東方渡世抄 〜現実と幻想の境界〜 【更新停止】 作:小鳥戦士
ベッドの上からこんばんは、小鳥戦士です。
今回はあとがきが思いつかなかったんで前書きで。
ではどうぞ
「う〜...痛いのだぁ〜」
目の前の幼い少女が、ぺたんと尻餅をつきながら涙目で訴え掛けてくる。
えぇっと......これ俺が悪いのか?いやあの子自らが痛いと言う理由を作ったのだ。だから俺は悪く...ない...のか?目の前で幼女泣いちゃって大の男が慌てふためく、これはひじょーに危ない光景だ。誤解されたらどうすんだよこれ......
あっ俺も幼児だったわ。
体は子供、心は大人とはよく言ったものだ。
「うぐっ...えぐっ...ううう.......」
「ああっ、ちょっ!待って待って!......ああ、くそっ、どうしてこうなった......」
だがしかし、俺の心の悲痛な声は、幼女が泣き叫ぶ事で吹き飛ばされた。
時は、魔理沙の家を文字通り飛び出して行ったその数分後まで遡る
〜現在→15分前〜
「なぁ、やっぱり遅すぎたんじゃないか?もう辺り真っ暗なんだけど。俺としては一切合切魔理沙の所為だと思うんだけど?」
「う、うるさいなぁ。文句言うなら箒の上から叩き落とすぜ?」
「別に大丈夫だけど?」
「だろ?だから黙って魔理沙さんに....え?」
「だから別にこっからなら落ちても大丈夫だっての。もちろんただでは落ちないぜ?木を利用しながら受け身取れば無傷だ。あっ、でも遮蔽物が無いと受け身なんて取れないからな?あくまで俺→なにか→地面=無事で成り立ってるからな」
「......化け物め......」
「経験の差だよ魔理沙君」
俺達は本来の目的である紅魔館へと移動を再開した。そもそも、霊夢が夜に行けなんて言わなければこんな待ち惚けみたいな状況にはならなかった訳で。
と言うか魔理沙、人の事を人外言うな。経験豊富なお兄さんと呼べ。俺としては人が空飛ぶ方が人外と言えるわ。
「つーかさ、今どのへんにいるの?後どのくらいな訳?」
「そーだなぁ......多分後少しくらいででっかい湖が見えると思うんだが...後5分くらい?」
「あっ、マジで?.......なぁ魔理沙、一ついいか?」
「なんだよ。一応言っとくがな。吸血鬼ってのは不死身の怪物だけど、太陽の光は天敵なんだ。だから夜しか生きれないし夜しか動かない。もしうっかり太陽光を浴びちまったら洒落にならないしな。だからこの時間は最適な時間なんだよ。だからわたしは遅れてないんだぜ」
知ってる。吸血鬼の性質くらい知ってる。いや俺が言いたいのはさ.......
「トイレ.....行きたいです」
「.......は?」
**********
「ふい〜...さてさて、行くぞ魔理沙。もう夜はすぐそこなんだからな」
「......わかったよ」
なにかご不満の様だな魔理沙よ。そりゃ俺だってトイレはしたいさ。だって人間だもの。
「まぁいいや。おい蒼刃、早く箒に乗れ。この辺りは山賊か、それとも妖怪がやってこやすい場所なんだ。早くいかないと喰われちまうぜ?」
「ほぅ、そんな危険地帯で呑気にションベンかましてたと?....俺も落ちたな......よし、行こうか」
確かに言われてみれば嫌な気配がビンビン漂ってる。俺は今自衛手段がない状態なわけで、抵抗は殆ど出来ないと思われる。だったら逃げるが勝ち。無駄に命を晒したくない。
「フラグになる前に登れ登れ。さぁ今宵は箒たびぃぃぃぃぃぃ⁉︎」
ズシャァァァ‼︎
と、歌い出そうとした瞬間、いきなり横の木の陰から黒いなにかが飛んできた。油断とフラグを建てた所為で避けれず、そのまま激突してしまった。
その時魔理沙の箒から落とされてしまったが、とりあえずは受け身を取りながら着地、無傷である。
「いってぇぇぇ......クッソ、今度はなんだよ?いきなりぶつかるとはいい度胸じゃねぇか......」
と、何処でみた不良マンガみたいなノリで。何かが当たった感覚があるがなんだろう、あまり硬くはなかったのだが。
俺はちらっとその原因がぶつかってきた方向を見る。
