて貰う事に全員が賛同した。

 

「そうね・・・じゃあ霊夢は魔理沙や紅魔館付近に、藍は橙と色々回って頂戴。勿論スキマの使用は許可するわ」

 

「はいはい了解」

「承知」

 

そして、残った俺と紫は冥界へ行く事になった。やはり紫と冥界の主である幽々子は友人であるらしく、俺が幻想郷の住民と親睦を深める意味でも最適だった。

・・・こう言ってはなんだが、幻想郷巡りは順調だ。このペースなら全てのキャラクターと関わりが持てるようになるだろう。しかし、仲良くなるという点では紅魔館勢が怪しい所である。夕食を食べて親睦を深めようとしたら闇に操られたフランに襲撃され、そのフランをみんなが見てない所でボコボコにしてしまっている。結果、フランとは本当の意味で会えなかったし、美鈴は見かけてさえいない。

うん、これは特に仲良く無いのに人様の妹、それも悪魔の家族を見てないところでボコったの図だ。絶対ヤバイだろこれ

 

「さて、私はもう行ってくるわ。まずは魔理沙辺りにでもあたってみるかしらね」

 

「ちなみに、この前の事忘れてないから」。そう霊夢は俺のメンタルに追い打ちをかけて飛び立って行く。それに習うかのように藍もスキマを使ってこの場から消えて行った。現在、みんな居なくなって少し寂しくなった博麗神社には俺と紫しか残っていない。

 

「・・・よし、俺らも行こうぜ。善は急げとも言うし、早めに行った方がいいだろ」

 

「そうね、じゃあ行きましょうか。これならすぐに着くわよ」

 

「・・・ッ⁉︎緊急回避ィ!」

 

頭の中で警報が鳴り響き、弾かれる様に後ろに飛び退くとさっきまで座っていた座布団からスキマが開かれた

 

「あっぶなぁぁぁぁぁってフェイントかよぉぉぉぉ⁉︎」

 

しかし飛び退いた後ろには既にスキマが開かれており、下から来ると思わせての後ろからとまんまと嵌められたらしい。

俺は後悔とこんな事を仕出かしやがったBBAに対する怒気を込めた叫びを放つが、既にスキマに身体が放り出されていたために無意味となってしまった。

 

「うふふ、白玉楼にご案内〜♪」

 

最後に聞こえたのは、この犯人のふざけた声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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