東方渡世抄 〜現実と幻想の境界〜 【更新停止】   作:小鳥戦士

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一ヶ月半振りくらいでしょうか?
とりあえず最新話、どうぞ!


第9話 かりちゅまとカリスマ

「もう帰りたいんだが」

 

「はぁ⁉︎」

 

ルーミアをチルノ達バカルテッド(チルノと大ちゃんという妖精しかいなかった)の元に無事送り届ける事は出来た。しかしそこはお馬鹿、チルノはルーミアが襲われたと勘違いし、襲い掛かって来た。が、あまりに単調的な突進だった為に弾幕を正面にドーン。チルノは気絶し代わりに大ちゃんが謝って来た。正直俺がチルノと同じ立場なら問答無用で襲い掛かりそうな事は否定出来ないと説明し、チルノ達を許した。

 

..........何が言いたいかと言うと、疲れたのだ。

紅魔館に向かう為、貧乏巫女から逃げ去り、休憩の筈の魔理沙宅では自慢話を延々と聞かされ、やっとこさ出発したら妖怪に襲われた戦闘開始。そしてルーミアの送り届け。

いくら精神年齢16歳といえども肉体年齢約一桁にはキツイ。こんなの近所の小学生も失神ものだ。マラソンよりキツイんじゃないか?

 

「いやいやいやいやいや!!!ここまで来たんだぜ⁉︎それを帰るぅ⁉︎バカかお前は‼︎」

 

「だってさー、あんなに動いたんだよ?幼児にはキツイぜー.......つか今9時くらいだろー?良い子は寝る時間だし、ていうか若干俺眠いし」

 

「マジでなんなんだよお前‼︎お前はアレか、遠い所に行くと必ず寝ちまうっていうアレか‼︎」

 

「おーないすつっこみ」

 

「喧しいわ‼︎」

 

 

なんというか、馬鹿馬鹿しいというか微笑ましいというか。少し見栄を張ってる魔法使いの少女と心16、体一桁の幼児がいいあっていると言う奇妙な光景が、そこにはあった。

 

無論、それを見ちゃった奴もいた。

 

「ええっとぉ........」

 

「ん?」

 

何やらいきなり声が聞こえてきた。魔理沙といいあってる時に来たのだろう。俺は振りかえってみた。

 

「あの、貴方様が蒼刃様でしょうか。私、紅魔館のメイドをさせていただいております、十六夜 咲夜と申します」

 

少々顔が引きつっているようにも見えるが、礼儀正しく挨拶をしてくる女性が一人。

このメイドさんはもちろん原作キャラであり、紅魔館勢の一員である。彼女の事を知らない人は少ないんじゃないだろうか?

 

そして顔が引きつってるのは恐らく魔理沙といいあってるのを見て面倒くさい奴だと誤認識されているのだろう。これは少し評価を直さなければ。

 

「あぁ、俺は蒼刃だ。望月 蒼刃。こう見えて16歳だからよろしく」

 

どうだ、別に特色がある訳でもなく、ミスった訳でもないこの無難な返答は。

 

「あ、はい。確認取れました。では望月蒼刃様、紅魔館の主がお呼びです。ついて来ていただけますでしょうか?」

 

ある程度はマシになったっぽい。さてさて、向こうから来てくれたんだ。帰る理由は見当たらない。

 

「了解。でも俺は飛べないぜ?人間のあんたが飛べてるのが不思議なんだよな」

 

確か公式情報では吸血鬼や魔女、悪魔に妖怪に囲まれた環境で過ごした結果、なんか飛べる様になったという些かぶっ飛んだ設定だった筈。別に俺はそんな特殊な環境で育ってはいないので飛べない。

 

「はい、私はまぁ色々あったというか....... とにかく、紅魔館へは私がお連れいたします。目を閉じていただけますか?いきなりだと脳に負担がかかってしまう恐れがありますので」

 

「へっ?」

 

シュンッ!

 

そんな音が聞こえた気がする。俺は、咄嗟に閉じていた目を開ける。

そこにあった光景はさっきまでの様な自然豊かな光景ではなく、人工的な建物の中だった。しかも、紅い。ここは廊下なのだろうか、豪華なカーペットがずらっと敷かれた光景。

 

「おー.......目がショボショボする....」

 

正直趣味の悪い色合いだ。まぁこれが紅魔館、吸血鬼の好きな血の色で埋め尽くされている。

 

「........あまり驚かれないのですね。普通人間はいきなり景色が変わる事に脳がついてこれない筈なのですが.......」

 

「え?...あぁ、俺はちょっと経験があるっていうか....もう瞬間移動程度じゃ気絶とかオーバーリアクションはしないんだよ。慣れって怖いね」

 

無論、転生の時の事である。

 

「むぅ....私の能力について見くびられている様にも聞き取れますが....経験豊富なのですね。流石お嬢様の言う通りという事でしょうか」

 

「お嬢様ねぇ.......なに?俺についてなんか見られてんの?」

 

俺と咲夜はレミリアの部屋に向かう為に廊下を歩く。何故部屋の目の前に移動しなかった事については、咲夜がある程度俺と話をつける為なんだとか。

 

「はい、お嬢様の能力によるものです。お嬢様は未来を見通す力をお持ちになっています。そのお力については....お嬢様に直接お聞きくださいませ」

 