「ったく、妖怪か?幻想郷で初の妖怪か?こんな時に大事なファーストコンタクトするなんて思っても見なかっ......⁉︎なんだこれ⁉︎」
そこにあったのは『闇』。形容する必要の無い、純粋な闇だった。気付くと辺りは真っ暗で、目の前にある「闇』に飲み込まれている事に気付く。
これが、妖怪。ゲームとかでよく出る雑魚敵とか、そんなチャチなものでは決して無いモノ。
「おいおいおいおい、コレ結構やばいんじゃ無いか?なんつうか、妖力?みたいな気配強いぞこれ......」
今起きている事に驚きつつ、今ある唯一の戦う手段、『夢幻蹴夢』のスペカを手に握る。
もし、スペルカードルールを承諾してくれるような輩ならまだ勝機はある。というかそうじゃないと困る。
という訳で、弾幕ごっこのエキスパート、霧雨魔理沙先生に頼る事にした。
「おーい、魔理沙先生〜!こいつのお相手よろしく頼むわ〜!......魔理沙?おい魔理沙⁉︎」
しかし、さっきまでいた筈の魔理沙がいない。まさか置いて逃げたわけじゃあるまいし、なにかあったのは間違いない。
「(まさかこの闇は結界みたいな力があるのか?こう、狙った獲物に逃げられたり他に取られない様にするみたいな)」
だったら尚更ピンチである。この状況を覆すには自分でなんとかするしかない。
しかし、先程言った通り俺はスペカ一枚しかない。状況は依然、絶望的だ。
「なにか...なにか方法がある筈だ......この闇をなんとか出来る方法が...って、くぉっ‼︎」
いきなり闇の中から黒い何かが飛んできた。なんとか俺は飛び避ける事で難を逃れた。が、地面がかなり抉られており、当たったら致命傷どころじゃ済まない事を示していた。
「(おいおい、考えさせるのを邪魔する気か?どんだけ知能が高いんだこいつは......)うぉ⁉︎だから考えさせろや‼︎」
もはやペースは完全に彼方に取られている。考える暇はなさそうだ。一応、抵抗をする為に弾幕を放つ。
「なぁ⁉︎弾幕がすり抜けた⁉︎」
しかし弾幕が闇に当たる瞬間、闇に呑まれてしまった。あまり変化がないのを見ると全く効いていない様だ。
「.......あっちは攻撃できてこっちはできないとか無理ゲーじゃん。勝ち目ないんじゃないかこれ?」
闇は実体がないのだろうか。いや、この闇自体が闇そのものなのはないだろう。もし闇自体が本体ならさっきの弾幕が当たる筈だ。
「(ん?という事はまさか.......)おっと⁉︎」
また考えると攻撃してくる。いや、感がいいのだろうか。
「なるほど、そうゆう事か。わかったぜ、お前の攻略法!」
なにか身の危険を察したのか、黒い弾幕を放ってくる。しかしもう怖くないし危なくない。
「お前の弱点、つまりこう言う事だろ‼︎」
瞬間、俺の手から強烈な光が放たれた。その光は闇の弾幕を消し去り、そのまま一直線に広がっていく。
「やっぱりな。おまえは光が苦手なんだ。元来、闇は光に弱いのが常識。光に照らされたら消えるのは当然だ。だからその事を悟られない様に考える暇を与えなかった訳だ。」
光が一直線に伸びている状態のまま、俺は手を適当に動かす。その光は俺の手の動き通りに動き、闇を消していく。
そう、この光の正体は魔法やご都合主義などでは無く、スマホのライトなのだ。スマホのライトってのは案外強力、暗闇を照らすのは造作もない。
「最初は焦ったぜ。攻撃が当たらないもんな。お前さんは実体がないもんだと勘違いしてたし、正直諦めかけてた。」
そう、もはや諦めていた。こちらから攻撃出来ないとなるとお手上げだからな。
「だけどな、最初俺に“ぶつかった“のはなんだ?お前さんの弾幕なら体は抉れているはずだ。だけど抉れてなんかない。つまり.......お前は実体があるって事だ‼︎」
そして俺はスマホを剣で斬り刻むイメージで振り回した。
その振り回した光は闇を消していき、完全な闇はいつしか隙間が空き、ボロボロになっていく。
「そしてお前が本体だ‼︎妖怪‼︎」
「ッ!」
闇を消していくとやはり本体である妖怪が見えてくる。しかしまだ消したりないのか、残念ながら姿は闇に包まれよく見えない。しかし姿形はバッチリ見えた。身長は.......
