War Story   作:空薬莢

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いつも通り、とは阿呆がほざく戯れ言。
想定外の事態に対応し、生き残る事にこそ、意味がある。

※今回は推奨BGM有り→《Keep Alive》


ReportⅢ Hunting Lucifer

AC.3021 July.8 A.M.9:25 旧オーストラリア北部上空

『作戦領域上空に到達。各機、降下準備』

「了解」

俺は閉じていた瞳を開く。

――MainSystem Activation Combat Mode…………OK.

 

灯る計器類のランプ。

メインモニターに映るは、無骨な鉄色と……シティデジタルカモフラージュカラーに染め上げられた流線形の多目的装甲達。

計器類の異常は無し、武装各種も同じく。

……俺は大丈夫か。

「……ルシファー・リーダーより各機へ。準備は出来たか?」

『ルシファー2、問題ありません』

『ルシファー3、同じく問題ねぇ。早く撃たせてくれよ、隊長』

『ルシファー4、システムオールグリーン。OKです』

『ルシファー5、いつでも行けますぜ、隊長』

『ルシファー6、暖気運転も終了。行けるぜ』

全員、準備万端。やる気も充分。

頼りになる奴らだよ。

「了解だ。降下地点までは後どのくらいだ、オペレーター?」

『降下地点上空に到達。降下開始してください』

質問と共に、流れ込む光と風。

そして―――蒼と白。

「各機、降下開始!」

『『『『『了解』』』』』

反響する掛け声。

降下する多目的装甲。

迎えるは蒼と――――砲火。

『クソッ!嗅ぎ付けてやがったな!』

『私語は厳禁。作戦に集中して、ルシファー6』

『分かってるよ、ルシファー2。……だが、愚痴ぐらい吐きたくなるなるだろ、隊長?』

俺に振るなよ。

「こういう時は運任せだ。減らず口は死期を早めるぞ」

どうとでも取れる返答を返し、ブースタを小刻みに吹かしては、軌道修正。

対空砲火を潜り抜けていく。

それは愚痴を洩らす味方も同じであり、器用に避けていき、

全機が損害無く、着地する。

「各機、兵装使用自由(ウェポンオールフリー)。やるぞ」

言いつつ、ブースタ起動。

敵陣へと突貫する。

――Caution

人工音声が告げる。ロックされている。

だが、それがどうしたのか。

いつもの事だ。

小刻みにブースタの方向を調整し、過去位置を砲弾が抉っていく。

本来ならば砲弾を目視で避ける事は不可能に近い。

が、多目的装甲は補助機能として持つ自動照準(ロックオン)があり、手動照準を行うパイロットは後方支援機の奴だけ。

機体操作の簡略化に貢献した同機能は、同時にパイロットの射撃精度を低下させてしまう。

故に、たとえ旧型レシプロ機程度の速度しか出ない、この機体でも被弾するとは思っていない。

――In Range

 

再び告げられる、メッセージは、武装の射程内に敵を収めたというもの。

右腕保持の40㎜突撃砲を構え、表示される青いレティクル。

照準調整。

射撃開始。

口径のわりに軽い反動と、対照的に激しい発砲炎(マズル・フラッシュ)を発しながら、数多の40㎜徹甲弾が吐き出される。

しかし、元々反動制御に難がある、この突撃砲では一機の頭部と両腕部を破壊するだけに留まり、

HDM右隅に表示された40㎜突撃砲のマガジン内残弾情報が数瞬でゼロになり、機体システムから告げられるリロードの催促。

(クソッ!)

無視して、武装切り替え。背部外装の多連装ミサイルランチャーヘ。

表示されていたレティクルが消失。

代わりに、赤い正方形状のレティクルが複数表示される。

その数、14。

ミサイルランチャーの装弾数と同じだ。

既にロックは完了。

「悪いが……眠ってくれっ!」

全弾一斉射。

14発の180㎜ミサイルは白煙と共に射出され、上空へと角度を修正。

ミサイルの誘導パターンが、敵機上部を狙う、トップアタック式の為だ。

確認した後、

 

――Purging

 