咲夜と少し話をしていると目の前の扉で咲夜が止まった。ここがレミリアの部屋という事だろう。

 

「では私はここで。蒼刃様、くれぐれも失礼の無い様にお願いします」

 

俺は会釈すると咲夜は消えた。十六夜咲夜の能力、『時を操る程度の能力』によるものだろう。彼女は時を止める事であたかも瞬間移動している様に見せているのだ。

 

「(さてさて.......なんだかんだ言って目的地に着いた訳だけども......これからどうするかねぇ....)」

 

実は何も考えていなかったりする。俺としては原作キャラに会いたいなー程度しか目的は無い。が、なんか面倒な案件に巻き込まれそうな予感がする。霊夢の様に百発百中な訳では無いけれども、俺の勘は良く当たる。

 

だが今はとにかく目の前の事をしよう。というかそれしかやる事無いし。

 

俺はそっとドアを開けた。だが、それがいけなかった。

普通、洋式の館などではまずノックして返事を貰ってから入るのがマナー。だが俺はレミリアというキャラクターが実際どんな奴なのかと考え事をしながらドアを開けてしまった。その結果......

 

「うー.......初対面の奴にどう接するべきかしら。私はレミリアよ。....違う、私はレミリアというわ。....うーん、どうも初対面となるような事最近なかったからか少し対応に困るわね...私の名前はレミリア=スカー..........................あ」

 

「.......................どっちでもいいかと」

 

結果、レミリアの自問自答による独り言をバッチリ最後まで聞いてしまった。レミリアもこちらに気づいたようだ。

 

「........う......」

 

「う?」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「ぎっ⁉︎(う、うるせぇぇぇぇぇぇ‼︎)」

 

顔を真っ赤にしたレミリアの羞恥の叫びは、紅魔館だけでなく外までも響き渡った。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「は、恥ずかしい所を見せてしまって申し訳ないわ........」

 

「い、いやいやこちらこそノックも無しに申し訳ない......」

 

 

「「.........................はぁ...........」」

 

あの後、レミリアの叫びに咲夜がすっ飛んできた。文字通り時間を止めて。しかも咲夜の顔が怖かった。咲夜はレミリアを俺が泣かせたと勘違いしたらしく、阿修羅の如き勢いで襲い掛かってきたが、レミリアの説明によって頭にナイフ一本で許して貰った。

 

「ごほん!.......じゃあ、話を戻しましょうか。私はレミリア=スカーレット、この紅魔館の主をしているわ。....それで、紅魔館には一体何の様かしら?何か目的があったように見えたのだけれど......」

 

「........俺は望月蒼刃、一応これでも16だ。紅魔館には用って言うより興味本意で来た。霊夢に話を聞いてな、吸血鬼ってのはどんな奴なんだろうって行動に移した訳だ」

 

「え、えらく行動が早いのね.......それで?その吸血鬼である私を見てどう思ったのかしら?そこの所私気になるもの」

 

「.............それ聞いちゃう?」

 

「えぇ、聞いちゃう」

 

「...........じゃあ言っちゃうわ」

 

 

やめとけばいいのに...とか、そんな考えは無かった訳では無い。ただただレミリアの要望に応えただけである。

 

 

「幼女で独り言の痛いかりちゅまお嬢さまぶらぁッ⁉︎痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

「とんっでもない事言わないでよ‼︎何が幼女よ失礼でしょ⁉︎そ、それにっ!かりちゅま....かりちゅまですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎ちょっ、ちょっとタンマ‼︎俺人間‼︎しかも幼児だから吸血鬼パワーで殴んな殴んな‼︎」

 

やはり原作に近い性格だったようでかりちゅまにすぐに反応した。しかも逆鱗に触れたらしく、凄まじい力がこもったパンチを仕掛けてきた。しかも、中々速い。

 

「っ!このっ!当たりなっ!さいよ‼︎」

 

「ちょちょちょ!ってうわぁ⁉︎死ぬ!死ぬ‼︎」

 

もちろん当たったら洒落にならないので全て躱す。躱しきれないのは両手でいなして衝撃から逃れる。ただ疲れて来た。幼児になった事の弊害がかなりキツイ。ほんと、なんで幼児なんだろうか。

 

「君がっ!死ぬまでっ!殴るのをやめない‼︎」

 

「なんで知ってんだよそのネタ⁉︎」

 

いやほんとなんで知ってんだよ。それより体力がもう切れる!もう謝るしか道はないか?謝ってなんとかなるとは思えないけども.......

 

「す、すみませんでしたッ‼︎レミリアさんは本当はカッコ良くて可愛くてカリスマ性溢れる想像以上のお方です‼︎」

(ヤバイッ‼︎言い過ぎた!これじゃわざとらし過ぎるよなぁ.......終わった)

 

もはや転生ライフはお終いか。そう諦めた瞬間奇跡は起きた。

 

「えへへ.....わかればいいのよわかれば」

 

「.........................えぇぇぇ〜..........」

 

もう今の事は無かったかのようにパンチの嵐は瞬間的に収まり、残ったのは満面の笑みを浮かべるレミリアだった。

 

なんか....もう...原作なんて信じたくない。

絶対原作の世界線から外れた並行世界だろここ.......

 

 




訂正
様っていうより⇒用っていうより


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