「(俺とタメだと⁉︎じゃあ幼児体格かよ.......世も末だなこんにゃろう.......)」
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァ‼︎‼︎」
「うるっせぇわ巨人かおのれは」
奇声と怒号が入り混じったなんとも迷惑な声を上げ、闇妖怪が襲いかかってきた。相手は妖怪。だが幼児。だから暴力は出来ない.......なんて甘っちょろい考えは無い。それに自分も幼児だ、問題無い。
「くらえ.......チェストォ‼︎」
バキィ‼︎
「グギャァ‼︎」
襲いかかってきた所にビリビリ中学生よろしくな回し蹴りを見えない顔面に叩き込んだ。奴は飛びかかってきた勢いそのままに吹き飛び、痛かったのか悲痛な声を上げる。
だが、俺の反撃は終わらない。
蹴りをぶちかましたおかげで隙が出来た。蹴り終わった瞬間に奴に肉薄し、俺の唯一のスペカを至近距離で放つ!
「気絶しろよ.......幻符『夢幻蹴夢』‼︎」
手元のカードから放たれた弾幕は、肉薄したおかげで全弾命中した。ただ、どんなスペカかは一度見てみたかったが仕方ない。あれだけ肉薄したらを効果無視で大ダメージだ。
スペカの弾幕を全て受けた妖怪は吹き飛ばされた挙句、近くの木に衝突し、木にもたれかかりながら膝をついた。顔が下をみている限りでは気絶しているようだ。
「ふぅ......一時はどうなるかと思ったが......まぁなんとかなったな。つーか誰だよこいつ、いきなり襲いかかってきやがって。お巡りさんに突き出してやろうか」
そう言ってその妖怪に近づき、警戒しながら確認する。だが、闇が全身を包んでいるためよくわからない。
鬱陶しかったので俺は闇を剥いでみることにした。
「.......なんか怖いな。触ったら死ぬとか無いよな......まぁ物は試し、やばかったらやばかっただ。多分大丈夫だろ」
俺は意を決し、闇に触れようとした。
ブワァァァ!
「うわっ⁉︎いきなりなんだ一体‼︎」
しかし闇に触れる寸前に闇自体が妖怪から勢いよく離れ、ひとまとりになった。まるで、触られるのを嫌がるように。
「な、なんっ......でかすぎんだろ‼︎なんだよ今度は‼︎」
妖怪から吹き出す様に出てきた闇は、とても小さな身体に入りきらない程の大きさまで膨れ上がった。その大きさ、目測10メートル。今の俺にとっては上が見えないくらいだ。
「......おいおい、今からあれと戦えってか?ふざけてんのかよ神様よぉ.......!あんなんどう戦えってんだよ‼︎」
対峙した瞬間、悟った。今の俺じゃ勝てない。
「............ぅぉおおおおおあああああああ!!!!」
スマホを握りしめ、やけくそ覚悟の特攻を仕掛ける。
「んなぁ⁉︎」
しかし瞬間、闇が消えた。それも元々そこに居なかったかの様に一瞬で。
「.............................」
冷や汗が溢れてくる。
もしあのまま戦っていたらと思うと、とても。
なんで一瞬で消えたのか。何故小さな妖怪にあれが詰まっていたのか。疑問は山程あるが、今は余り考えたくない。疲れた。さっきみたいに余裕はない。
「う〜...痛いのだぁ〜」
妖怪は幼女の姿をしていたらしい。妖怪は頭を押さえ痛がっているが、俺だって頭を押さえたい。
「........どうしてこうなった.......」
その問いに、答えてくれる者は居なかった。