空のランチャーをパージし、40㎜突撃砲の空マガジンもエジェクト。

スペアマガジンに付け替えるようとし――

「っ!?」

前方に一機の多目的装甲が見えた。

咄嗟に左腕部に握る240㎜ロケットランチャーのトリガーを引く。

高い飛翔音と白煙を引いたロケットが敵機の胸部を直撃。

高速のメタルジェットが装甲を貫徹。パイロットも死傷しただろう。

「クソッ!また、殺っちまった」

一人、殺した。

俺の中に人殺しの罪悪感が生まれる。

そして、追い討ちをかけるように、ミサイルが着弾。

装甲兵器に共通する上部装甲の脆さ故に、簡単にコクピットブロックへとメタルジェットが到達。

パイロットは全員死亡。

これで、15人殺した。

『隊長、うるせぇよ。人殺しぐらい慣れろよ』

『全くだ。隊長自体は嫌いじゃねぇが、人殺しに慣れてねぇ甘ちゃんな所だけは気に入らねぇ』

トドメと言わんばかりに、ルシファー3、6が怒りを露にした。

『罪悪感に打ち拉がれるのは勝手ですが、せめて心の内でしてください、隊長』

「…………あぁ。忠告ありがとう、ルシファー4」

……そうだ。

悔やむのは後にしなければ。

マガジン交換を終えた40㎜突撃砲を構え直し、加速する。

「ルシファー各機、状況を伝えろ」

同時に、味方の状態確認。

『ルシファー2、異常無し。支援を続行する』

『ルシファー3、左腕に流れ弾を食らった。左腕35㎜突撃砲が使えねぇ』

『ルシファー4、右腕破損。戦闘自体は可能です』

『ルシファー5、異常無し。骨がねぇ奴等ばっかりだ』

『ルシファー6、異常無し……クソッ!被弾した!右腕35㎜突撃砲破損。支援は続けられるっ!』

半分以上が損害有りか……。

今回は手強い奴等だからな……。

「了解した。……損害の出た者は無理をせず、撤退も考慮にいれて行動しろ」

『『『『『了解』』』』』

味方の返答。

突撃砲を速射。

一機の両腕を破壊。

――Missile Alert

 

ミサイルロック警告。

すぐに、赤外線照射元に向け、左腕ロケットランチャーを向け、発射。

一機破壊。

16人目。

更に、近くの数機が同時に破壊される。

ルシファー2、6の援護だな。

良いタイミングだ。

と、思ったところで、飛来音。

ブースタを吹かし、サイドダッシュ。

数瞬後、元いた位置で爆発。

多目的砲か?

武装分析、対抗策として、掩体に隠れようとするも、継続的に響く飛来音。

数瞬遅れて着弾する多目的榴弾(HEAT-MP)に追い立てられ、ままならない。

嵌められた。

そう、直感する。

相手側は俺達の戦術を読んでいた。

前衛機は囮だったのだろう。

追い立てられた先に待っていたのは、20機もの多目的装甲。

集団の中心に立つ、背部に連装式の多目的砲を備えた、見るからに重装甲型と思われる機体。

他の機体は極一般的な東欧連邦の量産型多目的装甲である以上、コイツが先程の砲撃を行ったのは自明の理。

(……やるしかないな)

腕の一本、脚の一本は覚悟しないといけないな。

腹を括り、操縦棍を握り直し、味方に告げる。

「ルシファー2、6。俺の前方に()()()()

『ルシファー2、了解』

『ルシファー6、了解だ』

仕込み砲撃。

さて、始めるか。

 

――Caution Caution Caution Caution

 

幾重にも重なるロック警告。

ブースタを吹かし、変則機動で対応。

外装ギリギリの位置を砲弾が通過していく、冷や汗物の状態。

しかし、痺れを切らした数機が俺に向かって突貫。

直後、飛来した砲弾により、破壊。

残りは16、7機か?

あまりやれていない。

もう、炙り出しは通用しないだろう。

「ルシファー2、6もっと前に降らせろ」

『『了解』』

ならば直接、上に降らせるまで。

我ながら、浅はかな考えだな。

自嘲しながら、40㎜突撃砲で二機破壊。

残り14機。

――ブースタ燃料 残り60%

(……ヤバイ)

燃料面の心配も出てきたか。

全力に近い機動をしているからな。……燃料を食うのは当然だ。

っと、支援砲撃命中。五機破壊。

残り9機。

マガジンエジェクト。リロード。

 

――右腕武装 スペアマガジン 残り4本

 

突撃砲の残弾も少ないな。左腕のランチャーも残り一発。

それ以外は、カーボンナイフだけか。

(この機体で格闘戦は……自殺行為だ)

何としても、残弾尽きる前にカタを着けないとな。

『こちらルシファー3。辛そうだな、隊長。援護に向かうぜ』

『ルシファー4、同じく援護に向かいます』

『ルシファー5、隊長に死なれちゃ、目覚めが悪ぃからな。俺も援護に向かう』

「そっちの分担は片付いたのか?」

味方の援護発言に、そう返す。

俺が生き残ろうが、敵が残っているのでは意味が無い。

『『片付いているぜ』』

『問題無いです』

「ならば、良い。……流石に1対20はキツい」

言いつつ、一機破壊。

『すぐに向かうぜ』

『何とか持ち堪えてください』

『死ぬなよ、隊長』

味方の声を聴きつつ、更にもう一機。

リロード。

残り3本。

支援砲撃。

二機破壊。

『ルシファー2、90㎜狙撃砲、残弾零。直射支援の為、ポイントを変更する』

『ルシファー6、同じく65㎜速射砲の弾が切れた。……前線に合流する』

頼みの綱である、長距離支援も打ち止め。

後は、時間との勝負。

突撃砲を斉射し、一機破壊。

後、3機。

リロード。

残り2本。

――ブースタ燃料 残り30%

 

ブースタ燃料は僅か。

余裕が無い。

突撃砲の射撃モードを全自動(フルオート)から半自動(セミオート)ヘ。

照準補正。

発射。

的確に撃ち込み、半マグで二機破壊に成功。

直後、衝撃。

――左肩部サブブースタ被弾。サブブースタ出力30%低下。

 

衝撃で動きが止まる。

二度目の衝撃。

――右肩部サブブースタ被弾。サブブースタ出力、0%。

 

向こうは両腕の突撃砲を全自動でブチ撒けている。

所謂、牽制射撃。

運悪く被弾したに過ぎない。

メインブースタ、出力向上。

ジェネレータ出力向上。

被弾硬直をメインブースタ出力の向上で無理矢理掻き消し、残る重多目的装甲に対峙する。

向こうは、撃ち切った二挺の突撃砲をリロードし終えていた。

リスタート。

メインカメラに捉えた敵機の砲口から射線を予測。

変則機動で距離を詰め、比嘉の距離は800mを切る。

左腕ロケットランチャーを構え、メインブースタ最大出力。

同時に、発砲。

撃ち出されたロケットが敵機に損害を与える――と、思いきや、突撃砲の斉射によって、迎撃される。

更には――

――左腕部被弾。左腕損壊率50%。肘部以下喪失。

 

流れ弾に巻き込まれ、左腕部が肘から下を失う。

残る武装は40㎜突撃砲とカーボンナイフのみ。

敵機が重装甲である以上、近距離から撃ち込まなければ、効果は薄い。

対する敵機の武装は……二挺の突撃砲と……肩部に多連装ロケットポッド。それに、背部の連装多目的砲。

既に、比嘉の距離は500mを切った。

格闘射撃戦で挑むしかないか?

そう思いつつ、突撃砲による射撃。

無論、撃破できるとは思っていない。牽制だ。

撃ち出された40㎜弾が敵機の装甲に弾かれ、或いは浅く抉り、大したダメージを与えない。

残り200m。

この距離ならばっ!

射撃モードを全自動ヘ。

残弾全てをバラ撒く。

目に見えて、装甲が抉れる。

リロード。

残り100m。

照準を補正し、トリガーを引こうとしたが、

「がはっ!?」

衝撃が俺を襲う。

――胴部被弾。損壊率30%。

 

メインカメラはまだ生きている。

胴部被弾の時点で、普通は死んでいる。

今回は神に救われたようなものか。

ならば、それを無駄にしないようにしなければ――

照準補正。

前方にブースタを吹かせ、後退しつつ、突撃砲をバースト射撃。

着弾したのは――肩部ロケットポッド。

おそらく、他より脆いだろうと思い、撃ち込んだが――結果は、

内部弾薬に誘爆し、肩部が吹き飛ぶ。

同時に敵機は後退し始め、突撃砲の残弾も尽きる。

 

――ブースタ燃料 残り19%

 

機体からの警告。

戦闘機動では、帰投前に燃料切れになる。

(……目の前にいるのに……迎撃できねぇのかよ……)

俺は悔しさに拳を握り込む。

既に敵機の姿は見えなくなっていた――

 

 

 




――以上、第三話でした。
今回はU.S.O.軍のある部隊の話。
同部隊はメカニック原案者である、アルファるふぁ氏発案の部隊です。
本人曰く、イメージはFMシリーズの地獄の壁らしいが、僕としては敵味方共に怨まれる部隊と考えています。
理由は、本編中にあります。
では、今回はこの辺りで。
拝読ありがとうございました。


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